運用・定着公開日

AIを現場に定着させるには何が必要か——使われなくなる原因と対策、説明と改善の回し方

結論

AIを現場に定着させるには、「今の作業より楽になる形で業務の流れに組み込む」「何を任せ、何を人が確認するかを現場に説明する」「現場の声を受けて使いながら直し続ける」の3つが必要です。AIが使われなくなる原因の多くは性能そのものではなく、手間の増加や不安、困ったときの相談先がないことにあるため、そこを先に手当てすることが定着への近道です。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AIを現場に定着させるコツについて解説します。AIを導入したのに、数か月たつと誰も使っていない——こうした状況は、珍しいことではありません。この記事では、AIが現場で使われなくなる主な原因と、その対策、現場への説明の仕方、使いながら改善していく仕組みの回し方を、AI社員を提供している当社の立場から説明します。

AIが現場で使われなくなる5つの原因

AIが使われなくなる原因は、多くの場合、AIの性能よりも「使う側の状況」にあります。よくある原因は次の5つです。

  • かえって手間が増える:AIを使うために別の画面を開く、データを貼り付け直すなど、今のやり方より手順が増えている
  • 結果を信用できない:最初に何度か間違いがあり、「結局全部確認するなら自分でやったほうが早い」と思われている
  • 何に使えばよいかわからない:「自由に使ってください」と渡されただけで、どの業務で使うのかが決まっていない
  • 困ったときの相談先がない:うまく動かないときに聞ける人がおらず、そのまま使わなくなる
  • 仕事を奪われる不安がある:AIの導入の目的が説明されておらず、現場が警戒している

導入の時点では、どれも小さな問題に見えます。しかし放っておくと、「あのAIは使えない」という印象が社内に広がり、立て直すのが難しくなります。

原因ごとの対策:業務の流れに組み込み、確認の範囲をはっきりさせる

前の章の原因には、それぞれ次のような対策があります。

使われなくなる原因対策
かえって手間が増える今使っているメール、表計算ソフト、チャットなどの中でAIが動くようにし、手順を増やさない。AIが下書きを作って置いておく形にすると、使う側の手間が少ない
結果を信用できない「AIが作り、人が確認する」範囲をはっきりさせる。確認する点を数字・日付・宛先などに絞り、全部を見直さなくてよい形にする
何に使えばよいかわからない「この業務のこの作業に使う」と、対象の業務と使う場面を具体的に決めて伝える
困ったときの相談先がない社内の窓口役と、外部の相談先を決める。不具合や要望を伝える方法を一つにまとめる
仕事を奪われる不安がある導入の目的を「単純作業を減らし、人にしかできない仕事に時間を使うため」と説明し、空いた時間を何に使うかも話し合う

なかでも効果が大きいのは、AIを「わざわざ使いに行く道具」ではなく「いつもの業務の流れの中で勝手に動いている仕組み」にすることです。たとえば問い合わせへの返信なら、メールが届いたらAIが返信案を作って担当者の画面に置いておき、担当者は確認して送るだけ、という形にすると、使うかどうかを毎回考える必要がなくなります。

ポイント

当社のAI社員は、新しいツールを覚えてもらうのではなく、今の業務の流れの中に組み込む形で構築します。現場が「使っている」と意識しなくても動いている状態が、最も定着しやすい形です。

現場への説明の仕方:目的・任せる範囲・相談先を伝える

AIの導入を現場に説明するときは、操作方法より先に「なぜ入れるのか」を伝えることが大切です。説明では、次の順番で話すと伝わりやすくなります。

  1. 導入の目的:どの業務の、どんな負担を減らしたいのか。人を減らすためではなく、手間のかかる作業を減らすためであることを伝える
  2. AIに任せること:AIがどの作業を、どこまで行うのかを具体的に示す
  3. 人が確認すること:AIの出力のどこを、誰が確認するのか。最終的な判断は人が行うことを伝える
  4. 使い方:実際の画面や流れを見せながら、いつもの業務のどこが変わるのかを説明する
  5. 困ったときの相談先:うまく動かないとき、間違いを見つけたとき、要望があるときに誰に伝えればよいか

説明は一度で終わらせず、使い始めて1〜2週間後に、困っていることがないかを聞く場を設けると効果的です。最初の不満や疑問に早く答えることで、「使えない」という印象が固まるのを防げます。

現場の意見を導入前から聞く

可能であれば、導入する前の段階から、実際にその業務を担当している人の意見を聞いてください。どの作業に時間がかかっているか、どこでミスが起きやすいかは、現場の人がいちばんよく知っています。自分の意見が反映された仕組みは、使われやすくなります。

