AI導入支援とは何をしてもらえるサービスか——研修型・コンサル型・開発型・伴走型の違いと、中小企業が依頼先を選ぶときの確認点
結論
AI導入支援とは、AIを業務で使えるようにするまでの「何に使うか決める・社員が使えるようになる・仕組みを作る・動かし続ける」のどこかを、外部の会社が手伝うサービスの総称です。同じ「AI導入支援」でも、研修型・コンサル型・開発型・伴走(運用)型で、してもらえることと、支援が終わった後に社内に残るものがまったく違います。依頼先は、自社が今どの段階でつまずいているかと、支援が終わった後に誰が仕組みを直すかの2点で選ぶと失敗しにくくなります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AI導入支援というサービスの中身と、研修型・コンサル型・開発型・伴走(運用)型の違い、中小企業が自社に合う依頼先を選ぶときの確認点について解説します。「AI導入支援」と検索すると、たくさんの会社が出てきます。ところが、ある会社は社員向けの研修を売り、別の会社は業務の分析と計画づくりを売り、また別の会社はシステムを作って納品します。同じ言葉なのに中身がばらばらで、「結局、何を頼めば自社のAI導入が進むのか」がわかりにくいと感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。中身を確かめずに頼むと、「研修は受けたが、業務は何も変わらなかった」「計画書はできたが、作る人がいない」ということが起こります。この記事では、AI導入支援というサービスの中身を4つの種類に分けて説明し、自社がどの種類を頼むべきかの見分け方と、依頼先を選ぶときの確認点をお伝えします。見積書の比べ方や、開発会社と既製ツールの違いは別の記事で扱っているため、ここでは「導入支援で何をしてもらえるのか」に絞ります。
AI導入支援とは:AIを業務で使えるようにするまでの4つの段階を、外部が手伝うサービス
AIを業務で使えるようにするまでには、大きく分けて4つの段階があります。AI導入支援は、このうちのどこか(またはいくつか)を外部の会社が引き受けるサービスです。どの段階を手伝うかによって、サービスの名前も中身も変わります。
| 段階 | この段階でやること | 社内だけで進めるときの壁 |
|---|---|---|
| 1. 決める | どの業務の、どの作業をAIに任せるかを決める | AIで何ができるかがわからず、候補が絞れない |
| 2. 覚える | 社員がAIの使い方や注意点を身につける | 使う人によって使い方がばらばらになる。情報の扱いのルールがない |
| 3. 作る | 業務の流れにAIを組み込む仕組みを作る(メールの読み取り、表への転記、文書の下書きなど) | 作れる人が社内にいない |
| 4. 続ける | 動かしながら、誤りの直しや業務の変化への対応をする | 書式やツールが変わったときに直せる人がいない |
中小企業のAI導入が止まる場所は、会社によって違います。「何に使うか」は決まっているのに作る人がいない会社もあれば、作る前に社員がAIに慣れていない会社もあります。AI導入支援を選ぶ第一歩は、自社がこの4段階のどこで止まっているかを知ることです。
ポイント
「AI導入支援」という言葉だけでは、4段階のどこを手伝うサービスなのかはわかりません。問い合わせる前に、そのサービスが「決める・覚える・作る・続ける」のどれを引き受けるのかを確かめましょう。
AI導入支援の種類は大きく4つ:研修型・コンサル型・開発型・伴走(運用)型
世の中のAI導入支援サービスは、主に次の4つの種類に分けられます。1社が複数の種類を組み合わせて提供していることも多いため、「どの種類の支援がどこまで含まれるか」で見るのがわかりやすい方法です。
| 種類 | してもらえること | 支援の終わりに残るもの | 主に手伝う段階 |
|---|---|---|---|
| 研修型 | 社員向けに、AIの基本・使い方・注意点を教える。業務別の使い方の演習をすることもある | 社員の知識、使い方の資料、社内ルールのひな形など | 2. 覚える |
| コンサル型 | 業務を聞き取り、AIに向く業務を洗い出し、優先順位と導入計画をまとめる | 業務の分析結果、導入計画書、進め方の提案 | 1. 決める |
| 開発型 | 決まった仕様にもとづいて、AIを使った仕組みやシステムを作って納品する | 納品された仕組み(とその説明書) | 3. 作る |
| 伴走(運用)型 | 業務の整理から仕組みづくり、動かした後の調整・相談までを継続して引き受ける | 動いている仕組みと、困ったときに頼める相手 | 1〜4のすべて(特に4. 続ける) |
研修型:社員が自分でAIを使えるようになることがゴール
