AI営業電話は自社の営業に使えるか?——できること・向かないこと、受け手の印象、法令・マナーの注意と人の架電との組み合わせ方
結論
AI営業電話は、既存のお客様への案内や、決まった項目を確認するだけの電話には使えますが、初めての相手に売り込む新規開拓の電話を丸ごと任せるのは、多くの中小企業ではおすすめしにくいのが実情です。相手がAIだと気づいた時点で切られやすく、会社の印象を下げるおそれもあるためです。電話で話すのは人に任せ、AIにはリストの準備・トークの下書き・通話記録の要約といった裏方を任せる組み合わせが、成果と信頼の両方を守りやすい方法です。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AIによる営業電話(AIが自動で発信し、会話まで行う架電)を自社の営業に使えるかどうかと、できること・向かないこと・注意点・人の架電との組み合わせ方について解説します。「AIが自動で営業電話をかけてくれるサービスがあると聞いた。人手が足りないので、テレアポをAIに任せられないか」。営業の担い手が少ない会社の経営者の方から、こうしたご相談をいただくことが増えています。一方で、自社にAIからの営業電話がかかってきて、違和感を覚えた経験のある方もいるのではないでしょうか。AI営業電話は、うまく使えば手間を減らせますが、使い方を誤ると会社の信用を損ねかねない道具です。この記事では、AI営業電話とはどんな仕組みか、できることと向かないこと、受け手にどう受け取られるか、法令やマナーの面で気をつけること、そして人の架電とAIをどう組み合わせるとよいかを、経営者が判断できる形で説明します。電話の予約受付をAIで自動化する方法や、営業リストの作り方そのものは別の記事で扱っているため、ここでは「こちらからかける営業電話」に絞ってお伝えします。
AI営業電話とは:AIが自動で発信し、決まった流れで相手と会話する仕組み
AI営業電話とは、AIが電話番号の一覧をもとに自動で発信し、録音の音声や合成した声で相手と話して、用件を伝えたり答えを聞き取ったりする仕組みのことです。音声AI(人の声を聞き取って文字にし、返事を声で読み上げるAI)の性能が上がったことで、決まった台本どおりに話すだけでなく、相手の返事に合わせて受け答えを変えられるものも出てきました。
ひとくちに「AIを使った営業電話」といっても、AIの関わり方によって大きく3つに分けられます。
| 種類 | どう動くか | 向いている使い方の例 |
|---|---|---|
| 録音音声の自動発信 | あらかじめ録音した案内を自動で流し、番号ボタンで返事を受け付ける | 既存のお客様への点検時期のお知らせ、アンケート |
| AIが会話する自動架電 | AIが相手の話を聞き取り、台本と決まりにそって受け答えする | 申込みの意思確認、来店予約の確認、資料の送付先の確認 |
| 人の架電をAIが支える | 電話をかけて話すのは人。AIはリストの準備・トークの下書き・通話後の記録を担当する | 新規開拓のテレアポ、休眠客への再アプローチ |
この記事で「AI営業電話」と呼んでいるのは、上の2つ、つまりAIが相手と直接話す使い方です。3つ目の「人の架電をAIが支える」使い方は、厳密にはAI営業電話ではありませんが、中小企業にとってはこちらのほうが成果につながりやすい場面が多いため、5章でくわしく説明します。
ポイント
検討するときは「AIに電話をかけさせるかどうか」ではなく、「電話営業のどの作業に時間がかかっていて、そこをAIに任せられるか」から考えると、判断を誤りにくくなります。
AI営業電話にできること・向かないこと:決まった確認は得意、初対面の売り込みは苦手
AI営業電話が得意なのは、話す内容と聞き取る内容があらかじめ決まっている電話です。反対に、相手の状況を探りながら関係を作っていく電話は、まだ人のほうが上手にこなせます。
| 電話の種類 | AIに任せられるか | 理由 |
|---|---|---|
| 既存のお客様への案内(点検・更新時期など) | 任せやすい | 相手がすでに取引のある会社や人で、用件が明確。聞き取る項目も少ない |
| 申込みや資料請求の内容確認 | 任せやすい | 相手から先に連絡があり、確認する項目が決まっている |
| イベントやセミナーの出欠確認 | 条件つきで任せられる | 短く済むが、質問されたときに人へつなぐ道を用意しておく必要がある |
| 休眠客への再アプローチ | 人が話すほうがよい | 以前の取引の経緯を踏まえた会話が求められる |
| 初めての相手への新規開拓(テレアポ) | 多くの場合おすすめしにくい | 受付の取り次ぎ、相手の都合や温度感の読み取り、その場の切り返しが必要で、AIだと気づかれた時点で切られやすい |
| 値段の交渉・契約の約束 | 任せない | 言い間違いがそのまま会社の約束と受け取られるおそれがある |
新規開拓の電話が難しい理由