改善の回し方:使いながら直す仕組みをつくる

AIは、導入した時点で完成するものではありません。業務のルールが変わる、新しい種類の書類が届く、例外的なケースが見つかるなど、使い続けるうちに直したい点が必ず出てきます。定着している会社では、次のような改善の流れが回っています。

改善を回すためのチェックリスト

  • 現場がAIの間違いや要望を伝える方法が一つに決まっている
  • 伝えられた内容を、誰がいつまでに確認するかが決まっている
  • 直した内容を現場に知らせている
  • 月に1回程度、使われている回数や確認で直した件数を見ている
  • 業務のルールが変わったときに、AIの設定も見直す担当が決まっている

特に大切なのは、現場が伝えた意見が実際に反映されたことを、本人に知らせることです。「言っても変わらない」と感じると、意見が出なくなり、不満だけがたまります。小さな修正でも、反映したことを伝えるだけで、現場の協力が得やすくなります。

当社自身も、社内の業務にAIを使いながら改善を重ね、月 約480時間の作業時間の削減につなげてきました。一度にすべてを変えたのではなく、使いながら少しずつ直してきた結果です。

定着を支える社内の役割:窓口役と経営者の関わり方

AIを定着させるには、仕組みだけでなく、社内で誰がどんな役割を担うかを決めておくことも大切です。中小企業では専任の担当者を置くのは難しいため、次のような役割を、今いる人で兼ねる形が現実的です。

現場の窓口役

AIを使う部署の中から1人、窓口役を決めます。現場の困りごとや要望を集め、外部の相談先や社内の担当に伝える役割です。ITに詳しい必要はなく、業務をよく知っていて、周りの声を聞ける人が向いています。窓口役がいると、現場の一人ひとりが個別に問い合わせる必要がなくなり、要望も整理された形で集まります。

経営者・管理職

経営者や管理職の役割は、導入の目的を自分の言葉で伝えること、そして使われているかどうかに関心を持ち続けることです。導入の時だけ話題にして、その後は何も聞かないと、現場は「もう使わなくてもよいのだろう」と受け取ります。月に1回程度、窓口役から状況を聞くだけでも、定着の度合いは変わります。

外部の相談先

AIの設定を直したり、新しい業務に広げたりするには、仕組みを理解している人の手が必要です。社内に作れる人・直せる人がいない場合は、導入後も相談できる外部の相談先を確保しておきます。導入して終わりの契約だと、少しの不具合や業務の変更で使われなくなる原因になります。

この3つの役割がそろうと、「現場が困りごとを伝える → 窓口役がまとめる → 外部や社内の担当が直す → 経営者が様子を確かめる」という流れが自然に回るようになります。

定着しているかどうかを確かめる方法

AIが定着しているかどうかは、感覚ではなく、いくつかの目安で確かめることができます。

  • 使われている回数:対象の業務で、AIが実際に使われている回数や割合が保たれているか、減っていないか
  • 確認で直している割合:AIの出力を人が直している割合が、時間とともに減っているか
  • 作業時間:導入前と比べて、対象の業務にかかる時間が減ったままになっているか
  • 現場の声:「なくなると困る」と言われるか、「使わなくてもよい」と言われるか

使われる回数が減ってきた場合は、前の章までの原因のどれかが起きているサインです。早めに担当者に話を聞き、手間が増えていないか、信用できない出力が続いていないかを確認してください。

当社のAI社員は、初期費用+月5万円で、月額には保守・相談・メンテナンスが無制限で含まれています。導入後に出てきた現場の要望や、業務の変更に合わせた調整にも何度でも対応しますので、「作ったけれど使われなくなった」という状態を防ぎながら運用を続けられます。

よくある質問

AIを導入したのに現場で使われていません。何から見直せばよいですか?

まず実際に使っている人、使わなくなった人に理由を聞いてください。多くの場合、手間が増えている、結果を信用できない、相談先がないのどれかが原因で、それぞれに対策があります。

年配の社員やITが苦手な社員にも使ってもらえますか?

新しいツールの操作を覚えてもらうより、いつも使っているメールや表計算ソフトの中でAIが動く形にすると、ITが苦手な方でも使いやすくなります。説明では操作より先に目的と確認する点を伝えることが大切です。

AIの間違いが続くと、現場が使わなくなりませんか?

その可能性はあります。AIが作り人が確認する範囲をはっきりさせ、見つかった間違いをもとにルールや指示を直し、直したことを現場に知らせる流れを回すことで、信頼を保てます。

定着するまでにどのくらいの期間がかかりますか?

業務の内容や使う人数によって変わります。目安として、使い始めて1〜2週間後に困りごとを聞き、1か月ほど使われる回数や作業時間を見て、定着しているかを確かめてください。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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