AI導入の依頼書(要件メモ)の書き方——外部に頼む前にまとめる10項目のテンプレートと記入例
結論
AI導入を外部に頼むときは、対象の業務・いまの手順・件数と時間・AIに渡すもの(入力)・AIに出してほしいもの(出力)・例外・人が確認する点・使っているシステム・扱う情報・成功の基準の10項目を、A4で1〜2枚の依頼書にまとめてから相談するのがおすすめです。専門用語は要りません。業務を知っている人が、ふだんの言葉で書けば十分です。この記事では、そのまま使えるテンプレートと記入例を紹介します。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AI導入を外部に依頼する前にまとめる依頼書(要件メモ)の項目と、テンプレート・記入例について解説します。AIの導入を外部の会社に頼もうとしたとき、「何をどう伝えればいいか分からない」「打ち合わせのたびに説明が変わってしまう」という声をよく聞きます。依頼の中身があいまいなまま進むと、会社ごとに見積もりの前提がばらばらになって比べられず、作り始めてから「思っていたものと違う」となりがちです。この記事では、エンジニアがいない会社でも書ける依頼書(要件メモ)の10項目と、受注入力の業務を例にした記入例、書くときのコツを、AIの仕組みを作って納める側である当社の立場からまとめます。
依頼書は「業務の説明書」。専門用語ではなく、ふだんの言葉で書けばよい
AI導入の依頼書とは、外部の会社に「どの業務の、どの手間を、どうしたいか」を伝えるためのメモです。システム開発で使われる「要件定義書」のような専門的な書類である必要はありません。
依頼書を作っておくと、次のような良いことがあります。
- 見積もりを比べやすくなる:複数の会社に同じ依頼書を渡せば、同じ前提で見積もりが出てくる
- 打ち合わせが短くなる:基本的なことを毎回説明しなくて済み、相手からの質問も具体的になる
- 作り直しが減る:例外や確認の手順が最初から伝わり、作ったあとで「この場合はどうするの」が起きにくい
- 社内の考えがそろう:書く途中で、担当者と管理職の間で「何をゴールにするか」の食い違いに気づける
書くのは、その業務をふだん担当している人と、導入を決める管理職・経営者が一緒に行うのが理想です。AIやシステムの知識は要りません。むしろ、業務の細かい事情をふだんの言葉で書いてあるほうが、依頼を受ける側にとっては役に立ちます。
どの業務を対象にするかがまだ決まっていない場合は、先にAIに任せる業務の洗い出し方や業務棚卸しシートで候補を絞ってから、この依頼書に進んでください。
依頼書の10項目テンプレート
次の10項目を、上から順に埋めていきます。分からない項目は「不明」「これから調べる」と書いておけば大丈夫です。空欄にせず、分からないことが分かる状態にしておくのが大切です。
| 項目 | 書くこと | 書き方のヒント |
|---|---|---|
| 1. 対象の業務 | どの業務の、どの作業か | 「経理」ではなく「取引先から届く請求書を会計ソフトに入力する作業」のように、1つの作業に絞る |
| 2. いまの手順 | 誰が、何を見て、何をしているか | 番号つきで5〜10段階に分けて書く |
| 3. 件数と時間 | 1日・1か月に何件、1件に何分かかっているか | おおよそでよい。繁忙期があれば書き添える |
| 4. AIに渡すもの(入力) | 作業のもとになる資料やデータ | FAX、PDF、メール本文、Excelなど、形と届き方を書く。見本を2〜3件用意する |
| 5. AIに出してほしいもの(出力) | 作業の結果として欲しいもの | 「会計ソフトに取り込めるCSV」「返信メールの下書き」など、使い道まで書く |
| 6. 例外・よくある困りごと | いつもと違う対応が必要になる場面 | 手書き、項目の書き漏れ、取引先ごとの独自ルールなど、思いつく限り書く |
| 7. 人が確認するところ | AIの結果のうち、人が必ず見る部分 | 金額・日付・送信前など。誰が確認するかも書く |
| 8. 使っているシステム | 関係するソフトやサービスの名前 | 会計ソフト、販売管理、メール、チャットなど。データを出し入れする方法が分かれば添える |
| 9. 扱う情報と社内ルール | 個人情報や社外秘の情報が含まれるか | 社内にAIの利用ルールがあれば添付する |
| 10. 成功の基準と時期 | 何がどうなれば成功か、いつまでに使い始めたいか | 「1件10分を3分に」「月末の残業をなくす」など、測れる形で |
ポイント
依頼書でいちばん効くのは、4の「入力の見本」です。実際の書類やメールを2〜3件(個人情報は塗りつぶして)添えるだけで、依頼を受ける側は「どこが難しいか」をすぐに判断できます。
記入例:FAXとPDFで届く注文書の入力を任せたい場合
製造業や卸売業でよくご相談いただく「注文書の入力」を例に、依頼書を埋めるとどうなるかを示します。数字はわかりやすくするための例です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 1. 対象の業務 | 取引先からFAXとメールのPDFで届く注文書を、販売管理ソフトに入力する作業 |
