費用・比較・選び方公開日

AI導入の見積もりはどこを見て比べればよい?——見積書で確認する7項目と依頼先への質問チェックリスト

結論

AI導入の見積もりは、合計金額を比べる前に「作る範囲」「構築期間」「月額に含まれるもの(保守・改修・相談)」「AI利用料の扱い」「契約期間」「解約時のデータの扱い」「追加費用が出る条件」の7項目を同じ表に並べて比べるのが基本です。条件をそろえずに金額だけで選ぶと、導入後の追加費用や使われない仕組みにつながることがあります。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AI導入の見積書を比べるときに確認する項目と、依頼先への質問のしかたについて解説します。AI導入を考えて2〜3社から見積もりを取ったものの、項目の分け方も書き方も会社ごとに違い、どれが高いのか安いのか判断できない。当社にも、こうしたご相談がよく寄せられます。見積書は、同じ条件に並べ直さないと正しく比べられません。この記事では、経営者の方が見積書を受け取ったときに確認したい7つの項目、安さだけで選んだときに起きやすいこと、依頼先に聞いておきたい質問のチェックリストを説明します。費用の内訳そのものの考え方は「AI導入にかかる費用の内訳」の記事で詳しく説明しているので、あわせてご覧ください。

見積書は「合計金額」ではなく「同じ条件にそろえた中身」で比べる

AI導入の見積書を比べるとき、最初に合計金額を見てしまいがちです。しかし、AIの仕組みづくりは会社によって「どこまでを見積もりに含めるか」が大きく違います。ある会社は導入後の調整まで含めた金額を出し、別の会社は最初の構築だけの金額を出している、ということがよくあります。

この状態で金額だけを比べると、含まれている作業が少ない見積もりほど安く見えてしまいます。そこで大切なのが、見積書の中身を同じ項目に並べ直してから比べることです。

並べ直すときは、次の2つの期間に分けて考えると整理しやすくなります。

  • 導入するまで:何を作るのか、どのくらいの期間がかかるのか、初期費用に何が含まれるのか
  • 導入したあと:毎月の費用に何が含まれるのか、AI利用料はどう払うのか、何年使う前提なのか、やめるときにどうなるのか

AIの仕組みは、作って終わりではなく、使いながら直していくものです。そのため、導入したあとの条件のほうが、長い目で見た費用や使いやすさに大きく影響します。見積書を受け取ったら、まず「導入したあと」の項目が書かれているかどうかを確認してください。

見積もりを頼む前に、同じ業務の説明を用意する

比べやすい見積もりを集めるには、依頼する側の準備も大切です。会社ごとに違う説明をすると、それぞれが違う前提で見積もるため、どれだけ並べ直しても比べにくくなります。見積もりを頼む前に、次のような内容を1枚にまとめ、すべての依頼先に同じものを渡してください。

  • AIに任せたい業務の名前と、今の作業の流れ
  • 1日や1か月に処理する件数のおおよその量
  • 今使っているツール(メール、表計算、販売管理など)
  • 今その業務にかかっている時間と、担当している人数

同じ説明をもとにした見積もりであれば、金額や条件の違いが、そのまま各社の考え方の違いとして見えてきます。

見積書で確認する7つの項目と比較表の作り方

複数社の見積書を比べるときは、次の7つの項目を縦に並べ、会社ごとに列を作った表にまとめると比べやすくなります。見積書に書かれていない項目は、空欄のままにせず「記載なし」と書いておき、あとで質問します。

確認する項目見るポイントA社B社C社
1. 作る範囲どの業務の、どの作業からどの作業までをAIに任せるか
2. 構築期間稼働までの期間と、その間に社内で必要な作業
3. 月額に含まれるもの保守・改修(直すこと)・相談が含まれるか、回数の上限はあるか
4. AI利用料の扱い月額に含まれるか、実費で別払いか、上限はあるか
5. 契約期間最低契約期間、更新のしかた、途中解約の条件
6. 解約時のデータの扱いデータや設定を返してもらえるか、削除してもらえるか
7. 追加費用が出る条件どんな依頼から別料金になるか

