業務別の自動化公開日

勤怠の締め・残業時間の集計とチェックをAIで効率化するには?——打刻漏れ・申請との食い違い・残業が多い人を早めに見つける方法

結論

勤怠の締めと残業時間のチェックは、AIに「打刻データ」と「休暇・残業の申請」を照らし合わせさせ、打刻漏れ・申請との食い違い・残業が多くなりそうな人を一覧にさせることで効率化できます。人はその一覧を見て、本人への確認と最終的な判断だけを行う形にするのが基本です。労務の判断や法令の解釈はAIに任せず、人が責任を持って決めます。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、勤怠の締めと残業時間の集計・チェックをAIで効率化する方法について解説します。月末になると、勤怠の締めで管理職や総務の担当者の手が止まる。打刻を忘れた人に一人ずつ連絡し、申請と打刻が合わない日を探し、残業時間を数え直す。こうした作業に毎月何時間もかかっている会社は少なくありません。しかも、残業が多い人に気づくのが月末の締めのときになり、「もっと早く分かっていれば調整できたのに」ということも起こります。この記事では、勤怠の締めと残業時間のチェックのうち、どこをAIに任せられるのか、どう進めればよいのか、そして人が必ず持っておくべき判断はどこかを、管理職の方に向けて順に説明します。

勤怠の締めで時間がかかるのは「探す」「照らし合わせる」「連絡する」作業

勤怠の締めの作業を細かく分けると、時間がかかっているのは計算そのものではなく、その前後の作業であることが多いです。勤怠の仕組みを入れていれば、労働時間や残業時間の合計は自動で出ます。それでも締めに時間がかかるのは、次のような作業が手作業で残っているからです。

  • 探す:出勤しているのに退勤の打刻がない日、休暇の申請がないのに打刻がない日を、一覧を目で追って探す
  • 照らし合わせる:残業の申請時間と実際の打刻時間、休暇の申請と出勤記録が合っているかを一人ずつ確かめる
  • 連絡する:打刻漏れや食い違いがあった人に連絡し、修正や申請を促し、返事を待つ
  • まとめる:残業が多い人、休日出勤が続いている人を拾い出し、上長や経営者に報告する

これらは、決まったルールで「おかしなところ」を見つけて、決まった相手に知らせる作業です。こうした作業はAIの得意分野で、人が一覧を目で追うよりも速く、見落としも少なくできます。

一方で、「この残業は業務上必要だったか」「この人の働き方をどう調整するか」といった判断は、職場の事情を知っている人にしかできません。勤怠の締めをAIで効率化するときは、まずAIに任せる「見つける・知らせる」と、人が持つ「判断する」を分けて考えることが出発点になります。

AIに任せられる勤怠チェックは5つ:打刻漏れ・食い違い・残業の見込み・連続勤務・連絡

勤怠の締めでAIに任せやすい作業は、次の5つです。いずれも「データを読み、ルールに照らしておかしなところを拾い、知らせる」作業です。

AIに任せる作業中身人がすること
打刻漏れの発見出勤・退勤のどちらかが抜けている日、申請がないのに打刻がない日を一覧にする本人に確認し、正しい時刻を確定する
申請との食い違いの発見残業申請の時間と打刻の時間の差、休暇申請の日に打刻がある日などを拾う差が出た理由を確認し、修正するか決める
残業時間の見込みの把握月の途中の残業時間から、このままのペースで月末にどのくらいになるかを見込み、多くなりそうな人を挙げる仕事の割り振りを調整するか判断する
連続勤務・休日出勤の把握休みなく続いている日数や、休日出勤の回数を数え、社内の基準を超えそうな人を挙げる休みを取らせるなどの対応を決める
本人への連絡文の下書き打刻漏れや申請の出し忘れについて、本人に送る確認の文面を作る文面を見て送る(慣れたら自動送信も検討)

とくに効果が大きいのは、3つめの「残業時間の見込み」です。月末に締めてから「今月は残業が多すぎた」と分かっても、もう調整はできません。月の途中で、たとえば毎週1回、AIが「このペースだと月末にこのくらいになりそうな人」を挙げてくれれば、管理職は仕事の割り振りを早めに見直せます。

