ビルメンテナンス・清掃業でAIは何に使えるか——作業報告書の作成・現場写真の整理・シフト調整・依頼対応
結論
ビルメンテナンス・清掃業でAIが役立つのは、作業報告書・点検報告の下書き、現場写真の整理と報告書への貼り付け、シフトと人員配置の調整案づくり、顧客からの依頼・問い合わせへの回答案づくりの4つです。どれもAIは「整理と下書き」までを担い、点検結果の判断、安全にかかわる対応、スタッフの配置の最終決定は人が責任を持って行います。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、ビルメンテナンス・清掃業でのAIの活用方法と始め方について解説します。ビルメンテナンスや清掃の会社では、現場スタッフが作業を終えたあと、手書きのメモや写真をもとに管理担当者が報告書を作り直し、お客様ごとの書式に合わせて提出する、という作業が毎月くり返されています。急な欠勤が出ればシフトを組み替え、お客様からの追加の依頼やクレームの電話にも対応しなければなりません。人手が足りない中で、管理担当者や経営者自身がこうした事務を夜までこなしている会社も多いはずです。この記事では、ビルメンテナンス・清掃の仕事のどこにAIを使えば負担が減るのか、人手不足の現場でどこから始めればよいのか、そしてAIに任せてはいけない部分はどこかを、さまざまな業種の会社からAI導入のご相談をいただいている当社の立場から説明します。
ビルメンテナンス・清掃業で事務の負担が重くなる理由
ビルメンテナンス・清掃の会社で、現場の外の事務作業が重くなりやすいのは、次のような業界ならではの事情があるためです。
- 現場が多く、散らばっている:オフィスビル、商業施設、マンション、病院など、複数の現場を少ない管理担当者で受け持っている
- 報告書の書式がお客様ごとに違う:同じ定期清掃や設備点検でも、提出先によって項目や書き方、写真の並べ方が異なり、作り直しの手間がかかる
- 現場の記録が紙やメッセージに分散している:手書きのチェック表、スマートフォンで撮った写真、チャットでの報告がばらばらに届き、まとめるのに時間がかかる
- 急な欠勤や人の入れ替わりが多い:パートやアルバイトのスタッフが多く、休みの連絡が入るたびにシフトを組み替える必要がある
- お客様からの依頼が細かく、時間を選ばない:追加の清掃、設備の不具合、作業日の変更などの連絡が電話やメールで届き、その都度対応が必要になる
これらの作業の多くは「現場の記録を決まった形に整える」「条件に合わせて組み合わせを考える」「記録を探して答える」という性質を持っています。こうした作業はAIの仕組みに任せやすい部分です。一方で、設備に異常があるかどうかの判断や、安全にかかわる対応は、経験のある人が責任を持つべき部分です。この線引きを最初に決めておくことが、ビルメンテナンス・清掃の仕事でAIを使うときの一番のポイントです。
ビルメンテナンス・清掃の仕事でAIに任せやすい4つの業務と人の役割
ビルメンテナンス・清掃の会社でAIを使いやすい業務を、AIと人の役割に分けて整理すると次のようになります。
| 業務 | AIに任せられること | 人が担うこと |
|---|---|---|
| 作業報告書・点検報告の作成 | 現場のメモやチェック表、音声の記録から、お客様ごとの書式に合わせた報告書の下書きを作る | 点検結果の判断、異常があった場合の所見、提出前の確認 |
| 現場写真の整理 | 写真を現場・日付・作業の前後・場所ごとに分け、報告書に並べる案を作る | 写真が正しい場所のものかの確認、載せる写真の最終選定 |
| シフト・人員配置の調整 | スタッフの希望や資格、現場の必要人数をもとに、シフトの案や欠勤時の代わりの候補を出す | スタッフの体調や相性を踏まえた最終決定、本人への連絡と了解 |
| 依頼・問い合わせ対応 | 依頼の内容を整理し、作業記録や契約内容をもとにした回答案や受付の確認文を作る | 見積や追加料金の判断、クレームや事故への対応 |
どの業務でも、AIは準備と下書きまで、判断と確定は人という分担が基本です。人が一から作業していた部分をAIに置き換え、人は確認と判断に集中するという考え方で進めると、効果と安全性を両立しやすくなります。
