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社内のAI勉強会はどう進めるか——少人数の会社で業務に結びつける回の組み方と、終わったあとも使われ続ける工夫

結論

社内のAI勉強会は、「参加者一人ひとりが、自分の業務の作業を1つAIで回せるようになる」ことを目的にし、毎回の勉強会で実際の仕事の材料を持ち寄って試し、うまくいった指示文を共有する形で進めると、聞いて終わりにならず業務で使われ続けます。回数は数回で十分で、最後の回で「次にAIを使う業務」を一人ずつ決めて終えることが大切です。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、少人数の会社で社内のAI勉強会・研修を企画し、参加者が自分の業務でAIを使い続けられるように回の内容・進め方・振り返りを組み立てる方法について解説します。「AIの勉強会を開いたけれど、その場では盛り上がって、翌週には誰も使っていない」「外部の研修を受けさせたが、何が変わったのか分からない」。社員が10〜50名ほどの会社の管理職の方から、こうしたお悩みをよく伺います。この記事では、社内でAIの勉強会・研修を開くときに、学んだことを実際の業務につなげるための目的の決め方、回の組み方、1回の進め方、終わったあとの仕組みづくり、効果の確かめ方を説明します。推進担当の選び方や、現場への定着全体の話ではなく、「勉強会をどう設計するか」に絞ってお伝えします。

AI勉強会が「聞いて終わり」になるのは、自分の仕事で試す時間がないから

社内のAI勉強会がその場限りで終わってしまう理由は、多くの場合、内容の難しさではありません。勉強会で見たことと、自分の毎日の仕事とが結びつかないまま終わってしまうことが一番の原因です。よくあるのは次のような形です。

  • 説明を聞くだけで終わる:AIの仕組みや便利な使い方の紹介を聞いて、手を動かさずに終わる
  • 例が自分の仕事と違う:「旅行の計画を立てる」「詩を書く」など、業務と関係のない例で試して終わる
  • 使ってよい範囲が分からない:社内のどの情報を入れてよいのかが決まっておらず、怖くて使えない
  • 次に何をするかが決まっていない:勉強会のあと、誰がいつ何に使うのかが決まらないまま日常業務に戻る
  • うまくいった使い方が共有されない:一人がうまく使えても、その指示文がほかの人に届かない

つまり、勉強会を業務につなげるには、知識を増やすことよりも「自分の仕事で一度うまくいった」という体験を、勉強会の時間の中で作ることが大切です。一度でも自分の作業が楽になると、人は翌日も使います。逆に、知識だけを持ち帰っても、忙しい日常の中で新しいやり方を試す余裕はなかなか生まれません。

なお、ここでいう「AI」は、文章で指示を出すと文章の下書きや要約、表の整理などをしてくれる生成AI(文章や画像を作るAI)を想定しています。

目的は「全員がAIに詳しくなる」ではなく「自分の業務で1つ使えるようになる」

勉強会を企画するとき、最初に決めるのは目的です。「社員全員がAIに詳しくなる」「AIリテラシーを上げる」といった目的は聞こえはよいのですが、終わったあとに達成できたかどうかを確かめられません。少人数の会社では、もっと小さく、具体的な目的にしたほうがうまくいきます。

ポイント

おすすめの目的は「参加者一人ひとりが、自分の業務の中の作業を1つ選び、AIを使って回せるようになる」です。勉強会が終わったときに、参加者が「私は〇〇の作業にAIを使います」と言える状態をゴールにします。

目的をこのように決めると、勉強会で扱う内容も自然に絞られます。AIの歴史や仕組みの細かい説明は最低限にし、時間の大半を「自分の作業で試す」ことに使えます。

対象にする作業は、次の条件に当てはまるものから選ぶと、最初の成功体験を作りやすくなります。

  • 毎週・毎月など、繰り返し発生する作業である
  • 文章を書く・まとめる・整えるといった作業である(メールの下書き、議事録の要約、報告書の整理など)
  • 間違いがあっても、送る前・提出する前に人が確認できる
  • 扱う情報が、社内ルールの範囲で入力してよいものである

反対に、最初の対象として避けたほうがよいのは、一度しか発生しない作業、間違いがそのまま外に出てしまう作業、個人情報や取引先の秘密を多く含む作業です。こうした作業は、社内ルールと確認の仕組みが整ってから扱います。

また、参加者を全社員に広げる前に、まずは1つの部署や数名の小さなグループで始める方法もあります。小さく始めて、うまくいった指示文や進め方をそろえてから次のグループに広げると、2回目以降の勉強会の準備が楽になります。

