社内でAIを広める推進担当は誰をどう選ぶか——向いている人の条件と任せる役割、時間と評価の決め方
結論
社内でAIを広める推進担当は、各部署に1〜2名ずつ置き、エンジニアではなく「その部署の業務をよく知り、周りから相談されやすい人」を選ぶのが基本です。任せる役割は、現場の困りごとの吸い上げ、うまくいった使い方の共有、外部の依頼先との窓口の3つに絞り、そのための時間を業務として確保し、評価にも反映させることが大切です。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、社内でAIを広める推進担当(AIリーダー)の選び方と役割について解説します。AIを入れると決めたものの、「誰が社内で旗を振るのか」で止まってしまう会社は少なくありません。ITに詳しい若手に任せたら現場とかみ合わなかった、全員に一斉に使い方を説明したが誰も続かなかった、という声もよく聞きます。この記事では、AIの推進担当(AIリーダー)を置く考え方、向いている人の条件、任せる役割の範囲、時間の確保と評価の仕方、そして外部に頼む部分との分け方を、AI社員を提供している当社の立場から管理職の方向けに説明します。
全員一斉に広めるより、各部署に1〜2名の推進担当を置くほうが進む
AIを社内に広めるとき、最初に考えがちなのが「全社員向けの説明会を開いて、一斉に使い始めてもらう」というやり方です。しかし、10〜50名規模の会社でこのやり方をとると、次のようなことが起きやすくなります。
- 部署ごとに業務が違うため、説明が一般論になり、自分の仕事にどう使えばよいかが伝わらない
- 使い始めた人が困ったときに、近くに聞ける人がいない
- うまくいった使い方が個人の中にとどまり、部署内に広がらない
- 経営者や管理職から見て、どこまで進んでいるのかがわからない
そこで当社がおすすめしているのが、各部署に1〜2名の推進担当を置き、その人を起点に部署の中へ広げていく考え方です。推進担当は、部署の業務とAIの使い方の両方がわかる「通訳」のような立場になります。
| 比べる点 | 全員一斉に広める | 部署ごとに推進担当を置く |
|---|---|---|
| 説明の中身 | 全社共通の一般論になりやすい | その部署の業務に合わせた具体的な使い方を伝えられる |
| 困ったときの相談先 | はっきりしない | 同じ部署の推進担当に気軽に聞ける |
| よい使い方の広がり方 | 個人の工夫で止まりやすい | 推進担当が集めて部署内に共有する |
| 進み具合の見え方 | 経営者からは見えにくい | 推進担当から定期的に報告を受けられる |
| 最初の負担 | 全員が同時に覚える必要がある | まず推進担当が試し、うまくいく形ができてから広げられる |
1部署に1名だと、その人が休んだり異動したりしたときに止まってしまいます。人数に余裕がある部署では2名にしておくと、相談し合える相手がいて続けやすくなります。
向いているのはエンジニアではなく「現場の業務をよく知る人」
推進担当というと「パソコンに詳しい人」「若手」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、AIを業務に役立てるうえで本当に必要なのは、仕組みを作る技術よりも、どの作業に時間がかかっていて、どこでミスが起きやすいかを知っていることです。仕組みを作る部分は、外部に任せることができます。
推進担当に向いている人のチェックリスト
- その部署の業務の流れを、最初から最後まで説明できる
- 「この作業は面倒だ」「ここでよく間違える」という現場の悩みを知っている
- 同じ部署の人から、仕事のことでよく相談される
- 新しいやり方を試すことに抵抗が少なく、うまくいかなくても投げ出さない
- 人の話を聞いて、要点を短くまとめて伝えられる
- AIの得意・不得意を、使いながら覚えていこうという姿勢がある
反対に、次のような選び方は避けたほうが無難です。
