はじめてのAI導入公開日

中小企業のDX化(DX推進)は何から進める?——紙・手作業の業務をデジタルとAIに置き換える4つの手順とつまずく点

結論

中小企業のDX化(DX推進)は、新しいシステムを選ぶことからではなく、社内の紙と手作業を一覧にする「業務の棚卸し」から進めるのが確実です。そのうえで「紙をなくす」「データをつなぐ」「AIに判断・作成を任せる」の順に一段ずつ置き換えていくと、途中で止まらずに業務のやり方そのものを変えられます。AIはDX化の目的ではなく、データがそろった後に人の手間を大きく減らすための手段の一つとして位置づけると、投資が無駄になりにくくなります。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、中小企業がDX化(DX推進)を何から進めればよいか、紙・手作業の業務をデジタルとAIに置き換える手順とつまずく点について解説します。「うちもDX化しないと」「DX推進の担当を決めた」と言いながら、何から手をつければよいかわからず、会議だけが続いている。あるいは、勧められたシステムを入れたものの、結局は紙に書いてから入力し直している。社員10〜50名ほどの会社の経営者から、こうしたお話をよくうかがいます。DXとは、データとデジタルの道具を使って、仕事の進め方や商売のやり方そのものを変えることです。この記事では、言葉の意味の説明は最小限にとどめ、IT化・デジタル化・DX化の違いを表で整理したうえで、紙と手作業の業務をデジタルとAIに置き換えていく4つの手順、中小企業のDX推進でつまずきやすい点と避け方、社内に詳しい人がいない場合の進め方を説明します。

IT化・デジタル化・DX化の違い:道具を入れただけでは「DX化」にならない

DX化を進めるうえで最初に押さえておきたいのは、IT化・デジタル化・DX化は「段階の違い」だということです。パソコンやシステムを入れること自体はDX化の入り口にすぎず、仕事の流れが変わらなければ、手間はほとんど減りません。経済産業省が示しているDXの説明でも、デジタル技術を使うことに加えて、業務や組織のやり方を変えることが含まれています。

段階何をするか中小企業での例変わること
IT化今の作業に道具を足す手書きの見積書をExcelで作る清書が速くなる。流れは同じ
デジタル化紙や手作業をデータに置き換えるFAXの注文をデータで受け取り、紙の台帳をやめる探す・写す手間が減る
DX化データを前提に仕事の流れを作り直す注文データから在庫確認・納期回答・請求までが自動でつながり、AIが回答案を作る人は確認と判断だけになり、対応の速さや売り方も変わる

たとえば「Excelで見積書を作っている」はIT化です。「見積の元になる単価表や過去の見積がデータで一か所にまとまっている」はデジタル化です。そして「お客様の依頼が届くと、過去の見積と単価表から下書きができあがり、担当者は確認して送るだけ。結果として見積の返答が当日中になり、受注が増える」まで進むと、DX化と言える状態です。

ポイント

DX化は「何を入れたか」ではなく「仕事の流れがどう変わったか」で考えます。システムを入れても、紙に書いてから入力し直しているなら、まだIT化の段階です。

DX推進の第一歩は「業務の棚卸し」:どの紙・手作業をなくすかを一覧で決める

中小企業のDX推進が止まりやすいのは、「どのシステムを入れるか」から考え始めてしまうからです。道具から選ぶと、自社の困りごととかみ合わず、使われないまま月額料金だけが残ることがあります。最初にやるべきは、社内でどんな紙と手作業が、どれだけ発生しているかを一覧にすることです。

棚卸しで書き出す項目

部署ごとに、次の項目を表にまとめていきます。正確な時間がわからなくても、「だいたい」で構いません。

項目記入例
業務名FAXで届く注文の入力
担当者事務の2名
頻度と時間毎日、合わせて約2時間
使っている紙・道具FAX用紙、販売管理ソフト、在庫表のExcel
同じ情報を何回書いているか注文書→販売管理→在庫表→請求書で計4回
困っていること転記ミス、担当が休むと止まる

特に見てほしいのは「同じ情報を何回書いているか」です。同じお客様名や品番を何度も書き写している業務は、紙をなくしてデータをつなぐだけで手間が大きく減ります。DX化の効果がもっとも出やすい場所です。

