物流・運送業でAIを活用する方法——配送の問い合わせ・受注入力・日報や点呼記録の整理
結論
物流・運送業でAIを活用するなら、「配送状況の問い合わせへの回答案づくり」「FAXやメールで届く受注・伝票の入力」「日報や点呼記録の整理と集計」の3つから始めるのが現実的です。AIは情報の読み取り・整理・文案づくりを担い、点呼の実施や運行の判断など法令上の責任がある業務は、これまでどおり運行管理者などの人が行います。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、物流・運送業でのAI活用の方法について解説します。物流・運送業の事務所では、電話での配送状況の問い合わせ、FAXで届く受注の入力、ドライバーの日報や点呼記録の整理など、細かな事務作業が1日中続きます。人手が足りない中で、配車や現場の対応と並行してこなしている会社も多いはずです。この記事では、物流・運送業でAIに任せやすい仕事、任せてはいけない判断、導入の手順と注意点を説明します。
物流・運送業の事務所で時間を取られている3つの業務
物流・運送業の事務所では、次の3つの業務に時間が集まりやすい傾向があります。
- 配送の問い合わせ対応:荷主や届け先から「荷物は今どこか」「何時ごろ着くか」「再配達はできるか」といった問い合わせが電話やメールで入り、そのたびに配車表やドライバーへの確認が必要になる
- 受注・伝票の入力:荷主からFAX・メール・PDFで届く配送依頼を、自社のシステムや配車表に手で入力する。書式が荷主ごとに違うため、確認にも時間がかかる
- 日報や点呼記録の整理:ドライバーの日報、点呼の記録、走行距離や時間などを集めて整理し、保管・集計する
どれも「情報を読み取って、整理して、決まった形にまとめる」仕事です。こうした仕事はAIが得意とする分野で、うまく任せると、事務担当や配車担当が本来の仕事に使える時間を増やせます。
当社にご相談いただいた約90社の中にも物流の会社があり、人手不足の中で事務作業をどう減らすかというご相談は、業種を問わず多く寄せられています。
AIに任せる仕事と人が責任を持つ仕事
物流・運送業でAIを使うときは、法令上の責任がある業務と、その記録や整理の業務をはっきり分けることが大切です。
| 業務 | AIに任せること | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 配送の問い合わせ | 配車表や配送状況の情報をもとに回答案を作る | 回答案を確認して返信する。遅延やトラブルの対応を判断する |
| 受注・伝票の入力 | FAX・メール・PDFから届け先・品名・数量・希望日時を読み取り、入力する | 入力内容を確認し、受注を確定する。配車を決める |
| 日報の整理 | 日報の内容を一覧にまとめ、記入漏れを知らせる | 内容を確認し、異常があれば対応する |
| 点呼記録の整理 | 記録を決まった形に整え、記入漏れや未記録の項目を知らせる | 点呼そのものを実施し、運行の可否を判断する |
点呼は、ドライバーの健康状態や酒気帯びの有無などを確認し、安全に運行できるかを判断する大切な業務です。運行管理者などが法令に沿って実施する責任があり、AIが代わりに判断するものではありません。AIはあくまで、記録を整え、漏れに気づけるようにする「記録係の補助」として使います。
ポイント
点呼や運行管理の方法には、国の法令や通達で定められたルールがあり、改正されることもあります。記録の形式や保存の方法を変える場合は、国土交通省などが公開している最新の情報を確認してから進めてください。
配送の問い合わせ対応をAIで速くする方法
配送状況の問い合わせは、1件ごとの対応は短くても、件数が多く、電話がつながらないと荷主の不満にもつながります。AIを使うと、次のような流れにできます。
- メールやWebフォーム、チャットで届いた問い合わせを1か所にまとめる
- AIが問い合わせの内容(荷物の特定、届け先、日時など)を読み取る
- 配車表や配送状況の情報をもとに、回答案を作る
- 担当者が回答案を確認し、必要に応じて修正して送る
- 遅延・破損・クレームなど慎重な対応が必要なものは、AIが回答案を作らずに担当者へすぐ知らせる
当社の不動産(従業員15名規模)の導入事例では、問い合わせの受付と回答案の作成をAIに任せ、担当者が確認して送る形にしたことで、初回返信が半日から10分になりました。業種は違いますが、「情報を調べて決まった形で答える」という問い合わせ対応の構造は物流でも同じです。
