運用・定着公開日

退職者が出て採用が決まるまで、業務の穴をAIでどう埋めるか——引き継ぎの記録から欠員期間のつなぎ、入社後の教育まで

結論

退職者が出て採用が決まるまでの業務の穴は、退職前の引き継ぎをAIで記録して手順書にし、その中の決まった流れの作業をAIに任せ、判断が必要な仕事だけを残った社員で分けることで埋められます。引き継ぎの記録は、後任が入社した後の教育にもそのまま使えるため、欠員期間の対策がそのまま採用後の立ち上がりを早める準備になります。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、退職者が出てから採用が決まるまでの欠員期間に、業務の穴をAIで埋める方法について解説します。「事務の方が来月で辞めることになった。求人を出しているが、すぐには採れそうにない」。採用担当の方にとって、退職の知らせはそれだけで大きな負担です。求人を出し、応募を待ち、面接をして、入社してもらうまでには時間がかかり、その間の仕事は残った社員が抱えることになります。さらに、辞める人しか知らない手順があると、後任が入っても教える人がいません。この記事では、退職が決まってから後任が仕事を覚えるまでの「欠員期間」に絞って、AIで業務の穴を埋める方法を説明します。人を雇うのとAIに任せるのはどちらがよいかという比較や、マニュアル作り全般の進め方は、それぞれ別の記事で扱っています。

「すぐには採れない」欠員期間に起きる3つの困りごと

退職者が出てから後任が一人前に仕事をこなせるようになるまでには、いくつかの段階があります。退職の申し出から最終出社まで、求人を出してから採用が決まるまで、入社してから仕事を覚えるまでです。この期間をまとめて、この記事では「欠員期間」と呼びます。

欠員期間には、次の3つの困りごとが起きやすくなります。

困りごと何が起きるか起きやすい時期
1. 手順が失われる辞める人しか知らないやり方や、取引先ごとの細かい決まりが、引き継がれないまま消えてしまう退職の申し出から最終出社まで
2. 残った社員に仕事が集中する辞めた人の仕事を周りで分けるため、残業が増え、ミスや二人目の退職につながりやすくなる最終出社から採用が決まるまで
3. 新しい人を教える余裕がないやっと採用できても、教える人が忙しく、手順も残っていないため、立ち上がりに時間がかかる入社してから仕事を覚えるまで

採用担当の方は、求人を出して応募を集めることに意識が向きがちです。しかし、採用が決まるまでの時間は思うように短くできないことも多く、その間に現場が疲れてしまうと、せっかく採用した人が入ってもうまく受け入れられません。

そこで大切になるのが、採用活動と並行して、欠員期間の仕事の回し方を準備しておくことです。AIは、この3つの困りごとのそれぞれに使いどころがあります。

退職前の引き継ぎは、AIで記録して手順書にする

欠員期間の対策で最も急ぐのは、辞める人が持っている手順を残すことです。最終出社日を過ぎてしまうと、もう聞くことができません。ところが、退職前は本人も残りの仕事や有給休暇の消化で忙しく、手順書をゼロから書いてもらうのは難しいのが実情です。

そこで、本人に書いてもらうのではなく、話してもらい、見せてもらった内容をAIで手順書の形に整えるやり方がおすすめです。

  1. 担当している仕事を一覧にする:毎日・毎週・毎月・年に数回の仕事を、本人と一緒に書き出します。年に数回の仕事は忘れやすいので、カレンダーや過去のメールを見ながら確認します
  2. 仕事ごとに話を聞いて録音する:「どこから情報が来て、何を見て、どこに入力し、誰に渡すか」を順番に話してもらいます。実際の画面を操作しながら説明してもらうと、細かい点まで残ります
  3. 録音をAIで文字にして、手順書の下書きにする:AIに、話した内容を「手順」「使う資料や画面」「注意点」「判断が必要な場面」に分けて整理させます
  4. 本人に下書きを確認してもらう:抜けている手順や、間違って整理された部分を直してもらいます。ゼロから書くより、出来上がった下書きを直すほうが本人の負担は小さくなります
  5. 例外や困ったときの対応を聞き足す:「この取引先だけは別のやり方」「この時期はこうする」といった例外は、手順書の中でも特に価値があります。最後に必ず聞いておきます