優先順位の付け方

  1. かかっている時間が長い:毎日・毎週くり返す業務ほど、置き換えたときの効果が大きい
  2. 転記や確認が多い:同じ情報を何度も書く業務は、つなぐだけで減らせる
  3. お客様の待ち時間に関わる:見積・納期回答・問い合わせ返信など、速くなると売上に効く
  4. 間違えたときの影響が小さい:最初は社内向けの作業から始めると、試しやすい

棚卸しのくわしいやり方は「AIに任せる業務の洗い出し方」の記事でも説明しています。DX推進では、AIに任せる業務だけでなく「紙をなくすだけで済む業務」「データをつなげば済む業務」も同じ一覧で見ていくのが違いです。

DX化の4つの手順:棚卸し→紙をなくす→データをつなぐ→AIに判断・作成を任せる

棚卸しで対象の業務が決まったら、次の4つの手順で一段ずつ置き換えていきます。順番を飛ばすと、後の段階でつまずきやすくなります。

  1. 業務の棚卸しをする:前の章のとおり、紙と手作業を一覧にし、どこから手をつけるかを決める
  2. 紙をなくす:紙で受け取る・紙に書く・紙で保管する作業を、データで受け取る・入力する・保存する形に変える。FAXや手書きの書類が残る場合は、AI-OCR(紙の文字を読み取ってデータにする仕組み)で読み取る
  3. データをつなぐ:注文・在庫・請求・顧客などのデータを、同じ情報を二度入力しなくて済むようにつなぐ。一か所で入力した内容が、ほかの表やシステムにも反映される状態をめざす
  4. AIに判断・作成を任せる:そろったデータをもとに、返信文・見積・報告書の下書きや、仕分け・チェックをAIに任せる。人は確認と最終判断に集中する
手順受注業務での例減る手間
1 棚卸しFAX注文の入力に毎日2時間、4回の転記があるとわかる(対象を決める段階)
2 紙をなくすFAXをデータで受け取り、AI-OCRで品番と数量を読み取る手入力と紙の保管
3 データをつなぐ読み取った注文が販売管理と在庫表に自動で入る転記と照合
4 AIに任せる在庫と過去の納期から、納期回答の文面をAIが下書きする回答文の作成と確認待ち

当社がお手伝いした製造業(従業員30名規模)では、事務担当の受注書の入力が1日2時間から15分になりました。これは手順2と3にあたる「紙をなくしてデータをつなぐ」部分をAIで補った例です。

ポイント

手順2と3は、AIを使わなくても既存のシステムや表計算の工夫で済む場合があります。すべてをAIで解決しようとせず、手順ごとにいちばん手軽な方法を選ぶほうが、費用も手間も抑えられます。

AIはDX化の手段の一つ:「判断と作成」が残る業務で力を発揮する

紙をなくしてデータをつないでも、なお人の手間が残る業務があります。それは「データを見て判断する」「データをもとに文章や書類を作る」作業です。これまでのシステムは決まった手順をくり返すのは得意でも、文章を読んで分類したり、状況に合わせて文面を作ったりするのは苦手でした。ここで役に立つのがAIです。

残りやすい作業AIに任せられること人が残すこと
問い合わせへの返信過去の回答や資料をもとに返信の下書きを作る内容の確認と送信
見積・提案書過去の見積と単価表から下書きを作る値引きや約束にあたる部分の判断
日報・報告書メモや写真から報告書の形に整え、要点をまとめる事実の確認
メールや書類の仕分け内容を読んで種類と担当を振り分ける迷うものの判断
チェック作業規程や前回との違い、記入漏れを見つける見つかった点の対応

大切なのは、AIを「DX化そのもの」と考えないことです。データが紙のままだったり、あちこちに散らばっていたりすると、AIは読む材料がなく、力を発揮できません。逆に、手順2と3でデータがそろっていれば、AIに任せられる範囲は大きく広がります。

AIから始めてもよい場合

一方で、手順の順番どおりでなくてもよい場合もあります。たとえば問い合わせメールへの返信のように、もともとデータ(メール)で届き、答えの元になる資料もそろっている業務なら、最初からAIに回答案を作らせることができます。当社がお手伝いした不動産会社(従業員15名規模)では、問い合わせへの初回返信が半日から10分になりました。棚卸しの一覧を見て、すでにデータでそろっている業務があれば、そこからAIを試すのも一つの進め方です。