- ITに詳しいという理由だけで選ぶ:業務の細かい事情を知らないと、現場が本当に困っている作業を見つけられない
- 手が空いている人に任せる:業務の中心から離れている人だと、現場の声が集まりにくい
- 本人の希望を聞かずに指名する:やらされている感覚があると、困りごとを拾う姿勢が続かない
- 管理職が自分で兼ねる:管理職は本来、推進担当を支える側。両方を一人で抱えると、どちらも手が回らなくなる
ポイント
年齢やITの得意不得意で選ぶ必要はありません。ベテランの事務担当者のように、業務を知り尽くしていて周りから頼られている人は、推進担当に向いていることが多いです。
推進担当に任せる役割は「吸い上げ・共有・窓口」の3つに絞る
推進担当に何でも任せてしまうと、本来の仕事との両立ができなくなります。任せる役割は、次の3つに絞るのがおすすめです。
- 困りごとの吸い上げ:部署の中で「時間がかかっている作業」「AIを使ってみたがうまくいかなかったこと」「こういうことができないか」という声を集め、短くまとめる
- 使い方の共有:うまくいった使い方や、AIに渡す指示の書き方、確認するときの注意点を、部署の人に伝える。口頭だけでなく、簡単なメモにして残す
- 外部の依頼先との窓口:仕組みの修正や新しい業務への広げ方について、外部の依頼先や社内の担当に要望を伝え、直った内容を部署に知らせる
反対に、推進担当に任せないほうがよいこともあります。
| 推進担当に任せること | 推進担当に任せないこと |
|---|---|
| 部署の困りごとや要望を集めてまとめる | AIの仕組みそのものを作る・直す |
| うまくいった使い方を部署内に広める | どの業務にAIを入れるかの最終判断 |
| 外部の依頼先に要望を伝え、結果を知らせる | 費用や契約についての判断 |
| 使われている様子を管理職に報告する | 部署の全員に使うことを強制する |
部署ごとの役割のイメージ
- 営業部門:お客様への返信や提案書づくりで時間がかかっている場面を集め、うまく使えた文章の例を部署内で共有する
- 事務・経理部門:受注書や請求書の入力、毎月の集計など、繰り返しの作業を洗い出し、AIの出力で確認すべき点(数字・日付・宛先など)を決めて伝える
- 現場部門:日報や報告書の書き方で困っていることを聞き取り、現場の言葉で使い方を説明する
どの部署でも、推進担当の仕事の中心は「作業の手間を見つけて伝え、うまくいった形を広める」ことです。仕組みを自分で作れなくても、この役割は十分に果たせます。
どの業務に入れるか、いくら使うかといった判断は、経営者や管理職が行います。推進担当は判断のための材料を集める役、と位置づけると、本人の負担も責任の重さも適切な範囲に収まります。
推進担当の時間を業務として確保し、評価に反映させる
推進担当がうまく機能しない会社でよく見られるのが、「本来の仕事はそのままで、空いた時間にAIのこともやっておいて」という任せ方です。これでは、忙しい時期になると真っ先に後回しにされ、数か月で何も動かなくなります。
時間の確保の仕方
- 週に決まった時間を推進担当の仕事にあてる:たとえば毎週の決まった曜日の1〜2時間など、カレンダーに入れておく
- 本来の仕事の一部を周りに分ける:推進担当の時間を生み出すために、何を誰に渡すかを管理職が決める
- 月に1回、管理職と話す場を設ける:集まった困りごとや進み具合を聞き、次に何をするかを一緒に決める
評価への反映の仕方
推進担当の仕事は、売上のようにすぐ数字に表れるものではありません。評価の対象にしないと、「やってもやらなくても同じ」と受け取られてしまいます。評価の際は、次のような点を見るとよいでしょう。
- 部署の困りごとを、どれだけ具体的に集めて伝えられたか
- うまくいった使い方を、メモや説明会などの形で共有できたか
- 推進担当が関わった業務で、作業時間やミスが減ったか
- 部署の人がAIを使う場面が増えたか
ポイント
