学習塾・スクールでAIは何に使えるか——保護者・受講生への連絡、問い合わせ対応、教材と報告書の下書き
結論
学習塾やスクールでAIを使うなら、授業そのものより先に「問い合わせ・体験申し込みの受付」「保護者や受講生への連絡と学習報告の下書き」「教材・小テストの作成補助」といった授業以外の事務作業から始めるのが効果的です。講師や教室長が事務に追われる時間を減らし、生徒と向き合う時間を増やすことが一番の目的になります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、学習塾・スクールでのAIの活用方法について解説します。学習塾やスクールの教室長・講師は、授業の準備に加えて、問い合わせへの返信、体験授業の日程調整、保護者への連絡、毎月の学習報告、教材のプリント作りと、授業以外の仕事をたくさん抱えています。授業が始まる夕方以降は事務の手が止まり、問い合わせへの返信が翌日になって入会の機会を逃すこともあります。この記事では、学習塾・スクールの業務のどこにAIを使えるのか、何から始めればよいのか、子どもや保護者の情報を扱ううえで注意すべき点は何かを、AI社員を提供している当社の立場から説明します。
学習塾・スクールの「授業以外の仕事」はなぜ重くなるのか
学習塾やスクールの事務が重くなりやすいのには、業種ならではの理由があります。
- 忙しい時間帯が授業と重なる:問い合わせや保護者からの連絡は夕方から夜に集中するが、その時間は講師が授業中で返信できない
- 一人ひとりに合わせた連絡が多い:成績や出欠、宿題の状況など、生徒ごとに内容の違う連絡や報告が毎月必要になる
- 時期によって仕事の量が大きく変わる:入会の多い時期、講習の時期、テスト前などに、問い合わせや日程調整が一気に増える
- 教室長が何でも担当している:小さな教室ほど、教室長が授業・営業・事務・保護者対応のすべてを抱えている
こうした仕事のうち、「決まった形の文章を作る」「情報を集めて整える」「よくある質問に答える」部分は、AIの仕組みが得意とするところです。一方、生徒の様子を見て声をかける、保護者の相談に耳を傾けるといった、人と人との関わりは講師の大切な役割として残ります。
学習塾・スクールでAIを使える主な業務
学習塾・スクールでAIを使いやすい業務を、効果の出やすさと注意点とあわせて表にまとめます。
| 業務 | AIに任せること | 人が担うこと |
|---|---|---|
| 問い合わせ・体験申し込みの受付 | 料金・時間割・コースなどよくある質問への回答、体験授業の候補日の案内、申し込み内容の整理 | 入会相談や個別の事情がある問い合わせへの対応 |
| 保護者・受講生への連絡 | 休講や日程変更のお知らせ、面談日程の調整、連絡文の下書き | 内容の確認と送信、気をつかう連絡(成績の悩みなど) |
| 学習報告・面談資料 | 出欠・小テストの点数・講師のメモから、生徒ごとの報告文の下書きを作る | 生徒の様子を踏まえた一言の追加と最終確認 |
| 教材・小テストの作成 | 単元に合わせた練習問題や解説の下書き、難易度別の問題の作り分け | 内容の正しさの確認、生徒に合わせた選択 |
| 申し込み・入金の管理 | 講習の申し込み一覧の作成、未提出・未入金の一覧と案内文の下書き | 保護者への個別の連絡と例外の判断 |
ポイント
教材や問題をAIに作らせる場合は、答えや解説が間違っていることがあるため、必ず講師が確認してから使います。特に数学の計算や、歴史・理科の事実は、教科書や信頼できる資料と照らし合わせてください。
最初に取り組むなら「問い合わせへの初回返信」がおすすめ
何から始めるか迷ったら、問い合わせ・体験申し込みへの初回返信から始めるのがおすすめです。理由は3つあります。
- 効果が見えやすい:返信が早くなれば、体験授業の申し込みにつながりやすくなる。返信までの時間という、わかりやすい数字で効果を確かめられる
- 答えの材料がそろっている:料金表、時間割、コースの説明など、回答のもとになる情報はすでにホームページやパンフレットにある
- 授業中でも止まらない:講師が授業をしている夕方から夜の時間帯でも、AIがよくある質問に答え、体験の候補日を案内できる
当社の導入事例でも、不動産会社(従業員15名規模)の問い合わせ担当の初回返信が、半日かかっていたものから10分ほどになりました。業種は違いますが、「問い合わせが来た時間に人が手を離せない」という事情は学習塾・スクールとよく似ています。