| 2. いまの手順 | (1)FAXとメールを朝と昼に確認 (2)注文書を印刷 (3)取引先コードを調べる (4)品番・数量・納期を手で入力 (5)在庫を確認 (6)納期回答をFAXかメールで返す |
| 3. 件数と時間 | 1日30件前後、1件5分ほど。月末と年末は1.5倍ほどに増える |
| 4. 入力 | FAX(画像)とPDF。取引先ごとに書式が違い、約20種類。手書きの追記がある注文書もある。見本を3件添付 |
| 5. 出力 | 販売管理ソフトに取り込めるCSV。読み取れなかった項目には印をつけてほしい |
| 6. 例外 | 品番が旧品番で書かれている/「前回と同じ」とだけ書かれている/手書きで数量が訂正されている |
| 7. 人が確認するところ | 数量と納期は、取り込む前に事務担当が一覧で確認する |
| 8. 使っているシステム | 販売管理ソフト(CSVで取り込み可)、FAXはメールに転送される設定 |
| 9. 扱う情報 | 取引先の会社名・担当者名・取引条件。個人のお客様の情報は含まない。社内のAI利用ルールは未整備 |
| 10. 成功の基準と時期 | 入力にかかる時間を半分以下に。繁忙期の前に使い始めたい |
このくらいの粒度で書いてあれば、依頼を受ける側は「書式が約20種類ある」「手書きの訂正がある」「CSVで取り込める」といった、作り方と費用を左右する事情を最初から把握できます。注文書の入力をAIで減らす流れそのものは、FAX・PDFで届く受注書の入力をAIで自動化する方法で詳しく解説しています。
書くときにつまずきやすい3つの点と、その避け方
依頼書を書いてみると、多くの会社が同じところでつまずきます。
1. 「全部AIにやってほしい」と書いてしまう
最初から業務全体を任せようとすると、例外が多すぎて作るのに時間も費用もかかります。まずは手順のうち、件数が多く、判断が少ない部分に絞りましょう。記入例でいえば「読み取りとCSVづくり」だけをAIに任せ、在庫確認と納期回答は次の段階にする、という分け方です。
2. 例外を書き忘れる
担当者にとって当たり前になっている対応ほど、書き漏れます。書いたあとに担当者へ「この1か月で、いつもと違う対応をした注文書はありましたか」と聞くと、書き漏れが見つかりやすくなります。
3. 成功の基準があいまい
「便利になればいい」では、導入後に効果があったかを判断できません。「1件あたりの時間」「月の残業時間」「返信までの時間」など、いまの数字と目標の数字をセットで書いておきます。いまの数字がない場合は、依頼の前に1〜2週間だけでも記録をとっておくと、あとで効果を測るときにも役立ちます。測り方はAI導入の効果の測り方と報告のしかたで解説しています。
依頼書を渡したあとに確かめること
依頼書ができたら、相談先に渡して話を聞きます。そのとき、次の点を確かめておくと、あとから困ることが減ります。
依頼書を渡したあとに確かめること
- 依頼書のうち、相手が「難しい」「条件つき」と見た項目はどれか
- 例外(依頼書の6)を、どう扱う提案になっているか(AIで処理する/人に回す)
- 人が確認するところ(依頼書の7)が、仕組みの中でどう見えるようになるか
- 見本の書類で、試しに動かしてもらえるか
- 作ったあとの直し(書式の追加・ルールの変更)は、費用と期間がどうなるか
- 扱う情報(依頼書の9)の保存場所と、誰が見られるか
複数の会社に相談する場合は、同じ依頼書を渡し、返ってきた見積もりを同じ項目で並べて比べます。比べ方はAI導入の見積もりの比べ方、依頼先の選び方全体は社内にエンジニアがいない会社のAI導入の進め方をご覧ください。
当社では、依頼書がまだ半分しか埋まっていない段階からでもご相談をお受けしています。ヒアリングの中で一緒に10項目を埋め、どこから始めると効果が出やすいかをご提案します。当社のAI社員は初期費用+月5万円で、作ったあとの保守や相談も含まれます。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。何をどう頼めばいいか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
AI導入の依頼書(要件メモ)は、どのくらいの量を書けばよいですか?
A4で1〜2枚が目安です。10項目を短く埋め、実際の書類やメールの見本を2〜3件添えれば、相談先が判断するのに十分な材料になります。
エンジニアがいなくても依頼書は書けますか?
書けます。依頼書に必要なのは業務の中身と事情で、専門用語は要りません。その業務を担当している人がふだんの言葉で書いたほうが、依頼を受ける側にとって役に立ちます。
要件定義書とは何が違いますか?
要件定義書は、作る側がシステムの機能や仕様まで細かく決めた書類です。この記事の依頼書は、その前の段階で発注する側が業務の事情を伝えるメモで、要件定義は依頼書をもとに依頼先と一緒に進めるのが一般的です。
分からない項目があっても相談してよいですか?
問題ありません。「不明」と書いておけば、相談の中で一緒に確かめられます。空欄にせず、分からないことが分かる状態にしておくことが大切です。