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AIでデータ分析するには?——中小企業が手元のExcel・販売管理・顧客データで始めるやり方と数字の確かめ方

結論

AIでデータ分析するには、手元のExcelや販売管理・顧客データを「1行に1件、1列に1項目」の表にそろえ、「何を決めるための分析か」と「どんな表で答えてほしいか」を伝えてAIに聞き、出てきた数字を元データの合計や件数と照らし合わせて確かめる、という3つの手順で進めます。専門の分析担当がいない中小企業でも、売上の傾向、顧客ごとの変化、商品別の粗利、問い合わせ内容の分類といった分析は、この手順でAIに任せられます。ただし、社外に出せないデータは入力してよいAIサービスかを先に確かめ、分析結果から何を決めるかは人が判断します。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、中小企業が手元のExcel・販売管理・顧客データを使ってAIでデータ分析する方法(データの準備、AIへの聞き方、数字の確かめ方、社外に出せないデータの扱い)について解説します。販売管理システムからは毎月データを出している。Excelには何年分もの売上や顧客の記録がたまっている。それでも「どの商品がもうかっているのか」「最近来なくなったお客様は誰か」と聞かれると、すぐには答えられない。分析できる人がいないので、データはあっても眺めるだけになっている。そんな中小企業は少なくありません。最近は「AI データ分析」と調べると、表を渡すだけでAIがグラフや傾向を出してくれるという話をよく目にします。たしかにAIを使えば、関数やピボットテーブル(Excelで表を集計し直す機能)に詳しくなくても、分析の手間は大きく減らせます。一方で、AIが出した数字をそのまま信じてよいのか、お客様のデータを入れて大丈夫なのか、と不安に思う方も多いはずです。この記事では、中小企業が手元のデータでAIに分析させるやり方を、分析できることの例、データの準備、AIへの聞き方、数字の確かめ方、社外に出せないデータの扱いの順に説明します。毎月の経営会議資料の作り方は別の記事で扱っているため、ここでは「分析そのもの」に絞ってお伝えします。

AIでデータ分析するとできること:手元のデータで始められる4つの分析

AIでデータ分析するというと、大がかりなシステムや専門家が必要に思えるかもしれません。しかし中小企業がまず取り組むべき分析の多くは、今あるExcelや販売管理システムから出したデータで始められます。AIは、表を読み取って集計し、目立つ変化を言葉で説明するのが得意です。次の4つは、どの業種でも手元のデータで始めやすい分析です。

分析の内容使うデータわかることAIへの聞き方の例
売上の傾向販売管理から出した売上明細(日付・得意先・商品・金額)月ごと・季節ごとの波、伸びている商品や地域「過去2年の月別売上を前年同月と比べ、増減が大きい月と、その月に増減した商品を挙げて」
顧客ごとの変化得意先別の売上明細、顧客台帳注文が減っているお客様、最近増えたお客様、しばらく注文がないお客様「前年と比べて売上が3割以上減った得意先と、最後の注文日を一覧にして」
商品別の粗利売上明細と原価(仕入れ値)の表売れているがもうからない商品、数は少ないが利益が大きい商品「商品別に売上・粗利・粗利率を出し、粗利率の低い順に10件並べて」
問い合わせ内容の分類問い合わせメールや受付記録の本文どんな問い合わせが多いか、増えている内容は何か「問い合わせ本文を内容ごとに分類し、種類別の件数と、先月から増えた種類を出して」

表の最後の「問い合わせ内容の分類」は、数字ではなく文章のデータです。こうした文章を読んで種類に分ける作業は、これまで人が1件ずつ読むしかありませんでしたが、AIが特に得意とするところです。数字の集計と文章の分類を組み合わせると、「クレームが増えた商品は、粗利も下がっていた」のように、別々に見ていたデータのつながりにも気づきやすくなります。

