AI導入後の現場の不満・要望はどう集めて改善につなげるか——声の残し方・3つの仕分け・優先順位の決め方と、直したことの返し方
結論
AI導入後の現場の不満や要望は、使ったその場で一言残せる仕組みと、月1回の短い振り返りの2つで集め、「AIの仕組みを直す」「業務の手順を直す」「教え方を直す」の3つに仕分けてから優先順位をつけると、改善につなげられます。声を出した人に「何を直したか・直さないなら理由」を必ず返すことで、次の声が出やすくなり、改善が止まらなくなります。管理職の役割は、声を集める窓口を1つにし、仕分けと返事を滞らせないことです。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AI導入後に現場から出る不満・要望・「使いにくい」という声を集め、仕分けと優先順位づけをして改善につなげ、結果を現場に返す方法について解説します。AIを業務に入れてしばらくたった。社内で話を聞くと「なんとなく使いにくい」「前のやり方のほうが早い気がする」という声がちらほら聞こえるが、具体的に何が困っているのかはわからない。正式な不満として上がってこないまま、気づけば使う人が減っている。管理職の方から、こうしたご相談をいただきます。現場の声は、集め方を決めておかないと、休憩中の雑談や陰の不満として消えてしまいます。この記事では、AI導入後に現場の不満・要望をどう集め、どう仕分けて、何から直し、直したことをどう現場に返すかを順に説明します。現場への定着全体の進め方や、効果の数字の測り方、仕組みの保守については別の記事で扱っているため、ここでは「現場の声を改善に変える流れ」に絞ってお伝えします。
現場の「使いにくい」は、集め方を決めないと上がってこない
AIを入れた直後は、現場からいろいろな感想が出ます。ところが、その多くは管理職まで届きません。届かない理由には、決まった型があります。
| 声が上がらない理由 | 現場で起きていること | 集め方で手当てすること |
|---|---|---|
| 言う場所がない | 誰に、どこで伝えればよいかわからない | 声を残す窓口を1つに決める |
| 言うほどでもないと思う | 小さな不便は「自分が慣れればいい」と飲み込む | 一言だけで残せるようにする |
| 忘れてしまう | 困ったその場では思っても、会議のころには忘れている | 使ったその場で残せるようにする |
| 言っても変わらないと思う | 前に伝えたが、何の返事もなかった | 直したこと・直さない理由を必ず返す |
| 導入に反対していると思われたくない | 会社が進めていることに文句を言いにくい | 不満を歓迎する姿勢をはっきり示す |
特に大きいのが、最後の2つです。「言っても変わらない」「言うと反対派だと思われる」と感じると、社員は黙ってAIを使わなくなり、元のやり方に戻ります。管理職がまず伝えたいのは、「使いにくい」という声は導入を失敗させるものではなく、AIを自社に合わせるための材料だということです。
ポイント
AIは入れた日が完成ではなく、現場の使い方に合わせて直していくものです。「最初の数か月は直す前提で使ってほしい。気づいたことは何でも残してほしい」と、導入時に伝えておくと声が集まりやすくなります。
集め方:その場で一言残す仕組みと、月1回の振り返りを組み合わせる
現場の声は、2つの集め方を組み合わせると漏れが少なくなります。1つは使ったその場で残すもの、もう1つは定期的に振り返るものです。
| 集め方 | やり方の例 | 拾いやすい声 |
|---|---|---|
| その場で残す | 社内チャットに「AIの気づき」用の場所を作る。AIの画面の近くに、一言書ける入力欄やフォームへのリンクを置く | 「この項目を毎回直している」「この言い回しが合わない」といった具体的な不便 |
| 月1回の振り返り | 部署の定例会議の最後の10分で、AIについて「助かったこと・困ったこと・やめたいこと」を聞く | 使い続けて見えてきた違和感、使わなくなった理由 |
| 個別の聞き取り | 使う回数が減った人、新しく使い始めた人に、管理職が短く話を聞く | みんなの前では言いにくい本音 |
その場で残すときの決まりは3つだけ
- 一言でよいことにする:「請求書の宛名が毎回ずれる」程度で十分とし、長い説明を求めない
- できれば実物を添える:AIが作った文章や読み取り結果の画面を、そのまま貼れるようにする。何が起きたかを後で確かめやすくなる
- 窓口を1つにする:口頭、メール、チャットとばらばらに受けると、まとめる人の手間が増え、声が消える。どこで聞いても最後は同じ場所に書き写す
