業種別の活用公開日

人材紹介・人材派遣会社でAIは何に使えるか——面談メモの整理・マッチングの補助・推薦文の下書き

結論

人材紹介・人材派遣会社でAIが役立つのは、求職者との面談メモの整理と経歴の要約、求人と求職者の条件の照らし合わせ(マッチングの補助)、企業への推薦文の下書き、求職者への連絡の効率化の4つです。どれもAIは「整理と下書き」までを担い、だれをどの企業に紹介するかの判断と、個人情報の扱いの管理は担当者が責任を持って行います。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、人材紹介・人材派遣会社でのAIの活用方法と注意点について解説します。人材紹介・人材派遣の仕事では、担当者1人が多くの求職者と求人を同時に受け持ち、面談のメモをまとめ、条件に合う求人を探し、推薦文を書き、日程の連絡をする、という作業を毎日くり返しています。本来いちばん時間を使いたい求職者や企業との対話よりも、記録や書類づくりに追われていると感じる方も多いはずです。この記事では、人材紹介・派遣の仕事のどこにAIを使えば負担が減るのか、そして個人情報や紹介の判断など、AIに任せてはいけない部分はどこかを、人材業界の会社からもご相談をいただいている当社の立場から説明します。なお、自社の社員を採用するときの応募者対応については、別の記事で扱っています。

人材紹介・人材派遣会社で担当者の時間が足りなくなる理由

人材紹介・人材派遣の担当者(キャリアアドバイザーや営業担当者)の時間が足りなくなりやすいのは、次のような業界ならではの事情があるためです。

  • 1人が受け持つ人数が多い:多くの求職者と求人を同時に担当し、それぞれの状況を覚えておく必要がある
  • 面談の記録に時間がかかる:希望の条件、これまでの経歴、転職の理由、気になった点などを、面談のたびにまとめ直している
  • 条件の照らし合わせが手作業:勤務地、給与、勤務時間、必要な資格や経験など、求人と求職者の条件を1件ずつ見比べている
  • 書類と連絡の量が多い:企業への推薦文、職務経歴の要約、面接の日程調整、結果の連絡など、1人の紹介で多くのやり取りが発生する
  • 情報が担当者の頭の中にある:求職者の細かな希望や企業の採用の好みが記録に残らず、担当が替わると引き継ぎに苦労する

これらの作業の多くは「話した内容を整理する」「条件を見比べる」「決まった型の文章を作る」という性質を持っています。こうした作業はAIの仕組みに任せやすい部分です。一方で、求職者の人生にかかわる紹介の判断や、企業との信頼関係にかかわる部分は、人が担うべきところです。この線引きを最初に決めておくことが、人材業界でAIを使うときの一番のポイントです。

人材紹介・派遣の仕事でAIに任せやすい4つの業務と人の役割

人材紹介・人材派遣会社でAIを使いやすい業務を、AIと人の役割に分けて整理すると次のようになります。

業務AIに任せられること人が担うこと
面談メモの整理と経歴の要約面談のメモや録音の文字起こしから、希望条件・経歴・転職理由を決まった項目に整理し、職務経歴の要約を作る内容が本人の話と合っているかの確認、本人の気持ちや人柄の見極め
マッチングの補助求人と求職者の条件を照らし合わせ、合う点・合わない点を示した候補の一覧を作るだれにどの求人を提案するかの判断
推薦文の下書き整理した経歴と求人の内容から、企業に送る推薦文の下書きを作る内容の確認と、本人の了解を得たうえでの送付
求職者への連絡面談の案内、日程の候補、書類の提出のお願いなど、定型の連絡の文面を作る選考結果や条件の交渉など、判断や配慮を伴う連絡

どの業務でも、AIは整理と下書きまで、判断と送信は人という分担が基本です。担当者が一から作業していた部分をAIに置き換え、人は確認と、求職者や企業との対話に集中するという考え方で進めると、効果と信頼の両方を保ちやすくなります。