AIのデータ分析で変わるのは「集計の手間」と「気づくまでの時間」

Excelでも同じ分析はできます。違いは、関数や集計表を組む手間がいらず、思いついた疑問をその場で言葉で聞けることです。「では、その得意先が減らした商品は何か」と続けて聞けば、すぐに次の表が出てきます。分析に詳しい人がいなくても、経営者や管理職が自分で疑問をたどれるようになるのが、AIを使ったデータ分析のいちばんの価値です。

データの準備:表の形・項目名・期間をそろえると、AIの分析は正確になる

AIのデータ分析がうまくいくかどうかは、渡すデータの形でほぼ決まります。人が見ればわかる表でも、AIは読み違えることがあります。分析を始める前に、データを次の形にそろえておきましょう。

基本は「1行に1件、1列に1項目」

売上なら1行に1つの取引、顧客なら1行に1社、問い合わせなら1行に1件を書き、列ごとに「日付」「得意先名」「商品名」「金額」のように1つの項目だけを入れます。見やすさのために作った表は、AIには読みにくいことがよくあります。

よくある表の形AIが読み違えやすい理由直し方
セルの結合が多いどの行の値かがわからなくなる結合を外し、すべての行に値を入れる
月ごとにシートが分かれている期間をまたいだ比較がしにくい1つの表にまとめ、「年月」の列を足す
途中に小計・合計の行がある合計を二重に数えてしまう小計・合計の行を消し、集計はAIに任せる
同じ得意先の書き方がばらばら「株式会社〇〇」と「〇〇(株)」が別の会社として数えられる得意先コードの列を使うか、表記をそろえる
金額の列に「税込」「税抜」が混ざっている合計が正しくならないどちらかにそろえ、項目名に書く

項目名と期間をはっきりさせる

列の名前は「金額」ではなく「売上金額(税抜・円)」のように、単位と税の扱いまで書くと読み違えが減ります。また、比べる期間は前年と同じ長さにそろえます。今年が10か月分、前年が12か月分のまま比べると、売上が減ったように見えてしまいます。

AIに渡す前のデータのチェックリスト

  • 1行に1件、1列に1項目の形になっている
  • セルの結合、途中の小計・合計の行、空白の行がない
  • 列の名前に、単位(円・個・件)と税込・税抜が書いてある
  • 得意先や商品は、コードか同じ表記でそろっている
  • 比べる期間(今年と前年など)の長さがそろっている
  • 返品・値引き・社内取引など、分析から外すものの扱いが決まっている
  • 分析に関係のない列(担当者の個人的なメモなど)を外してある

販売管理システムから毎月同じ形でCSV(カンマで区切られた表のファイル)を出せるなら、それがいちばん扱いやすい元データになります。出し方を一度決めておけば、翌月からは同じ準備を繰り返すだけで済みます。

AIへの聞き方:目的・データの説明・出してほしい形の3つを必ず伝える

同じデータでも、聞き方によってAIの答えの役立ち方は大きく変わります。「この売上データを分析して」とだけ頼むと、当たり障りのない感想が返ってきがちです。AIへの指示の文章(プロンプト)には、次の3つを入れましょう。

  1. 何を決めるための分析か(目的):「来期に力を入れる商品を3つに絞りたい」「取引が減っている得意先に、営業が訪問する順番を決めたい」のように、分析の先にある判断を書く
  2. データの説明:どの期間の、何のデータか。各列が何を表すか。返品や社内取引を含むかどうか
  3. 出してほしい形:「得意先別に、前年売上・今年売上・増減額・増減率の4列の表で」「上位10件まで」のように、表の列と件数を決める

聞き方の例:顧客ごとの変化を調べる

伝えること指示の例
目的取引が減っている得意先に営業が訪問する順番を決めたい
データの説明添付は2024年4月〜2026年9月の売上明細。列は「売上日」「得意先コード」「得意先名」「商品名」「売上金額(税抜・円)」。返品はマイナスの金額で入っている
出してほしい形得意先ごとに、前年同期と今年の売上、増減額、増減率、最後の注文日を表にし、減少額の大きい順に20件並べる
計算のしかた集計は表計算の機能で行い、どの列をどう集計したかを書き添える
わからないときデータから判断できないことは推測で書かず「データからは不明」と書く