中小企業のDX推進でつまずく5つの点と、その避け方

DX化が途中で止まってしまう会社には、いくつか共通点があります。始める前に、次の5つを確かめておきましょう。

  1. 道具から選んでしまう:展示会や営業で勧められたシステムを先に入れ、自社の業務に合わない。棚卸しで困りごとを決めてから道具を選ぶ
  2. 一度に全部を変えようとする:全社で一斉に切り替えると、現場が混乱して元のやり方に戻る。1つの業務で効果を確かめてから広げる
  3. 紙とデータの二重運用が続く:「念のため紙も残す」が続くと、手間が増えるだけになる。紙をやめる日をあらかじめ決めておく
  4. 担当者1人に任せきりにする:DX推進の担当を決めても、経営者が関わらないと現場の協力が得られない。目的と優先順位は経営者が示す
  5. 効果を測っていない:始める前の作業時間を記録していないと、良くなったかどうか判断できない。棚卸しの時間をそのまま基準にする

DX化を始める前のチェックリスト

  • DX化で解決したい困りごとを、1文で言える(例:受注の入力と転記に毎日2時間かかっている)
  • 社内の紙と手作業を、部署ごとに一覧にした
  • 最初に取り組む業務を1つに絞った
  • その業務に今かかっている時間を記録した
  • 紙をやめる日、または新しいやり方に切り替える日を決めた
  • 現場で使う人に、目的と「仕事を奪うためではない」ことを説明した
  • 個人情報や社外秘をどこに保存し、誰が見られるかを決めた

特に「仕事を奪われるのでは」という現場の不安は、DX推進を遅らせる大きな理由になります。減らすのは転記や清書などの作業であり、空いた時間をお客様対応や改善に使ってほしい、という狙いを先に伝えておくと協力が得やすくなります。

社内に詳しい人がいなくてもDX化を進めるには:体制・費用・補助金の考え方

社員10〜50名ほどの会社では、DX推進の専任者を置くのは難しいのがふつうです。社内に詳しい人がいなくても、次のように役割を分ければ進められます。

役割担う人やること
目的と優先順位を決める経営者どの困りごとから解決するかを決め、現場に伝える
業務を知っている現場の担当者棚卸しへの記入、新しいやり方の試用と意見出し
仕組みを作り、保守する外部の依頼先データのつなぎ方の設計、AIの設定、動かした後の調整

費用の考え方

DX化の費用は、対象の業務の数と、つなぐシステムの数でおおよそ決まります。最初から全社分の費用を考えるのではなく、最初の1業務でかかる費用と、減った作業時間を比べて判断すると無理がありません。当社自身も、社内の業務を順に置き換えて、月に約480時間の作業を減らしてきました。一度にではなく、1業務ずつ積み重ねた結果です。

補助金を使う場合

DX化やIT導入に使える国や自治体の補助金が用意されている場合があります。ただし、対象となる経費や申請の時期、条件は年度ごとに変わります。使えるかどうかは、必ず各制度の公式サイトで最新の情報を確認してください。補助金ありきで計画を立てると、採択されなかったときに進められなくなるため、補助金がなくても続けられる範囲で計画しておくのが安全です。

当社のAI社員は、業務の棚卸しから始めて、紙をなくす・データをつなぐ・AIに下書きや仕分けを任せる、までを一続きで作ることができます。料金は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。動かした後の調整や相談にも回数の制限なく対応しています。「DX推進と言われても何から手をつければよいかわからない」という段階でも構いませんので、まずは社内の紙と手作業を一緒に洗い出すところからご相談ください。

よくある質問

中小企業のDX化は何から始めればよいですか?

社内の紙と手作業を一覧にする「業務の棚卸し」から始めてください。時間がかかっていて転記の多い業務を1つ選び、紙をなくす→データをつなぐ→AIに判断・作成を任せる、の順で置き換えていくのが確実です。

DX化とIT化・デジタル化の違いは何ですか?

IT化は今の作業に道具を足すこと、デジタル化は紙や手作業をデータに置き換えること、DX化はデータを前提に仕事の流れそのものを作り直すことです。システムを入れても流れが変わらなければ、DX化とは言えません。

DX推進にAIは必ず必要ですか?

必ずではありません。紙をなくしてデータをつなぐだけで済む業務も多くあります。AIは、データがそろった後も残る「判断」や「文章・書類の作成」の手間を減らす手段として使うと効果が出やすいです。

DX推進の担当者がいない小さな会社でも進められますか?

進められます。経営者が目的と優先順位を決め、現場の担当者が業務の棚卸しと試用を行い、仕組みづくりと保守は外部に任せる、という分担にすれば、専任者がいなくても1業務ずつ進められます。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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