業務マニュアル・手順書の作成をAIで効率化する方法——録画やメモから下書きを作り、更新し続ける仕組み
結論
業務マニュアル・手順書は、ベテランの作業を録画・録音したものや走り書きのメモをAIに渡して「手順書の下書き」を作らせ、担当者が内容を確認して仕上げる形にすると、一から書くよりずっと短い時間で作れます。さらに、手順が変わったときにAIが該当箇所の書き換え案を出す流れを決めておけば、作ったあとに古くなる問題も防げます。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、業務マニュアル・手順書の作成をAIで効率化する方法について解説します。「マニュアルを作らなければ」と思いながら、日々の業務に追われて後回しになっている会社は少なくありません。手順を知っているベテランほど忙しく、書く時間がとれないうえに、せっかく作っても手順が変わると誰も直さず、気づけば使われなくなっている、ということもよくあります。この記事では、業務マニュアル・手順書の作成のどこをAIに任せられるのか、どんな材料を用意すればよいのか、作ったマニュアルを古くしないためにはどうすればよいのかを、AI社員を提供している当社の立場から説明します。
マニュアル作りが進まないのは「書く時間」と「直す人」がいないから
マニュアルが必要なことは、多くの経営者・管理職がわかっています。それでも進まないのは、マニュアル作りに特有の次のような事情があるからです。
- 手順を知っている人ほど忙しい:業務に詳しいベテランは現場の中心でもあるため、腰を据えて文章を書く時間がとれない
- 暗黙のコツを言葉にしにくい:「このくらいで」「いつもの感じで」と体で覚えている部分を、ほかの人にわかる言葉にするのは難しい
- 書式や粒度がばらばら:人によって書き方が違い、細かすぎるものと大ざっぱすぎるものが混ざる
- 作ったあとに誰も直さない:システムの画面や取引先のルールが変わっても、マニュアルは昔のまま残り、やがて信用されなくなる
このうち、AIの仕組みが特に役立つのは「話した内容や作業の記録を、決まった書式の文章に整える」部分と、「変わった点を見つけて書き換え案を出す」部分です。反対に、その手順が正しいかどうか、どこまで細かく書くべきかを決めるのは、業務をよく知る人の役割として残ります。
AIに任せられるのは「下書き・書式の統一・図表の整理・更新案」の4つ
マニュアル作りをAIで効率化するとき、任せる仕事は次の4つに分けて考えるとわかりやすくなります。
- 下書きの作成:作業を説明しながら録音した音声、画面操作の録画、箇条書きのメモなどから、「目的・準備するもの・手順・注意点」といった項目に沿った手順書の下書きを作る
- 書式と言葉の統一:会社で決めた書式に合わせて見出しや番号を整え、同じものを指す言葉(「伝票」と「票」など)をそろえる
- 表やチェックリストへの整理:判断の分かれ目を表にしたり、作業前の確認事項をチェックリストにしたりして、読む人が迷わない形にする
- 更新案の作成:手順の変更点を伝えると、関係するマニュアルの箇所を探して書き換え案を出す
大切なのは、AIが作った下書きをそのまま完成品にしないことです。録音の聞き取り違いや、話の中で省略された手順を、AIが推測で補ってしまうことがあります。最後は業務を知る人が読み、実際の作業と合っているかを確かめてから社内に出します。
ポイント
ベテランの仕事は「書く」から「話す」と「確かめる」に変わります。10分ほど作業を説明しながら録音してもらうだけでも、下書きの材料としては十分なことが多くあります。
手書き・ゼロからの作成とAIを使った作成の違い
マニュアル作りにAIを使った場合、作業の流れは次のように変わります。かかる時間は業務の複雑さや材料のそろい方によって大きく異なるため、ここでは作業内容の違いとして示します。
| 作業 | これまで | AIを使った場合 |
|---|---|---|
| 材料集め | ベテランに時間をもらい、聞き取りながらメモをとる | ベテランが作業しながら説明した録音・録画をそのまま使う |
| 文章にする | 担当者が一から書き起こす | AIが決まった書式で下書きを作る |
| 書式をそろえる | 人によって書き方がばらばら | 見出し・番号・用語が自動でそろう |
| 確認 | 書いた本人しか読まないことが多い | ベテランが下書きを読んで、違う点だけ直す |
| 手順が変わったとき | 気づいた人が直す(直されないことが多い) | 変更点を伝えると、AIが該当箇所と書き換え案を示す |
「話して作る」と、ベテランの負担が小さくなる
文章を書くのが苦手でも、口で説明するのは得意という人は多くいます。作業を見せながら「ここで必ず日付を確認する」「この取引先だけは別の書式」と話してもらえば、書き言葉にするとこぼれてしまうコツまで材料に残ります。AIはこうした話し言葉を、読みやすい手順に整えることが得意です。