回の組み方の例:4回で「基本→持ち寄り→型の共有→次の業務」と進める

少人数の会社で業務につなげる勉強会は、たとえば次のような4回の組み立てにすると進めやすくなります。1回で全部を詰め込むより、回の間に「実際に業務で使ってみる」期間を挟むことで、次の回に持ち寄る材料ができます。

回テーマ主な内容次の回までの宿題
1回目基本と社内ルールAIでできること・苦手なこと、入力してよい情報といけない情報、間違いが出ることを前提にした確認の考え方。全員で同じ簡単な作業を試す自分の業務の中で、AIに任せてみたい作業を1つ選び、使う材料(社内ルールの範囲のもの)を用意する
2回目自分の業務の作業を持ち寄って試す一人ずつ選んだ作業をAIで試す。うまくいかないところを、進行役やほかの参加者と一緒に直す選んだ作業を実際の業務で数回使ってみて、うまくいった指示文と困ったことをメモする
3回目指示文の型を共有するうまくいった指示文を発表し合い、「役割・材料・やってほしいこと・出力の形・注意点」などの型にそろえる。共有の場所に登録する型にそろえた指示文で、もう一度業務に使ってみる。ほかの人の指示文も1つ試す
4回目振り返りと次の業務使ってみて減った手間や困ったことを振り返る。次にAIを使う業務を一人1つ決める。社内ルールで直すところがあれば洗い出す決めた次の業務で試し、共有の場所に結果を書き込む

回と回の間は、1〜2週間ほど空けると、業務で試す時間が取れます。ただし、繁忙期や会社の規模によって適切な間隔は変わるので、参加者の予定に合わせて調整してください。

1回あたりの時間は、参加者の人数や業務の都合によって決めてかまいません。目安としては、説明は短く済ませ、参加者が自分の作業で手を動かす時間を全体の半分以上取れる長さにするとよいでしょう。長すぎると業務に響き、短すぎると試す時間がなくなります。初回のあとに参加者の声を聞いて、2回目以降の時間を調整するのが現実的です。

4回という回数もあくまで一例です。参加者がすでにAIを使い慣れているなら、1回目と2回目をまとめても構いません。反対に、パソコン作業に不慣れな人が多い職場では、1回目を2回に分けて、操作に慣れる時間を取るほうが安心です。

1回の進め方:実際の業務の材料を使い、うまくいった指示文を残す

実際の業務の材料を使う(ただし社内ルールの範囲で)

勉強会でいちばん効き目があるのは、参加者が普段使っている実際の材料で試すことです。たとえば、先週の会議のメモ、よく送る案内メールの下書き、毎月作る報告書の元データなどです。自分の仕事の材料でAIが下書きを作るのを見ると、「これなら明日から使える」と実感しやすくなります。

ただし、材料には個人情報や取引先の秘密が含まれていることがあります。勉強会の前に、次のことを決めて参加者に伝えておきます。

  1. 使ってよいAIのサービス(会社が契約したもの、入力内容が学習に使われない設定のものなど)
  2. 入力してよい情報と、入力してはいけない情報の区別
  3. 個人名や会社名を、仮の名前や記号に置き換えるやり方
  4. 迷ったときに確認する相手

社内ルールがまだない場合は、勉強会の1回目に合わせて簡単なものを作っておくと、その後の回で参加者が迷わずに済みます。

進行役は「教える人」より「一緒に直す人」

2回目以降の進行役の役割は、AIについて講義をすることではなく、参加者がつまずいたところを一緒に直すことです。「思った答えが出ない」ときは、指示文に足りない情報があることが多いので、「誰に向けた文章か」「どのくらいの長さか」「どんな形で出してほしいか」を足すよう助言します。社内でAIを広める推進担当がいる場合は、この役割を担ってもらうと、勉強会のあとも相談先として機能します。

うまくいった指示文を共有する場所を決めておく

勉強会の成果がいちばん形に残るのは、うまくいった指示文です。社内の共有フォルダや表計算ソフト、社内チャットの専用の場所など、全員が見られる場所を1か所決め、次のような項目で登録していきます。

  • どの業務の、どの作業に使うものか
  • 指示文の本文(材料を差し込む場所が分かる形で)
  • 使うときの注意点(確認すべきところ、入れてはいけない情報など)
  • 作った人と、最後に直した日

指示文が一覧になっていると、勉強会に参加していない人や、あとから入社した人も同じ使い方ができます。

効果の確かめ方と、外部講師に頼むか社内で回すかの選び方

効果は「参加人数」ではなく「業務で使われている作業の数」で見る

勉強会の効果を、参加人数や満足度のアンケートだけで判断すると、業務につながったかどうかが分かりません。目的に合わせて、次のような点を確かめます。

  • 勉強会のあと、AIを使っている作業がいくつあるか(一人1つ以上が目安)
  • 共有の場所に登録された指示文の数と、ほかの人に使われているか
  • 対象にした作業にかかる時間が、使う前と比べてどう変わったか(参加者の体感でもよいので記録する)
  • 勉強会から1〜2か月後も、同じ作業でAIを使い続けているか