ポイント

AIに「おかしいかどうか」を決めさせるのではなく、「社内で決めた基準に当てはまるものを拾わせる」ように作ります。基準を決めるのは人、当てはめて拾うのがAIという分担にすると、結果の理由も説明しやすくなります。

進め方の手順:基準を決め、データをそろえ、一覧と連絡から始める

勤怠チェックをAIで効率化するときは、次の順番で進めると無理がありません。

  1. 今の締め作業を書き出す:締めの日に誰が何をしているか、どこで時間がかかっているかを書き出します。「打刻漏れの連絡に一番時間がかかっている」など、最初に手をつける作業が見えてきます
  2. チェックの基準を社内で決める:「申請と打刻の差が何分以上なら確認する」「残業が月の途中でどのくらいなら知らせる」「何日連続で勤務したら知らせる」など、拾う基準を決めます。基準は社内の就業規則や労使の取り決めに合わせて人が決めます
  3. データの出し方をそろえる:勤怠の仕組みから打刻データを、申請の仕組みや表から休暇・残業の申請を、同じ形で取り出せるようにします。紙や表計算で申請している場合は、まず形をそろえるところから始めます
  4. AIに一覧を作らせる:基準に当てはまる日と人を、理由つきで一覧にさせます。最初の数か月は、人が今までどおりのチェックも並行して行い、AIの一覧に抜けや誤りがないかを確かめます
  5. 本人への連絡を任せる:一覧ができるようになったら、打刻漏れや申請忘れの本人への確認文を下書きさせます。慣れてきたら、決まった内容の連絡は自動で送るようにします
  6. 月の途中の見込みを報告させる:週に1回など決まった間隔で、残業が多くなりそうな人の一覧を管理職に届けるようにします

いきなり全部を変える必要はありません。多くの会社では、手順4の「一覧を作らせる」だけでも、締めの日に目で探していた時間が大きく減ります。その次に、連絡の手間を減らす手順5に進むのが現実的です。

勤怠の仕組みを入れ替える必要はある?

多くの場合、今使っている勤怠の仕組みを入れ替える必要はありません。打刻データを表の形で取り出せれば、その後の照らし合わせや一覧づくりはAIの側で行えます。仕組みから自動でデータを取り出せない場合でも、締めの日に担当者がデータを出力して決まった場所に置く、という運用から始められます。

人が必ず持っておく判断:残業の必要性・働き方の調整・法令の解釈

勤怠のチェックをAIに任せても、次の判断は人が持ち続けます。ここをあいまいにすると、AIの一覧を見ても誰も動かない、あるいはAIの結果をそのまま正しいものとして扱ってしまう、といった問題が起こります。

人が判断すること

  • 申請と打刻の差が、業務によるものか、記録の誤りかの見極め
  • 残業が多くなりそうな人について、仕事の割り振りを変えるかどうか
  • 打刻の修正を認めるかどうか(本人への確認を経たうえで)
  • 社内の基準(何分・何時間・何日で知らせるか)の決定と見直し
  • 法令や就業規則の解釈が必要な場面での判断

とくに、残業時間の上限や割増賃金、休日の取り扱いなどは法令に関わります。法令の内容は改正されることもあり、会社の規模や業種、労使の取り決めによって扱いが変わる場合があります。AIに法令の解釈をさせて判断の根拠にするのではなく、社内の基準は社会保険労務士などの専門家や公的機関の情報をもとに人が決め、AIにはその基準に当てはまるかどうかを拾わせるようにしてください。最新の制度の内容は、厚生労働省などの公式サイトで確認することをおすすめします。

個人の勤怠データの扱いにも配慮する

勤怠データは、社員一人ひとりの働き方が分かる情報です。AIに読ませる範囲を必要な項目に絞る、一覧を見られる人を管理職と担当者に限る、外部のAIサービスを使う場合は入力した情報が学習に使われない設定や契約になっているかを確かめる、といった配慮が必要です。詳しくは「社内データをAIの学習に使わせないには?」の記事もあわせてご覧ください。

