生成AIで作った文章・画像を業務で使うときの著作権の注意点——似てしまうリスク、入力素材の扱い、社外に出す前の確認手順
結論
生成AIで作った文章や画像を業務で使うときに気をつけることは、「他人の作品に似ていないか」「入力した素材を使ってよいか」「社外に出す前に人が確認したか」の3つです。AIが作ったものでも、既存の作品に似ていれば問題になる場合があるため、社外に出すものほど確認の手順を決めておくことが大切です。法令の解釈は個別の事情で変わることがあるため、最新の情報は文化庁などの公式サイトで確認してください。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、生成AIで作った文章・画像を業務で使うときの著作権の注意点と、社内での確認の仕組みについて解説します。「AIで作ったチラシの画像をそのまま使って大丈夫か」「部下がAIで書いたブログ記事が、どこかの記事に似ていないか心配だ」。生成AIを仕事に使い始めると、管理職の方からこうした著作権についての相談が増えます。一方で、法律の細かい解釈まで管理職が判断するのは現実的ではありません。この記事では、生成AIで作った文章・画像を業務で使うときに起きやすい著作権のトラブル、入力する素材の扱い方、社外に出す前の確認手順、社内ルールに入れておきたい項目を、AI社員を提供している当社の立場から説明します。法令についての断定的な判断ではなく、現場で迷わないための考え方と仕組みをまとめています。
生成AIの著作権で気をつけるのは「似ている」「素材」「確認」の3点
著作権とは、文章・画像・写真・音楽などの作品を作った人に認められる権利で、作品を無断でコピーしたり公開したりされないよう守るものです。生成AIを業務で使うときの著作権の注意点は、大きく次の3つに整理できます。
| 注意点 | 何が問題になりうるか | 起きやすい場面 |
|---|---|---|
| 1. 出力が他人の作品に似る | AIの出力が既存の文章・イラスト・写真などとよく似ていると、使い方によっては権利の侵害にあたる場合がある | チラシ・ホームページの画像、ブログ記事、商品説明文 |
| 2. 入力する素材の扱い | 他人の文章や画像をAIに読み込ませて加工すると、その元の作品の権利が関係する場合がある | 他社のホームページの文章を貼って書き直させる、写真を加工させる |
| 3. 社外に出す前の確認不足 | 誰も確認せずに公開すると、似ていることや誤りに気づけず、問題が起きてから対応することになる | SNS投稿、営業資料、広告、提案書 |
大切なのは、「AIが作ったものだから自由に使える」とも「AIで作ったものは一切使えない」とも考えないことです。AIで作ったかどうかに関係なく、出来上がったものが他人の作品とどれくらい似ているか、どう使うかによって判断が変わる場合があります。
法律の判断は専門的で、個別の事情によっても変わります。管理職の役割は、自分で法律を判断することではなく、問題が起きにくい使い方と確認の流れを社内に用意することだと考えると、取り組みやすくなります。迷う案件は弁護士などの専門家に相談し、最新の考え方は文化庁などの公式サイトで確認してください。
AIの出力が他人の作品に似てしまうリスクと、起きやすい場面
生成AIは、大量の文章や画像から言葉のつながりや絵の特徴を学んで、新しい文章や画像を作ります。多くの場合は特定の作品のコピーにはなりませんが、指示の出し方によっては、既存の作品とよく似たものが出てくることがあります。
似てしまいやすい指示の例
- 特定の作家・イラストレーター・キャラクターの名前を指定する:「〇〇さん風のイラストで」「〇〇というキャラクターのように」といった指示は、その作品に似た出力につながりやすくなります
- 特定の作品の題名や有名なフレーズを入れる:作品の一部をそのまま再現したような文章が出てくることがあります
- 他社の広告やキャッチコピーを見本として渡す:言い回しや構成がほぼ同じになってしまうことがあります
- ロゴやマークを作らせる:既存の会社のロゴに近い形が出ると、著作権だけでなく商標(会社や商品の名前・マークを守る権利)の問題になる場合もあります
文章と画像で気をつける点の違い
文章の場合は、ありふれた言い回しや一般的な説明であれば、たまたま似ても問題になりにくいと考えられることが多い一方で、特徴的な表現や長い文章がそのまま一致していると注意が必要です。画像の場合は、見た目の特徴が目に入りやすいため、似ていることに気づかれやすく、広告やホームページなど多くの人が見る場所で使うほど慎重になる必要があります。