表を作ってみると、「A社は安いが月額に改修が含まれていない」「B社は高く見えるが相談の上限がない」といった違いが見えてきます。この違いこそが、金額の差の理由です。

ポイント

比べるときの合計金額は、「初期費用+月額×契約期間+AI利用料の見込み」で出します。さらに、導入後に起こりそうな変更(取引先の書式が変わる、任せる作業を増やすなど)にかかる追加費用も、わかる範囲で足しておくと、実際に払う金額に近くなります。

作る範囲と構築期間は「業務の言葉」で具体的に書かれているかを見る

作る範囲:あいまいな書き方は追加費用の元になる

見積書の中で、あとからトラブルになりやすいのが「作る範囲」です。「受注業務の効率化」「問い合わせ対応のAI化」のような大まかな書き方だけでは、どこまでが見積もりに含まれているのかがわかりません。

確認したいのは、次のような点です。

  • AIが受け取る情報は何か(メール、FAX、表計算のファイルなど)
  • AIが何をするのか(読み取る、入力する、下書きを作る、振り分けるなど)
  • 結果をどこに出すのか(社内の販売管理、表計算、チャットなど)
  • 人が確認する場面はどこか
  • 例外(いつもと違う書式、判断に迷う問い合わせなど)はどう扱うか

このように、社内の人が読んでも「どの作業がなくなるのか」がわかる言葉で書かれているかを見てください。範囲が具体的に書かれていない見積もりは、使い始めてから「それは範囲外なので別料金です」となりやすくなります。

構築期間:稼働までの期間と社内の手間をセットで見る

構築期間は、短ければよいというものではありません。見るべきなのは、期間の中に「業務の聞き取り」「試運転」「直し」が入っているかどうかです。試運転と直しの時間がないと、稼働してすぐに使いにくい部分が見つかり、結局その分の時間がかかります。

また、構築の間に社内の担当者がどのくらい打ち合わせや確認に時間を使う必要があるかも聞いておきましょう。社員が少ない会社では、この社内の手間が導入の負担になることがあります。

当社のAI社員の構築期間の目安は、ジュニアで2週間程度、ミドルで1か月程度、シニアは応相談で、最短2週間で稼働できます。任せる業務の範囲によって変わるため、ヒアリングで業務の流れをお聞きしたうえでご説明しています。

月額・AI利用料・契約期間・解約時のデータが導入後の費用と自由度を決める

月額に含まれるもの:保守・改修・相談を分けて確認する

月額費用は、名前が同じでも中身が大きく違います。次の3つを分けて確認してください。

  • 保守:止まったときの対応や、連携しているツールの仕様変更への対応
  • 改修:書式やルールが変わったときの直し、任せる作業を少し増やすこと
  • 相談:使い方の質問や、次に何をAIに任せるかの相談

「保守は含むが改修は別料金」「相談は月に何回まで」のように、一部だけが含まれている場合もあります。回数や時間に上限があるかどうかも、見積書で確認しておきましょう。

AI利用料:定額か実費かで見え方が変わる

AI利用料は、生成AIなどのサービスを使った量に応じてかかる料金です。見積もりによっては月額に含まれていたり、実費で別払いになっていたりします。定額に含まれている場合は、使う量に上限がないかを、実費の場合はどのくらいの金額になりそうかの見込みを聞いておくと安心です。

契約期間:最低期間と更新のしかたを見る

最低契約期間があるかどうか、自動で更新されるのか、途中でやめるときに費用がかかるのかを確認します。契約期間が決まっていることは悪いことではありませんが、条件を知らずに契約すると、想定外の費用が出ることがあります。

解約時のデータの扱い:やめるときのことを最初に聞く

見落とされやすいのが、解約したときにデータや設定がどうなるかです。AIに読み込ませた社内の資料、処理の記録、作った仕組みの設定などを、返してもらえるのか、削除してもらえるのかを確認してください。お客様の情報を扱う業務では、削除の方法や時期も大切です。個人情報の扱いについては法令や指針が関係するため、最新の情報は個人情報保護委員会などの公式サイトで確認してください。

安さだけで選ぶと起きやすい3つのこと

見積もりの金額が安いことは、それだけで悪いことではありません。業務がほとんど変わらず、作る範囲がはっきりしている場合は、安い見積もりで十分なこともあります。ただし、条件を確かめずに金額だけで選ぶと、次のようなことが起きやすくなります。

