応募書類(履歴書・職務経歴書)の確認と書類選考の下準備をAIで効率化するには?——条件との照合・要約・面接で聞くことの候補づくり
結論
応募書類の確認は、AIに履歴書・職務経歴書を読ませ、募集で決めた必須条件を満たしているかの照合、経歴の要約、面接で確かめたいことの候補を作らせることで効率化できます。AIが作るのは書類選考の「下準備」までで、合否は必ず人が決めます。あわせて、AIに見させない項目と判断の基準を事前に決めておくことが、公正な選考のために欠かせません。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、応募書類(履歴書・職務経歴書)の確認と書類選考の下準備をAIで効率化する方法について解説します。採用担当は一人か二人、ほかの仕事と兼任。それなのに求人を出すと応募が一度に何十件も届き、一通ずつ書類を読んでいるうちに返事が遅れ、よい候補者がほかの会社に決まってしまう。中小企業の採用担当の方から、こうしたお悩みを伺います。書類を読む時間を減らしたい一方で、人を選ぶ仕事をAIに任せてよいのか、不安に思う方も多いはずです。この記事では、応募書類の確認と書類選考の下準備のうち、AIに任せられる部分と人が持つべき部分を分け、公正さと個人情報に配慮した進め方を説明します。応募者への連絡や面接の日程調整については「採用の応募者対応と面接の日程調整をAIで効率化する方法」の記事で扱っています。
書類選考で時間がかかるのは「読む・照らし合わせる・まとめる」作業
書類選考の時間の多くは、合否を決める瞬間ではなく、その前の作業に使われています。応募書類1通に対して、採用担当は次のような作業をしています。
- 読む:履歴書と職務経歴書を読み、どんな経験を積んできた人かをつかむ。書式は人によってばらばらで、必要な情報を探すのに時間がかかる
- 照らし合わせる:募集で求めている資格、経験年数、経験した業務などの条件を満たしているかを確かめる
- まとめる:面接官や現場の責任者に見せるために、経歴の要点をまとめ直す
- 準備する:書類で分からなかった点や、確かめたい点を面接の質問として書き出す
応募が少なければ丁寧に読めますが、応募が多い時期や、採用担当が兼任の会社では、この作業が追いつかなくなります。その結果、返事が遅れたり、読む人によって見る点がばらついたりします。
これらの作業のうち、「読む」「照らし合わせる」「まとめる」「準備する」は、文書を読んで整理する作業で、AIが得意とするところです。一方、「この人と一緒に働きたいか」「面接に呼ぶか」を決めるのは、職場を知っている人の仕事です。
AIに任せられる下準備と、人が決めることの分け方
書類選考をAIで効率化するときは、AIに任せる作業と人が決めることを、次のように分けます。
| 作業 | AIに任せること | 人が決めること |
|---|---|---|
| 必須条件との照合 | 資格・経験年数・経験業務など、募集で決めた必須条件を満たしているかを、書類の該当箇所とともに示す | 条件の決め方、書類から読み取れない場合の扱い |
| 経歴の要約 | 職歴・経験業務・資格などを、決めた形の要約にそろえる | 要約を読んで、面接に呼ぶかを判断する |
| 歓迎条件の整理 | あれば望ましい経験が書類のどこに書かれているかを抜き出す | 歓迎条件をどのくらい重く見るか |
| 確認したいことの候補 | 経歴の空白、条件に近いが判断がつかない点など、面接で確かめたいことの候補を挙げる | 実際に聞く質問を選ぶ |
| 合否・順位 | 任せない | 人が決める |
ここで大切なのは、AIに点数をつけさせたり、合否や順位を決めさせたりしないことです。AIの判定には、なぜその結論になったのかが分かりにくいことがあり、過去のデータの偏りを引き継ぐおそれもあります。AIには「条件を満たしているか」「書類のどこに何が書いてあるか」という事実の整理を任せ、評価と判断は人が行う形にします。