退職前の引き継ぎで聞いておくことのチェックリスト

  • 毎日・毎週・毎月・年に数回の仕事の一覧
  • 仕事ごとの手順と、使う資料・画面・ファイルの場所
  • 取引先やお客様ごとの細かい決まり
  • 判断に迷ったときに、誰に何を確認していたか
  • よく起きるミスと、その防ぎ方
  • 社内外の連絡先と、連絡するタイミング

手順書の作り方そのものや、作った後に更新し続ける仕組みについては、当社の「業務マニュアル・手順書の作成をAIで効率化する方法」の記事で詳しく説明しています。欠員期間の対策としては、まず最終出社日までに、話を聞いて記録を残すことを最優先にしてください。

引き継いだ仕事を「AIに任せる」「残った人で分ける」に仕分ける

手順が残ったら、次は辞めた人の仕事を誰がどう回すかを決めます。すべてを残った社員で分けると負担が集中するため、手順書をもとに仕事を仕分け、決まった流れの作業はAIに任せることを考えます。

仕事の種類例欠員期間の回し方
決まった流れで繰り返す作業受注書や請求書の入力、問い合わせへの定型的な返信の下書き、日報の集計AIに任せ、人は結果を確認する
情報を探して答える作業社内の手続きや規程についての質問への回答、過去の資料探し手順書や社内資料をもとにAIが答え、迷うものだけ人が答える
判断や相手との調整が必要な仕事取引先との価格の相談、クレーム対応、社内の承認残った社員で分担する
急ぎではない仕事書類の整理、資料の見直し後任が入るまで止めておく

この仕分けをすると、辞めた人の仕事の中にも、AIに任せられる部分が少なくないことがわかることがあります。残った社員は判断が必要な仕事に集中でき、負担の増え方を抑えられます。

AIに任せる仕事を選ぶときの目安

  • 入力する情報と、出来上がりの形が毎回ほぼ同じである
  • 手順書に流れを書き出せている
  • AIの結果を、人が短い時間で確認できる
  • 間違えたときに、社外に出る前に気づける

たとえば当社が支援した製造業(従業員30名規模)の事務担当の方の受注書入力は、1日2時間から15分になりました。こうした入力や集計の仕事は、欠員期間にAIへ任せる候補になりやすい仕事です。

ポイント

欠員期間にAIへ任せる目的は、人を減らすことではなく、残った社員の負担を増やしすぎないことです。判断が必要な仕事は人に残し、AIには繰り返しの作業を任せる、という分け方を基本にします。

採用が決まるまでの「つなぎ」の進め方

欠員期間のつなぎは、退職の申し出があった時点から動き始めるほど、余裕を持って進められます。採用活動と並行して、次の流れで準備すると無理がありません。

時期採用活動業務のつなぎ
退職の申し出〜最終出社求人の条件を決め、求人を出す仕事の一覧を作り、話を聞いて手順書の下書きをAIで作る
最終出社前後応募への対応、面接の日程調整仕事を仕分け、AIに任せる作業と残った人で分ける仕事を決める
採用が決まるまで面接、選考、内定AIに任せた作業の結果を確認しながら回し、手順書を直していく
入社前入社日の調整、受け入れの準備手順書と、AIに任せている作業の説明をまとめる

つなぎの期間に気をつけること

  • AIの結果は必ず人が確認する:欠員期間は忙しく、確認を省きたくなりますが、特に社外に出るものは必ず確認する担当を決めておきます
  • 残った社員の声をこまめに聞く:負担が偏っていないか、AIに任せた作業で困っていることはないかを、週に一度は確認します
  • 手順書をつなぎの間に直していく:実際に回してみると、手順書の抜けや間違いが見つかります。気づいたことをその都度書き足すと、後任に渡すときにはより使える手順書になっています

採用の業務そのものも、AIで軽くできる部分があります。求人票の下書きや応募者への連絡、面接の日程調整については、当社の「求人票・求人原稿の作成をAIで効率化するには?」「採用の応募者対応と面接の日程調整をAIで効率化する方法」の記事も参考にしてください。欠員期間は採用担当の方自身も忙しくなるため、採用業務と現場のつなぎの両方で手を減らせると安心です。

なお、当社のAI社員は構築期間がジュニア2週間程度・ミドル1か月程度で、最短2週間で稼働できます。退職の申し出から最終出社までの期間に、引き継ぎの記録と並行して準備を始めると、つなぎに間に合いやすくなります。

後任が入社した後は、引き継ぎの記録を教育に使う

欠員期間に作った手順書とAIの仕組みは、後任が入社した後の教育にもそのまま役立ちます。教える側の社員は欠員期間の疲れが残っていることも多く、つきっきりで教えるのは難しいものです。そこで、次のような使い方ができます。

