営業リストの作成をAIで効率化する方法——公開情報の収集・条件での絞り込み・重複整理の進め方
結論
営業リストの作成は、AIに「公開情報を集める→条件で絞り込む→重複や表記ゆれを整える→優先順位をつける」の4つを任せることで、担当者の作業を「探して打ち込む」から「できたリストを確かめて使う」に変えられます。ただし、情報を集めるサイトの利用規約や個人情報のルールを守ることが前提で、集め方を最初に決めておくことが成功の分かれ目です。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、営業リストの作成をAIで効率化する方法と、守るべきルールについて解説します。営業リストづくりは、営業担当や事務担当が空き時間に少しずつ進めることが多く、時間がかかるわりに質がそろいにくい作業です。この記事では、営業リストの作成のどこをAIに任せられるのか、どんな手順で進めるのか、情報を集めるときに守るべきルールは何かを、中小企業の営業の現場を想定して説明します。
営業リスト作りに時間がかかるのは「探す・確かめる・整える」の3工程があるから
営業リストの作成は、一見すると企業名と連絡先を並べるだけの作業に見えます。しかし実際には、次の3つの工程が重なっているため、思った以上に時間がかかります。
- 探す:業界団体の名簿、自治体の公開情報、企業のホームページ、求人情報などを開いては閉じ、条件に合いそうな企業を1社ずつ見つける
- 確かめる:所在地や従業員規模、事業内容が条件に合っているか、すでに取引がないか、営業を断られた会社ではないかを確認する
- 整える:会社名の表記(株式会社の前後、全角と半角など)や電話番号の書き方をそろえ、同じ会社が重複していないかを見直す
どの工程も1件ごとの作業は小さいものの、数百件、数千件になると担当者の時間を大きく取ります。また、担当者によって探し方や判断の基準が違うため、リストの質にばらつきが出やすいのも悩みどころです。
その結果、「リストを作るだけで疲れてしまい、肝心の営業活動に時間を使えない」「作ったリストに重複や古い情報が多く、電話をかけてもつながらない」といった声がよく聞かれます。
AIに任せられるのは「収集・絞り込み・重複整理・優先順位づけ」の4つ
営業リストの作成をAIで効率化するとき、AIに任せる仕事は大きく4つに分かれます。
- 公開情報の収集:利用が認められている公開情報から、企業名・所在地・代表電話・ホームページ・事業内容などを集める
- 条件での絞り込み:「関東の製造業で、従業員が数十名規模」「最近、事務職の求人を出している」など、決めた条件に合う企業だけを残す
- 重複と表記ゆれの整理:会社名や住所の書き方をそろえ、同じ会社を1行にまとめる。既存の顧客リストや取引先と照らし合わせて、すでに取引がある会社を外す
- 優先順位づけ:条件への当てはまり具合や、求人・新店舗などの動きをもとに、先に連絡すべき企業を上に並べる
ポイントは、AIが文章を読み取って判断できることです。決まった項目を機械的に抜き出すだけの仕組みと違い、ホームページの説明文から「どんな事業をしているか」「どんな顧客を相手にしているか」を読み取って分類できるため、条件の細かい絞り込みにも対応しやすくなります。
たとえば「工場を持っている会社」「法人向けの取引が中心の会社」「複数の店舗を運営している会社」といった条件は、業種の分類だけでは判断しにくく、これまでは担当者がホームページを読んで1社ずつ判断していました。AIに判断の基準を伝えておけば、同じ基準で全件を判定し、判断に迷った企業だけを人の確認に回すことができます。
| 工程 | 人が手で行う場合 | AIに任せた場合 |
|---|---|---|
| 探す | サイトを1件ずつ開いて確認 | 決めた情報源から自動で集める |
| 絞り込み | 担当者の感覚で判断しがち | 同じ条件で全件を判定する |
| 重複の整理 | 表計算ソフトで目視確認 | 表記をそろえてから自動でまとめる |
| 人の役割 | 全工程を担当 | 条件を決め、できたリストを確認する |
ポイント
AIに任せるのは「作業」で、「どんな会社に営業するか」という条件を決めるのは人の仕事です。条件があいまいなままだと、AIが集めたリストもあいまいになります。
AIで営業リストを作る5つのステップ
営業リストの作成をAIに任せるときは、次の順番で進めるとスムーズです。
- 狙う顧客の条件を言葉にする:業種・地域・規模に加え、「どんな状況の会社なら自社のサービスが役立つか」を書き出します。受注につながった過去の顧客を振り返ると、条件を決めやすくなります
- 情報源を決める:公的な公開データ、業界団体の名簿、企業のホームページなど、どこから情報を集めるかを決め、それぞれの利用規約を確認します
- リストの項目を決める:企業名・所在地・代表電話・ホームページ・業種・規模・優先度・判定理由など、営業で使う項目を決めます。使わない項目は集めないことが、情報管理の面でも大切です
- 少数で試して基準を調整する:最初は数十件だけ作り、条件に合わない企業が混ざっていないか、重複が残っていないかを人が確認して、判定の基準を調整します