導入前と導入後で、締めの流れはこう変わる

勤怠チェックをAIに任せると、締めの流れは次のように変わります。部署の管理職と総務の担当者がそれぞれ何をするかを、導入前と導入後で比べます。

場面導入前導入後
月の途中とくに何もしない。残業の状況は月末まで分からない週に1回、残業が多くなりそうな人の一覧が管理職に届き、仕事の割り振りを早めに見直せる
締めの前日まで総務が一覧を目で追い、打刻漏れを探して一人ずつ連絡するAIが打刻漏れと申請忘れを拾い、本人に確認の連絡を送る。総務は返事の状況を見るだけ
締めの日申請と打刻を一人ずつ照らし合わせ、食い違いを探すAIが作った食い違いの一覧を見て、理由の確認が必要なものだけを本人や上長に確かめる
締めの後残業が多かった人を拾い出し、報告資料を手で作る部署ごとの残業時間、連続勤務、休日出勤の状況をまとめた報告の下書きをAIが作る

大きく変わるのは、締めの日にまとめて行っていた作業が、月の途中に少しずつ分散されることです。月末に作業が集中しないため、総務の担当者が締めの日に残業する、といった状況も起きにくくなります。

よくあるつまずきと対策

導入の初めに起こりやすいつまずきは、次の3つです。

  1. 基準があいまいで一覧が長くなりすぎる:「少しでも差があれば挙げる」にすると、確認の必要がないものまで一覧に並びます。数か月の結果を見ながら、差の分数などの基準を調整します
  2. 連絡を送っても返事が来ない:本人への確認の連絡は、期限と修正の方法を具体的に書きます。期限を過ぎても返事がない人だけを、上長に知らせるようにします
  3. 一覧を見る人が決まっていない:一覧が届いても誰も動かなければ意味がありません。部署の管理職が見るのか総務が見るのかを、最初に決めておきます

どれも、仕組みの性能ではなく運用の決め方で防げるものです。最初の数か月で基準と担当を整えておけば、その後は毎月ほとんど手間をかけずに回せるようになります。

効果が出やすい会社と、始める前に確認したいこと

勤怠チェックのAI化は、次のような会社で効果が出やすい傾向があります。

  • シフト制や現場への直行直帰があり、打刻漏れや申請の出し忘れが毎月一定数ある
  • 締めの作業を、管理職や総務の担当者が本来の仕事の合間に行っている
  • 残業が多い人に気づくのが月末になり、調整が後手に回っている
  • 拠点や部署が分かれていて、全体の状況を一度に見られない

反対に、社員が少なく毎月の打刻漏れもほとんどない会社では、AIを入れるほどの効果は出にくいかもしれません。まずは今の締め作業に、毎月どのくらいの時間がかかっているかを測ってみてください。

始める前に確認すること

  • 打刻データと申請データを、表の形で取り出せるか
  • 申請と打刻の差、残業の見込み、連続勤務について、社内の基準が言葉で決まっているか
  • AIの一覧を見て動くのは誰か(部署の管理職か、総務か)が決まっているか
  • 勤怠データを見られる人の範囲が決まっているか
  • 最初の数か月、人のチェックと並行して確かめる時間を取れるか

当社でも、自社の業務をAIの仕組みに置き換えることで、月に約480時間の作業を減らしてきました。勤怠の締めのように毎月決まって発生する作業は、置き換えの効果が見えやすい業務の一つです。自社の締め作業のどこから任せられるか知りたい方は、月5万円のAI社員の無料相談でお気軽にお尋ねください。

よくある質問

勤怠の締めや残業の集計はAIで自動化できますか?

打刻漏れや申請との食い違い、残業が多くなりそうな人を見つけて一覧にし、本人への確認文を作るところまではAIで自動化できます。打刻の修正を認めるか、仕事の割り振りを変えるかといった判断は人が行います。

今の勤怠システムを入れ替えないとAIは使えませんか?

多くの場合、入れ替える必要はありません。打刻データと申請データを表の形で取り出せれば、照らし合わせや一覧づくりはAIの側で行えます。

残業時間の上限を超えそうかどうかもAIに判断させてよいですか?

社内で決めた基準に当てはまる人を拾わせることはできますが、法令の解釈や最終的な判断は人が行ってください。法令の内容は変わることがあるため、基準は専門家や公式サイトの情報をもとに人が決めることをおすすめします。

社員の勤怠データをAIに読ませても大丈夫ですか?

読ませる項目を必要な範囲に絞り、一覧を見られる人を限ることが大切です。外部のAIサービスを使う場合は、入力した情報が学習に使われない設定や契約になっているかを事前に確認してください。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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