AIが答えない質問を決めておく
「うちの子は今から間に合いますか」「成績が下がって悩んでいます」といった相談には、AIが一般論で答えるのではなく、教室長が直接対応すべきです。AIには「受け付けました。担当者から改めてご連絡します」と返させ、教室長に知らせる流れにしておきます。
学習報告の下書きで、講師の「書く時間」を減らす
毎月の学習報告や面談の資料は、生徒の数だけ作る必要があり、講師にとって大きな負担です。AIを使うと、次のような流れにできます。
- 出欠、小テストの点数、宿題の提出状況を、決まった一覧にまとめておく
- 講師は授業のあとに、生徒ごとに一言のメモ(「計算は速くなった」「集中が切れやすい」など)を残す
- 月末にAIが、一覧とメモをもとに生徒ごとの報告文の下書きを作る
- 講師が下書きを読み、生徒の様子を踏まえて言葉を直し、確認してから保護者に送る
報告文の中で一番大切なのは、講師がその生徒を見ていることが伝わる言葉です。AIに任せるのは文章の形を整える部分にとどめ、生徒をよく知る講師の一言を必ず入れるようにすると、保護者との信頼を損なわずに作業時間を減らせます。
子ども・保護者の情報を扱ううえで気をつけること
学習塾・スクールでは、子どもの名前や成績、保護者の連絡先など、慎重に扱うべき情報を多く預かっています。AIを使う前に、次の点を確認しておきましょう。
学習塾・スクールでAIを使う前のチェックリスト
- 入力したデータが学習に使われない、法人向けのサービスや設定を選んでいる
- 成績や家庭の事情など、AIに入れない情報の範囲を決めている
- 講師が個人のアカウントや無料の道具で生徒の情報を扱わないルールがある
- 保護者に送る文章は、必ず人が確認してから送る流れになっている
- AIが答えたことを、保護者に説明できるようにしている
個人情報の扱いは、法令や自治体・業界のルールにかかわる場合があります。最新の情報は個人情報保護委員会などの公式サイトで確認し、判断に迷う点は専門家に相談してください。
生徒の学習でAIを使う場合は別に考える
生徒が自分でAIを使って勉強する場面については、宿題の答えをそのまま写してしまうなど、教育の方針にかかわる問題があります。この記事で扱った「教室の事務をAIで減らす」使い方とは分けて、教室としての方針を決めることをおすすめします。
小さな教室でも始められる進め方
講師が数名の小さな教室でも、次のように段階を分ければ無理なく始められます。
- よくある質問を書き出す:電話やメールでよく聞かれる質問と、その答えを20〜30個書き出す
- 問い合わせの初回返信から試す:書き出した答えをもとに、AIが初回返信の下書きを作り、教室長が確認して送る形から始める
- 慣れたら自動返信の範囲を広げる:確認しても直す必要がほとんどない質問は、そのまま返信する範囲に移す
- 報告書や教材に広げる:問い合わせ対応で効果を確かめてから、学習報告の下書きや教材作りに広げる
当社のAI社員は、教室ごとのコースや料金、よくある質問に合わせて仕組みをつくり、初期費用+月5万円で、講習の時期ごとの案内の変更といった運用後の調整にも対応しています。毎年同じ時期に案内が変わる業種だからこそ、作って終わりにせず直し続けられることが大切です。
よくある質問
小さな個人塾でもAIを使う意味はありますか?
あります。教室長が授業と事務の両方を抱えている小さな教室ほど、問い合わせへの返信や連絡文の下書きをAIに任せる効果を感じやすくなります。まずは問い合わせの初回返信から始めるのがおすすめです。
AIに教材やテストを作らせても大丈夫ですか?
下書きを作らせるのは有効ですが、答えや解説が間違っていることがあるため、必ず講師が確認してから使ってください。生徒に合わせて問題を選ぶのも講師の役割です。
保護者への連絡をAIが自動で送ってしまうことはありませんか?
当社では、保護者に送る文章は人が確認してから送る流れを基本にしています。休講のお知らせなど決まった内容から自動化の範囲を少しずつ広げます。
生徒の成績をAIに入力しても問題ありませんか?
入力したデータが学習に使われない法人向けのサービスや設定を選び、入れる情報の範囲を決めておくことが前提です。個人情報の扱いは最新の公式情報も確認し、迷う場合は専門家に相談してください。