  1. 追加費用が重なって、結果的に高くなる:作る範囲がせまく書かれていたため、使い始めてから「この書式にも対応してほしい」「この作業も任せたい」と頼むたびに別料金になり、合計が最初の見込みを大きく超えてしまう
  2. 直してもらえず、使われなくなる:月額に改修が含まれていないため、取引先の書式や社内のルールが変わっても直すのをためらい、少しずつ人の手作業に戻ってしまう
  3. やめたくてもやめにくい:解約時のデータの扱いや契約期間を確認していなかったため、別の仕組みに移ろうとしたときに、データを引き継げなかったり、想定外の費用がかかったりする

どれも、導入するときには見えにくく、使い始めてから表に出てくる問題です。AIの仕組みは使いながら育てていくものなので、「導入後にどれだけ直しやすいか」を金額と同じくらい重く見てください。

ポイント

高い見積もりが良いという意味ではありません。大切なのは、金額の差が「含まれている作業の差」なのかどうかを見極めることです。同じ条件にそろえたうえで安いなら、それは良い見積もりです。

依頼先に聞いておきたい質問のチェックリスト

見積書に書かれていない項目は、契約の前に依頼先に質問しておきましょう。次のチェックリストを、そのまま質問の一覧として使えます。答えは口頭だけでなく、メールや見積書の追記など、文書で残してもらうと安心です。

AI導入の見積もりで依頼先に聞く質問チェックリスト

  • AIに任せる作業は、どこからどこまでですか(受け取る情報・する作業・出す先)
  • いつもと違う書式や、判断に迷う場面はどう扱いますか
  • 稼働までの期間はどのくらいで、その中に試運転と直しの期間は入っていますか
  • 構築の間、当社の担当者はどのくらい時間を使う必要がありますか
  • 月額に、保守・改修・相談はそれぞれ含まれていますか
  • 改修や相談に、回数や時間の上限はありますか
  • AI利用料は月額に含まれますか、実費ですか。月にどのくらいの見込みですか
  • 最低契約期間と、更新・途中解約の条件を教えてください
  • 解約したとき、データや設定は返してもらえますか。削除はいつ、どのように行いますか
  • どんな依頼から追加費用がかかりますか。具体例を教えてください

参考までに、当社のAI社員の条件をこの項目に当てはめると、料金は初期費用+月5万円(税別)で、初期費用はヒアリング後にお見積もりしています。月額には保守・相談・メンテナンスを無制限で含めており、AI利用料は実費、契約期間は12か月です。構築期間はジュニア2週間程度・ミドル1か月程度・シニアは応相談で、最短2週間で稼働します。導入後に業務が変わっても、追加の見積もりを気にせず調整を頼めるようにするための条件です。

これまで約90社の企業からご相談をいただいていますが、見積もりの比べ方に迷われている段階でのご相談も歓迎しています。他社の見積書と並べて検討いただく場合も、上のチェックリストの項目に沿ってお答えします。

よくある質問

AI導入の見積もりは何社から取ればよいですか?

2〜3社から取ると、作る範囲や月額に含まれるものの違いが見えやすくなります。社数を増やすより、同じ業務の説明を各社に渡して、条件をそろえて見積もってもらうことが大切です。

見積書に月額の中身が書かれていない場合はどうすればよいですか?

保守・改修・相談がそれぞれ含まれるか、回数の上限はあるかを依頼先に質問し、答えを文書で残してもらってください。書かれていないまま契約すると、導入後に追加費用が出る原因になります。

一番安い見積もりを選んではいけないのですか?

同じ条件にそろえたうえで安いのであれば、選んで問題ありません。注意したいのは、作る範囲がせまかったり改修が含まれていなかったりして安く見えているケースです。

解約したときのデータの扱いは、なぜ確認が必要なのですか?

社内の資料やお客様の情報を扱う場合、やめるときに返してもらえるのか、削除してもらえるのかで、次の仕組みへの移りやすさと情報の安全性が変わるためです。契約前に確認し、文書で残しておくと安心です。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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