仕入れ・発注業務をAIで効率化するには?——発注数の候補・発注書・納期回答の取りまとめを任せ、人が確定する方法
結論
仕入れ・発注業務は、AIに「在庫数と過去の発注・出荷の実績から発注数の候補を出し、発注書を作成し、仕入先からの納期回答を取りまとめる」ところまでを任せ、発注を確定するのは人、という形にすると効率化できます。AIは候補と根拠を示し、いつもと違う数量や新しい仕入先などの例外は理由を添えて人に回すため、発注ミス・欠品・過剰在庫を減らしながら、担当者の作業を「数えて書く」から「確かめて決める」に変えられます。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、仕入れ・発注業務(発注側)をAIで効率化し、発注ミス・欠品・過剰在庫を減らす方法について解説します。発注の作業は、在庫を数え、過去の実績を思い出しながら数量を決め、仕入先ごとに発注書をつくって送り、返ってきた納期の連絡を一覧に書き込む、という流れで成り立っています。多くの中小企業では、この流れを特定の担当者の経験と勘で回しています。その担当者が辞めたり休んだりすると、頼み忘れで欠品が起きたり、念のために多めに頼んで倉庫が在庫でいっぱいになったりします。この記事では、経営者の方に向けて、仕入れ・発注業務のどこまでをAIに任せられるのか、発注数の候補をどう出すのか、人が最終判断する仕組みをどう設計するのかを、AI社員を提供している当社の立場から説明します。なお、ここで扱うのは自社が仕入先に頼む「発注側」の業務です。取引先から届く注文書を入力する「受注側」の業務とは別の話として読んでください。
発注業務の失敗は「ミス・欠品・過剰在庫」の3つとして会社の利益に響く
発注は、売上を生む作業ではないため、つい後回しにされがちです。しかし発注の失敗は、次の3つの形で会社の利益に直接響きます。
- 発注ミス:品番や数量の書き間違い、単位(個とケース)の取り違え、同じ品の二重発注など。返品や追加の配送でお金と手間がかかる
- 欠品:頼み忘れや、入荷までの日数の見込み違いで、売れる商品や使う材料が手元にない状態。売上を逃すだけでなく、取引先からの信頼も損なう
- 過剰在庫:心配で多めに頼み続けた結果、倉庫に商品が積み上がる状態。仕入れに使ったお金が眠り、資金繰りを圧迫する。古くなって売れなくなるおそれもある
この3つは、どれも「担当者の経験と勘に頼っていること」が根っこにあります。経験のある担当者ほど上手に回せますが、その判断の中身は記録に残っていないため、ほかの人が引き継げません。
受注側の入力とは「向き」が逆の業務
取引先から届いた注文書を販売管理システムに入力する作業は「受注側」の業務で、AIは主に読み取りと入力を担います。これに対して発注は、自社から仕入先に頼む「発注側」の業務で、AIの役割は「何をいくつ頼むか」の候補を考え、頼んだ後の状況を追いかけることにあります。同じ受発注でも、AIに任せる中身がまったく違う点を押さえておいてください。
また、発注の失敗は担当者ひとりの問題ではなく、仕組みの問題として捉えることが大切です。どれだけ注意深い担当者でも、品目や仕入先が増えれば見落としは起きます。経営者が「担当者にもっと気をつけさせる」のではなく、「気をつけなくても間違えにくい仕組みにする」と考えることが、AIを使った効率化の出発点になります。
AIに任せるのは「発注数の候補・発注書の作成・納期回答の取りまとめ」の3つ
仕入れ・発注業務をAIで効率化するときは、仕事を次の3つに分けて任せます。
- 発注数の候補づけ:在庫数、引き当て済みの数、過去の出荷や使用の実績、入荷までにかかる日数をもとに、品番ごとに「いつ・いくつ頼むか」の候補を出し、そう考えた根拠を添える
- 発注書の作成と送付の準備:人が確定した発注内容を、仕入先ごとにまとめて発注書をつくる。仕入先が指定する様式や送り方(メール・FAX・専用のWeb画面など)に合わせて、送る直前の状態まで準備する
- 納期回答の取りまとめ:仕入先から返ってきた納期の連絡を読み取り、発注残(頼んだがまだ届いていない分)の一覧に反映する。回答がない仕入先や、希望の日に間に合わない回答には印を付けて知らせる
ポイント
AIに「発注を確定させない」「発注書を勝手に送らせない」のが基本です。発注は会社のお金を使う約束なので、AIの役割は候補づくりと準備までにとどめ、確定と送付の指示は人が行います。
