はじめてのAI導入公開日

社員10〜20名の小さな会社でもAIを導入する意味はあるか——効果が出やすい条件・出にくい条件と、少人数ならではの利点

結論

社員10〜20名の小さな会社でも、AIを導入する意味は十分にあります。見合うかどうかを決めるのは会社の人数ではなく、「毎月くり返している作業にどれだけ時間がかかっているか」と「その作業が特定の1人に集中していないか」の2つです。少人数の会社は、決めるのが速く、社長が業務の中身を把握しているため、大きな会社よりも短い期間で効果を確かめやすいという利点もあります。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、社員10〜20名の小さな会社がAIを導入して見合うかどうかの判断のしかたについて解説します。「AIは人手の多い大きな会社が入れるもので、うちのような20人足らずの会社には早いのではないか」。経営者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。たしかに、社員が少なければ減らせる作業の総量も小さく見えますし、AIのために担当者を置く余裕もありません。一方で、少人数の会社ほど1人が抱える仕事の幅が広く、誰かが休むと業務が止まるという悩みも深くなりがちです。この記事では、「何から始めるか」や「失敗のパターン」ではなく、「規模が小さくても見合うのか」という問いに絞って、効果が出やすい条件・出にくい条件、少人数ならではの利点、見合うかどうかの計算のしかた、最初の1業務の目安、そしてやめたほうがよいケースを、AI社員を提供している当社の立場から説明します。

見合うかどうかは「人数」ではなく「くり返しの時間」と「誰に集中しているか」で決まる

AIの導入が見合うかどうかを、会社の人数で判断する必要はありません。AIが代わりに担うのは「会社全体」ではなく、「特定の作業」だからです。社員が200名いても、AIに向いた作業がほとんどなければ効果は小さく、社員が10名でも、毎日同じ入力や返信に追われている人がいれば効果は大きくなります。

判断の軸は、次の2つです。

  1. くり返しの時間:毎日・毎週・毎月、同じような手順でくり返している作業に、合計でどれだけ時間がかかっているか
  2. 集中の度合い:その作業が、社長や事務担当など特定の1人に集中していないか。その人が休むと止まってしまわないか

1つ目は「どれだけ時間が浮くか」、2つ目は「浮いた時間がどれだけ価値を持つか」に関わります。小さな会社では、事務・経理・総務を1人で兼ねている担当者や、見積や返信を社長自身が抱えているケースが少なくありません。こうした人の時間が空くと、その人にしかできない営業や判断、お客様対応に時間を回せるため、浮いた時間以上の効果が出やすくなります。

実際に、当社の導入事例には従業員15名規模の不動産会社があります。問い合わせ担当がお客様への初回返信を行っていましたが、他の業務と重なって返信まで半日かかることがありました。AIが問い合わせの内容を読み取って返信の下書きをつくる仕組みにしたことで、初回返信は10分ほどで出せるようになりました。会社の規模は小さくても、「1人が抱えていた、くり返しの作業」を引き取れば、効果ははっきり表れます。

ポイント

「うちは小さいから」と考える前に、「同じ作業を毎月くり返していて、それが誰か1人に偏っていないか」を確かめてください。当てはまる作業があれば、規模に関係なく検討する価値があります。

少人数の会社には、大きな会社にはない3つの利点がある

規模の小ささは、AI導入では不利な点ばかりではありません。むしろ、少人数の会社だからこそ進めやすい面があります。

1. 決めるのが速い

大きな会社では、AIを1つ入れるにも、部署間の調整、稟議(りんぎ:上の役職者に承認をもらう社内の手続き)、情報システム部門の審査などで、決まるまでに時間がかかります。社員10〜20名の会社であれば、社長が「この業務で試してみよう」と決めれば、その週のうちに準備を始められます。試してみて合わなければやり方を変える、という判断もすぐにできます。

2. 業務の中身が見えている

小さな会社では、社長や管理職が、誰がどの作業をどんな手順でしているかをおおむね把握しています。AIに任せる作業を決めるときに必要な「今どうやっているか」「どこで手間がかかっているか」を、わざわざ調査しなくても話し合いで洗い出せます。現場の担当者とも距離が近いため、実際に使う人の意見をその場で反映できます。

