最初のAI導入がうまくいったら、次はどの業務に広げるか——2つ目・3つ目の選び方と、広げるときに失敗しない順番
結論
最初のAI導入がうまくいったら、次は「1つ目と同じデータや仕組みを使える業務」か「1つ目の前後につながる業務」から広げるのが、いちばん失敗しにくい選び方です。たとえば受注書の入力をAIに任せたなら、次は同じ受注データを使う在庫・納期の問い合わせ対応や請求書の発行へ、という順番です。一度に広げるのは1業務ずつにし、1つ目で決めた確認の手順と効果の測り方をそのまま引き継ぐと、2つ目以降は早く、安く立ち上がります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、最初のAI導入がうまくいった後に、2つ目・3つ目の業務を選んで広げる方法と順番について解説します。最初に選んだ業務でAIがうまく回り始めた。現場からも「ほかの仕事もAIにできないか」という声が出てきた。経営者としては勢いのあるうちに広げたい一方で、何から手を付ければよいか、あれもこれもと広げて失敗しないかが気になる。この記事では、2つ目・3つ目の業務の選び方、選ぶときに使える判断の表、広げる順番、広げるときによくある失敗と防ぎ方を説明します。最初の1業務の洗い出し方ではなく、「1つ目がうまくいった後」に絞ってお伝えします。
2つ目の業務選びは、最初の1つ目とは考え方が変わる
最初の1業務を選ぶときは、「効果が見えやすく、失敗しても影響が小さい業務」を選ぶのが基本でした。2つ目からは、これに加えて「1つ目で作ったものをどれだけ使い回せるか」が大きな判断材料になります。
1つ目の導入で、会社にはすでに次のようなものができています。
- AIが読める形に整えたデータ(受注データ、顧客の一覧、規程やマニュアルなど)
- メールや表計算ソフト、社内チャットとAIをつなぐ仕組み
- AIの出した結果を人が確かめる手順
- 効果の測り方と、社内への報告の仕方
- AIに慣れた社員
これらを使える業務を2つ目に選ぶと、準備の手間が少なく、短い期間で立ち上がります。逆に、1つ目とまったく関係のない業務を選ぶと、データの整理もつなぎ込みも一からやり直しになり、1つ目と同じくらいの時間と費用がかかります。
選び方の2つの軸:「同じデータ」と「前後の業務」
2つ目・3つ目を選ぶときは、次の2つの軸で候補を探すと見つけやすくなります。
軸1:同じデータを使う業務
1つ目で整えたデータを、別の目的で使う業務です。たとえば、社内規程をAIに読ませて社員の質問に答える仕組みを作ったなら、同じ規程を使って稟議書や申請書の確認を補助できます。
軸2:前後につながる業務
1つ目の業務の前や後にある業務です。受注書の入力を自動化したなら、その後ろにある出荷の手配、請求書の発行、入金の確認へと順に広げられます。前後がつながると、手作業での受け渡しが減り、全体の効果が大きくなります。
| 1つ目の業務 | 同じデータを使う業務 | 前後につながる業務 |
|---|---|---|
| 受注書の入力 | 在庫・納期の問い合わせ対応 | 請求書の発行、入金の確認 |
| 問い合わせメールの返信 | よくある質問の更新、社内向けの手順書 | 見積の下書き、追客の連絡 |
| 社内の質問への回答 | 稟議書・申請書の確認 | 新人研修の資料づくり |
| 議事録の作成 | 録音への質問による振り返り | 決定事項・宿題の追いかけ |
| シフトの作成 | 勤怠の締め・残業の集計 | 欠員時の連絡・調整 |
候補を比べる判断の表:効果・使い回し・現場の準備
候補が複数出てきたら、次の4つの観点で比べます。点数をつけて並べると、社内で話し合うときにも理由を説明しやすくなります。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| 効果の大きさ | 毎月どれくらいの時間がかかっているか。残業や遅れの原因になっているか |
| 使い回せる度合い | 1つ目のデータ・仕組み・確認の手順をどれだけ使えるか |
| 現場の準備 | 担当者が前向きか。業務の手順が決まっているか |
| 失敗したときの影響 | お客様やお金に直接関わるか。間違えたときに人が気づけるか |
ポイント
現場から「やってほしい」と声が上がった業務は、担当者が協力的なので立ち上がりが早い傾向があります。ただし声の大きさだけで選ばず、上の4つの観点で比べてから決めましょう。
当社自身も、自社の業務にAIを順に広げてきました。その結果、当社の業務で削減した時間は月約480時間、浮いた人件費は月約100万円(社員3名分)になっています。一度に広げたのではなく、1つずつ確かめながら積み重ねた結果です。
広げる順番:1業務ずつ、1つ目の型を引き継いで進める
