在庫・納期の問い合わせをAIで自動化するには?——在庫表と受注データから回答を下書きし、約束になる回答だけ人が確かめる方法
結論
在庫・納期の問い合わせ対応は、AIに「問い合わせから品番と数量を読み取り、在庫表と受注データを照らして回答文を下書きする」ところまでを任せ、人は納期の約束や在庫が足りない場合の回答だけを確かめて返す形にすると自動化できます。在庫が十分にあり、すぐ出荷できる問い合わせは確認を軽くし、条件つきの回答は理由を添えて人に回すことで、営業や業務の担当者は「毎回調べて書く」作業から「判断が必要な分だけ見る」作業に変わります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、取引先からの在庫・納期の問い合わせ対応をAIで自動化する方法について解説します。「この品番、在庫ありますか」「先週お願いした分はいつ届きますか」——取引先からのこうした問い合わせは、1件ずつは短くても、1日に何件も届くと営業や業務の担当者の時間を大きく削ります。答えるたびに在庫表を開き、受注の一覧を確かめ、入荷予定を倉庫や仕入れ担当に聞き、文面を書いて返す。担当者が外出や休みのときは返事が止まり、取引先を待たせてしまうこともあります。この記事では、営業・業務の課長クラスの方に向けて、在庫・納期の問い合わせのどこまでをAIに任せられるのか、回答の正確さを保つためにどんなデータを整えればよいのか、人が必ず確認すべき範囲はどこか、そしてどう始めればよいかを、AI社員を提供している当社の立場から説明します。
在庫・納期の問い合わせが重いのは「調べる先が多く、答えが人によって違う」から
在庫・納期の問い合わせは、内容だけを見ると単純です。それでも担当者の負担になっているのは、1件に答えるまでに次のような手間がかかるからです。
- 調べる先が複数ある:在庫表、受注の一覧、入荷予定、倉庫からの連絡など、必要な情報があちこちに分かれている
- 帳簿上の在庫と、出せる在庫が違う:在庫表に数があっても、すでに別の注文に引き当てられている(出荷する予定で確保済みの)場合がある
- 問い合わせの書き方がばらばら:品番ではなく商品名や通称で書かれていたり、メール・電話・FAX・チャットと窓口が分かれていたりする
- 答え方が担当者によって違う:同じ状況でも、ある担当者は「明日出荷できます」、別の担当者は「確認して折り返します」と答え、取引先から見ると対応にむらがある
この結果、問い合わせに詳しいベテランの担当者に仕事が集まり、その人が不在だと返事が遅れるという状態になりがちです。課長の立場から見ると、本来は提案や新しい取引先への対応に使いたい時間が、在庫を調べて返事を書く作業に取られていることになります。
AIの仕組みが役に立つのは、この「調べる」「書く」の部分です。一方で、納期を約束するかどうかや、足りない在庫をどの取引先に回すかといった判断は、引き続き人が行う必要があります。
AIに任せる流れは「読み取り・照会・下書き・振り分け」の4段階
在庫・納期の問い合わせ対応をAIで自動化するときは、作業を次の4段階に分けて任せます。
- 問い合わせの読み取り:メールやチャット、FAXを読み取った文面から、取引先名・品番(または商品名)・数量・希望の納期・既存の注文番号を取り出す。商品名や通称は、品番との対応表を使って品番に置き換える
- 在庫表・受注データの照会:在庫表で現在の在庫数を、受注データで引き当て済みの数と出荷予定を、入荷予定表で次に入る日と数を確かめる
- 回答文の下書き:照会した結果をもとに、「在庫あり・本日出荷可能」「〇日入荷予定のため、〇日以降の出荷」「ご注文の分は〇日に出荷済み、伝票番号はこちら」といった回答文を、会社の決まった言い回しで下書きする
- 振り分け:下書きを「確認を軽くしてよいもの」と「人が判断すべきもの」に分け、人が見るべきものには理由(在庫が足りない、入荷予定が未定、品番が特定できない、など)を添えて担当者に回す
ポイント
AIが下書きをつくる時点で、どの在庫表のどの数字をもとにしたかを一緒に表示させておくと、担当者は回答の根拠をすぐに確かめられます。確認の時間が短くなり、誤った回答にも気づきやすくなります。
既存の注文の「いつ届きますか」という問い合わせでは、受注データの出荷予定や、出荷済みであれば運送会社の伝票番号を添えて回答します。出荷の記録がきちんと残っていれば、この種類の問い合わせはAIが下書きした回答をほぼそのまま使える場合が多くなります。
電話の問い合わせはどう扱うか