法人への新規開拓の電話では、まず受付の方が出て、「どちらさまですか」「どういったご用件ですか」と聞かれます。ここで担当者に取り次いでもらえるかどうかは、話し方の自然さや、相手の質問への切り返しに大きく左右されます。さらに、担当者につながっても、相手が忙しいのか、今は検討の時期ではないのかを声の調子から読み取り、話す内容を変える必要があります。AIは台本の範囲では上手に話せても、こうした「その場の判断」にはまだ弱く、想定外の質問が来ると会話が止まってしまうことがあります。
件数を増やしても成果が増えるとは限らない
AIは一度にたくさんの電話をかけられます。ただ、営業電話の成果を決めるのは、かけた件数よりも「誰に、どんな話を、どのタイミングでするか」です。合わない相手に大量にかけても、断られる件数と、会社の印象を下げる件数が増えるだけになりかねません。
受け手はAI営業電話をどう受け取るか:気づかれたときの印象まで考えて使う
AI営業電話を使うかどうかを決めるうえで、いちばん見落とされやすいのが「受け手の印象」です。電話を受けた側は、相手がAIだとわかったとき、次のように感じることがあります。
- 「自分は大量にかけている番号の1つにすぎない」と感じ、話を聞く気がなくなる
- 「この会社は、人が話す手間すらかけない」と受け取り、会社そのものの印象が下がる
- AIだと名乗らずに人のふりをしていた場合、「だまされた」と感じて不信感が強まる
- 断っても同じ電話が何度もかかってくると、迷惑電話として社内で共有される
特に地域や業界が限られている中小企業では、一度ついた印象が口コミで広がりやすく、取り戻すのに時間がかかります。電話で失った信用は、メールやホームページで取り返すのが難しいことも覚えておきたい点です。
受け手から見た「AI営業電話の見分け方」
受け手の側から見ると、AI営業電話には次のような特徴があることが多いとされています。自社がかける側になる場合も、これらの特徴が「気づかれるきっかけ」になると考えておきましょう。
| 気づかれやすい特徴 | 受け手の感じ方 |
|---|---|
| こちらが話し終える前にかぶせて話す、または返事までに不自然な間がある | 会話がかみ合わず、機械的に感じる |
| 質問しても、少しずれた答えや同じ説明がくり返される | 話を聞いてもらえていないと感じる |
| 会社名や担当者名を聞き返すと、はっきり答えない | どこからの電話かわからず、警戒する |
| 「担当者に代わってください」と言っても代われない | 逃げ道がなく、強い不満につながる |
AIを使うのであれば、最初に「AIの音声でご案内しています」と伝え、人と話したい方には担当者から折り返す道を用意しておくことが、信頼を損ねないための最低限の配慮といえます。
AI営業電話の法令・マナー面の注意:名乗る・断られたらかけない・記録を正しく扱う
営業電話には、人がかける場合でもAIがかける場合でも、守るべきルールやマナーがあります。AIは大量に、しかも決まった動きでかけ続けるため、ルールの穴があるとそのまま大きな問題になりやすい点に注意が必要です。
法令の面で確認しておきたいこと
- 個人のお客様への電話勧誘:個人(消費者)に電話で商品やサービスを勧める場合は、特定商取引法の「電話勧誘販売」のルールが関わる場合があります。最初に会社名・担当者名・商品の種類・勧誘の目的であることを伝えることや、断った人に再び勧誘しないことなどが定められています
- 法人向けの電話:会社どうしの取引は、上のルールの対象外とされる場合が多いものの、相手や商品の内容によって扱いが変わることがあります
- 電話番号などの個人情報:個人のお客様の電話番号や通話の録音は個人情報にあたる場合があり、どこから手に入れた番号か、何に使うかを説明できるようにしておく必要があります
- 通話の録音:AIの仕組みでは通話を録音・文字にすることが多いため、録音していることを伝えるかどうか、録音をいつまで残すかを決めておきます
どのルールがあてはまるかは、相手が個人か法人か、何を売るかによって変わる場合があります。最新の情報は消費者庁や個人情報保護委員会などの公式サイトで確認し、迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。
マナーの面で決めておきたいこと
AI営業電話を使う前のチェックリスト
- 電話の最初に、会社名と「AIの音声でご案内している」ことを伝える台本になっている
- 「担当者と話したい」と言われたときに、人へ代わるか折り返す手順がある
- 「今後は電話不要」と言われた番号を記録し、二度とかけない仕組みがある
- かける時間帯(平日の日中など)と、同じ相手にかける回数の上限を決めた
- 番号の入手元と使う目的を説明できる
- 録音の扱い(伝え方・保存期間・見られる人)を決めた
- 値段や契約条件など、AIに話させない内容を決め、台本から外した
このチェックリストの項目を満たせない場合は、AIに直接話させる使い方は見送り、次の章で紹介する「AIは裏方」の使い方から始めることをおすすめします。
おすすめは「話すのは人、AIは裏方」:リスト準備・トーク下書き・通話記録の要約を任せる
中小企業の電話営業で時間を取られているのは、実は電話で話している時間よりも、その前後の作業です。誰にかけるかを調べる、相手に合わせて話す内容を考える、通話のあとに記録を残して次の対応を決める。この前後の作業をAIに任せ、電話口では人が話す形にすると、受け手の印象を損ねずに、1人あたりがかけられる件数と質を上げられます。
