FAX・PDFで届く受注書の入力をAIで自動化する方法——手入力をなくす3ステップと注意点
結論
FAX・PDF・メールで届く受注書の入力は、AIに「1か所に取り込む→項目を読み取って入力する→自信のない項目だけ人に確認を頼む」の3つを任せることで自動化できます。全件を人が打ち直す作業が、AIの読み取り結果を確かめる作業に変わるため、当社の製造業(従業員30名規模)の導入事例では1日あたりの入力作業が2時間から15分になりました。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、FAXやPDFで届く受注書の入力をAIで自動化する方法について解説します。受注書の手入力は、多くの中小企業で毎日発生しているのに、担当者の経験と注意力に頼り切りになりやすい業務です。この記事では、AIで何をどこまで任せられるのか、どんな手順で入れるのか、導入でつまずきやすい点はどこかを、実際の導入事例をもとに説明します。
受注書の手入力で起きている3つの問題
受注書の入力が負担になる理由は、件数の多さだけではありません。多くの会社で、次の3つが同時に起きています。
- 届き方がバラバラ:同じ受注書でも、取引先ごとにFAX・メール添付のPDF・紙のスキャンなど形式が違い、書式もそろっていない
- 転記ミスが起きる:品番や数量の打ち間違いが出荷前の確認や手戻りを生み、確認のための作業がさらに増える
- 担当者が休むと止まる:入力のコツが担当者の頭の中にあり、休みや退職で入力が止まると出荷が遅れる
この3つは、人を増やしても解決しにくい問題です。担当者が増えるほど入力のばらつきが増え、確認の手間も増えるためです。
AIに任せられるのは「取り込み・読み取り・確認依頼」の3つ
受注書の入力をAIで自動化するとき、AIに任せる仕事は大きく3つに分かれます。
- 取り込み:FAX・メール・PDFで届いた受注書を、自動で1か所に集める
- 読み取り・入力:取引先名・品番・数量・納期などを読み取り、販売管理のシートやシステムに入力する
- 確認依頼:読み取りに自信がない項目だけ色を付けて、担当者に確認を依頼する
ポイントは3つ目です。AIの読み取りは書式や印字の状態によって間違えることがあるため、「全部をAIに任せきる」のではなく、「迷った箇所だけ人が見る」形にします。担当者の仕事は、全件の打ち直しから、色の付いた項目の確認に変わります。
ポイント
自動化の目的は「人が見なくてよくすること」ではなく、「人が見るべき箇所を絞ること」です。これにより、転記ミスと確認の手間を同時に減らせます。
導入事例:製造業(従業員30名規模)で入力作業が2時間から15分に
当社が支援した製造業(従業員30名規模)では、取引先からFAXやPDFで届く受注書を、事務担当が毎日手で入力していました。毎日数十件の受注書がFAX・メール・PDFとバラバラの形で届き、品番や数量の転記ミスによる手戻りや、担当者が休んだ日の出荷遅れが課題でした。
AI社員(事務担当)を導入し、上の3つの仕事を任せた結果、1日あたりの入力作業は2時間から15分になりました。担当者は、AIが色を付けた項目を確認して確定するだけになっています。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 受注書の集め方 | FAX・メール・PDFを担当者が個別に確認 | 自動で1か所に取り込み |
| 入力作業 | 全件を手で入力 | AIが入力し、迷った項目だけ人が確認 |
| 1日あたりの作業時間 | 2時間 | 15分 |
| 担当者が休んだ日 | 入力が止まる | 確認だけなので代わりの人でも対応できる |
自動化に向いている会社・向いていない会社
受注書入力の自動化は、次のような会社ほど効果が出やすくなります。
向いている会社のチェックリスト
- 受注をFAX・メール・PDFで受けている製造業・卸売業である
- 受注書の件数が毎日一定数ある
- 取引先ごとに書式が違い、入力のコツが担当者に偏っている
- 入力した内容を、販売管理のシートやシステムで管理している
反対に、受注の件数が月に数件しかない場合や、受注をすでにWebの発注システムで受けていてデータで届いている場合は、AIで読み取る必要がそもそもありません。その場合は、受け取ったデータを別のシステムへ連携する部分の自動化を検討するほうが効果的です。
導入の進め方と、つまずきやすい3つの点
導入は、次の順番で進めるとスムーズです。
- 今の受注書の届き方(FAX・メール・PDFの割合)と、入力先のシートやシステムを確認する
- よく届く取引先の受注書を集め、読み取る項目(取引先名・品番・数量・納期など)を決める
- AIの仕組みをつくり、実際の受注書で試運転して読み取り結果を確認する
- 確認ルール(どの項目に色を付けるか、誰が確認するか)を決めて本稼働する
つまずきやすい点1:最初から全取引先を対象にする
書式の多い取引先から順に対象を広げるほうが、試運転での確認が楽になり、早く効果が出ます。
つまずきやすい点2:確認のルールを決めずに始める
色の付いた項目を誰がいつ確認するかを決めておかないと、確認待ちが溜まり、結局入力が遅れます。
つまずきやすい点3:取引先の書式変更に気づけない
取引先が受注書の書式を変えると、読み取りの精度が落ちることがあります。導入後に調整できる体制(保守)があるかどうかを、依頼先を選ぶときに必ず確認してください。
よくある質問
手書きのFAXでもAIで読み取れますか?
手書きでも読み取れる場合がありますが、字の癖や印字のかすれによって精度は下がります。そのため、読み取りに自信がない項目だけ色を付けて人が確認する仕組みにしておくことが前提です。試運転で実際の受注書を使って確かめてから本稼働します。
今使っている販売管理システムを変える必要はありますか?
多くの場合、変える必要はありません。今使っているシートやシステムに入力する形でAIの仕組みをつくります。システムの種類によって連携の方法が変わるため、ヒアリングで確認します。
導入までどのくらいかかりますか?
受注書の入力のように1つの業務を自動化する場合、構築期間は2週間程度が目安です。取引先の数や書式の多さ、連携するツールによって変わります。
読み取りを間違えたまま入力されてしまうことはありませんか?
可能性はゼロではありません。そのため、確定前に人が確認する工程を残し、特に数量や品番など間違えると影響が大きい項目は確認対象にしておくことをおすすめします。