3. 効果が目に見えやすい

大きな会社では、ある部署の作業が少し減っても、会社全体から見ると変化に気づきにくいことがあります。少人数の会社では、1人の担当者の作業が減れば、残業が減った、返信が早くなった、社長が営業に出られるようになった、といった変化を全員が実感できます。効果が見えると、社内でAIを使うことへの納得も得やすくなります。

比べる点社員10〜20名の会社大きな会社
決めるまでの速さ社長の判断ですぐ決められる部署間の調整や承認に時間がかかる
業務の把握誰が何をしているか見えている現状の調査から始めることが多い
効果の実感1人分の変化でも全員が気づく部分的な変化は埋もれやすい
不利な点AIの担当者を置く余裕がない専任の担当者を置ける場合がある

表のとおり、小さな会社の弱みは「AIの面倒を見る担当者を置けない」ことです。この点は、外部に構築や保守を任せることで補えます。

効果が出やすい条件と、出にくい条件

少人数の会社でAIの効果が出やすいか、出にくいかは、会社の業種よりも、作業や社内の状態で分かれます。代表的な条件を並べると次のとおりです。

見るところ効果が出やすい効果が出にくい
作業のくり返し毎日・毎週、同じ種類の作業が発生する年に数回しか発生しない
作業の担い手社長や特定の1人に集中している手の空いた人が少しずつ分担している
材料の形メール・PDF・表計算など、データで届く紙や口頭のやりとりがほとんど
正解の決め方「こうなっていればよい」と説明できる担当者の勘や、その場の気分で決まる
浮いた時間の使い道営業・お客様対応など、回したい仕事がある浮いた時間にやることが決まっていない
確認する人AIの結果を見て直せる人がいる結果を確認する人がいない

特に見落としやすいのが、最後の2つです。AIで時間が空いても、その時間を何に使うかが決まっていなければ、会社としての効果は表れにくくなります。また、AIの結果をそのまま使うのではなく、最後に人が確かめる形が基本になるため、確認できる人が社内にいることも条件になります。

紙や口頭のやりとりが多い場合でも、あきらめる必要はありません。紙の書類を読み取る仕組みや、電話の内容を文字に起こす仕組みを組み合わせれば、AIで扱える形にできる場合があります。ただし、その分だけ準備に手間がかかるため、最初の対象としては後回しにするのが無難です。

見合うかどうかは、月の費用と「浮く時間×その人の時間の価値」で比べる

小さな会社にとって、AIにかける費用は決して軽くありません。見合うかどうかは、感覚ではなく、次の手順で一度計算してみることをおすすめします。

  1. 対象の作業を1つ決める:たとえば「問い合わせへの初回返信」「受注書の入力」など
  2. 今かかっている時間を数える:1回あたりの時間×1か月の回数で、月に何時間かかっているかを出す
  3. AIで減りそうな時間を見積もる:AIが下書きや入力をして、人は確認だけになると考えて、確認に残る時間を引く
  4. その時間の価値をお金に直す:担当者の時給(給与に社会保険料などを加えた額を、働く時間で割ったもの)を掛ける
  5. 月の費用と比べる:AIの月額とAIの利用料を合わせた額と比べる

ここで大事なのは、4つ目の「時間の価値」です。浮いた時間が社長や営業担当のものであれば、その時間で生まれる売上や、断らずにすんだ仕事まで含めて考えることができます。反対に、浮いた時間の使い道がなければ、計算上の金額ほどの効果は出ません。

当社の場合、AI社員の料金は初期費用+月5万円(税別、AI利用料は実費)で、運用後の保守・相談・メンテナンスは回数の制限なく含まれています。初期費用は、任せたい業務をうかがってからお見積もりしています。当社自身も、社内の業務にAIを使うことで月に約480時間の作業を減らしており、規模が小さい会社でも、くり返しの作業を積み重ねれば大きな時間になることを実感しています。

ポイント

1つの作業だけで見合わなくても、同じ担当者が抱える似た作業を2つ3つまとめて任せると見合う場合があります。逆に、どう計算しても浮く時間がわずかなら、今は導入を急ぐ必要はありません。

最初の1業務は「1人が抱えていて、その人が休むと止まる作業」が目安

少人数の会社で最初の1業務を選ぶときは、作業の量だけでなく、「その人が休んだら困るかどうか」を目安にすると、効果を感じやすくなります。小さな会社では、1人が休むと業務がそのまま止まることが多く、AIで作業の一部を引き取っておくことが、時間の削減と同時に、業務が止まる心配を減らすことにもつながるからです。

