【今日のご相談】設備まわりの専門工事会社:工事内容を入れるだけで見積と必要な材料が出る仕組みを作りたい
結論
工事内容を入れると見積と必要な材料が出る仕組みは、工事の専門知識を業務ルールとして整理できれば、工夫して作ることができる、というのが当社の回答です。ただし当社にはその工事分野での実績がなく、先方からは「それなら自分で作るのと変わらない」という率直なご指摘をいただきました。業界の知識は先方にあり、当社は仕組みの設計・作り込み・保守を受け持つという役割分担をどう考えるかが、今回の相談の中心になりました。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、設備まわりの専門工事会社からいただいた「工事内容を入れるだけで見積と必要な材料が出る仕組みを作りたい」というご相談について解説します。今回ご相談いただいたのは、建物の設備まわりの工事を専門に請け負う会社です。見積づくりに時間がかかり、長いと数日〜1週間ほどかかることもあるそうです。この会社は社内でのAI活用がすでにある程度進んでおり、代表の方はご自身で見積システムの試作も始めていました。そうした会社に対して、外部の当社は何を提供できるのか。この記事では、当社がどう回答したかを、難しい点やいただいたご指摘も含めて正直にお伝えします。
ご相談の内容:見積づくりに時間がかかり、精度も上げたい
ご相談いただいたのは、建物の設備まわりの工事を専門に行う会社です。会社の人数は伺っていません。工事の見積は、現場ごとに工事の内容や範囲が違うため、そのたびに担当者が材料や手間を積み上げて作っています。
見積の流れは、おおむね次のとおりです。
- 工事の担当者が、現場の条件や工事の内容を確認する
- 必要な材料の種類と量を洗い出す
- 材料の単価や作業の手間をもとに金額を積み上げる
- 見積書にまとめて提出する
課題は次のとおりです。
- 見積の作成に時間がかかり、長いと数日〜1週間ほどかかるケースもある
- 工事の専門知識がないと材料や手間を正しく見積もれず、精度を上げたい
- 工事の内容から必要な材料を洗い出す作業を、もっと速く確実にしたい
この会社の特徴は、AIの活用がすでに始まっていることです。社員の方は汎用のAIと表計算の自動化機能を組み合わせて小さな業務アプリを作っており、代表の方もAIのプログラミング支援ツール(AIに指示しながらプログラムを書いてもらう道具)を使って、見積システムを試作している最中でした。
一方で、セキュリティの面から、どこまでのデータを社外のサービスに出してよいかを慎重に判断されていました。見積には単価や取引先の情報が含まれるため、この慎重さは当然のことです。
AIでやりたいこと:工事内容を入れると見積と材料が自動で出る仕組み
ご相談の中で挙がった「AIでやりたいこと」は、次の1点に絞られていました。
- 見積の精度向上と時間短縮:工事の担当者が工事内容を入力すると、見積と必要な材料が自動で出てくる仕組みを作りたい
このご要望を、入力と出力に分けて整理すると次のようになります。
| 区分 | 中身 | 必要になる知識 |
|---|---|---|
| 入力 | 工事の担当者が、現場の条件や工事の内容を入れる | 何を入力すれば見積が決まるのか(入力項目の決め方) |
| 途中の計算 | 工事内容から材料の種類と量、作業の手間を割り出す | 工事ごとの材料の使い方、量の出し方、手間の目安 |
| 出力 | 見積の金額と、必要な材料の一覧が出る | 材料の単価、見積書の書き方 |
表を見るとわかるとおり、仕組みの中心にあるのは「途中の計算」です。ここには、その工事を長年手がけてきた人だけが持っている知識が詰まっています。この知識をどう仕組みに入れるかが、今回のご相談の一番の論点になりました。
当社の回答:業務ルールを整理すれば作れるが、業界の知識は先方が持っている
ご相談の内容に対する当社の判定は次のとおりです。今回の打ち合わせでは、そのまますぐにできる(〇)、難しい(×)と判定した項目はありませんでした。
| やりたいこと | 判定 | 理由・条件 |
|---|---|---|
| 工事内容を入れると見積と必要な材料が出る仕組み | △工夫すればできる | 工事の専門知識が必要なため、材料の量の出し方や手間の目安などを業務ルールとして整理することが前提になる。当社のこれまでの実績はIT・広告・マーケティングなどの分野が中心で、この工事分野での実績はない |
当社の実績についてお伝えしたところ、先方からは「それなら自分で作るのと変わらない」という率直なご指摘をいただきました。代表の方はすでに自分で見積システムを試作しており、工事の知識もお持ちです。業界の知識がない外部に頼むなら、その知識を一から説明する手間がかかり、自分で作るのと変わらない、というのはもっともなご意見です。
業界の実績がない場合、外部は何を価値として出せるのか
このご指摘は、当社が正面から考えるべき問いでした。当社の考え方は、役割を分けることです。
| 受け持つこと | 先方(工事の会社) | 当社 |
|---|---|---|
| 業界の知識 | 工事の内容、材料の使い方、手間の目安を持っている | 持っていない。伺って整理する側にまわる |
| 業務ルールの整理 | 判断の考え方や具体例を説明する | 伺った内容を、仕組みに入れられる形に整理する |
| 仕組みの設計・作り込み | 試作や確認に参加する | 入力・計算・出力の設計と作り込みを受け持つ |
