今日のご相談公開日

【今日のご相談】建築物の定期報告・調査会社:現地写真の仕分けとキャプション付けをAIで減らしたい

結論

現地で撮った大量の写真を屋上・外壁・内部などの部位別に仕分け、キャプションを付ける作業は、AIで対応できます。劣化箇所の抽出や是正コメントの作成、自治体ごとの様式への変換も形にはできますが、是正の要否の判断の精度は検証が必要で、様式は自治体ごとの例外に合わせた作り込みが必要です。開発の規模が大きくなりやすいため、費用対効果を見極めながら段階的に進めることをおすすめしました。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、建築物の定期報告・調査の会社からいただいた「現地写真の仕分けとキャプション付けをAIで減らしたい」というご相談について解説します。今回ご相談いただいたのは、建築基準法に基づく建築物の定期報告と、そのための調査を行っている会社です。報告書づくりは数名の体制で担当しており、年間で多くの物件を扱っています。報告書の作成に時間がかかることに加え、記入ミスによる再提出や、社内の品質チェックの負担も課題でした。この記事では、ご相談の内容と当社の回答を、工夫が要る点も含めて正直にお伝えします。

ご相談の内容:1件ごとの大量の写真整理と報告書づくりが重い

ご相談いただいたのは、建物の定期報告のための調査と報告書の作成を行っている会社です。報告書の作成は数名の担当者で回しており、扱う物件の数は年間を通じて多くあります。

現在の業務では、次のような点が負担になっていました。

  • 写真の仕分けとキャプション付け:1件の調査で数十枚から百枚規模の現地写真を撮り、それを屋外・屋上・外壁・内部などの部位別に分け、説明文(キャプション)を付けている。最も時間がかかり、現地に行った人でないと判断しにくい
  • 劣化箇所と是正コメント:写真から劣化している箇所を拾い出し、是正(直すべき点)のコメントを書いている
  • 様式の違い:提出先の自治体ごとに報告書の様式が異なる
  • ミスと品質チェック:人の手による記入ミスで再提出を求められることがあり、社内の確認作業も重い

さらに将来は、作った仕組みを同業の会社にも使ってもらう形を検討したい、というご意向もありました。

なぜ写真の整理がいちばん重いのか

写真の仕分けは、単純な作業に見えて、実は判断の連続です。同じような外壁の写真でも、どの面のどの部分を撮ったものかは、現地を見た人でなければわかりにくいことがあります。そのため、調査に行った担当者が戻ってから自分で整理することになり、ほかの人に任せにくい作業になっていました。

担当者が限られている中で物件の数が多いと、この「その人にしかできない作業」が積み重なり、報告書の完成が遅れる原因になります。AIで仕分けとキャプションの下書きを作れれば、担当者は確認と修正に集中でき、ほかの人に作業を分けることもしやすくなります。

AIでやりたいこと:写真の仕分けから様式変換まで

ご相談の中で挙がった「AIでやりたいこと」は次の5つです。

  1. 現地写真を部位別に仕分け、キャプションを付ける作業の自動化
  2. 劣化箇所の抽出と、是正コメントの作成
  3. 自治体ごとに異なる報告書の様式への自動変換
  4. 記入ミスの削減と、社内の品質チェックの効率化
  5. 同業の会社への提供(月額で使ってもらう形)

当社の回答:できること・工夫が要ること・難しいこと

打ち合わせのために、写真をアップロードするとAIが部位別に仕分け、劣化箇所の抽出、キャプション作成、是正コメント、自治体別の様式への変換までを一続きで行うデモを用意しました。先方からは方向性は合っているという評価をいただいています。そのうえでの判断は次のとおりです。

やりたいこと判定理由・条件
写真の部位別の仕分けとキャプション付け〇できるデモで一連の流れを確認済みです。ただし仕分けの分類の順番や細かさは、実際の報告書の書き方に合わせて調整が必要です
劣化箇所の抽出・是正コメントの作成△工夫すればできる抽出やコメントの下書きは作れますが、是正が必要かどうかの判断をAIに任せられるかは、精度をまだ検証していません。最終判断は調査を行った人が行う前提です
自治体ごとの様式への自動変換△工夫すればできる変換の仕組みは作れますが、自治体ごとの例外が非常に多く、様式ごとの作り込みが必要です
記入ミスの削減・品質チェックの効率化△工夫すればできる写真や項目の転記をAIに任せることで手入力は減らせます。チェックの基準を整理し、人の確認と組み合わせる設計が必要です
同業の会社への提供△工夫すればできる技術より事業の条件の検討が先になります。協力の形は改めて検討・ご提案することにしました

全体として、開発の規模が大きくなる見込みがあるため、どこまでを最初に作るか、費用に見合う効果が出るかを見極める必要があるとお伝えしました。

進め方の提案:時間のかかる写真整理から段階的に

当社が考える進め方は次のとおりです。

  1. 写真の仕分けとキャプション付けから始める:最も時間がかかっている作業なので、効果が見えやすい
  2. 分類のルールを実務に合わせる:部位の分け方、並び順、キャプションの書き方を、過去の報告書に合わせて調整する
  3. 劣化の抽出と是正コメントは「下書き」として使う:AIの結果を担当者が確認し、どの程度当たっているかを記録して精度を検証する
  4. 様式の変換は件数の多い自治体から:すべての自治体に一度に対応せず、提出の多いところから作り込む
  5. 同業への提供は、自社で効果が確認できてから検討する

ポイント

「現地に行った人でないと判断しにくい」作業ほど、最初はAIの結果を人が直す形で始め、直した内容を次の改善に使うのが確実です。

同じ悩みを持つ会社へ:写真整理は任せやすく、判断と様式は時間をかける

点検・調査・保守など、現地で大量の写真を撮って報告書にまとめる業種は多くあります。今回のご相談から言えることは次のとおりです。

  • 写真を部位や項目ごとに仕分け、説明文を付ける作業は、AIに任せやすい代表的な作業である
  • 「直すべきかどうか」の判断は、精度を検証するまでは人が最終判断する
  • 提出先ごとに様式が違う場合は、例外の多さが開発の手間を左右する
  • 大きな仕組みを一度に作らず、時間のかかる作業から順に進める

写真整理のAI化を検討する前のチェックリスト

  • 写真の分類のルール(部位の分け方・並び順)を言葉で説明できるか
  • 過去の報告書と写真を、AIの調整用にまとめて用意できるか
  • AIの結果を誰が確認し、どこまでを人の判断として残すか決めているか
  • 提出先ごとの様式の違いを一覧にできるか
  • 最初に効果を測る対象の作業と、比べる指標(作業時間など)を決めているか

報告の様式や制度は、提出先や時期によって変わることがあります。最新の内容は提出先の公式情報で確認してください。

よくある質問

現地写真を部位別に自動で仕分けることはできますか?

できます。屋上・外壁・内部などの分類とキャプション付けをAIが行い、担当者が確認する形で使えます。分類の細かさや並び順は、実際の報告書に合わせて調整します。

劣化しているかどうかの判断までAIに任せられますか?

劣化箇所の抽出やコメントの下書きは作れますが、是正が必要かどうかの判断は、精度を検証するまでは調査を行った人が最終判断する前提にしています。

自治体ごとに違う報告書の様式にも対応できますか?

対応できますが、自治体ごとの例外が多いため、様式ごとの作り込みが必要です。提出の多い自治体から順に対応するのが現実的です。

作った仕組みを同業の会社に提供することはできますか?

技術的には可能ですが、事業としての条件を先に検討する必要があります。まず自社で効果を確認してから検討することをおすすめしています。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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