在庫・納期の問い合わせは、電話で届くことも少なくありません。電話の場合は、受けた人が品番・数量・取引先名を簡単なメモや入力画面に残すだけで、AIが同じように照会して回答の下書きをつくれます。その場で答えられなかった問い合わせも、折り返しの電話やメールの文面がすぐに用意できるため、担当者が席に戻ってから一から調べる必要がなくなります。電話の内容を毎回まとめて記録に残す習慣がつけば、メールの問い合わせと合わせて、どの商品の問い合わせが多いかも見えるようになります。
回答の正確さは、在庫表と受注データの「鮮度」と「書き方」で決まる
AIが下書きする回答は、参照するデータ以上に正確にはなりません。在庫・納期の問い合わせを任せる前に、次のデータがどの状態にあるかを確かめておくことが大切です。
| データ | AIが使う情報 | 確かめておくこと |
|---|---|---|
| 在庫表 | 品番ごとの現在の在庫数、保管場所 | いつ更新されるか(随時・1日1回・週1回)。更新が遅いと、すでにない在庫を「あり」と答えてしまう |
| 受注データ | 引き当て済みの数、出荷予定日、出荷済みの記録 | 注文を受けたときに引き当てを記録しているか。記録がないと、出せる在庫を多く見積もってしまう |
| 入荷予定表 | 次に入る日と数 | 仕入先からの納期回答が反映されているか。予定が「未定」のものをどう扱うか |
| 品番の対応表 | 商品名・通称・旧品番と品番の対応 | 取引先がよく使う呼び方が入っているか。似た品番が多い商品は特に注意 |
| 取引先ごとの条件 | 配送の締め時刻、配送にかかる日数、優先して対応する取引先 | 担当者の頭の中にしかない条件が書き出されているか |
完璧なデータがなくても始められる
すべてのデータがきれいにそろっている会社は多くありません。表計算ソフトの在庫表と、販売管理のシステムから出力した受注の一覧があれば、それを読み込む形で始められる場合がほとんどです。大切なのは、「この在庫表は毎朝何時に更新される」といった前提をはっきりさせ、AIの回答文にも「本日〇時時点の在庫です」と時点を入れることです。そうすれば、取引先にも誤解を与えにくくなります。
また、データを整える作業そのものが、社内の在庫管理の見直しにつながることもあります。引き当ての記録がない、入荷予定が担当者のメールの中にしかない、といった課題が見えてきたら、それも合わせて改善していくとよいでしょう。
人が必ず確認するのは「約束になる回答」と「足りない在庫の配分」
在庫・納期の回答は、取引先から見ると会社としての約束です。「明日届きます」と答えれば、相手はそれを前提に自社の段取りを組みます。そのため、どの回答をどこまで人が確かめるかを、あらかじめ決めておく必要があります。目安は次のとおりです。
| 回答の種類 | 扱い方 | 理由 |
|---|---|---|
| 出荷済みの注文の状況(伝票番号・出荷日) | 確認を軽くしてよい(一覧でまとめて確認) | すでに起きた事実の連絡で、判断を含まない |
| 在庫が十分にあり、通常どおり出荷できる | 担当者が下書きを見て送る | 数字の取り違えがないかだけ確かめればよい |
| 入荷待ち・一部だけ出荷できる | 担当者が判断し、必要なら文面を直して送る | 分納にするか、まとめて送るかは取引先の事情による |
| 在庫が足りず、複数の取引先が同じ品を求めている | 課長や責任者が配分を決めてから回答する | どの取引先を優先するかは営業上の判断になる |
| 特急対応・値引き・条件の変更を含む | 人だけが対応する | 価格や取引条件にかかわるため、AIに答えさせない |
最初のうちは、すべての回答を担当者が見てから送る運用にし、AIの下書きがどれくらい正確かを確かめてから、確認を軽くする範囲を少しずつ広げるのがおすすめです。特に、在庫が足りないときの配分や、納期を前倒しできるかどうかの判断は、取引先との関係や会社の方針にかかわるため、AIには「判断が必要です」と知らせる役割だけを持たせます。
なお、AIが取引先とのやり取りの文面を扱う以上、入力した情報が学習に使われない法人向けのサービスや設定を選び、問い合わせの記録を誰が見られるかを決めておくことも欠かせません。
納期を約束しない言い回しも用意しておく
入荷予定が仕入先の回答待ちで確定していない場合など、はっきり答えられない場面もあります。そうしたときのために、「現時点では〇日頃の入荷見込みです。確定しましたら改めてご連絡します」といった、見込みと確定を分けて伝える言い回しを回答の型に入れておきます。AIがこの型を使って下書きすれば、担当者によって「〇日に届きます」と言い切ってしまうような回答のぶれを防げます。
