【今日のご相談】不動産仲介(社員10名前後):物件情報の収集と謄本の転記をAIで減らしたい
結論
物件情報の収集と条件に合う顧客への通知、謄本からの転記と契約書との突き合わせ、重要事項説明書の下書きなど、ご相談の多くはAIで実現できます。ただし、ポータルサイトによっては自動で取り込めず人がファイルを出力する半自動になるほか、物件情報を1回の入力で全書類に連動させるには、散らばったExcelと業務の流れの整理が先に必要です。コンピューター化される前の手書きの古い謄本は、読み取りが難しく対象外とお伝えしました。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、不動産仲介の会社からいただいた「物件情報の収集と謄本の転記をAIで減らしたい」というご相談について解説します。今回ご相談いただいたのは、投資用物件の売買仲介を行う社員10名前後の不動産会社です。社員全員の業務を効率化したいという目的で、相場の確認などにはすでに生成AIを使っています。初回の打ち合わせのあと、先方から実現できるかを確かめたい項目をまとめていただき、2回目の打ち合わせで一つずつ回答しました。この記事では、2回分のご相談への当社の回答を、難しい点も含めて正直にお伝えします。
ご相談の内容:物件情報の収集と書類づくりが手作業
ご相談いただいたのは、投資用マンションなどの売買を仲介している、社員10名前後の不動産会社です。相場の確認などに生成AIを使い始めていますが、日々の業務の多くは手作業のままでした。
特に負担になっているのは次のような作業です。
- 物件情報の収集:複数のポータルサイトや業者間の物件流通サイトを、人が一つずつ見て回っている
- 謄本の転記と確認:登記簿謄本のPDFからExcelに内容を書き写し、契約書の下書きと食い違いがないかを人が確認している
- 問い合わせと報告書:各ポータルからの問い合わせをExcelにまとめ、売主への媒介報告書を作っている
- 同じ情報の入力の繰り返し:1つの物件について、契約書・請求書・領収書・ポータル掲載・提案メールのたびに同じ情報を入力している
夜間や定休日に届いた問い合わせへの返信が遅れることや、査定のたびに売り出し事例・成約事例を集めてレポートにまとめる手間も課題として挙がりました。
AIでやりたいこと:収集・転記・提案・掲載までの効率化
2回の打ち合わせで挙がった「AIでやりたいこと」をまとめると、次のとおりです。
- 複数のポータルサイトからの物件情報の収集と、条件に合う顧客への新着物件の通知
- 登記簿謄本のPDFからExcelへの転記と、契約書の下書きとの突き合わせ
- 契約書・重要事項説明書の下書き作成
- 各ポータルの問い合わせ情報のExcelへの自動反映と、媒介報告書の自動作成
- 顧客一覧から新規物件に合う人を選び、一人ひとりに合わせたメールを作成
- 業者間の物件流通サイトからの情報取得
- 査定時の売り出し・成約事例の収集とレポート化
- 販売資料からのポータル掲載文の作成と、複数媒体への掲載、夜間・定休日の問い合わせへの一次返信
- 物件情報を1回入力するだけで、契約書・請求書・ポータル掲載・提案メールまで連動させる
- 金融機関の融資条件や金利の情報を自動で集めて社員に知らせる
あわせて、「AIが下書きを作り、人が承認してから実行する」流れにしたいというご要望もありました。
当社の回答:できること・工夫が要ること・難しいこと
ご相談の内容に対する当社の判定は次のとおりです。
| やりたいこと | 判定 | 理由・条件 |
|---|---|---|
| 物件情報の収集と新着通知 | 〇できる | AIが複数のサイトを巡回し、条件に合う新着物件を知らせる仕組みは作れる。登録顧客が千人単位でも問題ない。件数が非常に多くなると処理が重くなるため、AI専用のPCを1台用意する場合がある |
| 謄本の転記と契約書との突き合わせ | 〇できる | コンピューター化以降の統一された様式の謄本であれば、ページ数が多くても転記と突き合わせを精度高く行える |
| 手書きの古い謄本の読み取り | ×難しい | コンピューター化される前の手書きの閉鎖登記簿は、文字の読み取りが難しく対象外 |
| 契約書・重要事項説明書の下書き | 〇できる | 重要事項説明書の下書きを作るアプリの実例がある。最終確認は人が行う |
| 問い合わせの反映と媒介報告書 | △工夫すればできる | 確認したポータルでは自動で取得できた。ただしサイトによっては自動で取り込む手段がなく、人がCSVやPDFを出力してAIに渡す半自動になる |
