AI導入に使える補助金はある?——AI導入補助金の種類、申請前の確認事項と注意点、補助金ありきで進めない判断基準
結論
AI導入に使える補助金はあります。ITツールの導入を支援する「IT・デジタル化系」、設備やシステムへの投資を支援する「生産性向上系」、社員研修を支援する「人材開発系の助成金」などがあり、対象や要件が合えば費用の一部が補われる場合があります。ただし、公募の時期や要件は毎年変わり、採択前に契約・発注した費用は対象外になることが多く、入金は後払いです。まず「補助金がなくても続けられる計画か」を決め、そのうえで使える制度を探す順番にすると失敗しにくくなります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、中小企業がAI導入で補助金・助成金を検討するときの考え方(制度の種類、申請前の確認事項、注意点、補助金ありきで進めない判断基準)について解説します。「AIを入れたいが、費用が気になる。AI導入に使える補助金はないのだろうか」。経営者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。「ai 導入補助金」と調べると、さまざまな制度の名前や、補助率・上限額の数字が出てきますが、どれが自社に当てはまるのか、何から手をつければよいのかは分かりにくいものです。また、補助金を使うつもりで準備を進めたのに、公募の時期が合わなかったり、採択されなかったりして、AI導入そのものが止まってしまう例もあります。この記事では、AI導入で検討できる補助金・助成金の種類、申請前に確認すること、申請から入金までの流れと注意点、そして「補助金を待つか、待たずに始めるか」の判断基準を説明します。制度の名称や補助率、上限額、締切は年度ごとに変わるため、この記事では具体的な数字は扱いません。最新の情報は、必ず各制度の公式サイトと公募要領で確認してください。
AI導入に使える補助金・助成金は大きく3つの種類に分けて考える
AI導入で検討できる国や自治体の支援制度は、名前が多くて迷いやすいのですが、目的で分けると考えやすくなります。中小企業がAI導入で検討することが多いのは、次の3つの種類です。
| 種類 | 主な目的 | AI導入で対象になりうるもの(制度による) | 主な情報の窓口 |
|---|---|---|---|
| IT・デジタル化系の補助金 | 中小企業のITツール導入や業務のデジタル化を後押しする | あらかじめ登録されたソフトやクラウドサービスの導入費、一定期間の利用料など | 国の制度の事務局サイト、都道府県・市区町村 |
| 生産性向上系の補助金 | 設備投資や新しい取り組みで生産性を上げる | 業務の仕組みを変えるためのシステム構築費、機械やソフトへの投資など | 国の制度の事務局サイト、商工会議所・商工会 |
| 人材開発系の助成金 | 社員の職業訓練・研修を後押しする | 社員向けのAI・デジタル研修の費用や、研修中の賃金の一部など | 厚生労働省、都道府県の労働局 |
国の制度では、たとえばITツールの導入を支援する「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度や、設備投資を支援する「ものづくり補助金」、研修を支援する「人材開発支援助成金」といった制度があります。名称や対象、要件は年度で変わるため、最新の公募要領を公式サイトで確認してください。
このほか、都道府県や市区町村が独自に、DX(デジタル技術で仕事のやり方を変えること)やIT導入の補助を行っている場合もあります。国の制度より規模は小さいことが多い一方、地域の中小企業に絞った制度もあるため、本社のある自治体のサイトもあわせて確認する価値があります。
補助金と助成金の違い
一般的に、経済産業省や中小企業庁が扱うものは「補助金」、厚生労働省が扱う雇用・研修関係のものは「助成金」と呼ばれることが多くなっています。補助金は申請内容を審査して採択(支給の対象に選ばれること)される仕組みのものが多く、申請しても必ずもらえるとは限りません。助成金は要件を満たせば受け取れるものが多いとされますが、事前の計画の届け出が必要な場合があります。どちらも制度ごとに違うため、「補助金だから」「助成金だから」と決めつけず、公募要領で確かめることが大切です。
AI導入補助金を申請する前に確認すること——対象・時期・自己負担・手間
補助金を検討するときは、制度を探すより先に、自社の条件を整理しておくと判断が速くなります。申請前に、次の項目を確認してください。
AI導入で補助金を検討する前のチェックリスト
- 自社が対象になるか(会社の規模、業種、資本金や従業員数の条件、本社の所在地)
- 入れたいAIの費用が対象経費に入るか(初期の構築費か、月額の利用料か、研修費か)