| 電話営業の工程 | AIに任せる作業 | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 1. かける前:リストの準備 | リストの会社のホームページや公開情報を読み、事業内容・最近のお知らせ・かけるべき部署を1行にまとめる | 優先してかける相手を選ぶ |
| 2. かける前:トークの下書き | 相手ごとに、最初のひとこと・聞きたいこと・よくある断り文句への返し方の下書きを作る | 下書きを自分の言葉に直して話す |
| 3. 通話中 | (話すのは人。AIは関わらないか、手元の資料表示にとどめる) | 相手の温度感を読み、話を進める |
| 4. かけた後:通話記録の要約 | 録音やメモから、話した内容・相手の反応・次の約束を要約し、案件一覧に書き込む | 要約を確かめ、必要なら直す |
| 5. かけた後:次の対応 | お礼メールや資料送付メールの下書き、次にかける日の提案を作る | 送る内容と日程を決める |
なぜこの分担がよいのか
- 受け手の印象を守れる:電話口で話すのは人なので、AIと気づかれて切られる心配がない
- 新人でも話しやすくなる:相手ごとの下書きがあることで、何を話せばよいか迷う時間が減る
- 記録が残り、引き継げる:通話の要約が案件一覧にたまるので、担当者が替わっても前回の話がすぐにわかる
- 間違いを人が止められる:AIの下書きや要約は、人が目を通してから使うので、誤った約束が相手に伝わらない
営業リストの作り方そのものは「営業リスト作成をAIで効率化する方法」、電話のあとに送るメールの作り方は「営業メールをAIで作成・効率化する方法」、案件一覧の更新は「営業の案件管理・進捗報告をAIで効率化するには?」の記事でくわしく説明しています。
AI営業電話を検討するときの進め方と、当社の考え方
AI営業電話を導入するかどうかは、次の順番で決めていくと、無理のない形に落ち着きます。
- 電話営業の作業を書き出す:リストを作る・相手を調べる・話す・記録する・次の対応を決める、のどこにどれだけ時間がかかっているかを1週間分ざっと記録する
- 電話の種類を分ける:既存のお客様への確認・案内の電話と、新規開拓の電話を分けて考える
- 確認・案内の電話だけ、AIに話させるか検討する:4章のチェックリストをすべて満たせる場合に限り、少ない件数で試す
- 新規開拓は「AIは裏方」から始める:リストの下調べと通話記録の要約など、時間のかかっている作業から1つずつAIに任せる
- 1か月ほど使って見直す:アポイントの数だけでなく、断られ方や相手の反応、記録の正確さも確かめ、任せる範囲を広げるかを決める
当社がお手伝いできること
当社の月5万円のAI社員は、会社ごとの業務に合わせてAIの仕組みを作り、その後の保守まで引き受けるサービスです。電話営業については、AIに無理に話させることよりも、今の営業担当の方が電話の前後で抱えている手間を減らすことを優先してご提案しています。たとえば、お持ちのリストに合わせた下調べの自動化、相手ごとのトークの下書き、通話メモからの要約と案件一覧への記録などを、一続きの仕組みとして作ります。
料金は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。最短2週間で稼働でき、運用中の調整やご相談には回数の制限なく対応しています。「AI営業電話が気になっているが、自社に合うかわからない」という段階でも、まずは電話営業のどこに時間がかかっているかを一緒に整理するところからご相談ください。
よくある質問
AI営業電話で新規開拓のテレアポを任せることはできますか?
仕組みとしては可能ですが、受付の取り次ぎやその場の切り返しが求められ、AIと気づかれると切られやすいため、多くの中小企業ではおすすめしにくいのが実情です。新規開拓は人が話し、AIにはリストの下調べやトークの下書き、通話記録の要約を任せる形が成果につながりやすいです。
AI営業電話は法律上問題ありませんか?
AIを使うこと自体がただちに問題になるわけではありませんが、個人に電話で勧誘する場合は特定商取引法のルールが関わる場合があり、電話番号や録音は個人情報にあたる場合があります。最新の情報は消費者庁や個人情報保護委員会の公式サイトで確認し、迷う場合は専門家に相談してください。
AIからの営業電話を受けたとき、見分け方・断り方は?
返事までの不自然な間や、質問への答えがずれる、担当者に代われないといった点が見分けるきっかけになります。断るときは、会社名を確かめたうえで「今後の電話は不要です」とはっきり伝え、何度もかかってくる場合は社内で番号を共有しておくと安心です。
AI営業電話を自社で使う場合、最初に何を決めればよいですか?
最初にAIの音声であることと会社名を伝えること、人へ代わる手順、断られた番号に二度とかけない仕組みの3つを決めてください。これらを満たせない場合は、AIに直接話させず、電話の前後の作業をAIに任せる使い方から始めるのがおすすめです。