また、4つの業務はつながっています。現場の記録と写真が整理されて残れば、報告書の作成にも、お客様からの「前回の作業はどうだったか」という問い合わせへの回答にも使えます。最初の1つを決めて始め、たまった記録を次の業務に活かしていく順番にすると、AIに任せる範囲を無理なく広げられます。
作業報告書・点検報告と現場写真の整理をAIで速くする
作業報告書の作成は、ビルメンテナンス・清掃の会社で毎月確実に発生し、管理担当者の時間を大きく取っている業務です。AIを使う場合は、次のような流れになります。
- 現場スタッフが、作業の内容や気づいた点を、決まった形のメモやスマートフォンへの音声入力で記録し、写真と一緒に送る
- AIが記録を読み取り、作業日・現場名・作業内容・気づいた点などの項目に整理する
- お客様ごとに決まった報告書の書式に合わせて、文章の下書きを作る
- 写真を「作業前」「作業後」や場所ごとに分け、報告書に並べる案を作る
- 前回の報告と比べて、記録が抜けている項目や、気になる点の記載に印を付ける
- 管理担当者が内容と写真を確認し、必要な所見を加えてから提出する
この方法の良いところは、現場スタッフの書き方がばらばらでも、報告書の体裁がそろうことと、管理担当者が「作り直す」作業から「確認する」作業に変わることです。お客様ごとの書式や、よく使う言い回しを事前にAIに覚えさせておくほど、下書きの質は上がります。
写真の整理で気をつけること
写真はAIで分類や並べ替えができますが、撮影した場所を取り違えることもあります。報告書に載せる前に、写真が正しい現場・正しい場所のものかを人が確認してください。また、建物の中の写真には、入居者や利用者の顔、掲示物の個人情報などが写り込むことがあります。お客様に提出する前に、写り込みがないかも確認するルールにしておきましょう。
ポイント
設備点検の報告書では、AIが作るのはあくまで「記録をもとにした文章の下書き」です。異常があるかどうか、修理や交換が必要かどうかの判断は、点検を行った担当者や有資格者が行い、その判断を報告書に書き加える形にしてください。
人手不足の現場ではシフトと人員配置の調整にAIを使う
ビルメンテナンス・清掃の会社では、パートやアルバイトのスタッフが多く、現場ごとに必要な人数や作業の時間帯も違います。シフト作成は、条件を頭の中で組み合わせる作業になりやすく、特定の管理担当者しかできない状態になりがちです。
シフトの案をAIに作らせる
スタッフごとの勤務できる曜日や時間帯、希望の休み、持っている資格、慣れている現場、通える範囲などを一覧にしておけば、AIがそれをもとにシフトの案を作れます。人が作る場合でも、AIの案をたたき台にすれば、一から組むより短い時間で済みます。当社の導入事例では、介護事業所(職員50名規模)の事務担当の方が、毎月のシフト作成を2日から半日に短縮しました。業種は違いますが、条件の多いシフトを組むという点はビルメンテナンス・清掃の仕事にも共通しています。
急な欠勤のときに代わりの候補を出す
当日の朝に欠勤の連絡が入ったとき、AIに「この現場のこの時間帯に入れる人」を、資格や移動の距離、その週の勤務時間を考えて候補として出させることができます。管理担当者は候補の中から選んで連絡するだけになり、電話をかけ続ける時間を減らせます。
シフト調整をAIに任せる前にそろえるもの
- スタッフごとの勤務できる曜日・時間帯と、希望の休みの集め方
- 現場ごとの必要人数、作業の時間帯、必要な資格や経験
- 1人あたりの勤務時間の上限など、社内で守っているルール
- AIの案をだれが確認し、最終的に決めるか
- スタッフへの連絡と了解をだれが取るか
勤務時間や休憩、雇用の条件にかかわるルールは、法令や就業規則によって決まる部分があります。AIの案がそうしたルールに合っているかは、最終的に人が確認してください。労務の扱いで判断に迷う場合は、最新の情報を公式サイトで確認したり、社会保険労務士などの専門家に相談したりすることをおすすめします。
顧客からの依頼・問い合わせ対応はAIが受付と回答案を担う
お客様からは、「来週の定期清掃の日を変えたい」「トイレの水が流れにくい」「エントランスの床を追加で洗ってほしい」といった依頼や問い合わせが、電話やメールで日々届きます。AIを使うと、次のような対応ができます。
