今日のご相談公開日

【今日のご相談】法人向けの保険代理店(少人数):保険の相談への回答案づくりと社内FAQをAIに任せたい

結論

お客様からの保険の相談への回答案づくりと、社内の問い合わせ(FAQ)への対応は、過去の対応履歴や商品資料をAIに読み込ませ、人が最終チェックしてから返す形であれば実現できます。ただし、保険業法の範囲にかかわる判断はAIに任せきれないため、人の確認は必須です。これから採用する人に任せたい仕事のうちどこまでをAIに置き換えられるかは、実際の業務をヒアリングしてから判断することにしました。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、法人向けの保険代理店からいただいた「保険の相談への回答案づくりと社内FAQをAIに任せたい」というご相談について解説します。今回ご相談いただいたのは、法人向けの保険を中心に扱う、少人数の保険代理店です。事業を広げるにあたって今の体制だけでは手が回らない場面が出てきており、保険の業務でどこまでAIを使えるのかを知りたい、というのがきっかけでした。実は今年、業務を自動化する別の方法としてRPA(パソコンの決まった操作を自動でくり返す仕組み)を検討したものの、任せられる業務が限られ、費用に見合わないと判断して見送った経緯もあります。この記事では、ご相談の内容と当社の回答を、条件が付く点も含めて正直にお伝えします。

ご相談の内容:事業を広げたいが、今の体制では手が回らない

ご相談いただいたのは、法人のお客様向けの保険を中心に扱う保険代理店です。少人数で運営しており、事業を広げるために採用も進めている段階でした。

負担になっていたのは、次のような業務です。

  • お客様からの保険の相談への回答:内容によっては保険会社の担当者に来てもらうなど、アナログな方法で対応している
  • 社内の問い合わせ(FAQ)への対応:前の年に自分たちで仕組みを作ったものの、手入れに手間がかかっている
  • 増える仕事の受け皿:事業を広げると仕事は増えるが、人を増やすだけでは追いつかない

RPAでは足りなかった理由

RPAは、決まった画面で決まった操作をくり返す作業を自動にするのが得意です。一方で、お客様の相談内容を読み取って答えを考える、資料の中から関係する部分を探す、といった「中身を理解する」作業は苦手です。今回の代理店では、自動にしたい業務の多くがこの「中身を理解する」作業だったため、RPAで任せられる範囲が限られ、費用に見合わないという判断になりました。

文章を読んで答えを作る作業は、AIが得意とするところです。今回のご相談は、RPAでは届かなかった部分をAIで補えるか、という問いでもありました。

AIでやりたいこと:回答案づくり、社内FAQ、採用予定の仕事の見極め

ご相談の中で挙がった「AIでやりたいこと」は次の3つです。

  1. お客様からの保険の相談に対して、回答の案をAIで作りたい
  2. 社内の問い合わせ(FAQ)への対応を、手間をかけずに自動にしたい
  3. これから採用する人に任せたい仕事のうち、どこまでをAIに置き換えられるかを見極めたい

当社の回答:できること・工夫が要ること・難しいこと

当社の判断は次のとおりです。今回のご相談で「難しい」と判断できる材料は、この時点ではありませんでした。

やりたいこと判定理由・条件
保険の相談への回答案づくり〇できる過去の問い合わせ対応や商品資料をAIに読み込ませて回答案を作り、人が最終チェック・修正してから返す流れであれば実現できます
保険業法にかかわる判断△工夫すればできる保険業法の範囲にかかわる判断はAIに任せきれません。AIは回答案を作るところまでにとどめ、人の確認を必ず通す形にします
社内の問い合わせ(FAQ)への対応〇できる過去の対応履歴や社内資料をもとに答える仕組みは作れます。人の最終チェックを前提に運用します
採用予定の仕事をどこまでAIに置き換えるか△工夫すればできる置き換えられる範囲は業務によって変わるため、実際の業務をヒアリングしてから判断します

ポイント

保険の相談への回答は、AIが自動で送るのではなく「AIが下書きを作り、人が確かめて返す」形にします。保険に関する法律や、お客様の大切な情報にかかわる業務だからこそ、最後の判断は人が持つことが前提です。

進め方の提案:業務を切り出し、1業務ずつAIに任せる

当社からは、次のような進め方をご提案しました。

  1. 業務ごとに合いそうな形を整理する:先方のホームページを拝見し、業務ごとにどんなAIの使い方が合いそうかを整理したシートをお渡しする
  2. 実際の業務をヒアリングする:次の打ち合わせで実際の業務の流れを詳しく伺い、具体的な提案にする
  3. 「1業務=1体のAI社員」として切り出す:営業、問い合わせ対応、事務、広報、書類作成など、役割ごとに業務を切り出して、1つずつAIの仕組みを作る
  4. 運用を始めたあとも改善を続ける:使いながら回答案の質や対応の範囲を調整し、少しずつ任せる業務を広げる

業務をまとめて一度に置き換えようとすると、どこで何がうまくいっていないのかが見えにくくなります。役割ごとに分けて進めれば、1つずつ効果を確かめながら、採用する人に任せる仕事とAIに任せる仕事の線引きもしやすくなります。

同じ悩みを持つ会社へ:RPAで止まった自動化も、AIなら進められることがある

保険代理店に限らず、「人を増やす前に、AIでどこまでできるか知りたい」という会社は少なくありません。今回のご相談から言えることは次のとおりです。

  • RPAで任せきれなかった「文章を読んで答えを考える」作業は、AIで補える場合がある
  • 過去の対応履歴や商品資料は、AIが回答案を作るための大切な材料になる
  • 法律にかかわる判断やお客様の情報を扱う業務は、「下書き+人の確認」の形にする
  • 採用とAIのどちらに任せるかは、業務を切り出して1つずつ判断する

相談への回答をAI化する前のチェックリスト

  • 過去の問い合わせと、その回答の記録が残っているか
  • 商品資料や社内のルールが、ファイルとしてそろっているか
  • 法律にかかわる判断など、AIに任せない範囲を決めているか
  • AIが作った回答案を、誰が確認して返すか決めているか
  • お客様の情報を扱うときのルール(学習に使われない設定など)を決めているか

保険の募集や説明に関するルールは、法令や監督官庁の方針によって定められており、改正されることもあります。最新の情報は金融庁などの公式サイトで確認してください。

よくある質問

保険の相談への回答をAIに任せても大丈夫ですか?

AIに回答案を作らせ、人が最終チェック・修正してから返す形であれば実現できます。保険業法の範囲にかかわる判断はAIに任せきれないため、人の確認は必須です。

RPAとAIは何が違うのですか?

RPAは決まった画面で決まった操作をくり返すのが得意で、AIは文章を読んで内容を理解し、答えを作るのが得意です。相談への回答のように中身を理解する必要がある作業は、AIのほうが向いています。

自分たちで作った社内FAQの仕組みが手間になっています。AIで楽になりますか?

過去の対応履歴や社内資料をもとに答える仕組みにすれば、FAQを一つずつ書き足す手間を減らせます。運用を始めたあとの調整も含めて考えることが大切です。

採用する代わりにAIを入れることはできますか?

業務によって置き換えられる範囲が違うため、実際の業務をヒアリングしてから判断します。業務を役割ごとに切り出して、AIに任せる部分と人に任せる部分を分けるのがおすすめです。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

コラム一覧へ戻る