はじめてのAI導入公開日

AIに任せる業務の洗い出し方——業務の棚卸しのやり方と優先順位の付け方

結論

AIに任せる業務を洗い出すには、まず社内の手作業を「誰が・何を・どのくらいの頻度と時間で行っているか」の一覧にし(業務の棚卸し)、そのうえで「かかっている時間」「手順の決まり具合」「間違えたときの影響の小ささ」の3つで点数を付けて優先順位を決めるのが確実です。思いつきではなく一覧から選ぶことで、効果が出やすく失敗しにくい業務から順番に取り組めます。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AIに任せる業務の洗い出し方と優先順位の付け方について解説します。「AIに何を任せればいいのかわからない」と感じる理由の多くは、社内の業務が一覧になっていないことにあります。毎日の仕事は担当者ごとに分かれていて、経営者や管理職からは全体が見えにくいものです。この記事では、AIに任せる業務を見つけるための「業務の棚卸し」のやり方と、見つかった業務に優先順位を付ける方法を、具体的な表やチェックリストを使って説明します。

AIに任せる業務は「思いつき」ではなく「一覧」から選ぶ

AIの導入を考えるとき、「問い合わせ対応にチャットボットを入れたい」「議事録をAIで作りたい」というように、思いついた業務から手をつけることがよくあります。それ自体は悪いことではありませんが、次のような失敗につながることがあります。

  • 実は時間がかかっていない業務を選んでしまう:目立つ業務でも、件数が少なく、自動化しても効果が小さい
  • もっと大きな手間を見逃す:担当者が黙々とこなしている入力や転記の作業が、実は一番時間を取っている
  • 判断が多い業務を選んでしまう:毎回の判断が必要な業務を選び、AIに任せられる部分が少なくて効果が出ない

こうした失敗を避けるには、まず社内の業務を一覧にする「業務の棚卸し」を行うことです。業務の棚卸しとは、社内でどんな仕事が、誰によって、どのくらいの時間をかけて行われているかを書き出して整理することです。一覧ができれば、AIに任せる業務を比べて選べるようになります。

業務の棚卸しのやり方:5つの手順

業務の棚卸しは、次の5つの手順で進めます。大がかりな調査は必要なく、各部署の担当者に協力してもらえば進められます。

  1. 対象の部署と担当者を決める:最初から全社で行わず、事務、営業、現場の管理など、手作業が多そうな部署から始める
  2. 担当者に仕事を書き出してもらう:1〜2週間の間に行った仕事を、担当者にできるだけ細かく書き出してもらう。毎日・毎週・毎月の仕事を分けると漏れが減る
  3. 頻度と時間を記入する:それぞれの仕事が、どのくらいの頻度で発生し、1回にどのくらいの時間がかかっているかを記入する。正確でなくても、おおよその目安で構わない
  4. 使っている道具と流れを記入する:メール、FAX、紙、シート、業務システムなど、何を見て、何に入力しているかを書く
  5. 困っていることを聞く:「ミスが起きやすい」「この人しかできない」「月末に集中する」など、担当者が感じている困りごとを書き添える

書き出すときのコツは、「経理業務」のような大きなくくりではなく、「取引先から届いた請求書の内容を会計ソフトに入力する」のように、動作がわかる単位で書くことです。この細かさで書くと、どの部分をAIに任せられるかが見えやすくなります。

棚卸しの一覧に入れる項目と記入例

棚卸しの一覧は、表計算のシートで作れば十分です。次のような項目を用意しておくと、後で優先順位を付けやすくなります。下の表は記入のしかたの例で、内容は架空のものです。

業務担当頻度1回の時間の目安使っているもの困っていること
FAXで届く注文書を販売管理シートに入力する事務毎日まとまった時間がかかるFAX、シート転記ミス、担当者が休むと止まる
問い合わせメールに初回の返信をする営業毎日1件ごとに少しメール外出中は返信が遅れる
月末に請求書を作って送る経理毎月月末に集中会計ソフト、メール送り漏れの心配
現場の日報をまとめて週報を作る現場責任者毎週半日近くかかることもチャット、シート読み切れない

実際の一覧では、1回の時間は「15分」「1時間」のように数字で書いておくと、比べやすくなります。また、頻度と1回の時間をかけ合わせて「1か月あたりの時間」を出しておくと、どの業務が多くの時間を使っているかが一目でわかります。

ポイント

棚卸しの目的は、正確な時間を測ることではなく、業務どうしを比べられるようにすることです。最初はおおよその数字で構いません。

優先順位は「時間・手順の決まり具合・ミスの影響」の3つで付ける

一覧ができたら、それぞれの業務に点数を付けて、AIに任せる順番を決めます。おすすめは、次の3つの観点で1〜3点を付け、合計点の高い業務から検討する方法です。

観点3点2点1点
かかっている時間1か月あたりの時間が特に多いある程度かかっているほとんどかかっていない
手順の決まり具合毎回ほぼ同じ手順で、人に説明できる例外はあるが、基本の手順はある毎回判断が必要で、手順を説明しにくい
間違えたときの影響の小ささ人が確認すれば気づけて、影響が小さい影響はあるが、確認の工程で防げる間違えると取り返しがつきにくい

