業種別の活用公開日

建設・設備業でAIは何に使えるか——見積の下書き・日報・現場写真と書類の整理から始める方法

結論

建設・設備業でAIを使うなら、見積の下書き、日報の集計、現場写真や書類の整理といった「現場が終わってから事務所で行う事務作業」から始めるのが現実的です。施工の判断や安全の確認は人が担い、決まった手順のくり返しをAIに任せることで、現場の責任者や事務担当者が夜遅くまで書類に追われる状態を減らせます。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、建設・設備業でのAI活用の始め方について解説します。建設・設備業では、日中は現場に出て、夕方に事務所へ戻ってから見積や日報、写真の整理、書類づくりをするという働き方が珍しくありません。人手が足りない中で、現場の仕事と事務の仕事を同じ人が抱えていることも多いはずです。この記事では、建設・設備業でAIに任せやすい業務と、導入の進め方、人が必ず確認すべき点を、建設・設備業の会社からもご相談をいただいている当社の立場から説明します。

建設・設備業で事務作業が重くなる理由

建設・設備業の事務作業が重くなりやすいのは、次のような業界ならではの事情があるためです。

  • 現場と事務を同じ人が担っている:現場の責任者が、日中は現場を見て、夜に見積や報告書を作るという働き方になりやすい
  • 案件ごとに書類が多い:見積書、工程表、作業日報、写真台帳、完了報告書、請求書など、1つの工事で多くの書類が発生する
  • 写真の量が多い:工事の前・途中・後の写真を撮り、案件や工程ごとに整理して報告書に貼る作業が毎回発生する
  • 情報が人に偏っている:過去の見積の単価や、お客様ごとの注意点が、ベテランの頭の中や個人のパソコンに残っている
  • 元請けやお客様ごとに書式が違う:提出先によって報告書や写真台帳の形式が異なり、同じ内容を何度も作り直す

これらの作業の多くは「決まった手順をくり返す」「情報を集めて整える」という性質を持っています。こうした作業は、AIの仕組みに任せやすい部分です。

建設・設備業でAIに任せやすい5つの業務

建設・設備業でAIに任せやすい業務を、任せられる範囲と人の役割に分けて整理すると、次のようになります。

業務AIに任せられること人が担うこと
見積の下書き過去の見積や単価表をもとに、工事内容から項目と数量の下書きを作る現場の状況を踏まえた数量・単価の判断、最終の金額決定
日報の集計現場ごとの日報を集め、作業の進み具合や人員を一覧にまとめる遅れや問題への対応の判断
現場写真の整理写真を案件・日付・工程ごとに振り分け、写真台帳の下書きを作る写真の選定と、提出前の確認
報告書・書類の作成日報や写真から完了報告書などの下書きを作る内容の確認と、提出先に合わせた最終調整
問い合わせの一次対応メールやWebからの問い合わせを整理し、返信の下書きを作る現地調査の要否や対応可否の判断

どの業務でも共通しているのは、AIは下書きと整理まで、判断と確定は人という分担です。建設・設備業では、現場の状況によって答えが変わる場面が多いため、この線引きを最初に決めておくことが大切です。

また、5つの業務はばらばらに見えて、実はつながっています。現場から届く日報と写真が整理されていれば、そこから報告書の下書きが作れ、完了した工事の情報は次の見積の参考にもなります。最初の1つは日報や写真の整理のような入口の業務から始め、たまったデータを報告書や見積に活かしていく順番にすると、AIに任せられる範囲を無理なく広げられます。

見積の下書きをAIに任せるときの考え方

見積の作成は、建設・設備業で特に時間がかかり、ベテランに頼りがちな業務です。AIに任せる場合は、次のような流れになります。

  1. お客様からの依頼内容や現地調査のメモ、図面などから、工事の内容を整理する
  2. 過去の似た工事の見積や、社内の単価表をもとに、項目と数量の下書きを作る
  3. 過去の見積と比べて金額が大きく違う項目や、単価表にない項目に印を付ける
  4. 担当者が現場の状況を踏まえて数量と単価を確認し、金額を決めて仕上げる

この方法の良いところは、ベテランが持っていた「過去の見積の知恵」を、若手や事務担当者でも使えるようになることです。過去の見積が整理されていればいるほど、下書きの質は上がります。

ポイント

AIが作るのはあくまで「見積の下書き」です。現場の状況、資材の価格の変動、工期の条件などを踏まえた最終の判断は、必ず担当者が行ってください。

なお、見積の書き方や契約の進め方には、建設業法などの法令にかかわる部分もあります。見積や契約書の記載内容をAIの仕組みに組み込むときは、自社の今のやり方が法令に沿っているかをあわせて確認し、最新の要件は国土交通省などの公式情報で確認してください。判断に迷う点は、専門家への相談をおすすめします。

