不動産会社でのAI活用——問い合わせ返信・物件資料の作成・追客を効率化する方法
結論
不動産会社でAIが特に役立つのは、ポータルサイトや自社サイトからの問い合わせへの返信、物件資料や紹介文の下書き、反響客への追客の3つです。いずれも「AIが下書きと準備をして、人が確認して送る」形にすることで、返信の速さと内容の正確さを両立でき、当社が支援した不動産会社(従業員15名規模)では問い合わせへの初回返信が半日から10分になりました。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、不動産会社でのAI活用(問い合わせ返信・物件資料・追客)について解説します。不動産会社の営業担当は、内見の案内や契約の手続きで外に出ている時間が長く、その間に届いた問い合わせへの返信や、物件資料の作成、過去の反響客への連絡が後回しになりがちです。この記事では、不動産会社のどの業務にAIをどう使えるのか、どんな点に気をつければよいのかを、実際の導入事例とあわせて説明します。
不動産会社で手間がかかっている3つの業務
不動産会社の業務の中でも、件数が多く、しかも担当者の手が空いているときにしか進められない業務が、次の3つです。
- 問い合わせへの返信:ポータルサイト・自社サイト・メール・LINEから届く問い合わせに、物件の空き状況や内見の候補日を添えて返す
- 物件資料・紹介文の作成:物件の情報をもとに、販売図面や紹介文、ポータルサイトへの掲載文を作る
- 追客:すぐには決まらなかったお客様に、条件に合う新着物件の紹介や近況の確認を、間を空けすぎずに続ける
不動産の問い合わせは、お客様が複数の会社に同時に問い合わせていることが多く、最初に返信した会社が内見の予約につながりやすいと言われます。一方で、営業担当が内見中や移動中だと、返信が数時間後や翌日になることも珍しくありません。追客も重要だとわかっていながら、日々の対応に追われて手が回らないという声をよく聞きます。
問い合わせ返信:AIが返信案を作り、担当者が確認して送る
問い合わせへの返信は、AIを使うと最も効果が出やすい業務です。AIには次の流れを任せます。
- ポータルサイト・自社サイト・メール・LINEから届いた問い合わせを1か所に集める
- 問い合わせの内容(物件名、希望条件、内見の希望日など)を読み取る
- 物件情報と空き状況を確認し、内見の候補日を添えた返信案を作る
- 担当者に通知し、担当者が内容を確認して送信する
担当者は、移動中や内見の合間にスマートフォンで返信案を確認し、必要なら一言直して送るだけになります。夜間や休日に届いた問い合わせには、受け付けたことと次の連絡の目安をまず自動で伝え、営業時間に担当者が詳しく返信する形にもできます。
導入事例:不動産会社(従業員15名規模)で初回返信が半日から10分に
当社が支援した不動産会社(従業員15名規模)では、問い合わせ担当が他の業務と並行して返信していたため、初回の返信までに半日かかることがありました。AI社員を導入し、返信案の作成までを任せた結果、問い合わせへの初回返信は半日から10分になりました。担当者は、AIが作った返信案を確認して送ることに集中できるようになっています。
ポイント
物件の空き状況や賃料・価格などの条件は変わりやすいため、AIが返信案に書く情報は、必ず最新の物件情報から取るようにします。古い情報のまま返信しないよう、送信前に担当者が確認する工程を残すことが大切です。
物件資料・紹介文:AIが下書きし、表示ルールは人が確認する
物件資料や紹介文の作成も、AIが得意な業務です。物件の所在地・間取り・面積・設備・周辺環境などの情報をもとに、次のようなものの下書きを作れます。
- ポータルサイトや自社サイトに掲載する物件紹介文
- 販売図面やチラシに載せる説明文
- お客様に送る物件提案のメール文
- 周辺の生活施設をまとめた案内文
同じ物件でも、ファミリー向け、単身者向け、投資目的のお客様向けなど、伝えたい相手に合わせて表現を変えた下書きを作れるのもAIの強みです。
広告の表示ルールは必ず人が確認する
不動産の広告には、宅地建物取引業法や、業界の自主ルールである不動産の表示に関する公正競争規約などにもとづく表示のルールがあります。たとえば、根拠のない「最高」「格安」といった表現や、事実と違う駅からの距離の表示などは、問題になる場合があります。AIは魅力的に見せようとして、こうした表現を使ってしまうことがあるため、使ってはいけない表現をあらかじめAIに伝えたうえで、掲載前に必ず担当者が確認するようにしてください。表示のルールは改定されることがあるため、最新の内容は業界団体などの公式情報で確認してください。
追客:連絡のタイミングと内容をAIが用意する
追客は、すぐに成約しなかったお客様との関係を続け、住み替えや購入のタイミングで選んでもらうための大切な業務です。AIには、次のような作業を任せられます。