  • 手順書を読みながら仕事を覚えてもらう:退職者から聞き取った手順や例外がまとまっているため、教える人が一から説明する手間を減らせます
  • わからないことをAIに質問できるようにする:手順書や社内資料をもとにAIが答える仕組みがあれば、新しい人は「こんなことを聞いてよいのか」と遠慮せずに確認できます。答えに迷うものだけ先輩に聞く形にすると、教える側の負担も減ります
  • AIに任せている作業の確認役から始めてもらう:AIが作った入力結果や返信の下書きを確認する仕事は、業務の流れと注意点を覚えるのにちょうどよい入り口になります
  • 新しい人の気づきで手順書を直す:初めて読む人だからこそ、わかりにくい箇所に気づけます。気づいた点を書き足してもらうと、次に人が入れ替わるときにも使える手順書になります

後任が入った後のAIの役割を見直す

後任が仕事を覚えたら、欠員期間にAIへ任せていた作業をどうするかを見直します。人に戻す作業、引き続きAIに任せて後任は確認とほかの仕事に時間を使う作業、と分けて決めるとよいでしょう。欠員期間をきっかけに、繰り返しの作業をAIに任せる形が定着すると、後任は判断が必要な仕事に早くから関われるようになります。

ポイント

欠員期間の対策は、その場しのぎで終わらせないことが大切です。引き継ぎの記録とAIの仕組みを残しておけば、次に退職者が出たときにも、同じ混乱を繰り返さずに済みます。

次の退職に備えて、ふだんから手順を残しておく

欠員期間の混乱を小さくする一番の方法は、退職が決まる前から手順を残しておくことです。退職の申し出から最終出社までの期間は限られており、その間にすべてを聞き取るのは簡単ではありません。

ふだんから備えておくことのチェックリスト

  • 一人しかやり方を知らない仕事がどれか、把握している
  • その仕事の手順が、録音やメモの形でも残っている
  • 年に数回しか発生しない仕事の手順も記録されている
  • 繰り返しの作業のうち、AIに任せられるものの候補を挙げている
  • 手順書の置き場所が決まっていて、誰でも見られる
  • 手順が変わったときに、誰が書き直すかが決まっている

特に、一人しかやり方を知らない仕事は、その人が辞めると一気に止まってしまいます。採用担当の方は、退職者が出てから慌てるのではなく、ふだんから管理職と一緒に「この仕事は誰が辞めたら止まるか」を確認しておくと、いざというときの動きが早くなります。

当社自身も、社内の業務にAIを使うことで月 約480時間の作業時間を減らしてきました。手順を残し、繰り返しの作業をAIに任せておくことは、人の入れ替わりがあっても仕事が止まりにくい会社づくりにつながります。

当社のAI社員は、引き継ぎの記録づくりから、欠員期間の定型業務の担当、後任の方の質問への回答まで、業務に合わせて構築します。料金は初期費用+月5万円(税別、AI利用料は実費)で、初期費用はヒアリング後にお見積もりしています。保守・相談・メンテナンスは月額の中で無制限のため、後任の方が入って仕事の分け方を変えたいときも、そのつどご相談いただけます。

よくある質問

退職者が出て人手が足りないとき、AIで何ができますか?

退職前の引き継ぎを録音してAIで手順書にまとめること、入力や集計など決まった流れの作業をAIに任せること、後任の質問にAIが答えることができます。判断や相手との調整が必要な仕事は、残った社員で分担します。

退職前の引き継ぎを短い期間で終わらせるにはどうすればよいですか?

本人に手順書を書いてもらうのではなく、仕事ごとに話を聞いて録音し、AIで手順書の下書きにして本人に直してもらうのが効率的です。年に数回の仕事と例外の対応は忘れやすいので、必ず聞いておきます。

採用が決まるまでの間だけAIを使うことはできますか?

欠員期間のつなぎとして使い始めることはできます。ただ、引き継ぎの記録やAIに任せた作業は後任の教育やその後の業務にも役立つため、採用後も続けて使うかを見直す形がおすすめです。

新しく入った社員の教育にAIは使えますか?

使えます。手順書や社内資料をもとにAIが質問に答える仕組みがあれば、新しい社員は気軽に確認でき、教える側の負担も減ります。答えに迷うものだけ先輩に聞く形にすると、立ち上がりが早くなります。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

コラム一覧へ戻る