電話の問い合わせが多い会社では、まずはメールやフォームで受け付けられる問い合わせから始め、よくある質問をまとめていくと、電話の件数そのものを減らすことにもつながります。
受注・伝票の入力をAIで減らす方法
荷主からの配送依頼がFAXやPDFで届く会社では、その入力が毎日の大きな負担になります。荷主ごとに書式が違うため、慣れた担当者でないと入力できない、という属人化も起きがちです。
AIを使うと、届いたFAXやPDFから届け先・品名・数量・希望日時などを読み取り、配車表や自社のシステムに入る形に整えて入力できます。人は、AIが入力した内容を元の書類と見比べて確認し、確定するだけになります。
当社の製造業(従業員30名規模)の導入事例では、FAXやPDFで届く受注書の入力をAIに任せた結果、事務担当の受注書入力が1日2時間から15分になりました。物流の配送依頼も、「書式の違う書類から必要な項目を読み取って入力する」という点で同じ仕組みを使えます。
ただし、手書きの依頼書や、文字がつぶれたFAXは読み取りを誤ることがあります。届け先の住所や日時のように、間違えると配送に直接影響する項目は、必ず人が確認してから確定する運用にします。
日報や点呼記録の整理で気をつけること
日報や点呼記録は、紙やエクセル、アプリなど会社によって残し方がさまざまです。AIは、ばらばらの記録を決まった形に整え、記入漏れを知らせ、月ごとの集計を作るといった作業を手伝えます。
記録の整理をAIに任せる前のチェックリスト
- 点呼の実施と判断は、これまでどおり運行管理者などが行う体制になっているか
- 記録に残すべき項目と保存の期間・方法を、最新の法令や公式の情報で確認したか
- AIが整えた記録を、誰が確認して確定するかが決まっているか
- 記録の原本(紙や機器のデータ)をどこに保管するかが決まっているか
- ドライバーの健康状態などの個人の情報を、閲覧できる人を限定しているか
AIが記録を整えるときに、記入漏れや数値の不自然な点に印を付けるようにしておくと、確認する人が見落としに気づきやすくなります。ただし、AIが「問題なし」と判断したからといって確認を省くのではなく、最終的な確認と判断は人が行います。
また、ドライバーの体調や検査の結果は、慎重に扱うべき個人の情報です。入力したデータがAIの学習に使われない法人向けのサービスや設定を選び、保存場所と閲覧できる人を事前に決めておきます。
導入は「1つの業務から」が成功の近道
物流・運送業でAIを導入するときは、いきなり全部を変えるのではなく、効果が見えやすい1つの業務から始めるのがおすすめです。
- 時間がかかっている業務を1つ選ぶ:受注の入力など、毎日発生して手間が大きいものが向いています
- 今のやり方を書き出す:誰が、何を見て、どこに入力しているかを整理します
- AIに任せる範囲と人が確認する範囲を決める:確定や判断は人が行う前提で設計します
- しばらく並行して運用する:AIの結果と人の作業を見比べ、精度を確かめます
- 次の業務へ広げる:問い合わせ対応や記録の整理などへ順に広げます
当社のAI社員は、こうした業務を「担当者」として引き受ける形で構築します。料金は初期費用+月5万円(AI利用料は実費)で、構築期間はジュニア2週間程度、ミドル1か月程度が目安です。導入後のルール変更や調整にも月額の中で対応しています。
よくある質問
点呼をAIに任せることはできますか?
点呼の実施や運行できるかどうかの判断は、法令に沿って運行管理者などの人が行うものです。AIは記録の整理や記入漏れの通知など、記録業務の補助として使うことをおすすめします。
FAXで届く手書きの配送依頼も読み取れますか?
多くの場合は読み取れますが、文字がつぶれていると誤ることがあります。届け先や日時など配送に直結する項目は、人が確認してから確定する運用にします。
今使っている配車システムや配車表はそのまま使えますか?
多くの場合、今のシステムや表を使ったまま、入力や整理の部分をAIに任せる形にできます。連携の方法はシステムによって変わるため、ヒアリングで確認します。
ドライバーにも新しい操作を覚えてもらう必要がありますか?
できるだけ今のやり方を変えずに済むよう設計します。日報の出し方などを変える場合も、写真を送るだけといった簡単な方法から始めることが多いです。