また、4つの業務はつながっています。面談メモが決まった項目で整理されていれば、それがそのままマッチングの材料になり、推薦文の下書きにも使えます。最初は面談メモの整理から始め、たまった記録を次の業務に活かしていく順番がおすすめです。

面談メモの整理と経歴の要約は「決まった項目」にそろえる

面談メモの整理は、担当者の負担を直接減らせる業務です。ポイントは、担当者ごとにばらばらだった記録の書き方を、決まった項目にそろえることです。

AIを使った面談メモの整理は、次のような流れになります。

  1. 担当者が面談中にとったメモや、本人の同意を得て録音した面談の文字起こしをAIに渡す
  2. AIが、希望の勤務地・給与・勤務時間・職種、これまでの経歴、資格、転職の理由、気になった点などの項目に分けて整理する
  3. 履歴書や職務経歴書がある場合は、その内容と合わせて職務経歴の要約を作る
  4. 聞きそびれた項目があれば、次の連絡で確認すべきこととして一覧にする
  5. 担当者が内容を確認し、本人の話と違う部分を直して記録に残す

ポイント

記録の項目がそろうと、担当が替わったときの引き継ぎも楽になります。求職者から見ても、同じことを何度も聞かれずに済むため、安心して相談を続けてもらいやすくなります。

面談を録音する場合は、必ず事前に本人へ目的を伝えて同意を得てください。また、AIが整理した内容には、話の意味を取り違えたものが含まれることがあります。とくに転職の理由や健康・家庭の事情など、扱いに配慮が必要な内容は、担当者が本人の言葉を確かめてから記録に残すようにしましょう。

マッチングの補助と推薦文の下書きをAIで速くする

条件の照らし合わせはAIに、提案の判断は担当者に

求人と求職者の条件を1件ずつ見比べる作業は、AIに任せやすい部分です。整理した面談メモと求人票をもとに、AIが勤務地・給与・勤務時間・必要な経験や資格などを照らし合わせ、「合っている点」「合っていない点」「確認が必要な点」を示した候補の一覧を作ります。

ただし、AIが示すのはあくまで条件の上での候補です。求職者が本当に大切にしていることや、職場の雰囲気との相性、企業の採用担当者の好みといった、数字や文字に表れにくい点は、担当者でなければ判断できません。だれにどの求人を提案するかは、必ず担当者が決めてください。また、性別や年齢など、条件の照らし合わせに使うべきでない情報をAIに使わせない設計にしておくことも大切です。

推薦文は「その企業に合わせた下書き」を作る

企業に送る推薦文は、求職者の経歴のうち、その求人で求められている経験や強みを中心にまとめる必要があります。AIに整理済みの経歴と求人の内容を渡すと、求人ごとに強調する点を変えた推薦文の下書きを作れます。担当者は、面談で感じた人柄や意欲を書き加え、内容に誤りや大げさな表現がないかを確認して仕上げます。

推薦文を送る前に担当者が確認すること

  • 経歴・資格・在籍期間などが、本人の書類や面談の内容と合っているか
  • 本人が企業に伝えてほしくないと言った情報が入っていないか
  • 実際より大げさな表現や、確かめていない内容が入っていないか
  • その企業に推薦することについて、本人の了解を得ているか
  • 宛先の企業や担当者の名前に誤りがないか

求職者への連絡を効率化し、返信の遅れで機会を逃さない

人材紹介・派遣の仕事では、面談の案内、面接の日程の候補、提出してほしい書類のお願い、面接前の持ち物や場所の案内など、定型の連絡が数多く発生します。こうした連絡の文面をAIに作らせると、担当者は内容を確認して送るだけになります。

  • 面談・面接の案内:日時、場所やオンラインの接続先、持ち物などを、求職者ごとに差し込んだ文面を作る
  • 日程の調整:企業から出た候補日と、求職者の都合をまとめて、候補を提示する連絡文を作る
  • 書類のお願い:足りない書類や、記入が抜けている項目を伝える連絡文を作る
  • しばらく連絡のない方へのフォロー:最後の連絡から日がたっている求職者を一覧にし、近況を伺う連絡の下書きを作る