研修型は、文章の下書きや要約など、社員が日々の仕事の中で自分でAIを使う場面を増やしたいときに向いています。一方で、研修だけでは「メールが届いたら自動で表に転記される」といった仕組みは生まれません。研修の後に、誰が業務の仕組みを作るのかを決めておく必要があります。
コンサル型:何に使うかを決めることがゴール
コンサル型は、業務の数が多く、どこから手をつけるべきか社内で決めきれない会社に向いています。注意したいのは、計画づくりで支援が終わる契約の場合、計画を形にする人が別に必要になることです。
開発型:決まったものを作ることがゴール
開発型は、作りたいものがはっきり決まっている会社に向いています。納品後の修正や調整は、別の契約や追加の費用になることが多いため、社内に直せる人がいない会社は、納品後の扱いを先に確かめておく必要があります。
伴走(運用)型:業務で使われ続けることがゴール
伴走型は、作る人も直す人も社内にいない会社に向いています。月々の費用がかかるため、その費用の中で何回・どこまで対応してもらえるのかを契約で確かめることが大切です。
自社に合うAI導入支援の見分け方:今つまずいている段階から選ぶ
どの種類が良い・悪いということはありません。自社が今どこでつまずいているかによって、合う支援が変わります。次の表で、自社の状態に近いものを探してみてください。
| 自社の状態 | 合いやすい支援 | 理由 |
|---|---|---|
| AIで何ができるのか、社員も経営者もまだよくわからない | 研修型(短いもの)から始める | まず共通の知識があると、任せたい業務の候補が社内から出やすくなる |
| 任せたい業務の候補が多すぎて、どれから手をつけるか決められない | コンサル型、または業務整理から入る伴走型 | 業務を外の目で見て、手間と効果で順番をつけてもらえる |
| 任せたい業務は決まっていて、作る人だけがいない | 開発型、または伴走型 | すぐに作る段階に入れる。納品後に直す人がいるかで選び分ける |
| 社内に作る人も直す人もいない | 伴走(運用)型 | 作った後の調整まで頼めないと、書式や業務が変わったときに止まってしまう |
| 社内にITに詳しい人がいて、自分たちで直していける | 研修型・開発型 | 知識や仕組みを受け取れば、その後は社内で回せる |
社員10〜50名ほどの中小企業では、「作る人も直す人も社内にいない」という状態がよく見られます。当社にご相談いただいた約90社(建設・設備、医療・介護、製造、教育、物流、食品、不動産、出版・印刷、人材、士業・会計)でも、エンジニアがいないことを前提にしたご相談が多くを占めています。この場合、研修だけ・計画だけ・納品だけの支援を選ぶと、次の段階で再び止まってしまいがちです。
ポイント
迷ったら「支援が終わった次の日、社内で誰が何をするのか」を想像してください。研修なら社員が自分で使う、計画なら誰かが作る、納品なら誰かが直す、が必要です。その「誰か」が社内にいなければ、その段階まで含めて頼める支援を選びます。
AI導入支援の依頼先を選ぶときの確認点チェックリスト
種類のあたりがついたら、依頼先の候補に次の点を確かめます。金額の比べ方ではなく、「その会社の導入支援で、実際に何が起きるのか」を確かめるための項目です。
AI導入支援の依頼先を選ぶときのチェックリスト
- 支援の範囲が「決める・覚える・作る・続ける」のどこまでか、言葉で説明してもらえるか
- 支援が終わったときに、社内に何が残るのか(資料・計画書・動く仕組み・相談先)がはっきりしているか
- 最初に自社の業務の流れと実際の書類を見たうえで提案してくれるか(ツールの紹介から始まらないか)
- 研修やコンサルの場合、その後の「作る」段階を誰がするのか、提案があるか
- 開発の場合、納品後の修正・調整は誰が、どこまで、どの契約で対応するのかが決まっているか
- 伴走型の場合、月々の費用の中で相談やメンテナンスに回数・時間の上限があるか
- AIの利用料(AIを動かすたびにかかる費用)が、支援の料金に含まれるのか別なのかが明確か
- AIに任せる範囲と、人が確認する範囲を一緒に決めてくれるか
- 社内のデータをどこに保存し、AIにどこまで渡すのかを説明してくれるか
- 小さく試してから広げる進め方を提案してくれるか
- 専門用語を使わずに、経営者や現場の担当者にわかる言葉で説明してくれるか
補助金を使う場合の注意
AI導入支援の費用に補助金が使えるかどうかは、補助金の種類や年度、対象となる経費の決まりによって変わります。研修費は対象でも月々の運用費は対象外、といった違いがある場合もあります。補助金を前提に依頼先を選ぶときは、対象になるかを公式サイトの最新の情報や窓口で確認してから進めてください。
AI導入支援を頼むまでの手順と、よくある行き違い
AI導入支援を頼むときは、次の順番で進めると、依頼先との話がかみ合いやすくなります。