ポイント
AIの照合結果には、必ず「書類のどこにそう書いてあるか」を添えさせます。根拠が見えれば、採用担当はその箇所だけを確かめればよく、AIの読み違いにもすぐ気づけます。
公正な選考のために、AIに見させない項目を決める
採用選考では、本人の適性や能力と関係のない事柄で判断しないことが求められます。厚生労働省は「公正な採用選考」の考え方を示しており、たとえば本籍・出生地や家族に関すること、思想や信条に関することなどを選考の材料にしないよう呼びかけています。AIを使う場合も、この考え方は同じです。最新の内容は、厚生労働省の公式サイトで確認してください。
AIに書類を読ませるときは、次のような項目を照合や要約の対象にしないよう、最初に決めておきます。
AIの照合・要約の対象にしない項目の例
- 本籍・出生地、家族構成や家族の職業
- 思想・信条・宗教、支持政党に関すること
- 性別・年齢・国籍など、職務の遂行能力と関係のない属性(法令で認められた例外を除く)
- 顔写真から受ける印象
- 健康に関すること(職務上どうしても必要な場合を除く)
あわせて、AIに渡す指示の中で「職務に必要な条件だけを見ること」「上記の項目には触れないこと」をはっきり書いておきます。要約の形も、「職歴」「経験業務」「資格」「募集条件との照合」のように職務に関する項目だけにしておくと、関係のない情報が要約に混ざりにくくなります。
条件そのものを見直す機会にもなる
AIに照合させるには、必須条件を言葉ではっきり書く必要があります。そのとき、「本当にこの条件は職務に必要か」を見直すことになります。条件があいまいなまま担当者の感覚で選んでいた会社にとっては、選考の基準を整える機会にもなります。
進め方の手順:条件を言葉にし、過去の応募で試してから使う
応募書類の確認にAIを取り入れるときは、次の順番で進めます。
- 募集ごとの必須条件と歓迎条件を書き出す:「〇〇の資格」「△△の実務経験が何年以上」のように、書類から確かめられる形で書きます。求人票を作るときの条件と同じものを使うと、ずれが起きません
- 要約の形を決める:面接官が読みやすいよう、要約に入れる項目と順番を決めます。職務に関する項目だけにします
- AIに見させない項目を決める:前の章の項目を参考に、照合や要約の対象にしない項目を決め、AIへの指示に書き込みます
- 過去の応募書類で試す:応募者の同意や社内の取り扱いルールを確認したうえで、過去の書類でAIに照合と要約をさせ、人が読んだ結果と比べます。読み違いが多い項目は、指示を直します
- 新しい応募で並行して使う:しばらくは、人も今までどおり書類を読み、AIの結果と見比べます。ずれがなくなってきたら、人はAIの要約と根拠の箇所を確かめる形に移ります
- 面接の準備に広げる:照合と要約が安定したら、面接で確かめたいことの候補づくりも任せます
書類の形がばらばらでも、AIは文章を読んで必要な情報を探せます。ただし、手書きの履歴書を画像で受け取る場合は、文字の読み取りの精度を確かめる必要があります。
導入前と導入後で、書類選考の流れはこう変わる
応募書類の確認にAIを取り入れると、書類選考の流れは次のように変わります。採用担当と面接官のそれぞれの作業を、導入前と導入後で比べます。
| 場面 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 応募が届いたとき | 採用担当が手の空いたときに書類を開き、最初から読む | 応募が届くとAIが必須条件との照合と要約を作り、採用担当に知らせる |
| 書類選考 | 1通ずつ読み、条件を満たすかを自分で探す。読む人によって見る点がばらつく | 要約と照合結果、根拠の箇所を見て、気になる点だけ書類を確かめる。見る点が全員で同じになる |
| 面接官への共有 | 採用担当が経歴をまとめ直して送る | 決まった形の要約をそのまま共有できる |