連絡の返信が遅れると、求職者がほかの会社で決まってしまったり、企業の選考が先に進んでしまったりすることがあります。定型の連絡の手間を減らすことは、担当者の負担を減らすだけでなく、紹介の機会を逃さないことにもつながります。

一方で、選考の結果を伝える連絡、条件の交渉、辞退の相談、派遣先でのトラブルの相談などは、AIが文面を作らずにすぐ担当者に知らせるルールにしておきます。こうした連絡は、相手の気持ちに配慮しながら、人が直接対応すべきものです。

個人情報と法令への配慮、そして導入の進め方

個人情報の扱いを最初に決める

人材紹介・派遣の会社が扱う情報は、氏名や連絡先だけでなく、経歴、給与、転職の理由など、本人にとって大切な個人情報ばかりです。AIを使う前に、次のことを決めておきましょう。

  • 入力した内容がAIの学習に使われない、法人向けの設定や契約で使う
  • AIに渡す情報を、作業に必要な範囲に絞る
  • だれが情報を見られるか、どこに保存するかを決める
  • 求職者から、情報の利用目的について同意を得ているかを確認する

法令は断定せず、公式の情報で確認する

人材紹介や人材派遣の仕事には、職業安定法や労働者派遣法、個人情報保護法などの法令がかかわり、求職者の情報の扱い方や、求人の内容の伝え方などにルールがあります。AIの仕組みに組み込む手順が法令に沿っているかどうかは、会社の状況によって変わる場合があります。最新の情報は厚生労働省や個人情報保護委員会の公式サイトで確認し、判断に迷う点は専門家に相談してください。

導入は1つの業務から順番に進める

  1. 担当者の1日を書き出す:面談、記録、求人探し、推薦文、連絡など、どの作業にどれくらい時間を使っているかを確認する
  2. 最初の1業務を選ぶ:面談メモの整理や定型の連絡など、毎日発生していて判断が少ない業務から選ぶ
  3. 記録の項目を決める:面談で必ず聞く項目と、整理の形をそろえる
  4. 少人数で試す:一部の担当者で試し、整理の精度や下書きの質を確認する
  5. 広げる:問題がなければ対象を広げ、マッチングの補助や推薦文に進む

当社にご相談いただいた約90社には、人材業界の会社も含まれています。当社のAI社員は、会社ごとの面談の進め方や記録の形に合わせて仕組みをつくり、料金は初期費用+月5万円です(初期費用はヒアリング後にお見積もり)。記録の項目の変更や業務の追加といった導入後の調整にも、回数の制限なく対応しています。まずは面談メモの整理から小さく始めてみることをおすすめします。

よくある質問

AIに求職者と求人のマッチングを任せてもよいですか?

条件の照らし合わせと候補の一覧づくりまではAIに任せられますが、だれにどの求人を提案するかは担当者が判断してください。求職者の本当の希望や職場との相性は、記録だけでは判断しきれないためです。

面談の録音をAIで要約しても問題ありませんか?

事前に本人へ録音の目的を伝えて同意を得たうえで、学習に使われない法人向けの設定で扱えば、リスクを抑えて使えます。要約の内容は、担当者が本人の話と合っているかを確認してから記録に残してください。

AIが書いた推薦文をそのまま企業に送ってもよいですか?

おすすめしません。経歴の誤りや大げさな表現が入っていないか、本人が伝えてほしくない情報が含まれていないかを担当者が確認し、本人の了解を得てから送ってください。

小さな人材紹介会社でもAIを導入する意味はありますか?

あります。少人数の会社ほど、1人の担当者が面談・記録・連絡のすべてを抱えていることが多く、面談メモの整理や定型の連絡を減らすだけでも、求職者と話す時間を増やせます。まずは1つの業務に絞って始めるのがおすすめです。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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