- 依頼の内容を整理する:メールや問い合わせフォームの内容から、現場名・依頼の種類・希望の日時・緊急かどうかを読み取って一覧にする
- 受付の確認文を作る:受け付けた内容を確認するための返信の下書きを作り、担当者が確認して送る
- 記録をもとに回答案を作る:作業の予定や過去の作業記録、契約で決まっている作業の範囲をもとに、「次回の作業日」「契約に含まれる作業か」といった質問への回答案を作る
- 担当者に振り分ける:設備の不具合は設備担当、清掃の追加は清掃の管理担当、というように、内容に合わせて知らせる先を分ける
当社の導入事例では、不動産会社(従業員15名規模)の問い合わせ担当の方が、問い合わせへの初回返信にかかる時間を半日から10分に短縮しました。お客様への最初の返事が早くなるだけでも、信頼につながります。
一方で、漏水や設備の故障、事故やけが、作業内容へのクレームなど、緊急性や判断を伴う内容は、AIが回答案を作らずにすぐ担当者に知らせるルールにしておきます。追加作業の金額や、契約の範囲外の作業を引き受けるかどうかも、担当者が判断すべき内容です。
ビルメンテナンス・清掃業でAIを始める手順と注意点
お客様の建物の情報を慎重に扱う
ビルメンテナンス・清掃の仕事では、お客様の建物の図面、鍵や入館の手順、警備の情報、入居者の情報など、外に出してはいけない情報を扱います。どのAIの仕組みで扱うのか、入力した内容がAIの学習に使われない設定になっているか、だれが見られるのかを、使い始める前に決めておきましょう。鍵の番号や暗証番号のような情報は、AIに入力しないルールにするのが安全です。お客様との契約で情報の扱いが決められている場合もあるため、契約の内容もあわせて確認してください。
現場スタッフの負担を増やさない
AIを入れるときに、現場スタッフに新しい入力作業を増やしすぎると、続きません。今の手書きのチェック表を写真で送るだけ、作業後に音声で一言残すだけ、というように、現場の手間は今と同じか少なくなる形から始めることが大切です。
導入は1つの業務から順番に進める
- 業務を書き出す:報告書の作成、写真の整理、シフト作成、依頼の受付など、1か月で発生する事務作業と、それぞれにかかる時間を確認する
- 最初の1業務を選ぶ:件数が多く、形が決まっている業務(定期清掃の作業報告書など)から選ぶ
- 実物を集める:お客様ごとの報告書の書式、過去の報告書、現場のチェック表など、AIに参照させる資料を用意する
- 一部の現場で試す:数か所の現場に絞って試し、下書きの質と、確認にかかる時間を確かめる
- 広げる:問題がなければ対象の現場を広げ、シフトや問い合わせ対応など次の業務に進む
当社のAI社員は、会社ごとの報告書の書式や現場の回し方に合わせて仕組みをつくり、料金は初期費用+月5万円です(初期費用はヒアリング後にお見積もり)。お客様の書式の変更や現場の追加といった導入後の調整にも、回数の制限なく対応しています。人手が足りないときほど、事務の手間を減らして管理担当者の時間を現場の品質管理やスタッフのフォローに回すことが大切です。まずは毎月必ず発生する作業報告書の作成から、小さく始めてみることをおすすめします。
よくある質問
清掃の作業報告書をAIで自動作成できますか?
現場のメモやチェック表、写真をもとに、お客様ごとの書式に合わせた報告書の下書きを作ることはできます。ただし写真の取り違えや記載の漏れがないか、提出前に管理担当者が確認する形をおすすめします。
設備点検の報告書もAIに任せて大丈夫ですか?
記録を文章に整える下書きまでは任せられますが、異常があるかどうかや修理が必要かどうかの判断はAIに任せず、点検した担当者や有資格者が行ってください。判断の内容を人が書き加えてから提出する運用が安全です。
ビルメンテナンスのシフト作成にAIは使えますか?
使えます。スタッフの勤務できる時間や資格、現場ごとの必要人数を一覧にしておけば、AIがシフトの案や急な欠勤時の代わりの候補を出せます。最終的な決定と、労務のルールに合っているかの確認は人が行ってください。
パートスタッフが多い清掃会社でもAIを導入できますか?
導入できます。現場スタッフには写真やメモを送ってもらうだけにして、整理や報告書づくりをAIと管理担当者で行う形にすれば、現場の負担を増やさずに始められます。