社内にエンジニアがいない会社はAI導入をどう進めるか——外部への頼み方・準備・依頼先選びのチェックリスト
結論
社内にエンジニアがいない会社でも、AIは導入できます。社内で担うのは「どの業務の、どの作業を減らしたいか」を決めて実際の書類や手順をそろえることで、仕組みづくりと導入後の調整は外部に任せるのが現実的です。依頼先は、業務を一緒に整理してくれるか、導入後に誰がどこまで直してくれるかで選びます。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、社内にエンジニアがいない会社がAI導入を外部に依頼する方法について解説します。「AIを使えば楽になりそうだが、社内に作れる人がいない」というご相談は、当社に寄せられるご相談の中でもとても多いものです。何を準備して、誰に、どう頼めばよいのかがわからず、話が進まないまま時間がたってしまうこともあります。この記事では、エンジニアがいない会社がAI導入を外部に頼むときの役割分担、依頼前に準備すること、依頼先を選ぶときのチェックリストを順に説明します。
エンジニアがいなくてもAI導入はできる:社内の役割は「業務を知っていること」
AIの仕組みをつくるには専門の知識が必要ですが、その部分は外部に任せられます。一方で、外部の会社がどうしても持っていないものがあります。それは、自社の業務の中身です。
どんな書類が、どこから、どのくらい届くのか。誰がどの順番で処理しているのか。どこで間違いが起きやすいのか。こうした情報は、毎日その業務をしている社員しか知りません。AI導入がうまくいくかどうかは、技術よりも、この業務の情報をどれだけ正確に伝えられるかで決まることが多いのです。
つまり、エンジニアがいない会社の役割は「作ること」ではなく、「何を減らしたいかを決めて、業務の実物を見せること」です。ここがはっきりしていれば、外部の会社は適切な仕組みを提案しやすくなります。
ポイント
「AIで何かできないか」という相談より、「毎日2時間かかっている受注書の入力を減らしたい」という相談のほうが、話が早く進み、効果も測りやすくなります。
AI導入を外部に頼む方法は大きく3つ
エンジニアがいない会社がAIを導入する方法は、大きく分けて次の3つがあります。
| 方法 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| 既製のAIツールを契約する | 業務が一般的で、ツールの使い方に業務を合わせられる会社 | 自社の書式や手順に合わない部分は、人が手直しすることになる |
| 開発会社に作ってもらう | 大きな仕組みを一度に作りたい会社 | 納品後の修正や調整が別料金・別契約になる場合が多い |
| 仕組みづくりと運用をまとめて任せる | 社内に直せる人がいない会社 | 月々の費用がかかる。対応範囲を契約で確認する |
どれが正解というわけではありません。大切なのは、導入した後に、業務の変化に合わせて誰が直すのかを決めておくことです。AIの仕組みは、取引先の書式が変わったり、使っているツールの仕様が変わったりすると、調整が必要になります。社内に直せる人がいない場合は、導入後の調整まで頼める形を選んでおくと安心です。
当社のAI社員は3つ目の形で、業務の整理から仕組みづくり、導入後の相談やメンテナンスまでをまとめてお引き受けしています。
依頼する前に社内で準備すること
外部に相談する前に、次のものを準備しておくと、話し合いがスムーズに進みます。完璧にそろっていなくても構いませんが、あるほど提案の精度が上がります。
- 減らしたい業務を1つ決める:最初から多くの業務を頼まず、一番困っている業務を1つに絞ります
- 今の手順を書き出す:「メールを開く→添付を印刷→シートに入力→上長に確認」のように、作業の流れを箇条書きにします
- かかっている時間と頻度をメモする:「1日2時間」「月に2日」など、おおよそで構いません。導入後の効果を確かめる基準になります
- 実物の書類やデータを集める:注文書、問い合わせメール、使っているシートなどの実例を数件用意します。個人情報は必要に応じて伏せます
- 使っているツールを一覧にする:メール、表計算、販売管理、チャットなど、業務で使っているツールの名前を書き出します
- 社内の担当者を決める:外部の会社とのやり取りや、試運転の確認をする人を1人決めます
特に大切なのは、4つ目の「実物」です。説明だけでは伝わらない書式のばらつきや例外が、実物を見ればすぐにわかります。
依頼先を選ぶときのチェックリスト
依頼先を比べるときは、価格だけでなく、次の点を確認してください。特に「導入後」に関する項目は、エンジニアがいない会社ほど重要です。
依頼先選びのチェックリスト