月1回の振り返りでは、責める雰囲気にならないよう、「困ったこと」を先に聞かず「助かったこと」から始めるのがおすすめです。助かった使い方を話してもらうと、ほかの社員の参考にもなります。
声を集めるときに避けたいこと
- 長いアンケートを配る:質問が多いと答える手間が負担になり、「特になし」ばかりが返ってくる。聞くことは3つ程度に絞る
- その場で反論する:「それは使い方が悪い」と返すと、次から声が出なくなる。まずは受け取り、仕分けは後で行う
- 使っていない人を責める:使わなくなった理由こそ、いちばん大事な声。使わないことを問題にせず、理由を聞く
- 管理職だけで集める:部署によっては、現場をよく知るリーダーや推進担当に窓口を任せたほうが声が集まりやすい
パートやアルバイトなど、会議に出ない人の声も忘れずに拾います。AIを毎日いちばん多く使っているのが、こうした人たちであることも少なくありません。
声の仕分け:「AIを直す」「業務手順を直す」「教え方を直す」の3つに分ける
集まった声は、そのまま全部をAIの担当者に渡しても改善は進みません。「使いにくい」の原因は、AIそのものにあるとは限らないからです。まず次の3つに仕分けます。
| 仕分け | よくある声の例 | 直す人・直し方 |
|---|---|---|
| AIの仕組みを直す | 「読み取りの日付がいつも1日ずれる」「文章が硬すぎてお客様向けに使えない」「この書類の形だと読み取れない」 | AIの指示文や設定、読み取る項目を直す。社内の担当者か、作った外部の会社が対応する |
| 業務の手順を直す | 「AIの結果を確かめる人が決まっていない」「結局、前の表にも書き写している」「承認の順番が合わない」 | 業務の流れ・担当・二重作業をなくす。管理職が決める |
| 教え方を直す | 「どこに何を入れればよいかわからない」「便利な使い方を知らなかった」「間違えたら怖くて使えない」 | 手順書を直す、短い説明の時間をとる、うまく使っている人のやり方を共有する |
仕分けてみると、「AIの仕組みを直す」に当たる声は意外に少なく、手順や教え方で解決できるものが多いことがよくあります。たとえば「AIの結果が信用できない」という声も、聞いてみると「どこを確かめればよいかが決まっていない」という手順の問題だった、ということがあります。
仕分けに迷ったときの聞き方
- 「そのとき、何をしようとしていましたか?」(やりたかったことを聞く)
- 「AIが出したものの、どこを直しましたか?」(AIの直しかどうかを見分ける)
- 「ほかの人も同じことで困っていそうですか?」(教え方の問題かどうかを見分ける)
同じ声が複数の仕分けにまたがることもあります。その場合は、いちばん早く手を打てるものから進めます。
優先順位:「困っている人の数」「時間のロス」「間違いの重さ」で決める
声がたまってくると、全部を一度には直せません。何から手をつけるかは、次の3つの点で決めると、社内で説明しやすくなります。
| 判断する点 | 見ること | 優先が高い例 |
|---|---|---|
| 困っている人の数 | 同じ声が何人から出ているか | 部署の多くの人が毎日同じ箇所を直している |
| 時間のロス | その不便で、1回・1日にどれくらい手間が増えているか | AIの結果を毎回すべて見直している、二重に書き写している |
| 間違いの重さ | 放っておくと、お客様やお金に影響するか | 金額や宛先の読み違い、お客様に出す文章の誤り |
この3つのうち「間違いの重さ」が大きいものは、ほかの点にかかわらず最初に直します。お客様やお金に影響する声は、その場で担当者に連絡する決まりにしておくと安心です。
声の一覧に持たせる項目のチェックリスト
- 受け付けた日と、声を出した人(または部署)
- 声の中身(一言のまま)と、あれば実物
- 仕分け(AIを直す・業務手順を直す・教え方を直す)
- 優先度(高・中・低)と、そう判断した理由
- 担当者と、いつまでに対応するか
- 状況(受付・対応中・完了・見送り)と、現場への返事をしたか
「見送り」も大切な選択肢です。費用や手間に見合わないもの、ほかの改善で解決するものは、理由をつけて見送ります。見送りを決めること自体が、一覧を整理し、本当に大事な声に時間を使うことにつながります。
改善したことを現場に返す:「直したこと」「直さないこと」「次に直すこと」を伝える
声を集める仕組みが続くかどうかは、返し方で決まります。声を出した人が「言ってよかった」と思えれば、次の声が出てきます。逆に、何の返事もなければ、仕組みは数か月で止まります。