日報と現場写真の整理は「スマートフォンから送るだけ」にする

日報と現場写真の整理は、現場で働く人の負担を直接減らせる業務です。ポイントは、現場の人が事務所に戻ってから作業しなくて済むようにすることです。

日報:短い入力で済ませ、集計はAIに任せる

現場の人は、作業が終わったらスマートフォンのフォームやチャットで、現場名・作業内容・人数・気になったことなどを短く送るだけにします。AIがそれを集めて、現場ごと・日ごとに一覧にまとめ、工程の遅れや「材料が足りない」「近隣から声をかけられた」といった確認が必要な内容に印を付けて、事務所の責任者に知らせます。

現場写真:送った写真をAIが振り分ける

現場で撮った写真を、決まったチャットやフォルダに送るだけにしておき、AIが案件名や日付、工程(着工前・施工中・完了など)ごとに振り分けます。写真台帳や報告書に貼る写真の候補を並べるところまでAIが行えば、担当者は選んで確認するだけになります。

日報・写真の仕組みをつくる前に決めること

  • 現場の人が日報と写真を送る場所(チャット、フォームなど)
  • 日報に必ず入れる項目(現場名・作業内容・人数・気になったこと など)
  • 写真を振り分ける単位(案件名・日付・工程 など)
  • 写真に案件名を付けるルール(送る前に現場名を一言書く など)
  • まとめた内容を誰が確認し、どこに保存するか

写真の振り分けはAIでも間違えることがあるため、提出前の写真台帳は必ず人が確認してください。元請けやお客様に提出する書類では特に大切です。

建設・設備業でAIを導入する手順と注意点

建設・設備業でAIを導入するときは、次の順番で進めると現場の混乱を避けやすくなります。

  1. 事務作業を書き出す:見積、日報、写真、報告書、請求など、1つの工事で発生する事務作業を書き出し、誰がどれくらい時間を使っているかを確認する
  2. 1つの業務を選ぶ:最初は、毎日・毎週発生していて、現場の判断が少ない業務(日報の集計や写真の整理など)を選ぶ
  3. 現場の入力方法を決める:現場の人が使い慣れたスマートフォンのチャットなどを入口にして、新しいことを覚える負担を小さくする
  4. 1つの現場や班で試す:いきなり全現場で始めず、1つの現場や班で試して、入力のしかたや印を付ける条件を調整する
  5. 見積や報告書に広げる:日報と写真の仕組みが定着したら、そのデータを使って報告書や見積の下書きに広げる

注意点:現場の人の手間を増やさない

AIを入れたことで現場の入力が増えてしまうと、使われなくなります。現場の人にとっては「今より楽になる」ことが何より大切です。

注意点:安全と品質の判断はAIに任せない

安全管理や施工の品質にかかわる判断は、資格や経験を持つ人が行うものです。AIは記録の整理や見落としの防止に使い、判断の主体にはしないでください。

作れる人がいない建設・設備業の会社がAIを使い続けるには

建設・設備業の会社では、社内にAIやITに詳しい人がいないことも珍しくありません。そのため、最初に仕組みを作ること以上に、「使いながら直していける体制」があるかどうかが大切になります。

  • 元請けやお客様から報告書の書式を変えるよう言われた
  • 新しい工種を始めたので、見積の項目を増やしたい
  • 現場の人から、入力の項目を減らしてほしいと言われた

こうした変更は、建設・設備業では日常的に起きます。そのたびに仕組みが止まってしまうと、結局は手作業に戻ってしまいます。

当社にご相談いただいた約90社には、建設・設備業の会社も含まれています。当社のAI社員は、会社ごとの書式や現場の流れに合わせて仕組みをつくり、初期費用+月5万円で、書式の変更や業務の追加などの調整・相談に回数の制限なく対応しています。まずは日報か写真の整理のどちらか1つから、小さく始めてみることをおすすめします。

よくある質問

現場の職人さんがスマートフォンの操作に慣れていなくても使えますか?

普段使っているチャットに写真や短い文章を送るだけの形にすれば、新しい操作を覚える負担はほとんどありません。入力の方法は、現場の方が使い慣れているものに合わせて決めることをおすすめします。

AIが作った見積をそのままお客様に出してもよいですか?

おすすめしません。AIが作るのは過去の見積や単価表をもとにした下書きなので、現場の状況や資材の価格などを踏まえて、担当者が数量と金額を確認してから提出してください。

図面を読み取って数量を出すこともできますか?

図面の種類や書き方によっては、読み取りや数量の拾い出しの補助ができる場合があります。ただし精度は図面によって大きく変わるため、まずは実際の図面で試し、人が確認する前提で使えるかどうかを見極めることが大切です。

小さな工務店や設備会社でも導入する意味はありますか?

あります。少人数の会社ほど、現場と事務を同じ人が担っていることが多く、日報や写真の整理を減らすだけでも負担が軽くなります。まずは1つの業務に絞って始めると、費用と手間を抑えられます。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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