- 定期的に更新する:企業の移転や廃業、電話番号の変更は日々起きます。月に1回など更新の頻度を決め、既存リストとの差分(新しく条件に合った企業、情報が変わった企業)だけを確認する運用にします
判定理由を残しておくと営業トークに使える
AIに「なぜこの企業を条件に合うと判断したか」を一言で残してもらうと、リストの確認が楽になるだけでなく、電話やメールの最初の一言を考えるヒントにもなります。たとえば「事務職の求人を継続して出している」という理由があれば、事務作業の負担に関する話題から入りやすくなります。
情報を集めるときに守るべきルール:サイトの利用規約と個人情報
営業リストの作成で最も注意したいのは、情報の集め方です。公開されている情報であっても、自由に集めて使ってよいとは限りません。
サイトの利用規約を確認する
多くのWebサイトは、利用規約で自動的な情報収集(プログラムで大量にページを読み込むこと)を禁止または制限しています。規約で禁止されているサイトから自動で情報を集めることは避け、規約で認められている範囲や、提供元が公式に用意しているデータの提供方法を使います。また、規約上問題がない場合でも、短時間に大量のアクセスをしてサイトに負担をかけないよう、アクセスの間隔を空けることが必要です。
個人情報の扱いに注意する
会社の代表電話や所在地などの法人情報と違い、担当者個人の氏名やメールアドレスは個人情報にあたる場合があります。個人情報を取り扱う場合は、個人情報保護法にもとづいて利用目的をはっきりさせるなどの対応が求められることがあります。営業リストには必要な法人情報だけを載せ、個人の情報はむやみに集めないのが安全です。
営業メールの送り方にもルールがある
集めたメールアドレスに広告や宣伝のメールを送る場合は、送信についての法律上のルール(特定電子メール法など)が関係する場合があります。リストを作ることと、そのリストにメールを送ることは分けて考え、送信方法は別途確認してください。
情報収集の前に確認したいチェックリスト
- 情報を集めるサイトの利用規約で、自動収集が禁止されていないか
- 公式に提供されているデータ(ダウンロード用のデータや公開されている一覧)を使えないか
- サイトに負担をかけないよう、アクセスの間隔を空けているか
- リストに載せる項目は、営業に必要な法人情報に絞っているか
- 個人の氏名やメールアドレスを集める場合、利用目的と管理方法を決めているか
- 営業を断られた企業を、次のリストから外す仕組みがあるか
法令や各サイトの規約は変わることがあります。判断に迷う場合は、最新の情報を公式サイトで確認するか、専門家に相談してください。当社がAI社員として営業リストの作成を担当する場合も、情報源と集め方を最初にお客様と決めてから仕組みをつくります。
作ったリストを営業成果につなげる使い方と、向いている会社
営業リストは作ることが目的ではなく、営業活動に使って初めて意味があります。AIで作ったリストを成果につなげるには、次の使い方が効果的です。
- 優先度の高い企業から連絡する:すべての企業に同じように連絡するのではなく、条件に強く当てはまる企業から順に連絡します
- 結果をリストに戻す:電話がつながったか、関心があったか、断られたかをリストに記録し、次の絞り込み条件の見直しに使います
- 判定理由を最初の一言に使う:AIが残した判定理由をもとに、相手の状況に合わせた話題で連絡します
このように「作る→使う→結果を戻す→条件を見直す」を回すと、リストの質が少しずつ上がっていきます。
AIで営業リストを作るのが向いている会社
- 新規開拓のために、毎月まとまった数の営業先が必要な会社
- 営業担当がリスト作りに時間を取られ、商談の時間が足りない会社
- 狙う顧客の条件(業種・地域・規模・状況)がある程度はっきりしている会社
反対に、紹介や既存顧客からの受注が中心で新規の営業先をほとんど必要としない場合や、狙う業界の企業数がもともと少なく手作業でも十分に管理できる場合は、無理にAIを使う必要はありません。その場合は、商談記録の入力や提案資料の作成など、別の業務から自動化を検討するほうが効果的です。
よくある質問
AIで集めた営業リストの情報はどのくらい正確ですか?
情報源の新しさと正確さに左右されるため、すべてが正しいとは限りません。少数で試して確認し、連絡した結果をリストに戻して更新する運用にすることで、使える情報の割合を上げていきます。
公開されている情報なら、どのサイトから集めてもよいのですか?
そうとは限りません。多くのサイトは利用規約で自動的な情報収集を制限しているため、規約を確認し、認められた方法や公式に提供されているデータを使うことが前提です。
担当者の名前やメールアドレスもリストに入れてよいですか?
個人の氏名やメールアドレスは個人情報にあたる場合があり、取り扱いには個人情報保護法などのルールが関係します。営業に必要な法人情報に絞り、個人の情報を扱う場合は利用目的と管理方法を決めてください。
今使っている顧客管理のシートと重複しないようにできますか?
できます。既存の顧客リストや取引先の一覧と照らし合わせ、会社名や住所の表記をそろえたうえで、すでに取引がある企業や営業を断られた企業を外す仕組みにできます。