新しい取引先の下調べをAIで効率化するには?——公開情報を一覧にまとめる流れと、AIだけで決めてはいけない確認
結論
新しい取引先の下調べは、AIに「会社の公式サイトや公的なデータベースなどの公開情報を集める→決まった項目の一覧にまとめる→気になる点に印をつける」までを任せ、人は一次情報(登記や会社自身の発表など、元の情報)での確認と、取引してよいかの判断を受け持つ形にすると、効率よく進められます。AIが調べた内容には古い情報や同じ名前の別の会社の情報が混ざることがあるため、そのまま使わず必ず元の情報で確かめてください。与信判断(代金を払ってもらえるかの見極め)や反社会的勢力かどうかの確認は、AIの調べだけで決めず、信用調査の専門会社や社内で決めた手順を使います。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、取引開始前・商談前に新しい取引先の基本情報・事業内容・最近のニュース・評判を、公開情報からAIで調べて一覧にまとめる方法と、人が確かめるべきことについて解説します。新しいお客様から問い合わせが来た、紹介で初めての会社と商談することになった、新しい仕入れ先や外注先と取引を始めたい。そんなとき、相手がどんな会社なのかを調べる作業が発生します。会社のホームページを見て、所在地や設立年を確かめ、最近のニュースを検索し、評判を調べる。1社あたりは短い時間でも、営業や総務の担当者が何社分も行うと、意外に手間がかかります。しかも、担当者によって調べる項目がばらばらで、上司が「この会社、大丈夫なのか」と聞いても答えがそろわない、ということも起こりがちです。この記事では、取引開始前や商談前の下調べのうち、AIに任せられる部分と人が決める部分の分け方、公開情報から一覧にまとめる流れ、AIが調べた内容の確かめ方、そして与信判断や反社会的勢力の確認をAIの調べだけで決めてはいけない理由を説明します。営業先の候補を集める「営業リスト作り」とは違い、ここでは相手が決まった後の「1社をきちんと調べる」作業に絞ってお伝えします。
取引先の下調べに時間がかかるのは「調べる場所がばらばら」で「項目が決まっていない」から
取引先の下調べは、1か所を見れば終わる作業ではありません。会社の基本情報、事業内容、最近の動き、評判は、それぞれ別の場所に載っています。次の表は、調べる項目と、主に見る公開情報の例です。
| 調べる項目 | 主に見る公開情報 | 何のために見るか |
|---|---|---|
| 正式な会社名・所在地 | 国税庁の法人番号公表サイト、会社の公式サイト | 実在する会社か、名前と住所が合っているか |
| 代表者・設立・資本金 | 会社の公式サイトの会社概要、登記事項証明書(法務局で取れる会社の記録) | 会社の規模と歴史の目安 |
| 事業内容・主な取引先 | 公式サイトの事業紹介、導入事例、パンフレット | 自社の商品やサービスとの関係、商談で話すこと |
| 最近のニュース | 会社のお知らせ・プレスリリース、新聞や業界紙の記事 | 新しい事業、移転、組織の変更などの動き |
| 採用や拠点の動き | 求人情報、公式サイトの拠点一覧 | 事業が広がっているか、人が足りていないか |
| 評判・トラブル | 報道、行政の公表情報、口コミ | 気をつけるべき点がないか |
これらを毎回、担当者が一つずつ検索し、ブラウザのタブを行き来しながらメモにまとめていると、1社に思った以上の時間がかかります。さらに、担当者によって「見る項目」と「まとめ方」が違うと、上司が判断するときに比べられません。下調べを効率化する第一歩は、AIを使う前に「何を調べて、どの形でまとめるか」を決めることです。
ポイント
下調べの目的によって、調べる深さは変わります。商談前なら「事業内容と最近の動き」が中心、取引開始前なら「会社の実在と基本情報」、継続的な取引や大きな金額の取引なら「支払い能力や問題の有無」まで必要になります。目的ごとに項目を分けておくと、調べすぎも調べ漏れも減ります。
AIに任せるのは「集める・まとめる・印をつける」、人が受け持つのは「確かめる・決める」
取引先の下調べでAIが得意なのは、あちこちの公開情報を読み、決まった項目に沿って短くまとめる作業です。一方、その情報が正しいかを元の情報で確かめることと、取引してよいかを決めることは、人が受け持ちます。
| 工程 | AIに任せること | 人が受け持つこと |
|---|---|---|
| 集める | 公式サイト・公的なデータベース・ニュースなど、決めた情報源から情報を読む | どの情報源を使ってよいかを決める |
| まとめる | 決まった項目の一覧(会社カード)に整理し、情報源のページを添える | 項目と形を決める |
| 印をつける | 名前や住所の食い違い、更新が止まったサイト、気になる報道などに印をつける | 印のついた点を深く調べるかを決める |
| 確かめる | 確かめが必要な項目の一覧を出す | 一次情報で事実を確かめる |
| 決める | 商談で聞くこと・確かめることの候補を出す | 取引の可否、条件、社内の承認 |