3つ目の観点は「影響が小さいほど点数が高い」ことに注意してください。最初の業務は、AIが間違えても人の確認で気づける業務を選ぶのが安全です。

合計点が同じくらいの業務が並んだときは、次の点も参考にします。

  • 担当者が1人しかおらず、休むと止まる業務を優先する
  • 扱うデータがすでにメールやシートなど、データの形になっている業務を優先する
  • 個人情報やお金の動きに直接かかわる業務は、2つ目以降に回す

点数を付けるときは、担当者1人だけで決めず、その業務の担当者と管理者の2人以上で話し合うのがおすすめです。担当者は手順の細かさや困りごとをよく知っており、管理者は間違えたときの影響の大きさを判断しやすい立場にあります。両方の目線で点数を付けることで、「担当者は楽になるが会社としては危ない」「会社としては効果が大きいが現場の手順が複雑すぎる」といった見落としを防げます。

AIに任せにくい業務と、棚卸しでつまずきやすい点

棚卸しの一覧の中には、AIに任せにくい業務も必ず含まれています。次のような業務は、無理にAIの対象にせず、人が担当し続けるか、一部だけを補助してもらう形を考えましょう。

AIに任せにくい業務のチェックリスト

  • お客様や取引先との交渉、謝罪など、人の判断や気持ちが大切な業務
  • 毎回状況が違い、手順を言葉で説明できない業務
  • 間違えたときに、法令や安全、お金の面で大きな影響が出る業務
  • 発生する頻度が少なく、自動化しても効果が小さい業務
  • もとになる情報が紙や口頭にしかなく、データになっていない業務

ただし、こうした業務でも「資料を集める」「下書きを作る」「記録を整理する」といった周辺の作業はAIに任せられることがあります。業務をまるごと任せるかどうかではなく、業務の中のどの作業を任せるかという目線で見ることが大切です。

つまずきやすい点1:担当者が協力してくれない

「自分の仕事がなくなるのでは」と不安に感じる担当者もいます。棚卸しの目的は、手間のかかる作業を減らして、人にしかできない仕事に時間を使えるようにすることだと、最初に伝えておきましょう。

つまずきやすい点2:一覧づくりで止まってしまう

完璧な一覧を作ろうとすると、いつまでも次に進めません。手作業の多い部署から始めて、優先度の高い業務が見つかったら、その時点で1つ試してみるのがおすすめです。

選んだ業務を小さく試し、一覧を見直しながら広げる

優先順位が決まったら、一番上の業務を1つだけ選び、小さく試してみます。進め方は次のとおりです。

  1. 選んだ業務の流れを、担当者と一緒にもう一度細かく確認する
  2. AIに任せる作業と、人が確認する作業の線を引く
  3. 実際のデータで試運転し、今のやり方と並行して結果を比べる
  4. 効果を確かめたら本稼働し、棚卸しの一覧に結果を書き込む
  5. 一覧の次の業務に進む

当社の導入事例でも、こうして選んだ1つの業務から効果が出ています。たとえば製造業(従業員30名規模)では受注書の入力が1日2時間から15分に、不動産(従業員15名規模)では問い合わせへの初回返信が半日から10分に、介護(職員50名規模)では毎月のシフト作成が2日から半日になりました。いずれも「毎日・毎月くり返していて、手順がある程度決まっている業務」です。

当社のAI社員では、ご相談の段階で業務の棚卸しと優先順位づけもお手伝いしています。社内に詳しい人がいなくても、担当者へのヒアリングをもとに一覧を作り、最初に任せる業務を一緒に決められます。料金は初期費用+月5万円で、本稼働後の調整や、次の業務についての相談にも回数の制限なく対応しています。

よくある質問

業務の棚卸しにはどのくらいの期間がかかりますか?

部署の規模や業務の数によって変わりますが、手作業の多い部署に絞れば、担当者に1〜2週間分の仕事を書き出してもらうところから始められます。全社を一度に行うより、部署ごとに進めるほうが早く次の段階に進めます。

1回の作業時間が正確にわからなくても大丈夫ですか?

大丈夫です。棚卸しの目的は業務どうしを比べることなので、おおよその目安で十分です。気になる業務だけ、後で実際に時間を測って確かめましょう。

優先順位の高い業務が複数あるときはどうすればよいですか?

担当者が1人しかいない業務や、扱うデータがすでにメールやシートになっている業務を先にすると、効果が出やすく試運転もしやすくなります。それでも迷う場合は、間違えたときの影響が小さいほうから始めるのが安全です。

棚卸しは自社だけでやるべきですか?

自社だけでも進められますが、どの作業がAIに任せられるかの見極めは、外部の視点があると早くなります。当社ではご相談の段階で、ヒアリングをもとにした業務の洗い出しと優先順位づけをお手伝いしています。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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