EC・通販事業者でAIは何に使えるか——注文・配送の問い合わせ対応、商品説明文の下書き、レビューの集計、受注と在庫の確認
結論
EC・通販事業者でAIがよく使えるのは、注文・配送の問い合わせへの返信案づくり、商品説明文の下書き、レビューや問い合わせ内容の集計、受注処理と在庫の確認の4つです。どれも「同じ形の作業を毎日たくさん繰り返す」仕事で、AIが下書きや仕分けをし、人が確認して確定する分担にすると、少人数のお店でも手が回るようになります。商品の表示内容や返金・交換の判断はお店の責任になるため、AIに任せきらず人が確かめる流れを最初から組み込むのが大切です。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、EC・通販事業者でのAIの活用方法と始め方について解説します。ネットショップの運営は、売上が伸びるほど「注文の確認」「お客様からの問い合わせ」「新商品の登録」といった裏側の作業が増えていきます。少人数で運営している会社では、社長や店長が夜に問い合わせの返信をしている、新商品の説明文が書けずに登録が遅れている、という声もよく伺います。この記事では、EC・通販事業者がAIを使える業務を4つに分けて、それぞれの使い方、人が確認すべきところ、始める順番を説明します。表示に関する法律の注意点や、AIに任せないほうがよい判断についても触れます。
EC・通販でAIが使えるのは「量が多く、形が決まっている」4つの仕事
EC・通販の仕事のうち、AIが力を発揮しやすいのは、毎日たくさん発生し、やり方がある程度決まっている作業です。反対に、仕入れ先との交渉や新商品の企画のように、その都度の判断が中心になる仕事は、AIに任せる範囲が小さくなります。
当社がEC・通販事業者のお話を伺うときは、まず次の4つの仕事から、どれに一番時間がかかっているかを確かめます。
| 仕事 | AIに任せること | 人が確認・判断すること |
|---|---|---|
| 注文・配送の問い合わせ対応 | 問い合わせの種類の仕分け、注文情報を調べたうえでの返信案づくり | 返金・交換・お詫びの判断、強いご不満への対応 |
| 商品説明文の下書き | 仕様表やメモからの説明文、販売サイトごとの書き分け | 効果・効能の表現、事実との違いの確認 |
| レビュー・問い合わせ内容の集計 | 自由記述の分類、よく出る不満・ほめ言葉のまとめ | どの改善に取り組むかの判断 |
| 受注処理と在庫の確認 | 注文の確認、住所や内容の不備の検出、在庫との突き合わせ | 例外的な注文への対応、発送の確定 |
4つに共通するのは、AIは「下書き」と「仕分け」を受け持ち、お客様に約束する内容や、お店の責任になる判断は人が行うという分担です。この線を最初に決めておくと、AIを入れても品質が下がらず、担当者も安心して使えます。
どの仕事から始めるかは「時間」と「ミスの影響」で決める
最初に取り組む仕事は、担当者がいちばん時間を使っていて、なおかつAIが間違えたときの影響が小さいものがおすすめです。たとえば、問い合わせの返信案づくりは、人が確認してから送る形にすれば、AIが間違えてもお客様に届く前に直せます。一方、注文の自動確定のように、間違いがそのまま発送につながる仕事は、慣れてから広げるほうが安全です。
注文・配送の問い合わせは、AIが注文情報を調べて返信案をつくる
EC・通販の問い合わせの多くは、「いつ届きますか」「注文内容を変えたい」「届いた商品が違う」「領収書がほしい」といった、注文や配送に関するものです。種類は限られていますが、答えるには毎回、注文番号から注文の状態や発送状況を調べる必要があり、この「調べる」作業に時間がかかります。
AIを使うと、次のような流れにできます。
- 問い合わせの種類を仕分ける:届いたメールやフォームの内容を読み、「配送状況」「注文変更・キャンセル」「不良・誤配送」「領収書」などに分ける
- 必要な情報を調べる:注文番号やお名前から、注文の状態・発送日・配送の追跡番号などを調べる
- 返信案をつくる:お店の返信の型と、調べた情報をもとに、そのまま送れる形の返信案をつくる
- 人が確認して送る:担当者が内容を確かめ、必要なら直して送る。返金や交換が絡むものは、担当者が判断する