1回で完璧を求めず、続けて聞いていく

データ分析は、1つの答えから次の疑問が生まれるものです。「減少額の大きい上位5社は、どの商品の注文が減ったか」「その商品は、ほかの得意先でも減っているか」と、続けて聞いていくと原因に近づけます。最初から細かい分析を頼むより、まず全体の表を出させ、気になる行を深掘りするほうが、早く使える答えにたどり着きます。

ポイント

AIは、文章を読むときと同じやり方で頭の中で計算させると、桁の多い足し算や割り算を間違えることがあります。ファイルを読み込んで計算する機能のあるAIサービスを使い、「計算は表計算の機能で行って」と指示すると、数字の正しさが上がります。

AIの数字を鵜呑みにしない:分析結果を確かめる5つの方法

AIのデータ分析は便利ですが、出てきた数字をそのまま会議や取引先への説明に使うのは危険です。AIは、データを読み違えたり、集計の条件を取り違えたり、ときにはデータにない数字をそれらしく補ったりすることがあります(ハルシネーションと呼ばれる間違い)。次の5つの方法で、分析結果を確かめてから使いましょう。

  1. 合計と件数を元データと照らし合わせる:AIが出した売上の総額と行数が、販売管理システムやExcelで出した合計・件数と一致するかを最初に確かめる。ここがずれていれば、その後の分析はすべて信用できない
  2. 計算のしかたを説明させる:「どの列を、どの条件で、どう集計したか」を書かせる。返品を引いたか、税込・税抜のどちらか、期間の区切りは正しいかを確かめる
  3. 数件だけ手で計算してみる:上位の得意先や商品を2〜3件選び、Excelで同じ数字になるかを確かめる
  4. 実感と合わない結果は理由を聞く:「この商品がいちばんもうかっている」など、現場の実感と違う結果が出たら、その理由と根拠になった行を示させる。原価の入力漏れなど、データの側に問題が見つかることも多い
  5. 「なぜ」の説明は仮説として扱う:AIが書く「売上が減った理由」は、データから考えられる候補にすぎない。営業担当者に聞くなど、人が事実を確かめてから判断に使う

分析結果を使う前の確認チェックリスト

  • 売上の総額と件数が、元データの合計・件数と一致している
  • 集計の条件(期間・返品・税込税抜・対象外の取引)を確認した
  • 上位の数件を、手元のExcelで計算して同じ数字になった
  • 現場の実感と違う結果は、理由と根拠の行を確かめた
  • AIが書いた「原因」は、担当者に事実を確かめるまで仮説として扱っている

確かめ方の手順は、最初に一度決めておけば毎回同じことを繰り返すだけです。とくに1つめの「合計と件数の照合」は、数十秒でできて効果が大きいので、必ず習慣にしてください。

社外に出せないデータの扱い:入力してよいAIサービスと、渡す前に外す項目を決める

売上や原価、顧客の情報は、会社にとって社外に出せないデータです。AIでデータ分析をするときは、どのAIサービスに、どのデータを入れてよいかを先に決めておく必要があります。

入力してよいAIサービスかを確かめる

個人で登録した無料のAIサービスは、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっている場合があります。業務のデータを分析するときは、法人向けの契約や設定で、入力したデータが学習に使われないこと、どこに保存されるか、誰が見られるかを確かめたうえで使います。

データの種類ごとに扱いを分ける

データの種類例扱いの目安
集計済みの数字月別売上の合計、商品カテゴリ別の件数法人向けのAIサービスであれば使いやすい
取引の明細得意先別・商品別の売上明細、原価社外秘として、学習に使われない設定・契約のサービスに限る
個人が特定できる情報個人のお客様の氏名・住所・電話番号・メールアドレス分析に不要なら外すか、番号に置き換えてから渡す
文章の記録問い合わせの本文、営業メモ本文中の氏名や連絡先を消してから渡すのが基本