- 止まっている段階を確かめる:1章の4段階のうち、自社がどこで止まっているかを社内で話し合う
- 困っている業務を書き出す:時間がかかっている作業、ミスが起きやすい作業を、おおよその時間や頻度と一緒に書き出す
- 支援の種類を決める:3章の表を見て、研修型・コンサル型・開発型・伴走型のどれ(どの組み合わせ)が合うかを決める
- 候補の会社に、支援の範囲と終わった後のことを聞く:4章のチェックリストを使って確かめる
- 1つの業務で小さく始める:最初から全社で始めず、1つの業務で効果を確かめてから広げる
よくある行き違い
| 依頼した側の思い込み | 実際に起きやすいこと | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 研修を受ければ業務が自動化される | 社員は使い方を覚えたが、業務の流れは変わらない | 研修の後に「作る」段階を誰がするかを決めておく |
| 計画書ができれば導入は進む | 計画を形にする人がおらず、計画書が保管されたままになる | 計画づくりと仕組みづくりを続けて頼めるか確かめる |
| 納品されたら終わり | 取引先の書式やツールが変わり、仕組みが動かなくなる | 納品後の調整の範囲と費用を契約前に確かめる |
| 月額を払えば何でも対応してもらえる | 対応の回数や範囲に上限があり、追加の費用がかかる | 月額に含まれる対応の範囲を書面で確かめる |
どの行き違いも、「支援が終わった後、社内で誰が何をするか」を依頼前に話していれば防げるものです。
当社のAI導入支援の立場:業務に合わせた仕組みを作り、その後の調整まで続ける伴走型
当社の「月5万円のAI社員」は、4つの種類でいえば伴走(運用)型にあたります。業務の聞き取りと整理(決める)から、業務に合わせたAIの仕組みづくり(作る)、動かした後の誤りの直しや業務の変化への対応(続ける)までを、まとめてお引き受けしています。
| 項目 | 当社の内容 |
|---|---|
| 料金 | 初期費用+月5万円(税別)。初期費用はヒアリング後にお見積もり。AIの利用料は実費 |
| 月額に含まれるもの | 保守・相談・メンテナンス(回数の制限なし) |
| 構築期間の目安 | ジュニア2週間程度・ミドル1か月程度・シニアは応相談。最短2週間で稼働 |
| 契約期間 | 12か月 |
研修型のように「社員がAIを使いこなせるようになること」を主な目的にしたサービスではありません。社員の方には、AIの仕組みが作った下書きや転記の結果を確かめていただく形が中心です。そのぶん、ITに詳しい社員がいない会社でも、業務の流れそのものを変えられます。
導入事例として、製造業(従業員30名規模)の事務担当の方の受注書入力が1日2時間から15分に、不動産(従業員15名規模)の問い合わせ担当の方の初回返信が半日から10分に、介護(職員50名規模)の事務担当の方の毎月のシフト作成が2日から半日になりました。当社自身の業務でも、AIの仕組みで月約480時間の作業を減らしています。
「研修や計画だけでなく、実際に業務が変わるところまで頼みたい」「作った後に直してくれる相手がほしい」という方は、まず困っている業務を1つ挙げてご相談ください。エンジニアがいない会社の進め方は「社内にエンジニアがいない会社はAI導入をどう進めるか」、依頼先の見積の比べ方は「AI導入の見積もりはどこを見て比べればよい?」の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
AI導入支援とは、具体的に何をしてもらえるサービスですか?
AIを業務で使えるようにするまでの「何に使うか決める・社員が使えるようになる・仕組みを作る・動かし続ける」のどこかを、外部の会社が手伝うサービスです。会社によって手伝う段階が違うため、依頼前にどこまで含まれるかを確かめてください。
AI導入支援の研修型・コンサル型・開発型・伴走型は、どう選べばよいですか?
自社が今どの段階で止まっているかと、支援が終わった後に社内で誰が仕組みを直すかで選びます。社内に作る人も直す人もいない場合は、仕組みづくりと導入後の調整まで頼める伴走(運用)型が向いています。
中小企業がAI導入支援を頼むとき、最初に何を準備すればよいですか?
時間がかかっている作業やミスが起きやすい作業を、おおよその時間・頻度と一緒に書き出し、実際の書類やメールの例を数件用意します。業務の実物があると、依頼先が合う支援の種類と範囲を提案しやすくなります。
AI導入支援に補助金は使えますか?
補助金の種類や年度、対象となる経費の決まりによって、使える場合と使えない場合があります。研修費と月々の運用費で扱いが違うこともあるため、公式サイトの最新の情報や窓口で確認してから進めてください。