今日のご相談公開日

【今日のご相談】特注品の製造業:お客様ごとに違う図面からの見積づくりをAIで速くしたい

結論

お客様ごとに違う図面や仕様から見積を作る作業は、AIに情報の読み取りや見積の下書きを任せる形なら工夫すれば速くできますが、ボタン一つで見積まで全自動にするのは難しい、というのが当社の回答です。壁になるのは、さまざまな人が描いた図面から「どこまでを自社が受け持つのか」を読み取る判断で、熟練した社員でも身につけるのに時間がかかる部分だからです。この判断はAIに学ばせて調整を重ねる必要があり、最終的な確認は人が行う前提で設計することをお伝えしました。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、特注品の製造業の会社からいただいた「お客様ごとに違う図面からの見積づくりをAIで速くしたい」というご相談について解説します。今回ご相談いただいたのは、お客様ごとに仕様の違う製品を受注生産している製造業の会社です。見積のたびに図面や仕様を読み込んで一から計算しており、そこに大きな労力と時間がかかっていました。ご担当の役員の方は日ごろからAIを使いこなしている方で、「社内の人が学んで自分たちで作るか、外部に作ってもらうか」を比べたいというご相談でもありました。この記事では、当社がどう回答したかを、難しい点も含めて正直にお伝えします。

ご相談の内容:お客様ごとに違う図面から、毎回一から見積を作っている

ご相談いただいたのは、お客様の用途に合わせた特注品を製造している会社です。標準品をカタログから選んでもらう商売ではなく、お客様ごとに求められる仕様が違うため、見積もそのたびに作り直す必要があります。

見積の流れは、おおむね次のとおりです。

  1. お客様から図面や仕様書が届く
  2. 担当者が図面を読み込み、何を・どこまで作るのかを判断する
  3. 必要な材料や加工の内容を洗い出す
  4. 過去の実績や社内の基準をもとに金額を積み上げる
  5. 見積書にまとめてお客様に提出する

課題は次のとおりです。

  • お客様ごとに仕様が違うため、毎回の見積に大きな労力と時間がかかっている
  • 届く図面は描いた人によって書き方がばらばらで、読み取りに手間がかかる
  • 図面のどこまでを自社が受け持つのかを判断するには経験が必要で、担当できる人が限られる

ご担当の役員の方は、日ごろからAIを業務で使っており、AIの基本的な使い方はすでに身についている状態でした。そのうえで、見積づくりにAIをどう生かせるかを具体的に知りたい、というご相談でした。

AIでやりたいこと:図面と仕様をもとにした見積づくりの効率化

ご相談の中で挙がった「AIでやりたいこと」は、次の1点に絞られていました。

  1. 図面・仕様からの見積づくりの自動化・効率化:お客様から届くさまざまな図面や仕様をもとに、特注品の見積を作る作業をAIで速くしたい

あわせて、進め方についても相談をいただきました。

進め方中身先方が気にしていた点
社内で作る研修で社内の人が作り方を学び、自分たちで仕組みを作るAIの基本はすでに使えるので、基礎ではなく作る部分を学びたい
外部に任せる仕組みづくりを外部に任せ、社内は使う側にまわる見積の判断のような社内の知識を、外部にどこまで伝えられるか

見積の自動化は、多くの製造業の会社から寄せられるご相談です。ただ、標準品の見積と特注品の見積では、AIに任せられる範囲が大きく変わります。今回は特注品ならではの難しさが中心の話になりました。

当社の回答:工夫すればできること・難しいこと

ご相談の内容に対する当社の判定は次のとおりです。今回の打ち合わせでは、そのまますぐにできる(〇)と判定した項目はありませんでした。

やりたいこと判定理由・条件
図面・仕様をもとにした見積づくりの効率化△工夫すればできる届く図面はさまざまな人が描いたもので、どの範囲を自社が受け持つのかを、図面に書かれていない事情も含めて読み取る必要がある。熟練した社員でも身につけるのに時間がかかる部分で、AIに学ばせて調整を重ねる作業が相応に必要
図面を入れたら見積まで全自動で出す×難しい担当範囲の判断が見積の金額を大きく左右するため、単純にAIを当てはめるだけで全自動にするのは難しい。この点は先方も同じご認識だった