| 顧客に合う物件の提案メール | △工夫すればできる | エリア・年収・自己資金などの条件で絞り込むことは確実にできる。「木造が好き」などの好みもキーワードにすれば使える。ただしAI任せではなく、選び方の設計が必要 |
| 業者間の物件流通サイトからの取得 | △工夫すればできる | 外部のサーバーから自動で取りに行く方法は止められやすい。自分のPCのブラウザをAIに操作させ、普段のログイン状態を使う方式に限る |
| 事例収集・掲載文作成・一次返信 | 〇できる | 査定用の事例収集とレポート化、販売資料からの掲載文作成、夜間・定休日の一次返信はいずれも実現できる。複数媒体への掲載は、媒体ごとの掲載条件を事前にAIに覚えさせる必要がある |
| 1回の入力で全書類に連動 | △工夫すればできる | 技術的には可能。ただし社内に散らばったExcelと業務の流れの整理が前提 |
| 融資条件・金利情報の自動収集 | △工夫すればできる | 見に行くサイトと集める情報を具体的に決めないと、精度が下がる |
ポイント
「AIが下書きを作り、人が承認してから実行する」流れは、当社としてもおすすめしている運用です。特に顧客へのメール送信や契約書類は、人の確認を必ず挟みます。
進め方の提案:自社の業務を題材に、使えるツールを作り切る
当社からは、次の順番で進めることをご提案しました。
- やりたいことを事前に詳しく伺う:打ち合わせで実際の管理画面や書類を一緒に確認しながら、どこまで自動にできるかを判断する
- 自社の実務を題材にツールを作る:一般的な使い方ではなく、物件収集・謄本の転記・重要事項説明書の下書きなど、自社の業務そのものを題材にして、終わったときに実際に使えるツールがある状態を目指す
- 「効果の大きさ÷AI化のハードル」で優先順位をつける:効果が大きく、実現しやすいものから順に自動化を進める
- 大がかりなものは業務の整理から:1回の入力で全書類に連動させる仕組みなどは、Excelと業務の流れを整理してから取り組む
すべてを一度に自動化しようとせず、「今日から使える小さな仕組み」を積み重ねていくことが、少人数の会社では特に大切です。
同じ悩みを持つ会社へ:不動産仲介のAI化で知っておきたい線引き
物件情報の収集、謄本の転記、書類の下書き、問い合わせへの一次返信は、不動産仲介の多くの会社で共通する手作業です。今回のご相談を通じて、その多くはAIで実現できる一方、次のような線引きがあることもはっきりしました。
- 手書きの古い謄本は、AIでも読み取りが難しい
- サイトによっては自動で取り込めず、半自動になる
- 業者間サイトへの自動アクセスは、自分のPCから操作する方式に限られる
- 情報を1か所に入力して全書類に連動させるには、先に業務の整理が要る
不動産仲介でAI化を相談する前に整理しておくこと
- よく使うポータルサイトや業者間サイトと、それぞれでしている作業
- 扱う謄本に、コンピューター化される前の手書きのものが含まれるか
- 顧客に物件を提案するときの条件(エリア・予算・好みなど)
- 物件情報を何度も入力している書類・媒体の一覧
- AIの下書きを誰が確認し、承認するか
当社では、実際の画面や書類を一緒に見ながら、「できる・半自動になる・難しい」をその場で判断しています。手作業の多さにお悩みの不動産会社は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
登記簿謄本のPDFからExcelへの転記はAIでできますか?
コンピューター化以降の統一された様式の謄本であれば、ページ数が多くても転記できます。手書きの古い閉鎖登記簿は読み取りが難しく、対象外になります。
すべてのポータルサイトから自動で情報を取り込めますか?
サイトによって異なります。自動で取り込む手段がないサイトは、人がCSVやPDFを出力してAIに渡す半自動の形になります。
顧客へのメールをAIが勝手に送ってしまうことはありませんか?
AIが下書きを作り、担当者が承認してから送る流れにすれば、勝手に送られることはありません。当社もこの運用をおすすめしています。
物件情報を1回入力するだけで、全部の書類を作れるようになりますか?
技術的には可能です。ただし、社内に散らばったExcelや業務の流れを先に整理する必要があるため、効果の出やすい作業から段階的に進めることをおすすめします。