社員10〜20名の会社で、最初の候補になりやすいのは次のような作業です。

  • 問い合わせへの初回返信:社長や営業担当が合間に返していて、忙しい日は返信が遅れる
  • 受注書・注文書の入力:メールやFAXで届く書類を、事務担当が1件ずつ基幹システムや表に打ち込んでいる
  • 見積書の下書き:過去の見積を探して、社長や担当者が毎回つくり直している
  • 日報や報告の取りまとめ:現場から届く報告を、管理職が読み込んで表にまとめている
  • シフトや予定の作成:決まった条件に沿って、毎月同じ人が時間をかけて組んでいる

反対に、最初の1業務として避けたいのは、社員全員が少しずつ関わっていて担当がはっきりしない作業や、お客様との関係を左右する大事な判断が多く含まれる作業です。前者は効果を測りにくく、後者は確認の負担が大きくなります。

どの作業から始めるかの詳しい選び方や進め方は「中小企業のAI導入は何から始めるべきか」の記事で、業務の洗い出し方は「AIに任せる業務の洗い出し方」の記事で説明しています。この記事では、小さな会社ならではの目安として「1人に集中していて、その人が休むと止まる作業」を覚えておいてください。

AI導入をやめたほうがよい、または先送りしたほうがよいケース

小さな会社でもAIを導入する意味はありますが、すべての会社が今すぐ入れるべきだとは考えていません。次に当てはまる場合は、いったん立ち止まるか、先に別の手を打つほうがよいことがあります。

やめたほうがよい・先送りしたほうがよいケースのチェックリスト

  • 毎月くり返す作業がほとんどなく、仕事の大半が毎回違う判断や対面の対応である
  • くり返しの作業はあるが、合計しても月にわずかな時間にしかならない
  • 作業の手順や正解が人によってばらばらで、社内でもまだ決まっていない
  • 書類やデータがほとんど紙で、データにする準備にかなりの手間がかかる
  • 浮いた時間を何に使うかが決まっておらず、決める予定もない
  • AIの結果を確認できる人が社内にいない
  • 導入の目的が「周りが使っているから」「なんとなく効率化したいから」にとどまっている

手順がばらばらな場合は、先に社内で手順をそろえるだけでも、作業が楽になることがあります。紙が多い場合は、まず書類をデータで受け取る形に変えるところから始めると、次の段階でAIを入れやすくなります。目的があいまいな場合は、「何が楽になれば導入してよかったと言えるか」を決めてから検討しても遅くはありません。

一方で、上のチェックリストにほとんど当てはまらず、「特定の1人がくり返しの作業に追われている」という状況があるなら、会社の規模が小さいことは導入を見送る理由にはなりません。当社にはこれまで、建設・設備、医療・介護、製造、不動産、士業・会計など、さまざまな業種の約90社からご相談をいただいており、少人数の会社からのご相談も多くあります。「うちの規模で見合うのか」を一緒に計算するところからでも構いませんので、お気軽にご相談ください。

よくある質問

社員が10人くらいの小さな会社でもAIを入れる意味はありますか?

あります。見合うかどうかは人数ではなく、毎月くり返す作業にかかる時間と、その作業が特定の1人に集中しているかで決まります。当てはまる作業があれば、規模が小さくても効果は出やすいです。

小さな会社のほうがAI導入に向いている点はありますか?

あります。社長の判断ですぐに決められること、誰が何をしているかが見えていること、1人分の作業が減るだけでも効果を全員が実感できることの3つが、少人数の会社ならではの利点です。

AI導入の費用が見合うかどうかは、どう判断すればよいですか?

対象の作業に月何時間かかっているかを数え、AIで減る時間に担当者の時給を掛けて、AIの月額と利用料の合計と比べます。浮いた時間を営業やお客様対応に回せるかどうかも、あわせて考えることが大切です。

小さな会社がAI導入をやめたほうがよいのはどんな場合ですか?

くり返しの作業がほとんどない、作業の手順や正解が社内で決まっていない、AIの結果を確認できる人がいない、といった場合は、先に手順の整理や目的の決定をしてから検討するほうが安全です。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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