打ち合わせでは、別の製造業の会社向けに作ったデモもご覧いただきました。製品の情報を入れると、AIが合いそうな製品を判定し、見積を含んだ提案書の下書きを自動で作るものです。製品の型や価格の基準がある程度決まっている場合は、このように下書きまでをAIに任せられます。一方、今回のように図面ごとに担当範囲の判断が必要な特注品では、その判断の部分にどう人の知識を組み込むかが成否を分けます。

ポイント

見積の自動化で難しいのは、計算ではなく「何を見積もるのかを決める判断」です。図面に書かれていない前提を読み取る部分は、ベテランの頭の中にある知識に頼っていることが多く、AIに任せるにはその知識を言葉や例にして渡す必要があります。

進め方の提案:基礎は省き、作る部分に絞って学ぶ

ご担当の役員の方はAIの基本をすでに身につけていたため、当社からは、AIの基礎講義を省いて、仕組みを作る部分に絞ったコンパクトな学び方をご提案しました。

ご提案の考え方は次のとおりです。

  • 基礎の講義は省く:AIへの指示の出し方など、すでにできていることに時間を使わない
  • 作る部分に絞る:見積づくりのような自社の業務に合わせた仕組みを、実際に作りながら学ぶ
  • 判断の難しさを前提にする:図面の読み取りと担当範囲の判断は、AIに学ばせて調整を重ねる必要があることを最初から織り込む

社内で作るか外部に任せるかは、どちらにも向き不向きがあります。一般的な比べ方を整理すると次のようになります。

比べる点社内で作る外部に任せる
社内の知識の生かしやすさ判断の基準を知っている人が自分で作れる知識を言葉にして伝える手間がかかる
社内の負担学ぶ時間と作る時間が必要確認や打ち合わせの時間が中心
作ったあとの直しやすさ社内で直せる依頼先の保守の範囲による

特注品の見積のように、社内の判断の知識が中心になる業務では、その知識を持つ人がどれだけ関われるかが、どちらの進め方でも大切になります。

同じ悩みを持つ会社へ:特注品の見積をAIで速くする前に確認すること

受注生産や特注品を扱う会社では、見積に時間がかかり、しかも担当できる人が限られているという悩みがよく聞かれます。AIに期待が集まりやすい業務ですが、「図面を入れたら見積が出る」という形をいきなり目指すと、判断の部分でつまずきやすくなります。

まずは、見積の作業を「読み取る」「判断する」「計算する」「書類にする」に分けて、AIに任せやすいところから考えるのが近道です。

特注品の見積にAIを使う前に確認すること

  • 見積の作業のうち、図面の読み取り・判断・計算・書類づくりのどこに一番時間がかかっているか
  • 自社が受け持つ範囲を判断するときの考え方を、例を挙げて説明できる人がいるか
  • 過去の見積と、そのもとになった図面や仕様が、あとから見返せる形で残っているか
  • 金額の積み上げに使っている社内の基準(単価や加工の目安)が整理されているか
  • AIが作った下書きを、誰がどの段階で確認するかを決められるか
  • 社内で作るか外部に任せるか、判断の知識を持つ人がどれだけ時間を割けるか

当社では、見積の流れを伺ったうえで、AIに任せる部分と人が判断する部分を一緒に整理しています。見積に追われている会社は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

特注品の見積をAIで全自動にできますか?

図面から担当範囲を判断する部分があるため、全自動にするのは難しいのが実情です。図面の読み取りや見積の下書きをAIに任せ、判断と最終確認は人が行う形が現実的です。

人によって描き方が違う図面でも、AIは読み取れますか?

書かれている情報を読み取ることはできますが、図面に書かれていない前提や、どこまでを自社が受け持つかの判断は苦手です。過去の図面と見積の組み合わせを例として渡し、調整を重ねる必要があります。

標準品と特注品で、見積のAI化の難しさは違いますか?

違います。製品の型や価格の基準が決まっている標準品は、合いそうな製品の判定から見積を含んだ提案書の下書きまでAIに任せやすい一方、特注品は判断の部分に人の知識を組み込む工夫が必要です。

AIの基本はもう使えています。研修は何を学べばよいですか?

基礎の講義は省き、自社の業務に合わせた仕組みを実際に作りながら学ぶ形が向いています。当社でも、すでにAIを使っている方には、作る部分に絞った内容をご提案しています。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

コラム一覧へ戻る