当社でも、自社の業務をAIに任せる中で、全体で月 約480時間の作業時間を減らしてきました。手順を決めて任せるには、まず手順が言葉になっている必要があり、マニュアル作りはそのための土台にもなります。
AIでマニュアルを作る6つのステップ
業務マニュアルの作成は、次の順番で進めるとスムーズです。
- 対象の業務を選ぶ:担当者が1人しかいない業務、新人に毎回同じ説明をしている業務、ミスが起きると影響が大きい業務から選ぶ
- 書式を決める:「目的」「いつ・誰が行うか」「準備するもの」「手順」「よくある間違い」「困ったときの連絡先」など、全マニュアル共通の項目を決める
- 材料を集める:ベテランに作業しながら説明してもらい、録音や画面の録画をとる。既存のメモや、過去に新人へ送った説明のメールも材料になる
- AIに下書きを作らせる:決めた書式に沿って下書きを作り、聞き取れなかった箇所や手順が飛んでいそうな箇所には印を付けさせる
- 業務を知る人が確認する:印の付いた箇所を中心に、実際の作業と合っているかを確かめて直す
- 新人に使ってもらって直す:その業務を知らない人にマニュアルだけで作業してもらい、つまずいた箇所を書き足す
6番目のステップは見落とされがちですが、とても大切です。業務を知っている人が読むと問題なく見えても、知らない人が読むと「ここで何をすればいいのか」がわからない箇所が必ず出てきます。
作ったマニュアルを古くしないための更新の仕組み
マニュアルが使われなくなる一番の理由は、内容が古くなって信用されなくなることです。AIを使うと、更新の手間も小さくできます。
変更があったら「変更メモ」を1か所に集める
システムの画面が変わった、取引先のルールが変わった、といった変更があったときに、気づいた人が短いメモを残す場所を1つ決めておきます。AIはそのメモをもとに、影響するマニュアルの箇所を探し、書き換え案を作ります。担当者は案を確認して反映するだけです。
マニュアルに質問できるようにする
マニュアルがそろってきたら、社員がAIに質問すると、マニュアルの該当箇所をもとに答えが返ってくる仕組みにすることもできます。「答えられなかった質問」を記録しておけば、マニュアルに足りない部分が自然にわかり、次に書き足す材料になります。
マニュアルを古くしないためのチェックリスト
- マニュアルごとに、内容に責任を持つ担当者が決まっている
- 最終更新日がマニュアルの冒頭に書かれている
- 変更に気づいた人がメモを残す場所が1つに決まっている
- 半年に1回など、定期的に見直す時期を決めている
- 古い版がどれかわかるように保管している
マニュアルをAIで作るときの注意点
便利な一方で、次の点には注意が必要です。
- 録音・録画に個人情報や取引先の情報が映り込む:画面にお客様の名前や連絡先が映っていると、それがAIへの入力になります。社外の情報が入る場合は、データが学習に使われない法人向けのサービスや設定を選び、可能ならテスト用のデータで操作を見せてもらいます
- AIが手順を補ってしまう:説明が抜けた箇所を、AIがそれらしい一般論で埋めることがあります。下書きの段階で「推測で補った箇所」に印を付けさせると、確認しやすくなります
- 安全や法令にかかわる手順は特に慎重に:機械の操作や薬品の扱い、法令で決められた手続きなどは、必ず責任者が内容を確認し、正式な規程や公的な資料と照らし合わせてください
- マニュアルを作ること自体を目的にしない:最初から全業務を網羅しようとせず、使われる業務から少しずつ増やします
当社のAI社員は、こうしたマニュアル作りや、マニュアルをもとにした社内の質問対応の仕組みを、会社ごとの業務に合わせてつくります。初期費用+月5万円で、運用を始めたあとの調整や相談にも対応しているため、「作ったあとに直し続ける」部分まで一緒に進められます。
よくある質問
動画の録画からでもマニュアルは作れますか?
作れます。作業しながら説明している音声が入っていると、手順の意味まで文章にしやすくなります。音声がない場合は、画面の動きだけでは読み取れない判断の部分を、あとから担当者に補ってもらいます。
AIが作ったマニュアルは、そのまま使えますか?
そのまま使うのはおすすめしません。聞き取りの誤りや、AIが推測で補った手順が混ざることがあるため、業務を知る人が確認してから社内に出してください。
どの業務からマニュアルにするとよいですか?
担当者が1人しかいない業務、新人に毎回同じ説明をしている業務、ミスの影響が大きい業務から始めるのがおすすめです。効果を感じやすく、続けるきっかけになります。
マニュアルの更新もAIに任せられますか?
変更点を伝えると、関係する箇所と書き換え案をAIが示す形にできます。反映するかどうかの判断は担当者が行い、最終更新日を残しておくと信頼されるマニュアルになります。