| 保守・改善 | 使ってみて気づいた点を伝える | 単価の変更や計算の直しなど、作ったあとの手入れを受け持つ |
業界の知識そのものを外部が持ち込むことはできません。外部が受け持てるのは、知識を仕組みに変える部分と、作ったあとに直し続ける部分です。ただ、代表の方が自分で作れる会社であれば、この部分も社内でまかなえる可能性があります。外部に頼むかどうかは、社内の誰がどれだけ時間を割けるかで決まる、というのが正直なところです。
ポイント
見積の仕組みづくりで一番難しいのは、プログラムを書くことではなく、ベテランの頭の中にある「この工事ならこの材料がこれだけ要る」という知識を、ルールとして書き出すことです。この作業は、誰が作る場合でも工事の知識を持つ人が関わらないと進みません。
進め方の提案:図面から部材と単価を抜き出す仕組みを見せ、業務に合わせて作る
打ち合わせでは、別の会社向けに作った仕組みをデモでご覧いただきました。図面を読み込ませるだけで、そこに描かれた部材の情報と単価を抜き出し、表計算ソフトで開ける一覧のファイルにして出力するものです。工事内容から材料と金額を割り出すという今回のご要望と、考え方の近い仕組みです。
そのうえで、当社からは次の点をお伝えしました。
- 複雑な見積には細かな設計が必要:表計算の自動化機能で作る小さなアプリは手軽に始められる一方、材料の割り出しや条件分けが多い見積では、仕組み全体を細かく設計して本格的に作るほうが向いている。代表の方が使っているプログラミング支援ツールも、そうした作り方に合っている
- 業務に合わせて一から作れる:決まった型の製品に業務を合わせるのではなく、先方の見積の流れや入力項目に合わせて、仕組みを一から設計できる
- 業務ルールの整理から始める:工事内容から材料と手間をどう割り出しているかを、具体例を使って書き出すところが出発点になる
あわせて、セキュリティについての慎重な姿勢は大切だとお伝えしました。どのデータを社外のサービスに送るのか、単価や取引先の名前を含めてよいのかは、仕組みを作る前に決めておくべきことです。
社内で作るか外部に任せるかは、次のような点で比べられます。
| 比べる点 | 社内で作る | 外部に任せる |
|---|---|---|
| 業界の知識の生かしやすさ | 知識を持つ人が自分で作るので伝える手間がない | 知識を説明して伝える手間がかかる |
| 社内の負担 | 作る時間と直す時間を社内で確保する必要がある | 説明と確認の時間が中心になる |
| 作ったあとの手入れ | 作った人が忙しいと止まりやすい | 依頼先の保守の範囲で直してもらえる |
同じ悩みを持つ会社へ:見積の仕組みづくりを始める前に確認すること
専門工事の会社では、見積に時間がかかり、しかも作れる人が限られているという悩みがよく聞かれます。最近は、今回の会社のように社内でAIを使い始め、自分たちで仕組みを作れる会社も増えています。そうした会社ほど、「自分で作るか、外部に頼むか」という判断が現実的な問いになります。
どちらを選ぶにしても、最初にやるべきことは同じです。見積の中にある専門知識を、ルールとして書き出すことです。
いきなり「工事内容を入れたら見積が全部出る」形を目指すと、例外の多さに途中で手が止まりがちです。まずはよく受ける工事に絞って、材料の洗い出しだけを仕組みにする、といった小さな範囲から始めると、ルールの抜けや入力項目の過不足に早く気づけます。うまく回ることを確かめてから、金額の計算や見積書づくりへと広げていくのが、社内で作る場合でも外部に頼む場合でも進めやすい順番です。
見積の仕組みづくりを始める前に確認すること
- 工事内容から必要な材料と量を割り出すときの考え方を、具体例を挙げて説明できる人がいるか
- 材料の単価や作業の手間の目安が、表などの形で整理されているか
- 見積の作業のうち、材料の洗い出し・金額の計算・書類づくりのどこに一番時間がかかっているか
- どのデータなら社外のサービスに送ってよいか、社内で線引きができているか
- 社内で作る場合、作った人以外でも直せるようになっているか
- 外部に頼む場合、業界の知識を説明する時間を社内で確保できるか
当社では、業界の知識をお持ちの方からお話を伺い、それを仕組みに変える設計・作り込み・保守を受け持っています。自分で作るか頼むかで迷っている会社も、お気軽にご相談ください。
よくある質問
工事内容を入れるだけで見積が出る仕組みは作れますか?
工事内容から材料の量や手間を割り出す考え方を、業務ルールとして整理できれば作ることができます。ルールの整理には、その工事の知識を持つ人の協力が欠かせません。
自社の業界での実績がない会社に頼んでも大丈夫ですか?
業界の知識は依頼する側が持ち、外部は仕組みの設計・作り込み・保守を受け持つという役割分担になります。業界の知識を説明する時間を社内で確保できるかどうかを、事前に考えておくことをおすすめします。
社内でAIを使って自分たちで作れるなら、外部に頼む意味はありますか?
作る力と時間が社内にあるなら、自分たちで作るのも十分に良い選択です。外部に頼む意味が出てくるのは、作る人の時間が足りない場合や、作ったあとの手入れまで任せたい場合です。
見積のデータを社外のAIサービスに送っても大丈夫ですか?
単価や取引先の情報が含まれるため、どのデータを送ってよいかを事前に社内で決めておくことが大切です。利用するサービスのデータの扱いは、最新の情報を公式サイトで確認してください。