担当者の仕事は「調べて一から書く」から「確認して送る」に変わります。当社の導入事例でも、不動産会社(従業員15名規模)の問い合わせ担当の方は、初回の返信にかかっていた時間が半日から10分になりました。業種は違いますが、「問い合わせを読んで、調べて、返す」という流れは同じです。
夜間や休日の問い合わせにも、受付の返信だけは早く返せる
EC・通販のお客様は、夜や休日に注文や問い合わせをすることが多いものです。すべてをAIに自動で答えさせるのは不安でも、「お問い合わせを受け付けました。翌営業日の午前中にご連絡します」という受付の返信と、よくある質問への案内だけを自動にする方法があります。お客様は「放っておかれていない」と分かり、担当者は翌朝に返信案がそろった状態から仕事を始められます。
ポイント
返金・交換・お詫びの品などの判断は、お店のルールと状況によって変わります。AIには「こういう問い合わせは担当者に回す」という条件を決めておき、判断が必要なものは人が対応する設計にします。
商品説明文は、仕様表とメモから下書きし、表示の確認は人が行う
新商品の登録で手間がかかるのが、商品説明文です。仕入れ先からもらった仕様表、担当者のメモ、写真などをもとに、お客様に伝わる文章にまとめるには時間がかかります。複数の販売サイトに出店している場合は、サイトごとに文字数や書き方を変える必要もあります。
AIは、仕様表とメモを読み込ませると、次のような下書きをつくれます。
- 商品の特長を3〜5点にまとめた見出しと本文
- サイズ・素材・重さなどの仕様をそろえた一覧
- 販売サイトごとの文字数や形式に合わせた書き分け
- 商品名に入れる検索されやすい言葉の候補
- よくある質問の候補(洗い方、サイズの選び方など)
過去によく売れた商品の説明文を「お手本」として読み込ませておくと、お店らしい言い回しに近づけられます。
効果・効能や「最安」などの表現は、必ず人が確かめる
商品の説明には、表示に関する法律やルールが関わります。たとえば、実際よりよく見せる表現や、根拠のない「No.1」「最安」などの表現は、景品表示法などで問題になる場合があります。食品や化粧品、健康に関わる商品では、効果・効能の書き方にさらに細かい決まりがあることもあります。
AIは、それらしい表現を自然に書いてしまうことがあります。そのため、AIの下書きは次の点を人が確認してから公開する流れにしてください。
商品説明文を公開する前の確認
- 仕様(サイズ・素材・原産国など)が仕様表と一致しているか
- 効果・効能をうたう表現が入っていないか、入れてよい表現か
- 「最安」「No.1」「必ず」などの言葉に根拠があるか
- 他社の商品名や画像を無断で使っていないか
- 販売サイトの出品ルールに合っているか
表示のルールは商品の分野ごとに違い、改正されることもあります。判断に迷う場合は、消費者庁などの公式の情報や、専門家に確認することをおすすめします。
レビューと問い合わせの集計で、商品とお店の改善点をつかむ
レビューや問い合わせの内容は、商品やお店をよくするための大切な材料です。しかし、件数が増えると一つひとつ読む時間がとれず、「なんとなく、サイズの問い合わせが多い気がする」という感覚にとどまりがちです。
AIを使うと、自由に書かれた文章を内容ごとに分類し、件数とともにまとめられます。
| まとめ方 | 分かること | 次の打ち手の例 |
|---|---|---|
| 不満の種類ごとの件数 | 「サイズが合わない」「色が写真と違う」「梱包が雑」などの多い順 | サイズ表の見直し、写真の撮り直し、梱包の改善 |
| 商品ごとの評価の傾向 | 評価が下がっている商品と、その理由 | 説明文の修正、仕入れ先への相談 |
| ほめられている点 | お客様が気に入っている特長 | 説明文や広告で強調する点 |
| 問い合わせの多い質問 | 購入前に迷われているポイント | よくある質問ページへの追加 |
毎週や毎月、この集計を自動でつくり、担当者や経営者が読める短い報告にしておくと、改善の判断が早くなります。レビューへの返信も、AIが下書きをつくり、人が確認して投稿する形にできます。
なお、集計の結果をもとにどの改善に取り組むかは、売上や手間とのかね合いで決める経営判断です。AIは「何が起きているか」を整理する役、人は「何をするか」を決める役と考えると、使いどころがはっきりします。
集計は「毎月同じ形」で続けると変化が見える