ポイント
似てしまうリスクを下げる一番の方法は、指示の段階で特定の作家名・作品名・他社の文章を使わないことです。「明るい雰囲気の、手書き風のイラスト」のように、特徴を自分の言葉で説明すると、特定の作品に寄りにくくなります。
AIに入力する素材は「自社で作ったもの」「使ってよいと確認できたもの」に限る
著作権の注意点は、AIが出す結果だけではありません。AIに何を入力するかも重要です。他人の作品を読み込ませて書き直させたり加工させたりする使い方は、元の作品の権利が関係する場合があります。
入力する素材は、次のように分けて考えると判断しやすくなります。
| 素材の種類 | 入力の目安 | 確認すること |
|---|---|---|
| 自社で作った文章・写真・資料 | 入力してよい | お客様の個人情報や取引先の秘密情報が含まれていないか |
| 購入・契約した素材(写真素材やイラスト素材など) | 利用条件を確認してから | AIでの加工や読み込みが利用条件で認められているか |
| お客様・取引先から預かった資料 | 目的の範囲で慎重に | 預かった目的の範囲内か、先方との約束に反しないか |
| 他社のホームページ・記事・SNSの投稿 | そのまま貼り付けて書き直させない | 参考にするのは考え方までにとどめ、文章や画像そのものを使わない |
| 出どころがわからない画像・文章 | 入力しない | 作った人や利用条件がわからないものは使わない |
「書き直しただけ」でも安心とはいえない
よくあるのが、他社のホームページの文章をAIに貼り付けて「言い回しを変えて」と指示し、自社のホームページに使ってしまうケースです。言葉を少し変えても、元の文章の構成や表現の特徴が残っていると、問題になる場合があります。参考にしたい文章があるときは、そこから学んだ要点を自分たちの言葉でメモにまとめ、そのメモをもとにAIに下書きを作らせるほうが安全です。
また、入力する素材には著作権だけでなく、個人情報や取引先の秘密情報が含まれていることもあります。個人情報の扱いについては、当社の「顧客情報・個人情報をAIで扱うときの注意点」の記事で詳しく説明しています。
社外に出す前の確認は5つの手順で行う
社内だけで使うメモや下書きと、ホームページ・広告・提案書など社外に出すものでは、確認の重さを変えるのが現実的です。社外に出すものは、次の手順で確認する流れを決めておくと安心です。
- 使う場所と目的を確認する:ホームページ、チラシ、SNS、提案書など、どこで誰に見せるものかをはっきりさせます。多くの人に見せるものほど、確認を丁寧にします
- 指示の内容を確認する:AIへの指示に、特定の作家名・作品名・他社の文章や画像が入っていなかったかを、作った本人に確認します
- 似ているものがないか調べる:文章は特徴的な一文をインターネットで検索する、画像は画像検索で似たものが出てこないかを確かめるなど、できる範囲で確認します
- 内容の正しさを確認する:著作権とは別に、AIの出力には事実の誤りが含まれることがあります。数字・名称・制度の説明などは、元の資料と照らし合わせます
- 確認した人と日付を残す:誰が、いつ、何を確認したかを簡単に記録します。後から問い合わせがあったときに、経緯を説明できます
社外に出す前の確認チェックリスト
- AIへの指示に、特定の作家名・作品名・キャラクター名を入れていない
- 他社の文章や画像を貼り付けて書き直させたものではない
- 入力した素材は、自社で作ったものか、利用条件を確認したものである
- 特徴的な文章や画像を検索し、よく似たものが見つからなかった
- ロゴやマークのように、他社の名前や印と紛らわしいものではない
- 数字・名称・事実関係を、元の資料で確認した
- 確認した人と日付を記録した
- 判断に迷う点は、上司や専門家に相談した
すべてを完璧に調べることは難しいため、「迷ったら使わない」「迷ったら相談する」という逃げ道を用意しておくことも大切です。特に広告や商品のパッケージなど、長く多くの人に見られるものは、専門家の確認を受けてから使うと安心です。
社内ルールに入れておきたい著作権の項目
著作権の注意点は、担当者の気づきに任せていると、人によって判断がばらつきます。社内のAI利用ルールに、次の項目を短く書いておくと、誰が使っても同じ基準で判断できるようになります。
| ルールの項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 指示で使わない言葉 | 特定の作家名・作品名・キャラクター名・他社名を指示に入れない |