大切なのは、AIに「この会社は大丈夫か」と判断させないことです。AIにできるのは、公開されている情報を集めて整理し、気になる点を目に見える形にするところまでです。AIが「問題は見つかりませんでした」と答えても、それは「AIが読んだ範囲では見つからなかった」という意味にすぎません。
公開情報から取引先の一覧(会社カード)を作る流れ
下調べの結果は、1社ごとに同じ形の「会社カード」にまとめると、比べやすく、後から見返すときも便利です。次の手順で進めます。
- 会社名と分かっている情報を入れる:会社名、ホームページのアドレス、担当者からもらった名刺の情報など、手元にある情報をAIに渡す
- 会社を特定する:同じ名前や似た名前の会社が多いため、所在地や法人番号(国が会社ごとにつけている13けたの番号)で、調べる会社を1社に決める
- 決めた情報源から集める:公式サイト、法人番号公表サイト、会社のお知らせ、ニュースなど、社内で決めた情報源をAIが読む
- 会社カードにまとめる:項目ごとに要点を書き、それぞれに情報源のページと、情報の日付を添える
- 気になる点に印をつける:食い違いや、確かめが必要な点をまとめて書き出す
- 担当者が確かめて仕上げる:印のついた点を一次情報で確かめ、商談や社内の承認に使う
会社カードの項目の例
| 欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 正式な会社名、法人番号、所在地、代表者、設立、従業員数の目安(公表されている場合) |
| 事業内容 | 主な商品・サービス、お客様の業種、強みとして本人が打ち出していること |
| 最近の動き | 直近のお知らせやニュースを日付つきで3件程度 |
| 自社との関係 | 自社の商品やサービスが役に立ちそうな点、過去の取引の有無 |
| 気になる点 | 情報の食い違い、古い情報、確かめが必要なこと |
| 商談で聞くこと | 公開情報では分からず、相手に直接確かめたいこと |
| 情報源と調べた日 | 参照したページの一覧と、調べた日付 |
「情報源と調べた日」の欄は省かないでください。どこから取った情報かが分かれば、担当者は元のページを開いてすぐに確かめられます。また、会社の情報は変わるため、いつ調べたものかが分からないカードは、時間がたつと使えなくなります。
営業先の候補を条件で集めて並べる作業は「営業リストの作成をAIで効率化する方法」の記事で、相手企業に合わせて営業メールを書く作業は「企業ごとに内容を変えた営業メールをAIで作る方法」の記事で説明しています。会社カードは、そうした営業活動の土台としても使えます。
AIが調べた内容は、必ず一次情報で確かめる
AIは、読んだ情報を上手にまとめる一方で、次のような間違いを起こすことがあります。会社カードをそのまま信じず、ここに挙げた点を一次情報(登記や会社自身の発表など、情報のおおもと)で確かめてください。
| 起こりやすい間違い | 例 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 同じ名前の別の会社と混ざる | 別の地域の同名の会社のニュースが入る | 法人番号と所在地で、同じ会社かを確かめる |
| 古い情報のまま | 移転前の住所、交代前の代表者が書かれる | 公式サイトの最新の会社概要、登記事項証明書で確かめる |
| それらしい内容を補う | 載っていない従業員数や売上を書いてしまう | 情報源のページに本当にその記述があるかを開いて確かめる |
| 口コミを事実のように書く | 個人の書き込みを会社の評判として要約する | 報道や公的な発表など、出どころがはっきりした情報と分けて扱う |
会社カードを使う前のチェックリスト
- 法人番号と所在地で、調べたい会社と同じ会社だと確かめた
- 会社名・所在地・代表者は、公式サイトや登記事項証明書などで確かめた
- 数字(資本金・従業員数など)は、情報源のページに実際に書かれていることを確かめた
- ニュースは日付と出どころを確かめ、古いものや別の会社のものが混ざっていない
- 口コミや個人の書き込みは、事実と区別して書いている
- AIが「要確認」とした項目を、すべて確かめた
AIに指示するときに「情報源のページにない内容は書かない」「見つからない項目は空欄にして『未確認』と書く」と決めておくと、それらしい補いを減らせます。それでも間違いはゼロにはならないため、確かめる作業は残ります。AIで減らすのは「探す・まとめる」時間で、「確かめる」責任は人に残る、と考えてください。
与信判断と反社会的勢力の確認は、AIの調べだけで決めない
取引先の下調べの中でも、次の2つは会社として大きな責任がともなうため、AIの調べだけで決めてはいけません。
与信判断(代金を払ってもらえるかの見極め)