こうして分けると、担当者の仕事は「在庫を数え、数量を考え、発注書を書き、納期を書き写す」から、「AIの候補を確かめて決め、例外にだけ対応する」に変わります。作業の時間が減るだけでなく、判断の根拠が記録に残るため、担当者が替わっても同じ考え方で発注を続けられるようになります。
発注書の作成で減らせるミス
発注書をAIに作らせると、品番と品名の組み合わせ、仕入先ごとの発注単位、前回の単価との違いを、作る段階で照らし合わせられます。ケースで頼むべき品を個数で書いてしまう、同じ品を2回頼んでしまう、といった書き間違いは、こうした照らし合わせで見つけやすくなります。
発注数の候補は「在庫・実績・入荷までの日数」から出す
AIが発注数の候補を出すときに使う情報は、特別なものではありません。担当者が頭の中で考えていることを、データとして並べ直すだけです。
| 使う情報 | 候補づけでの役割 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 現在の在庫数と引き当て済みの数 | 実際に使える在庫がいくつあるかを知る | 在庫表、受注の一覧 |
| 過去の出荷・使用の実績 | 1日や1週間にどれくらい減るかを見積もる。季節による増減も見る | 過去1年程度の出荷記録や使用記録 |
| 過去の発注実績 | いつもの発注の単位や頻度、仕入先ごとの最低発注数を知る | 過去の発注書や発注の一覧 |
| 入荷までにかかる日数 | 今頼むと、いつ届くかを見込む | 仕入先ごとの標準の納期 |
| 発注残 | すでに頼んでいてこれから届く分を差し引く | 発注残の一覧 |
| 今後の予定 | 大口の注文や催事など、実績だけではわからない増減を加える | 営業からの見込みの情報 |
考え方の例
たとえば、ある部品が1日に平均10個使われ、仕入先に頼んでから届くまで5日かかるとします。届くまでの間に約50個使う計算なので、それに念のための余裕分を足した数を「この数を下回ったら頼む目安」とします。今の在庫と発注残の合計がこの目安を下回ったら、AIが「発注の候補」として、いつもの発注単位に合わせた数量を示します。ここで挙げた数字は説明のための例で、実際の目安は会社や品目ごとに決めます。
大切なのは、AIが候補と一緒に「直近4週間の使用が多めのため、いつもより多い数量にしています」のように根拠を示すことです。根拠が見えれば、担当者は数字を鵜呑みにせず、営業の見込みや仕入先の事情と照らして判断できます。
品目ごとに扱いを分ける
すべての品目を同じ考え方で扱う必要はありません。よく出る定番品は候補づけを中心に任せ、季節ものや受注生産に近い品目は営業の見込みを重く見る、めったに出ない品目は注文が入ってから頼む、といったように、品目の性格ごとに扱いを分けておくと、候補の精度が上がります。この分け方そのものは、品目をよく知る担当者と一緒に決めていきます。
人が最終判断する仕組みは「承認の線引き」と「例外の知らせ方」で決まる
発注をAIで効率化するときに、経営者が最初に決めておきたいのが、どの発注を誰が確かめるかという線引きです。目安として、次のように分けます。
| 発注の種類 | 確かめる人 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| いつもの品を、いつもの仕入先に、いつもと近い数量で | 発注担当者 | 候補の一覧を見て、まとめて確定する |
| いつもより大きく多い・少ない数量 | 発注担当者 | AIが示した根拠を読み、営業の見込みと照らして1件ずつ判断する |
| 一定の金額を超える発注 | 部門の責任者 | 金額と必要性を確かめて承認する |
| 新しい仕入先・新しい品目・単価の変更 | 経営者や責任者 | 取引条件を含めて判断する。AIには候補を出させない |
AIは、いつもと違う数量、前回と違う単価、長く頼んでいない品目など、気になる点を見つけたら「確認が必要です」と理由を添えて知らせます。人は、その知らせが付いた発注を重点的に見ればよくなります。
人が最終判断する仕組みのチェックリスト
- AIが発注を確定したり、発注書を送ったりしない設定になっている
- 金額や数量によって、誰が承認するかが決まっている
- 新しい仕入先や単価の変更は、必ず責任者が判断する決まりになっている
- AIの候補を人が直した記録が残り、後から見直せる
- 発注担当者が不在のときの代わりの担当者が決まっている
仕入先との取引条件や支払いの条件によっては、発注書に書くべき事項が法令で定められている場合もあります。発注書の様式を変えるときは、最新の情報を公式サイトで確認し、必要に応じて専門家に相談してください。