作業時間を正確に測るのは難しいので、最初は「使う前は何分くらいかかっていたか」「今は何分くらいか」を参加者に書いてもらうだけでも十分です。数字が残っていると、次の勉強会の対象を広げるかどうかを判断しやすくなります。

外部講師に頼むか、社内で回すか

勉強会を誰が進めるかは、会社の状況によって選び方が変わります。主な違いを整理すると次のとおりです。

比べる点外部講師に頼む社内で回す
向いている場面社内にAIを使い慣れた人がいない、最初の基本と社内ルールの考え方をきちんと押さえたい使い慣れた社員がいる、業務の材料で試す回を中心にしたい
よいところ体系立った説明が聞ける、ほかの会社での使われ方を知れる自社の業務に合わせやすい、終わったあとも相談先が社内に残る
気をつけること一般的な例が中心になり、自社の業務に結びつけにくいことがある進行役の負担が大きい、説明が自己流になりやすい
組み合わせ方の例1回目の基本と社内ルールは外部の力を借り、2回目以降の持ち寄りと型の共有は社内の推進担当が進める

研修の費用については、公的な支援制度が使える場合もあります。対象や条件は変わることがあるので、検討するときは最新の情報を公式サイトで確認してください。

勉強会を始める前のチェックリストと、勉強会のあとの仕組みづくり

勉強会を企画するときは、次のことを確認してから始めると、終わったあとに業務で使われ続けやすくなります。

社内のAI勉強会を始める前に確認すること

  • 目的が「参加者が自分の業務の作業を1つAIで回せるようになる」のように、終わったときに確かめられる形になっているか
  • 使ってよいAIのサービスと、入力してよい情報・いけない情報が決まっているか
  • 参加者が、試してみたい自分の業務の作業を事前に考えてくる流れになっているか
  • 回と回の間に、業務で実際に試す期間を取っているか
  • うまくいった指示文を登録する共有の場所が決まっているか
  • 勉強会のあとに相談できる人(推進担当など)がいるか
  • 勉強会から1〜2か月後に、使われ続けているかを確かめる日を決めているか
  • 参加者が勉強会と試す時間を取れるよう、上司が業務を調整しているか

最後の項目は見落とされがちですが、とても大切です。勉強会への参加や業務で試す時間を「本来の仕事の外」に置くと、忙しい人ほど続けられません。管理職が「この時間は業務の改善に使ってよい」と明確に伝えることが、使われ続けるための前提になります。

それでも、少人数の会社では「勉強会で使い方は分かったが、毎日の忙しさの中で指示文を入れ直す手間が負担」という声も出てきます。よく使う作業が決まったら、その作業を毎回決まった流れで回す仕組みにしてしまうのも1つの方法です。

当社が提供する「AI社員」は、勉強会で見つかった「この作業をAIに任せたい」を、社員が毎回指示文を入れなくても回る形に組み立てるサービスです。日報の集計、議事録の要約、定型メールの下書きなど、業務に合わせて作り込み、保守や使い方のご相談も月額の中で対応します。勉強会で出てきた候補のうち、どれを仕組みにすると効き目が大きいかのご相談からでも承ります。料金は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。

よくある質問

社内のAI勉強会は何回くらい開けばよいですか?

決まった回数はありませんが、基本と社内ルール、自分の業務の作業を持ち寄って試す回、指示文の型を共有する回、振り返りと次の業務を決める回の数回に分けると進めやすくなります。回の間に業務で試す期間を挟むことが大切です。

勉強会で実際の業務の資料を使っても大丈夫ですか?

社内ルールの範囲であれば、実際の業務の材料で試すほうが業務につながりやすくなります。使ってよいAIのサービスと入力してよい情報を事前に決め、個人名や取引先名は仮の名前に置き換えるなど、個人情報や社外秘の扱いに注意してください。

AIに詳しい社員がいなくても社内で勉強会を開けますか?

開けます。最初の基本と社内ルールの回だけ外部の力を借り、2回目以降は社内の推進担当が「一緒に直す人」として進める組み合わせもあります。進行役に必要なのは深い知識より、参加者のつまずきに付き合う時間です。

勉強会の効果はどうやって確かめればよいですか?

参加人数や満足度ではなく、勉強会のあとにAIを使っている作業の数、共有された指示文の数と使われ方、対象の作業時間の変化を見ます。1〜2か月後にも使われ続けているかを確かめる日を、あらかじめ決めておくと確実です。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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