- 受け取ったことをすぐ返す:声が残されたら、その日のうちに「受け取りました」と一言返す。チャットなら反応をつけるだけでもよい
- 月1回、まとめて結果を伝える:振り返りの場や社内チャットで、その月に「直したこと」「直さないことと理由」「次に直す予定のこと」を短く伝える
- 声を出した人の名前を出して感謝する:本人が嫌でなければ、「〇〇さんの指摘で、この項目が直りました」と伝える
- 使い方が変わる点ははっきり伝える:直した結果、入力の仕方や確かめる箇所が変わる場合は、手順書も一緒に直して知らせる
| 返事の種類 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 直したこと | 「請求書の日付が1日ずれる件、読み取りの設定を直しました。今週から正しく入ります」 |
| 直さないこと | 「この書類の形は月に数枚なので、AIに読ませず手入力のままにします。手順書にそう書き足しました」 |
| 次に直すこと | 「お客様向け文章の言い回しは、来月までに柔らかい表現に直します。直るまでは送る前に一度確かめてください」 |
ポイント
「直さない」と返すことも、立派な返事です。理由がわかれば、現場は納得して別のやり方を選べます。いちばん避けたいのは、返事をしないまま声が消えることです。
改善の流れを止めないための管理職の役割と、外部の力の借り方
現場の声を改善につなげる流れは、次の一巡を月単位で回すのが基本です。
- 集める:その場で一言残す窓口と、月1回の振り返りで声を集める
- 仕分ける:AIを直す・業務手順を直す・教え方を直す、の3つに分ける
- 順番を決める:困っている人の数・時間のロス・間違いの重さで優先度をつける
- 直す:それぞれの担当者が対応する。AIの直しは、社内の担当者か作った外部の会社に依頼する
- 返す:直したこと・直さないこと・次に直すことを現場に伝える
この流れの中で管理職が担うのは、声の窓口を1つに保つこと、仕分けと優先度を決めること、そして返事を滞らせないことです。すべてを自分で直す必要はありません。ただ、流れの「詰まり」を見つけて動かすのは管理職の仕事です。
「AIを直す」が止まらないように、相談先を決めておく
中小企業で改善が止まりやすいのは、「AIを直す」に仕分けた声です。社内に直せる人がいないと、声はたまる一方になり、現場は「言っても変わらない」と感じ始めます。導入を外部に任せた場合は、運用中の直しをどこまで、どんな頼み方で、どれくらいの時間で対応してもらえるかを確かめておきましょう。直すたびに見積もりが必要な契約だと、小さな直しほど後回しになりがちです。
当社のAI社員は、月5万円の中に保守・相談・メンテナンスが回数の制限なく含まれています。現場から出た「この項目がずれる」「言い回しを変えたい」といった小さな直しも、その都度ご相談いただけます。料金は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。現場の声を集める窓口の作り方や、声の仕分けから一緒に考えることもできますので、「導入したAIが現場で使われなくなってきた」と感じたら、まずはたまっている声を持ってご相談ください。現場への定着全体の進め方は「AIを現場に定着させるには何が必要か」、効果の数字での振り返りは「AI導入の効果は本番稼働後にどう測り、社内に報告する?」の記事で説明しています。
よくある質問
AI導入後、現場の不満や要望はどうやって集めればよいですか?
使ったその場で一言残せる窓口(社内チャットの専用の場所やフォームなど)と、部署の定例会議での月1回の振り返りを組み合わせるのがおすすめです。窓口は1つにまとめ、一言だけでよいことにすると声が集まりやすくなります。
現場の「AIが使いにくい」という声は、すべてAIを直せば解決しますか?
解決しないことが多いです。声は「AIの仕組みを直す」「業務の手順を直す」「教え方を直す」の3つに仕分けると、手順や説明の見直しで解決できるものが多く見つかります。
集まった要望が多すぎるとき、何から直せばよいですか?
お客様やお金に影響する間違いを最優先で直し、そのほかは困っている人の数と、1日に増えている手間の大きさで順番を決めます。費用や手間に見合わないものは、理由をつけて見送ります。
改善したことは、現場にどう伝えればよいですか?
声を受け取ったらすぐに一言返し、月1回、「直したこと」「直さないことと理由」「次に直すこと」をまとめて伝えます。使い方が変わる場合は、手順書も直して一緒に知らせます。