今日のご相談公開日

【今日のご相談】会計事務所(30名前後):請求書PDFからの稟議書づくりをAIで減らしたい

結論

請求書や指図書のPDFから支払期限や振込先などの項目を抜き出し、決まったExcelの稟議書に書き込む作業は、AIで作れます。会計ソフトのデータを使った報告書の作成も技術的に可能です。一方、社員が自分でツールを作って社内で共有する状態をめざす場合は、研修のあとにつまずく場面が出やすいため、半年程度の伴走をおすすめしました。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、会計事務所からいただいた「請求書PDFからの稟議書づくりをAIで減らしたい」というご相談について解説します。今回ご相談いただいたのは、30名前後の会計事務所です。1件あたりの作業は小さいものの件数が多く、全体では大きな工数になっていました。人が転記するとミスも起きるため、作業はAIに任せて人がチェックする体制にしたい、というのがきっかけです。あわせて、社員が自分でツールを作り、社内で共有できる状態もめざしたいというご希望でした。この記事では、ご相談の内容と当社の回答を、条件が付く点も含めて正直にお伝えします。

ご相談の内容:小さな転記作業が毎月大量にある

ご相談いただいたのは、30名前後の会計事務所です。通常の会計業務に加えて、出資者(投資家)向けの報告業務も行っています。

負担になっていたのは、次のような作業です。

  • 支払い稟議書の作成:毎月数百件の指図書や請求書のPDFを目で確認し、Excelの稟議書に手で入力している
  • 投資家向けレポート:会計ソフトから出したCSVデータを、Excelに転記して報告書を作っている
  • 資料の分割:1つの財務資料を、多数の投資家ごとに分けて作り直している

どれも1件ごとの作業は小さいものの、件数が多いため全体の工数が膨らんでいました。また、人が転記する以上、入力ミスを完全に防ぐのは難しいという課題もありました。

「AIに作らせて人がチェックする」体制をめざした理由

転記作業は、慣れた担当者が丁寧に行っても、件数が増えるほどミスが起きる可能性が上がります。そのうえ、ミスを防ぐために二重チェックをすると、さらに工数がかかります。

ご相談いただいた事務所では、この悪循環を断つために、転記そのものをAIに任せ、人は「元の書類と合っているか」を確かめる役割に回る体制を考えていました。人が一から入力するより、AIが作った結果を確認するほうが短い時間で済み、チェックに集中できるためです。

さらに、外部の会社に作ってもらうだけでなく、社員が自分で仕組みを作れるようになれば、別の業務にも自分たちで広げていけます。今回のご相談は、目の前の作業の効率化と、社内でAIを使いこなす力をつけることの両方をめざすものでした。

AIでやりたいこと:稟議書と報告書の自動作成、社員によるツールづくり

ご相談の中で挙がった「AIでやりたいこと」は次の3つです。

  1. 指図書・請求書のPDFから必要な項目を読み取り、支払い稟議書を自動で作りたい
  2. 会計ソフトのデータを使った投資家向けレポートの作成と、投資家ごとの資料の分割を自動にしたい
  3. 社員が自分で自動化のツールを作り、社内全体で使えるようにしたい

当社の回答:できること・工夫が要ること・難しいこと

当社の判断は次のとおりです。今回のご相談で「難しい」と判断したものはありませんでした。

やりたいこと判定理由・条件
請求書PDFから稟議書を作る〇できる稟議書に入れる項目(支払期限・振込先口座など)がシンプルで、PDFから抜き出してExcelの決まった形式に書き込む仕組みは作れます。似た書類の自動作成の事例もあります
会計ソフトのデータから投資家向けレポートを作る〇できる会計ソフトのデータと連携して書類を自動で作ることは技術的に可能です。投資家ごとの資料の分割も、同じ仕組みの中で扱えます
社員が自分でツールを作り、社内で共有する△工夫すればできる研修の中で作り方を学ぶことはできますが、開発を伴う研修では、研修後に自分たちだけで進める段階でつまずく場面が出やすくなります。半年程度の伴走をおすすめしました

ポイント

AIが作った稟議書は、そのまま確定させず、担当者がPDFと見比べて確認してから回す流れにします。「作るのはAI、確かめるのは人」と役割を分けることで、転記ミスを減らしながら安心して使えます。

進め方の提案:研修の中で2つの自動化を作り、その後は伴走で広げる

当社からは、社員の方が自分でAIを使ったツールを作り、社内に公開して全員が使える環境まで整える研修をご提案しました。進め方は次のとおりです。

  1. 研修のゴールを2つに絞る:請求書PDFからの稟議書作成と、会計ソフトのデータからの報告書作成を、研修の中で作り切る目標にする
  2. 安全な使い方を研修の中で決める:主要なAIを法人向けの接続方法(API)で使う場合は入力データが学習に使われないこと、外部サービスとの誤った連携による情報の流出を防ぐ利用ルール、安全な公開の設定を学ぶ
  3. 社内に公開する:作ったツールを、社員全員が使える場所に置く
  4. 研修後は伴走で支える:ほかの業務への展開や、つまずいた箇所の解決を、研修後の伴走支援で一緒に進める

会計事務所はお客様の大切なお金の情報を扱うため、便利さより先に安全な使い方を決めておくことが欠かせません。

同じ悩みを持つ会社へ:件数の多い転記作業はAIに向いている

会計事務所や経理部門には、「1件は小さいが件数が多い」転記作業がたくさんあります。今回のご相談から言えることは次のとおりです。

  • 入力する項目が決まっている書類の転記は、AIに任せやすい代表的な作業である
  • AIに作らせて人が確認する形にすると、作業時間とミスの両方を減らせる
  • 社員が自分でツールを作る体制は、研修だけで完成させず、研修後の支えまで含めて考える
  • お金や取引先の情報を扱う業務では、AIの使い方のルールを最初に決める

書類の転記をAI化する前のチェックリスト

  • 書類から抜き出す項目を一覧にできるか
  • 書き込み先のExcelの形式が決まっているか
  • AIが作った書類を、誰がどのように確認するか決めているか
  • 入力したデータが学習に使われない法人向けのサービスや設定を選んでいるか
  • 研修後に困ったとき、相談できる相手や体制があるか

税務や会計に関する制度は改正されることがあります。最新の情報は所管の行政機関の公式サイトで確認してください。

よくある質問

請求書のPDFから稟議書を自動で作ることはできますか?

できます。支払期限や振込先口座などの項目を抜き出し、決まったExcelの形式に書き込む仕組みを作れます。完成した書類は担当者が確認してから回します。

会計ソフトのデータを使って報告書を作れますか?

会計ソフトのデータと連携して書類を自動で作ることは技術的に可能です。出資者ごとに資料を分けるといった作業も、同じ仕組みの中で扱えます。

社員が自分でAIのツールを作れるようになりますか?

研修で作り方を学ぶことはできますが、研修後に自分たちだけで進める段階でつまずきやすいため、半年程度の伴走をおすすめしています。

お客様の会計データをAIに入れても大丈夫ですか?

法人向けの接続方法で主要なAIを使う場合、入力データは学習に使われません。そのうえで、外部サービスとの誤った連携を防ぐ利用ルールや、安全な公開の設定を決めておくことが大切です。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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