集計は一度きりではなく、毎月同じ分類、同じ形で続けることが大切です。分類の項目を毎回変えてしまうと、先月より不満が増えたのか減ったのかが分からなくなります。最初に分類の項目を決めておき、AIにはその項目にそって仕分けさせると、説明文を直したあとにサイズの問い合わせが減ったか、といった改善の効果も確かめられます。
受注処理と在庫の確認は、不備の検出と突き合わせから任せる
注文が増えると、受注の確認作業も大きな負担になります。住所の書き漏れ、同じ人からの重複注文、ギフト包装や配送日時の指定、在庫が足りない商品の注文など、一つひとつ目で確かめているお店も多いのではないでしょうか。
AIには、まず「おかしな注文を見つけて知らせる」仕事から任せるのがおすすめです。
- 注文の内容を確認する:住所の番地や建物名の抜け、電話番号の桁の誤りなどを見つける
- 重複や特別な指定を見つける:同じお客様の続けての注文、備考欄の要望(のし・日時指定など)を拾い出す
- 在庫と突き合わせる:在庫表と照らし合わせ、足りない商品の注文を知らせる
- 担当者に一覧で知らせる:確認が必要な注文だけを一覧にして、担当者に送る
担当者は、すべての注文を見る代わりに、AIが知らせた注文だけを確認すればよくなります。製造業(従業員30名規模)の事務担当の方の導入事例では、受注書の入力が1日2時間から15分になりました。EC・通販でも、受注まわりの「確認」を減らす考え方は同じです。
在庫の問い合わせや、欠品のお知らせにも使える
在庫表とつないでおくと、「この商品はいつ入荷しますか」といった問い合わせへの返信案や、欠品した商品を注文したお客様へのお知らせの下書きもつくれます。卸や法人向けの販売をしている会社では、取引先からの在庫・納期の問い合わせ対応にも同じ仕組みが使えます。
EC・通販でAIを始める3つのステップと、気をつけること
EC・通販事業者がAIを始めるときは、次の3つのステップで進めると失敗が少なくなります。
- いちばん時間がかかっている仕事を1つ選ぶ:問い合わせの返信、説明文の作成、受注の確認のうち、担当者の時間をいちばん使っているものを選ぶ
- お手本と型を集める:過去の返信メール、よく売れた商品の説明文、注文の確認で見ているポイントなどを集め、AIに読み込ませる材料にする
- 人が確認する形で小さく始める:最初はすべて人が確認してから送る・公開する形にし、AIの出来を見ながら任せる範囲を広げる
あわせて、次の点にも気をつけてください。
EC・通販でAIを使うときの注意点
- お客様の名前・住所・電話番号などの個人情報を、どのAIサービスで扱うか決めておく
- 入力した情報がAIの学習に使われない設定や契約になっているか確認する
- 返金・交換・お詫びなど、お店の判断が必要なものはAIに任せない
- 商品の表示内容は、公開前に人が確認する
- 販売サイトの規約で、自動での返信や投稿に決まりがないか確かめる
当社の「月5万円のAI社員」では、問い合わせの返信案づくりや受注の確認など、お店の業務に合わせたAIの仕組みをつくり、導入後の調整や相談も月額の中でお受けしています。費用は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。「うちのお店なら、どの仕事から任せられるか」を知りたいときは、お気軽にご相談ください。
よくある質問
ネットショップの問い合わせ対応はAIに任せられますか?
注文や配送に関するよくある問い合わせは、AIが注文情報を調べて返信案をつくり、人が確認して送る形で任せられます。返金・交換・お詫びなどの判断が必要なものは、担当者に回す設計にします。
AIで商品説明文を書いても問題ありませんか?
仕様表やメモから下書きをつくるのは問題ありませんが、効果・効能や「最安」などの表現は表示に関する法律に関わる場合があるため、公開前に人が確認してください。判断に迷うときは公式の情報や専門家に確認することをおすすめします。
少人数のネットショップでもAIを導入する意味はありますか?
あります。少人数のお店ほど、社長や店長が問い合わせや受注確認に時間をとられていることが多く、その一部をAIに任せるだけでも、商品づくりや販促に使える時間が増えます。
EC・通販でAIを入れるとき、最初はどの業務がおすすめですか?
担当者の時間をいちばん使っていて、間違えたときの影響が小さい業務がおすすめです。多くの場合、人が確認してから送る形の問い合わせ返信案づくりから始めると安全です。