- 月額で払う費用は、対象になる期間に上限がないか
- 公募期間(申請を受け付ける期間)と、事業期間(導入と支払いを終える期間)が、自社の導入予定と合うか
- 決められた事業者やツールを通した導入だけが対象、という条件がないか
- 補助される割合を除いた自己負担分を、自社で払えるか
- 入金されるまでの間、費用の全額を立て替えられるか
- 申請書づくりや、導入後の報告に、社内の誰がどれだけ時間を使えるか
- 採択されなかった場合に、自費で進めるか、見送るかを決めているか
特に見落とされやすいのが、「どの費用が対象になるか」です。AIの導入費用は、初期の構築費、月額のサービス料、AIの利用料(使った量に応じて払う料金)、社員研修の費用などに分かれます。制度によって、対象になるのは初期費用だけだったり、利用料は一定期間分だけだったりします。見積書の項目と、公募要領の「対象経費」を1行ずつ照らし合わせると、思い込みを防げます。
ポイント
申請書では、多くの場合「何の業務を、どのように変え、どれだけ効果が出るか」を説明することになります。これはAI導入の計画そのものです。補助金を使うかどうかにかかわらず、先に「どの業務の、どの手間を減らすか」を決めておくと、申請の準備も導入の準備も一緒に進みます。
申請から入金までの一般的な流れと、つまずきやすい注意点
補助金の手続きは制度によって違いますが、一般的には次のような流れになります。全体で半年から1年以上かかることもあるため、AIを使い始めたい時期から逆算して考えます。
- 公募要領を読む:対象、対象経費、補助の割合、スケジュール、必要書類を確認する
- 事前の準備をする:電子申請に使うアカウントの取得など、申請前に済ませておく手続きがある場合は早めに行う
- 申請書を作って提出する:導入する内容、業務の課題、期待する効果、費用の内訳などを書く
- 採択・交付決定を待つ:審査の結果を待ち、制度によっては交付決定(正式に支給を決める手続き)を受ける
- 契約・発注・導入・支払いをする:交付決定の後、決められた事業期間の中で行う
- 実績報告をする:導入した内容、支払いの証拠(請求書・振込記録など)を提出する
- 補助金が入金される:報告の確認が終わってから振り込まれる
- 導入後の報告をする:制度によっては、数年にわたり効果や賃金の状況などの報告が求められる
よくある失敗と注意点
| 注意点 | 何が起きるか | 防ぐ方法 |
|---|---|---|
| 採択前に契約・発注してしまう | 交付決定より前の契約や支払いは、対象外になることが多い | 契約・発注の日付が、公募要領で認められた期間の中かを確認する |
| 公募期間・要件が前年と違う | 前年の情報で準備して、条件が合わなくなる | 必ずその年度の公募要領で確かめる |
| 入金が後払い | 導入費用を一度全額払う必要があり、資金繰りが苦しくなる | 入金までの立て替え分を資金計画に入れておく |
| 採択されない | 補助金ありきの計画が止まる | 不採択でも進めるか見送るかを、申請前に決めておく |
| 導入後の報告を忘れる | 制度によっては返還を求められることがある | 報告の時期と担当者を決めておく |
補助金の申請をうたう外部の業者に依頼する場合は、成功報酬の条件や、申請内容の責任を誰が持つかを事前に確認してください。申請するのは自社であり、書いた内容を実行するのも自社です。迷ったときは、商工会議所・商工会や、国が設けている中小企業向けの相談窓口に相談する方法もあります。
補助金ありきで進めない——「待つか、待たずに始めるか」の判断基準
補助金は使えれば負担が軽くなりますが、補助金を前提に計画を立てると、かえって遠回りになることがあります。公募を待つ間も、人の手でこなしている業務の時間はかかり続けているからです。次の表を目安に、待つか、待たずに始めるかを判断してください。
| 判断の観点 | 補助金を待つ・使う方がよい場合 | 待たずに始める方がよい場合 |
|---|---|---|
| 導入の規模 | 複数の部署にまたがる大きな仕組みで、初期費用が大きい | まず1業務から小さく試したい |
| 急ぎ具合 | 半年〜1年先の導入で間に合う | 人手不足や担当者の退職などで、すぐに手を打ちたい |
| 制度との相性 | 入れたい内容が、対象経費や要件にそのまま当てはまる | 制度に合わせるために、入れたい内容を変える必要がある |
| 社内の手間 | 申請書づくりや報告に時間を割ける人がいる | 申請の手間が、導入の準備を圧迫する |
| 費用の回収 | 補助がないと回収までの期間が長すぎる | 補助がなくても、削減できる時間で十分に回収できる |
補助の対象に合わせて範囲を広げすぎない