推進担当を任命したことを、社内に正式に伝えることも大切です。「この人に相談すればよい」と周りが知っていて初めて、困りごとが集まるようになります。
推進担当と外部の依頼先の分担を決めておく
作れる人が社内にいない中小企業では、推進担当がどれだけ熱心でも、AIの仕組みを作ったり直したりする部分は外部に頼ることになります。ここで分担があいまいだと、推進担当が慣れない設定作業に時間を取られたり、外部に何を頼めばよいかわからなくなったりします。
| 作業 | 推進担当(社内) | 外部の依頼先 |
|---|---|---|
| どの作業に困っているかを見つける | 担当する | 聞き取りに協力する |
| AIの仕組みを作る・業務の流れに組み込む | 要望を伝え、試しに使って感想を返す | 担当する |
| 出力の間違いや不具合を見つける | 見つけて伝える | 原因を調べて直す |
| 業務のルールが変わったときの調整 | 変わった内容を伝える | 設定や指示を直す |
| 部署の人への使い方の説明 | 担当する | 説明用の資料づくりを手伝う |
このように分けておくと、推進担当は「現場の声を集めて伝える」ことに集中でき、技術的な作業は外部が引き受ける形になります。依頼先を選ぶときは、導入後も気軽に相談でき、修正の依頼に何度でも応えてもらえるかを確かめておきましょう。作って終わりの契約だと、推進担当が要望を集めても、それを形にする先がなくなってしまいます。
当社のAI社員は、初期費用+月5万円で、月額に保守・相談・メンテナンスが無制限で含まれています。各部署の推進担当から直接ご相談をいただき、要望に合わせて仕組みを直していく形で運用できます。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。
推進担当を置くまでの進め方
最後に、推進担当を置いてAIを広げていくまでの流れをまとめます。
- 最初の部署を1つ決める:作業の手間が多く、効果が見えやすい部署から始める。いきなり全部署に置かなくてよい
- 推進担当を選び、本人に話をする:選んだ理由、任せる3つの役割、使ってよい時間、評価への反映を伝え、引き受けてもらう
- 社内に任命を知らせる:誰が推進担当で、何を相談すればよいかを部署の人に伝える
- 外部の依頼先と顔合わせをする:推進担当と依頼先が直接やり取りできるようにし、分担を確認する
- 1つの業務で試し、うまくいく形をつくる:推進担当がまず使い、困りごとを伝えて直してもらう流れを何度か回す
- 部署内に広げ、次の部署にも推進担当を置く:最初の部署でうまくいった進め方や使い方のメモを、次の部署の推進担当に引き継ぐ
当社自身も、社内の業務にAIを使いながら少しずつ対象を広げ、月 約480時間の作業時間の削減につなげてきました。一度に全社で始めるより、1つの部署・1つの業務で手応えをつかんでから広げるほうが、結果として早く進むことが多いです。推進担当は、その手応えを社内に伝えていく大切な役割を担います。
よくある質問
AIの推進担当はITに詳しい人でないといけませんか?
その必要はありません。大切なのは部署の業務の流れと現場の悩みをよく知っていることで、仕組みを作る技術的な部分は外部の依頼先に任せられます。
推進担当は何人くらい置けばよいですか?
10〜50名規模の会社なら、各部署に1〜2名が目安です。1名だと休みや異動で止まりやすいため、余裕があれば2名にしておくと続けやすくなります。
推進担当は本来の仕事と兼任でも大丈夫ですか?
兼任で問題ありませんが、週に決まった時間を推進担当の仕事として確保し、その分の本来の仕事を周りに分けることが前提です。空いた時間にやる形だと、忙しい時期に止まってしまいます。
推進担当がやるべきことと、外部に頼むことの境目はどこですか?
困りごとの吸い上げ、使い方の共有、要望の取りまとめは推進担当が行い、AIの仕組みを作る・直す作業は外部が行うのが基本です。最初に分担を表にして確認しておくと迷いません。