課長が決めておく運用ルール
在庫・納期の問い合わせをAIで自動化すると、担当者ひとりひとりの判断に任されていた部分を、チームのルールとして決め直すことになります。導入の前に、課長が中心となって次の点を決めておくと、運用が安定します。
運用ルールのチェックリスト
- どの窓口(メール・チャット・FAXなど)の問い合わせをAIの対象にするか決めている
- 担当者が見ずに送ってよい回答の種類を、文書で決めている(最初は「なし」でもよい)
- 在庫が足りないときに、誰が配分を決めるかが決まっている
- 在庫表と受注データを、いつ・誰が更新するかが決まっている
- 回答文に入れる言い回し(在庫の時点の書き方、納期を約束しない表現など)をそろえている
- AIが品番を特定できなかったときの差し戻し先が決まっている
- 担当者が下書きを直した内容を記録し、月に1回は見直す時間を取っている
最後の項目は特に大切です。担当者が直した箇所には、「この取引先には午前中の締めを伝える」「この商品は検品に1日かかる」といった、まだAIに伝わっていない条件が含まれています。それを定期的に拾ってルールや対応表に加えていくことで、下書きの精度が上がり、人が直す回数が減っていきます。
また、問い合わせの件数や内容がAIの記録として残るため、「どの商品の問い合わせが多いか」「どの取引先が納期をよく確認してくるか」が見えるようになります。欠品しやすい商品の発注の見直しや、取引先への定期的な出荷予定の連絡など、問い合わせそのものを減らす取り組みにもつなげられます。
在庫・納期の問い合わせ自動化の始め方と、当社のAI社員でできること
在庫・納期の問い合わせ対応の自動化は、次の順番で進めるとスムーズです。
- 問い合わせを集めて分類する:過去1〜2か月の問い合わせを集め、「在庫の有無」「既存の注文の納期」「入荷予定」「その他」に分けて、件数の多い種類を確かめる
- 参照するデータを決める:在庫表・受注データ・入荷予定表のうち、どのファイルを、どの時点のものとして使うかを決める
- 品番の対応表と回答の型をつくる:取引先がよく使う呼び方と品番の対応、回答文の決まった言い回しを用意する
- 下書きだけを並行して試す:今までどおり人が回答しながら、AIの下書きと人の回答を1か月ほど比べ、ずれの原因を直す
- 確認を軽くする範囲を広げる:出荷済みの注文の状況など、正確さが確かめられた種類から、確認を軽くする運用に切り替える
受注書の入力や、製造業・卸売業の事務全体の効率化については、別の記事で説明しています。在庫・納期の問い合わせは、受注の記録が整っているほど回答の精度が上がるため、受注入力の自動化と組み合わせると効果が出やすくなります。
当社のAI社員は、会社ごとの在庫表や受注データの形式、取引先ごとの条件、回答の言い回しに合わせて仕組みをつくり、初期費用+月5万円で運用後の調整や相談にも対応しています。商品や取引先が増えたり、在庫の管理方法が変わったりしても、その都度直しながら使い続けられます。構築期間は内容によって異なりますが、最短2週間で動かし始めることができます。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。
よくある質問
在庫の問い合わせにAIが自動で返信しても大丈夫ですか?
出荷済みの注文の状況など、判断を含まない回答から段階的に任せるのがおすすめです。納期の約束や在庫が足りない場合の回答は、担当者が確かめてから送る形を基本にしてください。
在庫表がExcelでも、AIで納期回答を自動化できますか?
多くの場合、できます。表計算ソフトの在庫表や、販売管理システムから出力した受注の一覧を読み込む形で仕組みをつくります。ただし更新の頻度によって回答の正確さが変わるため、回答文には在庫の時点を入れるようにします。
取引先が品番ではなく商品名や通称で問い合わせてきても対応できますか?
商品名・通称・旧品番と品番の対応表を用意すれば、品番に置き換えて照会できます。特定できない場合はAIが推測で答えず、担当者に回すように設定します。
在庫・納期の問い合わせ対応を自動化すると、どんな効果がありますか?
担当者が在庫を調べて文面を書く時間が減り、担当者が不在でも返事が止まりにくくなります。回答の言い回しがそろうため、取引先から見た対応のむらも減らせます。