経費精算・領収書の入力をAIで効率化する方法——読み取りから仕訳案、差し戻しの連絡まで
結論
経費精算と領収書の入力は、AIに「領収書の写真やPDFから日付・金額・支払先を読み取る」「勘定科目の案を付ける」「社内の精算ルールに合っているかを照合する」「不足や誤りを申請者に知らせる」までを任せ、承認と最終確認は人が行う形にすると効率化できます。保存の方法は電子帳簿保存法などの決まりに沿う必要があるため、国税庁の最新の情報を確認しながら運用を決めることが大切です。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、経費精算・領収書の入力をAIで効率化する方法について解説します。経費精算は、社員にとっては面倒な申請、経理担当にとっては細かい確認と入力の繰り返しになりやすい業務です。月末に領収書がまとめて届き、記入漏れの確認や差し戻しに追われている会社も多いのではないでしょうか。この記事では、経費精算のどこをAIに任せられるか、導入の手順、電子帳簿保存法を含めた注意点を説明します。
経費精算に時間がかかるのは「入力」と「確認・差し戻し」
経費精算の手間は、大きく分けると次の2つに集まっています。
- 入力の手間:領収書を見ながら、日付・金額・支払先・用途を1件ずつ入力する。紙の領収書、PDF、メールで届く電子の領収書など、形がばらばらで整理にも時間がかかる
- 確認と差し戻しの手間:用途の記入漏れ、金額の転記ミス、社内ルールに合わない申請(上限を超えた交通費、事前承認が必要な支出など)を見つけて、申請者に問い合わせる
特に差し戻しは、経理担当と申請者のあいだで何度もやり取りが発生し、締め日の直前に集中しがちです。申請者も外出や現場作業の合間に対応するため、返事が遅れて月次の締めが遅れる原因にもなります。
こうした作業の多くは、「決まったルールに照らして、情報を読み取り、整え、確認する」仕事です。これはAIが得意とする種類の作業で、人の確認と組み合わせることで大きく効率化できます。
AIに任せられる4つの仕事
経費精算でAIに任せられる仕事は、主に次の4つです。
- 領収書の読み取り:写真・スキャン・PDFの領収書から、日付・金額・支払先・税率ごとの金額などを読み取って一覧にする
- 勘定科目の案:支払先や用途から、旅費交通費・会議費・消耗品費などの勘定科目の案を付ける
- 社内ルールとの照合:金額の上限、事前承認の有無、用途の記入など、社内の精算ルールに合っているかを確認する
- 不足や誤りの連絡:用途が書かれていない、領収書の画像が読めないなどの場合に、申請者への確認の文面を作って知らせる
最終的な承認と、仕訳の確定は人が行います。AIの読み取りには誤りが起きることがあり、また用途の妥当性のように、状況を知っている人でなければ判断できないこともあるためです。
ポイント
AIに「おかしいかもしれない申請」に印を付けさせ、人はそこを重点的に確認する、という分担にすると、すべてを同じ細かさで見る必要がなくなり、確認の時間を大きく減らせます。
AI導入前と導入後の経費精算の流れ
AIを入れると、経費精算の流れは次のように変わります。
| 工程 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 領収書の提出 | 紙を回収、またはメールでばらばらに届く | 写真やPDFを決まった場所に送るだけ |
| 入力 | 経理担当が1件ずつ手で入力 | AIが読み取って一覧に入力し、人は確認する |
| 勘定科目 | 担当者が毎回判断 | AIが案を付け、人が確認・修正する |
| ルールの確認 | 担当者が目で確認 | AIがルールに合わない申請に印を付ける |
| 差し戻し | 担当者が個別に連絡 | AIが確認の文面を作り、担当者が確認して送る |
| 承認・確定 | 人 | 人(変わらない) |
受注書の入力を自動化した当社の事例でも、AIが読み取って入力し、人が確認する形にしたことで、製造業(従業員30名規模)の事務担当の受注書入力が1日2時間から15分になりました。経費精算も「紙やPDFから読み取って入力する」という点で同じ種類の仕事のため、同じ考え方で効率化を進められます。
電子帳簿保存法を踏まえた保存の考え方