分析に氏名や電話番号が必要になることは、ほとんどありません。「顧客番号」だけ残して名前や連絡先の列を外しておけば、分析の結果は顧客番号で返ってくるので、社内で元の台帳と照らし合わせれば誰のことかがわかります。

個人情報の扱いには個人情報保護法などのルールがあり、使い方によって求められることが変わる場合があります。自社のやり方が当てはまるかは、個人情報保護委員会などの公式サイトで最新の情報を確認してください。社内のルールの作り方は「顧客情報・個人情報をAIで扱うときの注意点」の記事でくわしく説明しています。

AIのデータ分析を始める手順と、毎月の仕組みにする段階

AIのデータ分析は、最初から全部のデータで始める必要はありません。次の順番で、小さく始めて広げていくのがおすすめです。

  1. 決めたいことを1つ選ぶ:「来期に力を入れる商品」「訪問すべき得意先」など、分析の先にある判断を1つ決める
  2. 必要なデータを1つ出す:その判断に必要なデータだけを、販売管理システムやExcelから出す
  3. 表の形をそろえる:2章のチェックリストにそって、1行1件・項目名・期間を整える
  4. 目的・データの説明・出してほしい形を伝えて聞く:3章の聞き方で分析させ、気になる点を続けて聞く
  5. 数字を確かめて、判断に使う:4章の方法で確かめ、結果をもとに人が決める

毎月繰り返す分析は「仕組み」にすると手間が消える

手作業でAIにデータを渡す使い方でも、分析の手間は大きく減ります。ただ、毎月同じ分析を繰り返すようになると、データを出す、形を整える、同じ指示を書く、結果を確かめる、という作業そのものが負担になってきます。この段階で役立つのが、データの取り出しから分析、確認までを自動で回す仕組みです。

段階やり方向いている場面
手作業でAIに聞くデータを出して整え、AIサービスに渡して質問するまず試したい、分析したいことが毎回違う
型を決めて繰り返すデータの出し方と指示文を決めておき、毎月同じ手順で聞く同じ分析を月1回ほど繰り返す
仕組みにする販売管理やExcelからデータを自動で取り込み、整え、分析し、合計の照合までして結果を届ける毎月・毎週の分析が決まっていて、担当者の手を空けたい

当社自身も、社内の集計や報告などの業務をAIに任せる仕組みを作り、月に約480時間の作業を減らしてきました。当社のAI社員は、お使いの販売管理システムやExcelのデータの形に合わせて、データの取り込み、表の整形、分析、合計の照合、結果の通知までを一続きの仕組みとして作ります。社外に出せないデータの扱いも、ご相談のうえで決めていきます。料金は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。最短2週間で稼働でき、運用中の分析内容の追加や相談にも回数の制限なく対応しています。「データはあるのに見られていない」という経営者の方は、まずどの判断のためにどのデータを使うかを一緒に整理するところからご相談ください。

よくある質問

AIでデータ分析するには、何から始めればよいですか?

「どの商品に力を入れるか」など決めたいことを1つ選び、そのために必要なデータだけを出して、1行に1件・1列に1項目の表にそろえるところから始めます。目的と出してほしい表の形を伝えてAIに聞けば、専門の分析担当がいなくても始められます。

AIのデータ分析で出た数字は信用できますか?

そのままでは信用せず、必ず確かめてください。売上の総額と件数を元データと照らし合わせ、集計の条件を説明させ、上位の数件を手元のExcelで計算し直すと、読み違えや計算の間違いに気づけます。

ExcelのデータをAIでデータ分析するときの注意点は?

セルの結合や途中の小計・合計の行、月ごとに分かれたシートは、AIが読み違える原因になります。1つの表にまとめ、列の名前に単位と税込・税抜を書き、比べる期間の長さをそろえてから渡してください。

顧客データや売上データをAIに入れても大丈夫ですか?

入力したデータが学習に使われない法人向けの契約・設定のAIサービスを使い、分析に不要な氏名や連絡先の列は外すか番号に置き換えてから渡すのが基本です。個人情報の扱いは法令で求められることがあるため、公式サイトで最新の情報を確認してください。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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