もう1つ気をつけたいのが、「補助金が出るなら、この機能も、あの部署も」と範囲を広げてしまうことです。補助で費用の一部が補われても、自己負担分は残り、使われない機能の手直しや保守にも手間がかかります。最初は「毎日・毎週くり返している、時間のかかる1業務」に絞り、効果を確かめてから広げる方が、結果として費用も手間も抑えられます。
判断の基本
「補助金がなくても、この計画で進めるか」に「はい」と答えられるなら、補助金は負担を軽くするおまけとして活用できます。「補助金がなければやらない」なら、その計画自体を、より小さく効果の大きい業務に絞り直すことをおすすめします。
補助金がなくても回収できるかを確かめる——費用対効果の簡単な考え方
補助金を使うかどうかの判断には、「補助金なしで、費用をどれくらいで回収できるか」を先に見ておくことが欠かせません。考え方は次のとおりです。
- 対象業務の時間を測る:1回あたりの作業時間×月の回数で、月に何時間かかっているかを出す
- AIで減る時間を見積もる:AIが下書きや入力を行い、人は確認するだけになった場合に残る時間を差し引く
- 人件費に置き換える:減る時間×担当者の時給で、月に浮く金額の目安を出す
- 費用と比べる:初期費用と月額、AIの利用料を合わせ、何か月で回収できるかを見る
たとえば当社の導入事例では、製造業(従業員30名規模)の事務担当の方の受注書入力が1日2時間から15分に、不動産(従業員15名規模)の問い合わせ担当の方の初回返信が半日から10分に、介護(職員50名規模)の事務担当の方の毎月のシフト作成が2日から半日になりました。毎日くり返す業務ほど、減る時間が積み上がります。
この計算で回収の見通しが立つなら、補助金の公募を待たずに始め、2つ目・3つ目の業務を広げる段階で補助金を検討する、という順番も選べます。逆に、補助がないと回収までが長すぎる場合は、対象業務の選び方を見直すか、制度の公募に合わせて計画を立てるとよいでしょう。費用の内訳や試算の詳しい方法は、別の記事「AI導入にかかる費用とは?」「AI導入の費用対効果は導入前にどう見積もる?」で説明しています。
当社のAI社員の費用と、補助金を検討する場合の進め方
当社(MEDISITE)のAI社員は、「初期費用+月5万円」でご提供しています。初期費用は、対象の業務や必要な連携によって変わるため、ヒアリング後にお見積もりします。月5万円には、保守・相談・メンテナンスが無制限で含まれます(契約12か月、税別、AIの利用料は実費)。構築期間は、ジュニアで2週間程度、ミドルで1か月程度、シニアは応相談で、最短2週間で稼働できます。
補助金を検討される場合は、次の進め方をおすすめしています。
- 業務の棚卸しをする:どの業務に、誰が、月に何時間かけているかを整理する(当社のヒアリングでも一緒に整理します)
- 最初の1業務と効果の目安を決める:補助金がなくても進めるかを、この段階で判断する
- 使えそうな制度を探す:国・自治体の公式サイト、商工会議所・商工会、国の中小企業向け相談窓口で、最新の公募要領を確認する
- 見積書と対象経費を照らし合わせる:初期費用・月額・利用料のどれが対象になりうるか、制度側の条件で確かめる
- 契約の時期を決める:補助金を使う場合は、交付決定より前に契約・発注しないよう日程を組む
補助金の申請手続きそのものは、各制度の窓口や公募要領に沿って、貴社で進めていただくことになります。当社はこれまで、建設・設備、医療・介護、製造、教育、物流、食品、不動産、出版・印刷、人材、士業・会計など約90社からご相談をいただいてきました。当社自身も、業務をAIに置き換えて月に約480時間の作業を減らしています。「補助金を待つべきか、先に1業務だけ始めるべきか」も含めて、お気軽にご相談ください。
よくある質問
AI導入に使える補助金はありますか?
あります。IT・デジタル化系の補助金、生産性向上系の補助金、研修向けの人材開発系の助成金などがあり、対象や要件が合えば費用の一部が補われる場合があります。名称や要件は年度で変わるため、最新の公募要領を公式サイトで確認してください。
AI導入補助金は、契約した後から申請しても使えますか?
多くの制度では、採択や交付決定より前に契約・発注・支払いをした費用は対象外になります。補助金を使う予定がある場合は、契約の前に公募要領で対象期間を必ず確認してください。
AIの月額料金や利用料も補助金の対象になりますか?
制度によって違います。初期費用だけが対象の制度もあれば、利用料の一定期間分が対象になる制度もあります。見積書の項目と公募要領の対象経費を1行ずつ照らし合わせて確認してください。
AI導入は補助金の公募を待ってから始めた方がよいですか?
補助金がなくても削減できる時間で費用を回収できるなら、待たずに1業務から始める方が早く効果が出ます。大きな初期費用がかかり、半年以上先の導入で間に合う場合は、公募に合わせて計画する方法もあります。