経費精算をデジタル化するときに必ず確認したいのが、電子帳簿保存法(帳簿や領収書などを電子データで保存するときのルールを定めた法律)です。一般的には、次のような点が論点になります。
- 電子で受け取った領収書や請求書:メールやWebサイトで受け取った電子の領収書などは、電子データのまま保存することが求められる場合があります
- 紙の領収書をスキャンして保存する場合:スキャンした画像で保存するには、解像度や読み取りまでの期間、検索できる状態での保存など、満たすべき要件があります
- 検索できるようにしておくこと:取引の日付・金額・取引先などで探せる状態にしておくことが求められる場合があります
要件の詳細や、事業者の規模などによる取り扱いの違いは、改正によって変わることがあります。具体的な保存方法を決めるときは、国税庁が公開している最新の情報を確認し、必要に応じて顧問の税理士にご相談ください。
AIは、読み取った日付・金額・取引先を一覧にし、ファイル名や保存先を決まったルールで整えるといった作業を手伝えます。ただし、その運用が法律の要件を満たしているかどうかの判断は、AIに任せず人が行います。インボイス制度(適格請求書等保存方式)に関わる登録番号の確認なども、AIで読み取りを補助しつつ、最終確認は人が行う形をおすすめします。
導入の手順と、事前に決めておくこと
経費精算のAI化は、次の順番で進めると無理がありません。
- 今の流れを書き出す:誰が、何で、いつ申請し、誰が確認・承認しているかを整理する
- 精算ルールを文章にする:上限金額、事前承認が必要な支出、必要な記入事項などを書き出す
- 提出の方法を1つにそろえる:領収書の写真やPDFを送る場所を決める
- 読み取りと入力から始める:まずはAIの読み取り結果を人が全件確認する
- 照合と差し戻しの連絡へ広げる:読み取りが安定したら、ルールとの照合や確認の連絡も任せる
事前に決めておくこと
- 精算ルール(上限金額、事前承認の要否、必要な記入事項)が文章になっているか
- 領収書の提出方法と締め日が社内に共有されているか
- 保存の方法が電子帳簿保存法などの要件に沿っているかを、最新の情報で確認したか
- 承認者と、最終確認をする人が決まっているか
- 会計ソフトへの取り込み方法(CSVなど)を確認したか
ルールが担当者の頭の中にしかない状態では、AIは正しく照合できません。ルールを書き出す作業そのものが、経費精算の属人化を解消することにもつながります。
運用で気をつけること
読み取り結果は必ず人が確認する
かすれた感熱紙の領収書や手書きの領収書は、読み取りを誤ることがあります。特に金額と日付は、人の目で確認してから確定する運用にします。
個人の情報と社外の情報の扱いを決める
領収書には、取引先の名前や個人の行動がわかる情報が含まれます。入力したデータがAIの学習に使われない法人向けのサービスや設定を選び、閲覧できる人を限定します。
ルールの変更をAIに反映する
上限金額や社内ルールを変えたときは、AIが参照するルールも必ず更新します。古いルールのままだと、誤った照合結果が出てしまいます。
当社のAI社員では、こうしたルールの更新や調整も月額(月5万円、別途初期費用・AI利用料は実費)の中で対応しています。経費精算だけでなく、請求書や受注書の入力など、同じ種類の事務作業とあわせて任せることもできます。
よくある質問
手書きの領収書もAIで読み取れますか?
多くの場合は読み取れますが、文字がかすれていたり崩れていたりすると誤ることがあります。金額と日付は人が確認してから確定する運用をおすすめします。
AIを使えば電子帳簿保存法に対応できますか?
AIは読み取りや整理、検索しやすい形での保存を手伝えますが、それだけで要件を満たすとは限りません。保存の方法は国税庁の最新の情報を確認し、必要に応じて税理士にご相談ください。
今使っている会計ソフトはそのまま使えますか?
多くの場合、AIが作った一覧をCSVなどで会計ソフトに取り込む形にでき、今のソフトを使い続けられます。取り込みの方法はソフトによって変わるため、ヒアリングで確認します。
勘定科目の判断までAIに任せても大丈夫ですか?
AIは過去の仕訳や支払先をもとに案を出せますが、迷いやすい支出もあるため、最終的な確定は経理担当や税理士が行う形が安全です。