製造業・卸売業でAIを活用するには?——受発注・在庫や納期の問い合わせ・書類作成から始める
結論
製造業・卸売業でAIを活用するなら、まずは「受注書の入力」「在庫や納期の問い合わせへの回答」「定型書類の作成」の3つから始めるのが現実的です。どれも毎日繰り返し発生し、ルールがはっきりしているため、AIに任せやすい業務です。当社の製造業(従業員30名規模)の導入事例では、受注書の入力作業が1日2時間から15分になりました。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、製造業・卸売業でのAI活用の始め方(受発注・在庫や納期の問い合わせ・書類作成)について解説します。製造業や卸売業では、FAXやメールで届く注文、取引先からの在庫や納期の問い合わせ、納品や検査に関わる書類づくりなど、事務の仕事が毎日たくさん発生します。人手不足の中で「AIで何とかならないか」と考えても、どこから手を付ければよいか分からないという声をよく聞きます。この記事では、製造業・卸売業でAIに任せやすい業務と、その進め方、気をつける点を説明します。
製造業・卸売業の事務がAIと相性がよい理由
製造業・卸売業の事務には、AIに任せやすい特徴がそろっています。
- 毎日くり返し発生する:注文の受付、問い合わせへの回答、書類の作成が毎日続く
- ルールがはっきりしている:品番、数量、単価、納期など、扱う情報の種類が決まっている
- 情報の置き場所が決まっている:在庫表、生産計画、販売管理システムなどに答えがある
- 担当者に仕事が偏りやすい:取引先ごとのやり方を知っている人が限られている
一方で、製造の現場そのもの(機械の操作や品質の最終判断)や、取引先との価格交渉などは、AIに任せる対象ではありません。AIは、現場や営業を支える事務の部分から入れるのが、無理のない始め方です。
AIに任せやすい3つの業務と、任せる範囲
製造業・卸売業でAIに任せやすい業務を、任せる範囲と人が残す部分に分けて整理すると、次のようになります。
| 業務 | AIに任せる範囲 | 人が残す部分 |
|---|---|---|
| 受発注の入力 | FAX・PDF・メールの注文を取り込み、品番・数量・納期を読み取って入力する | 読み取りに自信がない項目の確認、受注の確定 |
| 在庫・納期の問い合わせ | 在庫表や生産計画を参照して回答の下書きを作る | 特急対応や例外の判断、回答の送信 |
| 書類の作成 | 納品書・出荷案内・検査記録の転記・報告書の下書きを作る | 内容の確認、押印や提出の判断 |
受発注の入力
取引先ごとに書式の違う注文書を、AIが読み取って販売管理のシートやシステムに入力します。読み取りに自信がない項目だけ色を付けて人に確認を頼む形にすると、全件の打ち直しが不要になります。
在庫・納期の問い合わせ
「この品番の在庫はありますか」「いつ届きますか」といった問い合わせに対し、AIが在庫表や生産計画を見て回答の下書きを作ります。在庫や計画のデータが正しく更新されていることが前提になります。
書類の作成
受注データから納品書や出荷案内を作る、検査の記録を報告書の形にまとめるなど、決まった形の書類づくりもAIに任せやすい業務です。
導入事例:製造業で受注書の入力が1日2時間から15分に
当社が支援した製造業(従業員30名規模)では、取引先からFAXやPDFで届く受注書を、事務担当が毎日手で入力していました。届き方も書式もばらばらで、転記ミスによる手戻りや、担当者が休んだ日の入力の遅れが課題でした。
AI社員を導入し、受注書の取り込み・読み取り・入力と、自信のない項目の確認依頼を任せた結果、1日あたりの入力作業は2時間から15分になりました。担当者の仕事は、AIが色を付けた項目を確認して確定することに変わっています。
ポイント
最初に選んだのは、毎日必ず発生し、担当者の負担がはっきりしていた「受注書の入力」でした。効果が見えやすい業務から始めると、社内でAIを使うことへの理解も得やすくなります。
どの業務から始めるかを決める手順
製造業・卸売業でAIを導入するときは、次の順番で最初の業務を決めるとスムーズです。
- 事務の仕事を書き出す:受注、問い合わせ、書類作成など、毎日・毎週発生する仕事を一覧にする
- かかっている時間を見積もる:それぞれ1日・1週間でどのくらい時間を使っているかを、担当者に聞いて大まかに出す
- ルールがはっきりしているかを見る:誰がやっても同じ結果になる仕事か、毎回判断が必要な仕事かを分ける
- データの置き場所を確かめる:注文書、在庫表、生産計画などがどこにどんな形であるかを確認する
- 1つに絞って始める:時間がかかっていて、ルールがはっきりしていて、データがそろっている業務を最初の1つにする
いきなり複数の業務を同時に進めると、試運転や確認ルールづくりが追いつかなくなります。1つ目の業務が安定してから、2つ目に広げるほうが結果的に早く進みます。
製造業・卸売業でAIを入れるときの注意点
導入の前に、次の点を確認しておきましょう。
導入前の確認チェックリスト
- 在庫表や生産計画が、毎日正しく更新されている
- 品番や品名の表記が社内で統一されている(同じ品に別の呼び方がない)
- 取引先ごとの特別なルール(締め日、納品場所、書類の形式)を書き出せる
- AIの結果を誰が、いつ確認するかを決められる
- 取引先の書式が変わったときに、仕組みを調整できる体制がある
特に在庫や納期の問い合わせでは、元になるデータが古いと、AIは古い情報で回答の下書きを作ってしまいます。AIを入れる前に、データの更新ルールを見直すことが、結果的に一番の近道になる場合もあります。
また、取引先の図面や仕様書などを扱う場合は、取引先との契約で情報の扱いが決められていることがあります。AIのサービスにどのような情報を入れてよいかは、社内ルールと契約内容を確認したうえで決めてください。
AI社員で製造業・卸売業の事務を任せる場合
当社のAI社員は、特定の業務をこなすために作るAIの仕組みです。これまでにご相談いただいた約90社には、製造・物流・食品などの会社も含まれています。
受注書の入力のように1つの業務を任せる場合、構築期間は2週間程度が目安で、最短2週間で稼働できます。今使っている販売管理のシートやシステムをそのまま使う形を基本にしているため、社内のやり方を大きく変える必要はありません。
料金は初期費用+月5万円(初期費用はヒアリング後にお見積もり)です。月額には保守・相談・メンテナンスが無制限で含まれるため、取引先の書式が変わったときや、対象の業務を広げたいときも、運用しながら調整できます。
よくある質問
製造業でAIを使うには、生産管理システムを入れ替える必要がありますか?
多くの場合、入れ替える必要はありません。今使っているシートやシステムに入力したり、そこから情報を読み取ったりする形でAIの仕組みをつくります。連携の方法はシステムの種類によって変わるため、ヒアリングで確認します。
在庫の問い合わせにAIが自動で返信しても大丈夫ですか?
最初は、AIが回答の下書きを作り、人が確認してから送る形をおすすめします。在庫データが正しく更新されていることを確かめ、問題がないと分かってから、定型的な問い合わせだけ自動化する範囲を広げてください。
現場の職人さんの仕事もAIに任せられますか?
機械の操作や品質の最終判断など、現場の仕事そのものをAIに任せるのは現実的ではありません。まずは受注や書類作成など、現場を支える事務の仕事から始めるのがおすすめです。
取引先の図面や仕様書をAIに読ませても問題ありませんか?
取引先との契約で情報の扱いが決められている場合があるため、まず契約内容と社内ルールを確認してください。そのうえで、入力したデータを学習に使わない設定や契約のサービスを選ぶことが大切です。