| 面接の準備 | 面接官が当日に書類を読み、その場で質問を考える | 確かめたいことの候補を見て、事前に質問を選んでおける |
| 応募者への返事 | 書類を読み終えるまで返事ができず、遅れがち | 書類選考が早く終わるため、面接の案内を早く送れる |
いちばん大きな変化は、応募者への返事が早くなることです。中途採用では、よい候補者ほど複数の会社に応募していることが多く、返事の早さが選考の結果に影響することがあります。書類を読む時間が減れば、そのぶん候補者に早く連絡でき、面接の準備にも時間をかけられます。
よくあるつまずきと対策
- 必須条件があいまいで照合できない:「コミュニケーション力がある方」のような条件は書類から確かめられません。照合させる条件は、資格や経験業務など書類に書かれる事柄に絞り、人柄に関わることは面接で確かめます
- 要約だけ見て判断してしまう:要約は書類の代わりではありません。面接に呼ぶか迷う人や、条件に近いが判断がつかない人は、必ず元の書類を読みます
- 照合結果を点数のように扱ってしまう:「条件をいくつ満たしたか」で順番をつけると、AIに順位を決めさせているのと同じになります。照合結果はあくまで確認の材料として使います
応募者の個人情報を扱うときの注意点と、始める前のチェックリスト
応募書類には、氏名・住所・連絡先・経歴など、多くの個人情報が含まれます。AIで扱う場合は、次の点に気をつけます。
- 利用目的の範囲で使う:応募者に示している個人情報の利用目的の範囲で使います。必要に応じて、募集要項などで選考の補助にAIを使うことを伝えることも検討します
- 学習に使われない設定を確かめる:外部のAIサービスを使う場合は、入力した書類が学習に使われない設定や契約になっているかを確認します
- AIに渡す情報を絞る:照合に必要のない住所や電話番号などは、AIに渡す前に除くことも検討します
- 保存と削除のルールを決める:AIが作った要約も個人情報です。誰が見られるか、選考が終わったらいつ消すかを、応募書類と同じルールで決めます
個人情報の扱いは、法令や指針が改正されることもあります。判断に迷う場合は、専門家や個人情報保護委員会の公式サイトの情報を確認してください。
始める前に確認すること
- 募集ごとの必須条件が、書類で確かめられる言葉で書かれているか
- AIの照合・要約の対象にしない項目が決まっているか
- 合否は人が決めることが、社内ではっきりしているか
- 応募者の個人情報の利用目的と、AIを使う範囲が合っているか
- AIが作った要約の保存期間と、見られる人が決まっているか
人手が足りないからこそ、書類を読む時間を減らし、候補者とのやり取りや面接に時間を使いたい。そうお考えの採用担当の方は、月5万円のAI社員の無料相談で、自社の選考の流れに合う形をお気軽にご相談ください。
よくある質問
書類選考をAIで自動化してもよいですか?
条件との照合や経歴の要約といった下準備はAIで効率化できますが、合否や順位は人が決めてください。AIには事実の整理を任せ、根拠となる書類の箇所を添えさせると、人の確認が速くなります。
履歴書や職務経歴書の書式がばらばらでもAIは読めますか?
文字のデータになっている書類であれば、書式が違ってもAIは内容を読み取って必要な情報を探せます。手書きの書類を画像で受け取る場合は、読み取りの精度を事前に確かめてください。
AIを使った書類選考で気をつけることは何ですか?
本籍・家族・思想信条など職務と関係のない項目を照合や要約の対象にしないこと、合否を人が決めること、応募者の個人情報を利用目的の範囲で扱うことです。公正な採用選考の考え方は厚生労働省の公式サイトで確認できます。
面接の質問もAIに考えてもらえますか?
書類で分からなかった点や確かめたい点を、面接の質問の候補として挙げさせることはできます。実際に聞く質問は、職務に関係のない事柄が含まれていないかを確かめたうえで人が選びます。