納期回答の取りまとめで、遅れに早く気づけるようになる
発注した後の「いつ届くのか」を追いかける作業も、担当者の時間を大きく取っています。仕入先からの納期の連絡は、メール、FAX、電話、仕入先のWeb画面などばらばらに届き、それを担当者が発注残の一覧に書き写しているのが一般的です。
AIに取りまとめを任せると、次のような流れになります。
- 仕入先から届いたメールやFAXの文面から、発注番号・品番・回答された納期を読み取る
- 発注残の一覧の該当する行に、回答された納期を書き込む
- 希望の日より遅い回答や、一部しか届かない回答に印を付ける
- 決まった日数が過ぎても回答がない仕入先に、確認の連絡文を下書きする
この取りまとめができると、欠品につながる遅れに早く気づけるようになります。たとえば、ある材料の納期が遅れるとわかった時点で、その材料を使う取引先の注文に影響が出るかを確かめ、営業担当者が先に取引先へ連絡する、といった動きが取れます。遅れがわかるのが入荷予定日の当日では、こうした対応は間に合いません。
仕入先への確認の連絡文は、AIが下書きし、担当者が内容を確かめてから送ります。長い付き合いの仕入先との関係は会社にとって大切な資産なので、言い回しや連絡のタイミングは人が判断する部分として残しておきます。
納期の情報が一か所にまとまると、経営者にとっても見通しが立てやすくなります。どの仕入先で遅れが多いのか、どの品目の入荷がいつも予定より遅れるのかが記録から読み取れるため、仕入先との話し合いや、別の仕入先を探すかどうかの判断材料にもなります。
発注業務の効率化を進める手順と、当社のAI社員でできること
仕入れ・発注業務の効率化は、次の順番で進めるとスムーズです。
- 今の発注のやり方を書き出す:誰が、いつ、何を見て、どの仕入先に、どうやって頼んでいるかを書き出す。担当者の頭の中にある「この品はこの数を切ったら頼む」という目安も聞き取る
- データを集める:在庫表、過去の出荷や使用の記録、過去の発注書、仕入先ごとの標準の納期を集める
- 対象の品目を絞る:品目数が多い場合は、よく頼む品目や、欠品したときの影響が大きい品目から始める
- 候補づけだけを並行して試す:今までどおり担当者が発注しながら、AIの候補と実際の発注を1〜2か月比べ、ずれの理由を確かめて目安を直す
- 発注書の作成と納期の取りまとめを加える:候補の精度が確かめられたら、発注書の作成と納期回答の取りまとめも任せ、担当者は確定と例外への対応に集中する
発注業務の効率化は、在庫・納期の問い合わせ対応とも深くつながっています。発注残と入荷予定が正しく管理されていれば、取引先からの「いつ届きますか」という問い合わせにも正確に答えられるようになるためです。
当社のAI社員は、会社ごとの在庫表や発注の記録の形式、仕入先ごとの発注書の様式、社内の承認のルールに合わせて仕組みをつくり、初期費用+月5万円で運用後の調整や相談にも対応しています。品目や仕入先が増えたり、承認のルールが変わったりしても、その都度直しながら使い続けられます。構築期間は内容によって異なりますが、最短2週間で動かし始めることができます。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。
よくある質問
発注業務をAIに全部自動でやらせることはできますか?
仕組みとしては可能ですが、当社はおすすめしていません。発注は会社のお金を使う約束なので、AIは発注数の候補づけと発注書の準備までにとどめ、確定と送付は人が行う形を基本にしています。
AIで発注数を決めると、欠品や過剰在庫は減りますか?
在庫数・過去の実績・入荷までの日数をもとに候補を出し、根拠を示すため、頼み忘れや多めの発注を減らしやすくなります。ただし大口の注文や催事など実績にない増減は、人が営業の見込みを加えて判断する必要があります。
在庫管理システムがなく、Excelで管理していてもAIで発注を効率化できますか?
多くの場合、できます。表計算ソフトの在庫表や過去の発注の一覧を読み込む形で仕組みをつくります。データの更新のしかたによって候補の正確さが変わるため、始める前に更新のルールを決めておきます。
仕入先からの納期回答をAIでまとめることはできますか?
メールやFAXで届いた納期の連絡を読み取り、発注残の一覧に反映することができます。希望の日に間に合わない回答や、回答がない仕入先には印を付けて担当者に知らせます。