- 最初に業務の中身を詳しく聞いてくれるか(ツールの紹介から始まらないか)
- AIに任せる範囲と、人が確認する範囲を一緒に決めてくれるか
- 専門用語を使わずに説明してくれるか
- 小さく試してから広げる進め方を提案してくれるか
- 導入後の修正や調整は、誰が、どこまで、いくらで対応するのか明確か
- 連携しているツールの仕様が変わったときの対応が決まっているか
- 月々の費用と、AIの利用料などの実費の扱いがはっきりしているか
- 契約期間と、解約したときに仕組みやデータがどうなるか説明があるか
- 顧客情報などのデータをどこに保存し、どう扱うか説明があるか
- 新しい業務を追加したいときの相談方法と費用の考え方が明確か
これらの質問に、はっきりと答えてくれる会社であれば、導入後も安心して相談しやすいはずです。逆に、説明があいまいな点は、契約前に書面で確認しておきましょう。
依頼したあとの進め方と、社内で続けること
依頼先が決まったら、一般的には次のような流れで進みます。
- ヒアリング:業務の流れ、実物の書類、困っていることを外部の会社に伝えます
- 設計:AIに任せる範囲、人が確認する場面、使うツールを決めます
- 構築:外部の会社が仕組みをつくります
- 試運転:実際の書類で動かし、社内の担当者が結果を確認して、直してほしい点を伝えます
- 本番運用:問題がなければ通常の業務に組み込みます
- 見直し:運用しながら、気になる点を相談して調整していきます
当社の場合、構築期間は内容によって2週間程度から1か月程度が目安で、最短2週間で稼働できます。
導入後に社内で続けてほしいのは、「おかしいな」と思ったことを早めに伝えることです。読み取りの誤りが増えた、いつもと違う結果が出た、といった小さな変化は、業務を毎日見ている社員が一番早く気づけます。エンジニアがいなくても、気づいたことを伝えられれば、仕組みは改善していけます。
また、AIの結果を確認する担当者が、最初のうちは少し時間をかけて丁寧に見ることも大切です。試運転から本番の最初の数週間で、AIの誤りの傾向がわかれば、外部の会社に具体的な修正を頼めます。この時期を丁寧に過ごすと、その後の確認の手間が減っていきます。
エンジニアがいない会社がつまずきやすい点と避け方
当社がご相談を受ける中で、エンジニアがいない会社がつまずきやすい点には共通の傾向があります。事前に知っておくと、多くは避けられます。
最初から多くの業務をまとめて頼んでしまう
あれもこれもと一度に頼むと、要件が決まらないまま時間がたち、どの業務も中途半端になりがちです。最初は1業務に絞り、効果を確かめてから広げるほうが、結果的に早く進みます。
現場の担当者が話し合いに参加していない
経営者や管理職だけで依頼内容を決めると、実際の業務とずれた仕組みになることがあります。毎日その業務をしている担当者に、ヒアリングや試運転に参加してもらいましょう。担当者が納得していると、導入後も使われ続けやすくなります。
「全部自動」を目標にしてしまう
最初から人の確認をなくそうとすると、例外への対応が難しくなり、仕組みが複雑になります。まずは「人が一から作業していた部分をAIに任せ、人は確認する」形を目指すと、早く効果が出て、失敗も小さく済みます。
導入後の窓口が決まっていない
導入後に「おかしい」と気づいても、誰にどう伝えればよいかわからないと、そのまま放置されて使われなくなります。社内の担当者と、外部の会社の連絡先・連絡方法を、導入時に決めておいてください。
エンジニアがいないことは、AI導入をあきらめる理由にはなりません。業務を知っている社員と、仕組みを作れる外部の会社が役割を分ければ、無理なく進められます。
よくある質問
ITに詳しい社員が1人もいなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。必要なのはITの知識ではなく、自社の業務の流れを説明できることです。外部の会社とのやり取りを担当する人を1人決めておくと、スムーズに進みます。
何を頼めばよいかわからない段階で相談してもよいですか?
相談して構いません。その場合は、時間がかかっている作業や、ミスが起きやすい作業を挙げておくと、AIに向いている業務を一緒に絞り込みやすくなります。
依頼するときに、実際の書類を見せる必要がありますか?
見せていただくのがおすすめです。書式のばらつきや例外は実物を見ないとわからないことが多く、提案の精度が大きく変わります。個人情報は伏せた状態でも構いません。
導入した後に業務が変わったらどうなりますか?
AIの仕組みも調整が必要になります。誰がどこまで対応するかは依頼先によって違うため、契約前に確認してください。当社のAI社員は月5万円の中で相談とメンテナンスに対応しています。