掛け売り(後払い)で取引する場合や、大きな金額の取引をする場合は、相手が代金を払えるかを見極める必要があります。これを与信判断といいます。公式サイトやニュースからは、会社の支払い能力までは分かりません。AIが「業績は好調のようです」とまとめても、それは公開されている明るい話題を拾っただけかもしれません。与信判断には、信用調査の専門会社の調査、決算書の確認、社内で決めた取引の上限や承認の手順を使ってください。
反社会的勢力かどうかの確認
取引を始める前に、相手が反社会的勢力(暴力団など)と関係がないかを確認することは、多くの会社で手順として定められています。各都道府県の条例などで、契約時の確認や契約書への条項(反社会的勢力ではないことを約束する条項)が求められる場合もあります。この確認は、ネット検索やAIのまとめだけでは十分ではありません。専門の調査サービスやデータベース、業界団体や警察への相談窓口など、社内で決めた手順に沿って行ってください。具体的な義務や手順は地域や業種によって異なる場合があるため、最新の情報は公式サイトや専門家に確認してください。
| 確認すること | AIにできること | 使うべきもの |
|---|---|---|
| 会社の基本情報・事業内容 | 公開情報を集めて一覧にまとめる | AIのまとめ+一次情報での確認 |
| 最近の動き・評判 | ニュースを日付つきで集め、気になる点に印をつける | AIのまとめ+出どころの確認 |
| 支払い能力(与信) | 確かめるべき点の候補を出す | 信用調査の専門会社、決算書、社内の承認手順 |
| 反社会的勢力との関係 | 社内手順の書類の準備を手伝う | 専門の調査サービス、社内で決めた確認手順、契約書の条項 |
ポイント
AIは「調べる手間を減らす道具」であって、「取引してよいと保証する仕組み」ではありません。会社カードは判断の材料として使い、最終的な判断と承認は、社内の決まった担当者が行う形にしてください。
取引先の下調べをAIで効率化する始め方
営業・総務の責任者が最初に決めておくと、部署全体で同じ質の下調べができるようになります。
- 下調べの目的ごとに項目を決める:商談前、取引開始前、大きな金額の取引前で、調べる項目と深さを分ける
- 使ってよい情報源を決める:公式サイト、法人番号公表サイト、ニュースなど、AIに読ませる情報源と、使わない情報源(利用規約で禁止されているサイトなど)を決める
- 会社カードの形と指示文を作る:項目、情報源と日付の書き方、「見つからない項目は未確認と書く」などの決まりを指示文にする
- 数社で試して、人が直した点を反映する:AIのまとめと、担当者が確かめて直した箇所を見比べ、指示文を直す
- 確認と承認の手順につなげる:与信や反社会的勢力の確認など、AIのまとめの後に必ず通す手順を決めておく
始める前に確認したいこと
- 下調べの目的ごとの項目と深さが決まっている
- AIに読ませる情報源と、使わない情報源が決まっている
- 会社カードに情報源と調べた日を必ず残す決まりがある
- 与信判断と反社会的勢力の確認は、別の手順で行うことが明記されている
- 会社カードの保存場所と、更新する時期が決まっている
汎用のAIでも、1社ずつ会社名を入れて調べさせることはできます。一方で、「問い合わせが来たら自動で会社カードを作りたい」「顧客台帳や案件一覧に会社カードをつなげたい」「定期的に取引先の最近の動きを確かめたい」という段階になると、自社の業務に合わせた仕組みが必要になります。当社のAI社員は、社内で決めた項目と情報源に沿って会社カードの下書きを作り、確かめが必要な点に印をつける仕組みづくりから、運用しながらの調整までをお引き受けしています。料金は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。与信や反社会的勢力の確認の手順そのものを置き換えるものではなく、その前の「調べてまとめる」時間を減らすための仕組みとしてご相談ください。
よくある質問
新しい取引先の下調べをAIで効率化するには、何から始めればよいですか?
まず、商談前・取引開始前など目的ごとに、調べる項目とまとめる形(会社カード)を決めることから始めます。そのうえで、AIに公開情報を集めて一覧にまとめさせ、人が一次情報で確かめる流れを数社で試してください。
AIで調べた取引先の情報は、そのまま信用してよいですか?
そのまま信用せず、法人番号・所在地・代表者・数字などは公式サイトや登記事項証明書などの一次情報で確かめてください。AIは同じ名前の別の会社の情報を混ぜたり、古い情報や載っていない内容を書いたりすることがあります。
取引先の与信調査や反社チェックはAIでできますか?
AIの調べだけで決めることはできません。AIは公開情報を集めて気になる点に印をつけるところまでに使い、与信判断は信用調査の専門会社や決算書・社内の承認手順、反社会的勢力の確認は専門の調査サービスや社内で決めた手順で行ってください。
商談前の企業調査にAIを使うと、どんなことが分かりますか?
会社の基本情報、事業内容、最近のお知らせやニュース、採用や拠点の動きなど、公開されている情報を短時間で一覧にできます。公開情報で分からないことを「商談で聞くこと」として書き出させると、商談の準備にもそのまま使えます。