2つ目以降も、進め方の基本は1つ目と同じです。ただし、1つ目で決めたことを引き継げるので、各段階を短くできます。
- 1つ目の効果を数字で確かめる:かかる時間がどれだけ減ったか、間違いは増えていないかを確認し、社内に共有する
- 候補を挙げて比べる:「同じデータ」「前後の業務」の軸で候補を挙げ、判断の表で比べて1つに絞る
- 今の時間を測る:始める前に、その業務に毎月かかっている時間を記録しておく
- 1つ目の型を当てはめる:確認の手順、効果の測り方、困ったときの連絡先を、1つ目と同じ形で決める
- 少人数で試す:担当者数名で数週間試し、直すところを直す
- 本格的に使い、次を考える:効果が確かめられたら、3つ目の候補選びに進む
1つ目が動いている間に、2つ目の準備(データの整理や手順の書き出し)を少しずつ進めておくと、切れ目なく広げられます。
広げるときによくある失敗と防ぎ方
AIの活用を広げる段階では、最初の導入とは違う失敗が起こりがちです。
| よくある失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 一度に3つも4つも始める | どれも中途半端になり、効果が測れない | 同時に立ち上げるのは1業務までにする |
| 1つ目の保守がおろそかになる | 1つ目の精度が落ち、現場の信頼を失う | 新しい業務を始めても、1つ目の確認と改善を続ける |
| 推進担当に仕事が集中する | 担当者がつぶれ、広がりが止まる | 各業務に現場の担当者を決め、推進担当は支える役に回る |
| 効果を測らずに広げる | 何が効いているかわからず、費用だけが増える | 業務ごとに始める前と後の時間を記録する |
2つ目に広げる前に確認すること
- 1つ目の効果を数字で確かめ、社内に共有したか
- 1つ目の確認の手順が、担当者が替わっても回る形になっているか
- 2つ目の業務に、協力してくれる現場の担当者がいるか
- 2つ目の業務の今の時間を記録したか
- 1つ目の保守・改善を続ける時間を確保できているか
当社が提供する「AI社員」は、月5万円で保守・相談・メンテナンスが無制限のため、1つ目の改善を続けながら、2つ目・3つ目の相談も同じ窓口で進められます。広げる順番の相談からでもお気軽にお声がけください。
3つ目以降は「業務どうしをつなぐ」ことで効果が大きくなる
2つ目までは、1つずつ業務の手間を減らしていく段階です。3つ目以降になると、AIに任せた業務どうしをつなぐことで、効果が足し算ではなく掛け算のように大きくなっていきます。
たとえば、受注書の入力、在庫・納期の問い合わせ対応、請求書の発行の3つをAIに任せた会社では、受注の情報が一度入力されれば、問い合わせへの回答にも請求書にも同じ情報が流れていきます。人が表から表へ写す作業や、部署間での確認の連絡が減り、転記ミスも起きにくくなります。
つなぐ段階で見直したいこと
- 情報の置き場所:業務ごとにばらばらの表を使っていないか。共通で使う一覧(顧客、商品、案件など)を1つにまとめられないか
- 確認の場所:業務ごとに確認していた内容を、まとめて確認できる画面や一覧にできないか
- 例外の流れ:AIが判断できなかったものが、どの担当者に、どの順番で回るか
つなぐ段階では、業務の流れそのものを見直すことも増えます。現場の担当者が「今のやり方を変えたくない」と感じることもあるため、1つ目・2つ目で出た効果の数字を示しながら、少しずつ進めるのがおすすめです。
また、業務が増えるほど、AIの利用料も少しずつ増えていきます。AIの利用料は使った量に応じて決まる実費のため、業務ごとにおおよその利用量を記録しておくと、費用対効果を説明しやすくなります。
よくある質問
AI導入が1つうまくいったら、次はどの業務に広げればよいですか?
1つ目と同じデータや仕組みを使える業務か、1つ目の前後につながる業務から選ぶのが確実です。準備の手間が少なく、早く立ち上がるうえ、業務どうしがつながることで全体の効果も大きくなります。
AIを使う業務は一度にいくつまで広げてよいですか?
新しく立ち上げるのは一度に1業務までをおすすめします。同時に始めると効果を測りにくく、確認の手順も定着しないまま広がってしまうためです。
2つ目以降のAI導入は、1つ目より早く安くできますか?
1つ目で整えたデータやつなぎ込み、確認の手順を使える業務であれば、準備の手間が減るぶん早く立ち上がる場合が多いです。まったく別のデータを使う業務の場合は、1つ目と同じくらいの準備が必要になることもあります。
AIの活用を社内に広げるとき、誰が中心になればよいですか?
全体の順番を考える推進担当と、業務ごとの現場の担当者を分けるのがおすすめです。推進担当1人にすべてを任せると負担が集中し、広がりが止まりやすくなります。