- 連絡のタイミング管理:前回の連絡から一定期間が空いたお客様を一覧にし、担当者に知らせる
- 新着物件の照合:新しく入った物件と、お客様の希望条件(エリア・予算・間取りなど)を照らし合わせ、紹介できそうなお客様を抜き出す
- 連絡文の下書き:お客様ごとの希望条件や過去のやり取りをふまえた、紹介メールやLINEの文面を作る
- やり取りの記録:お客様からの返信内容を読み取り、顧客管理のシートに記録する
| 業務 | AIの役割 | 人の役割 |
|---|---|---|
| 問い合わせ返信 | 内容の読み取り、返信案の作成 | 確認して送信、内見の対応 |
| 物件資料・紹介文 | 下書きの作成、表現の書き分け | 事実と表示ルールの確認 |
| 追客 | 連絡の時期の管理、物件の照合、文面の下書き | 送る相手と内容の判断、商談 |
追客は、連絡の回数が多すぎるとお客様の負担になります。連絡の間隔や、連絡を控えてほしいと言われたお客様の扱いを決めておき、AIが自動で送り続けることがないように、送信は担当者が判断する形にしておくのが安心です。
不動産会社がAIを導入するときの進め方と注意点
不動産会社でAIを導入するときは、次の順番で進めるとスムーズです。
- 問い合わせの入口(ポータルサイト・自社サイト・メール・LINE)と、物件情報・顧客情報を管理している場所を確認する
- 最も負担の大きい業務を1つ選ぶ(多くの場合、問い合わせへの返信から始めると効果が見えやすい)
- 過去の問い合わせと返信の例を集め、返信の型や使ってはいけない表現を決める
- 実際の問い合わせで試運転し、返信案の内容を担当者が確認しながら調整する
- 安定したら、物件資料の下書きや追客に範囲を広げる
導入前に確認したいチェックリスト
- 物件の空き状況や価格の最新情報を、AIが参照できる場所にまとめられるか
- お客様に送る前に、担当者が確認する工程を残しているか
- 広告で使ってはいけない表現を、AIに伝える準備ができているか
- お客様の個人情報を扱うため、学習に使われない法人向けのサービスや設定を選んでいるか
- 顧客情報の保存場所と、見られる人の範囲を決めているか
お客様の氏名・連絡先・希望条件・年収などは個人情報にあたるため、個人情報保護法などのルールにもとづいた取り扱いが必要です。社内の取り扱いルールを確認し、判断に迷う場合は最新の情報を公式サイトで確認してください。
AIに任せないほうがよい不動産業務と、人が担うべき役割
AIは不動産会社の多くの業務で役立ちますが、すべてを任せられるわけではありません。次のような業務は、AIに準備や下書きを任せても、最終的な判断と説明は人が担うべきです。
- 重要事項の説明や契約の締結:宅地建物取引士が行うべき説明や、契約内容の最終確認は、AIに任せることはできません。AIは、説明に使う資料の下書きや、確認すべき項目の洗い出しを手伝う役割にとどめます
- 価格や条件の交渉:売主・貸主とお客様の間に立つ交渉は、相手の事情をくみ取りながら進める必要があり、人の経験が生きる場面です
- 物件の状態の判断:建物の傷みや周辺の環境など、現地を見なければわからない情報は、AIが資料から推測するのではなく、担当者が確認した内容を使います
- お客様の事情に深く関わる相談:住み替えの理由や資金計画など、お客様の生活に関わる相談は、担当者が直接話を聞くことで信頼につながります
言い換えると、AIに任せるのは「速さと量が求められる作業」、人が担うのは「信頼と責任が求められる仕事」です。問い合わせへの返信や資料の下書き、追客の準備をAIに任せることで、営業担当は内見の案内や商談、契約の説明など、お客様と向き合う時間を増やせます。
当社では、こうした役割分担を最初のヒアリングで整理し、どこまでをAI社員に任せ、どこから人が担当するかを決めてから仕組みをつくります。導入後に業務の進め方が変わった場合も、月5万円の範囲で相談しながら調整できます。
よくある質問
ポータルサイトからの問い合わせにもAIで返信できますか?
多くの場合、ポータルサイトから届く問い合わせの通知メールを読み取り、返信案を作る形で対応できます。ポータルサイトごとに返信の方法が違うため、利用中のサービスに合わせて仕組みをつくります。
AIが作った物件紹介文をそのまま掲載しても大丈夫ですか?
そのまま掲載することはおすすめしません。不動産の広告には表示のルールがあり、事実と違う内容や根拠のない強調表現が問題になる場合があるため、掲載前に担当者が必ず確認してください。
夜間や休日の問い合わせにも対応できますか?
受け付けたことと次の連絡の目安を自動で伝え、営業時間に担当者が詳しく返信する形にできます。内見の日程確定など判断が必要な内容は、担当者が確認してから送るのが安心です。
今使っている顧客管理のシートやシステムはそのまま使えますか?
多くの場合、そのまま使えます。今使っているシートやシステムに記録する形でAIの仕組みをつくるため、連携の方法はヒアリングで確認します。