| 入力してよい素材 | 自社で作ったもの、利用条件を確認した購入素材に限る。他社のホームページや記事は貼り付けない |
| 社外に出すものの確認 | 社外に出すものは、作った人以外の1名が確認チェックリストで確認してから使う |
| 特に慎重に扱うもの | ロゴ・広告・商品パッケージは、AIの出力をそのまま使わず、必要に応じて専門家に相談する |
| 記録の残し方 | 社外に出したものは、使ったAIのサービス、指示の内容、確認した人と日付を残す |
| 問題が起きたときの連絡先 | 似ているという指摘を受けたら、すぐに使用を止めて管理職に報告する |
使うAIのサービスの利用規約も確認する
AIのサービスによって、作ったものを商用で使えるかどうかや、入力した内容の扱いなどの条件が異なる場合があります。会社として使うサービスを決めるときに、利用規約で「作ったものの業務での利用」「入力した内容の扱い」を確認し、ルールに反映しておきましょう。規約は変わることがあるため、定期的に見直すことも大切です。
社内ルール全体の作り方は、当社の「AIの社内ルール(利用規定・ガイドライン)の作り方」の記事で説明しています。著作権の項目は、その中の「社外に出すときのルール」として組み込むと、ほかの項目と一緒に運用しやすくなります。
ポイント
ルールは細かく作り込むより、「使わない言葉」「入力しない素材」「社外に出す前は別の人が確認」の3つを確実に守ってもらうほうが効果があります。まずは短く始め、迷う例が出てきたら追加していきます。
業務の仕組みとして確認を組み込むと、担当者の負担が減る
確認の手順やルールを決めても、担当者が毎回意識して守るのは負担になります。そこで、よく使う業務については、確認の流れを最初から業務の仕組みに組み込んでおく方法があります。
たとえば、ブログ記事やSNS投稿の下書きをAIに任せる場合は、次のような形にできます。
- AIに渡す指示の型を会社で用意し、特定の作家名や他社の文章が入らないようにしておく
- 入力する素材は、自社の商品資料や過去の自社記事など、あらかじめ決めた範囲からだけ選ぶ
- AIが作った下書きは、そのまま公開せず、担当者が確認チェックリストで見てから公開する
- 公開した記事について、使った素材と確認した人を記録として残す
こうしておくと、担当者が一人ひとり判断しなくても、決められた範囲で安全にAIを使えます。下書きのAI活用の進め方は、当社の「SNS投稿・ブログ記事の下書きをAIで作る方法」の記事も参考にしてください。
当社のAI社員は、入力する情報の範囲や、人が確認する場面をあらかじめ決めたうえで、業務の担当として構築します。料金は初期費用+月5万円(税別、AI利用料は実費)で、初期費用はヒアリング後にお見積もりしています。運用を始めた後に「この素材は使ってよいか」「確認の手順を変えたい」といった相談が出てきても、月額の中で無制限に対応しています。
著作権の考え方は、AIの広がりに合わせて議論が続いている分野です。文化庁は、AIと著作権についての考え方や解説資料を公表しています。社内ルールを作るときや見直すときは、最新の情報を文化庁などの公式サイトで確認し、判断に迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。
よくある質問
生成AIで作った画像や文章は、商用利用しても大丈夫ですか?
使うAIのサービスの利用規約で商用利用が認められているかをまず確認し、そのうえで既存の作品に似ていないかを確かめることが大切です。似ている場合は問題になることがあるため、最新の情報は文化庁などの公式サイトで確認してください。
AIの出力が他人の作品に似てしまったら、著作権侵害になりますか?
似ている程度や使い方などによって判断が変わる場合があり、一概には言えません。似ているという指摘を受けたら使用を止め、弁護士などの専門家に相談するのが安全です。
他社のホームページの文章をAIで書き直して使ってもよいですか?
言い回しを変えても元の文章の構成や特徴が残っていると問題になる場合があるため、おすすめしません。参考にしたい点は自分たちの言葉でメモにまとめ、そのメモをもとにAIに下書きを作らせるほうが安全です。
生成AIの著作権について、社内ルールには何を書けばよいですか?
指示に特定の作家名や作品名を入れないこと、入力してよい素材の範囲、社外に出す前に別の人が確認すること、問題が起きたときの連絡先の4点が基本です。まずは短く決め、迷う例が出たら追加していきます。