会議や商談の録音にAIで質問して振り返るには?——根拠の発言と時刻を確かめる方法と、言っていないことを答えさせない設定
結論
会議や商談の録音は、時刻と話者がついた文字起こしとして保存しておけば、後からAIに質問して振り返ることができ、答えの根拠となった発言とその時刻を添えさせて、録音を聞き直して確かめることもできます。ポイントは、AIに「文字起こしにある発言だけを根拠に答える」「根拠の発言をそのまま引用し、日付と時刻を添える」「記録にないことは記録にないと答える」というルールを守らせることです。この形にすると、複数回の会議や商談をまたいで「あのとき何と言ったか」を短時間で確かめられるようになります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、会議や商談の録音・文字起こしにAIで質問し、根拠の発言と時刻を確かめながら振り返る方法について解説します。「先月の商談で、お客様は納期についてどう言っていたか」「定例会議で値上げの件はどこまで決まったのか」。こうした確認のたびに、議事録を探したり、長い録音を聞き直したりしていないでしょうか。議事録の要約には、後から知りたくなった細かいやりとりが残っていないことも多く、結局は担当者の記憶に頼ることになりがちです。最近は、録音や文字起こしにAIで質問できる仕組みが使えるようになりましたが、管理職としては「AIの答えを本当に信じてよいのか」が気になるところです。この記事では、録音にAIで質問して振り返る仕組み、答えの根拠となった発言と時刻を確かめる方法、言っていないことを答えさせないための設定、複数回の会議を横断して質問するコツ、そして録音の同意や保存の注意点を説明します。
録音にAIで質問すると、答えと一緒に根拠の発言と時刻を確かめられる
会議や商談の録音にAIで質問して、答えの根拠となった発言と時刻を確かめることはできます。そのためには、録音をそのまま置いておくのではなく、次のような形に整えて保存しておくことが前提になります。
- 文字起こしに時刻と話者をつける:録音を文字に起こすときに、発言ごとに「何分何秒ごろ」「誰が話したか」を残す
- 会議の情報をつけて保存する:日付、会議や商談の名前、参加者、お客様名などを、文字起こしと一緒に決まった場所へ保存する
- 質問すると、関係する発言を探してから答える:AIは質問に関係しそうな発言を文字起こしの中から探し出し、その発言だけをもとに答えを組み立てる
- 答えに根拠の発言と時刻を添える:どの会議の、何分ごろの、誰の発言をもとにしたかを、答えの下に並べて示す
3つ目の「関係する部分を探してから答える」仕組みは、RAG(検索拡張生成。手元の資料を検索して、その内容をもとにAIに答えさせる仕組み)と呼ばれる考え方と同じです。社内の資料をもとに答えさせる仕組みは「RAG(検索拡張生成)とは?」の記事でも説明しています。
大切なのは4つ目です。AIの答えだけを見て判断するのではなく、根拠として示された発言と時刻をたどり、必要なら録音のその場面を聞き直して確かめられるようにしておきます。こうしておけば、AIが話を取り違えていても、人がすぐに気づけます。
ポイント
「AIに質問できる」ことより、「答えの出どころをたどれる」ことのほうが業務では大切です。根拠の発言と時刻が示されない答えは、会議の振り返りや、お客様との言った・言わないの確認には使わないようにしましょう。
議事録の要約と、録音への質問は役割が違う
会議の録音をAIで扱う方法としては、議事録の要約がよく知られています。議事録づくりのAI活用は「議事録をAIで効率化するには?」の記事でも説明していますが、要約と、録音に後から質問する使い方は、役に立つ場面が違います。
| 比べる点 | 議事録の要約 | 録音・文字起こしへの質問 |
|---|---|---|
| いつ使うか | 会議が終わった直後 | 何日も、何か月も後になってから |
| 何が残るか | 決まったこと・宿題・要点 | 発言そのもの(言い回し・条件・迷い) |
| 得意な確認 | 何が決まったかを全員で共有する | 誰が、いつ、何と言ったかを確かめる |
| 弱いところ | 要約に入らなかった細かい話は残らない | 質問しないと情報が出てこない |
| 向いている人 | 参加者全員 | 後から判断や確認をする管理職・担当者 |
要約は、短くまとめるために、どうしても話の一部を落とします。たとえば商談で、お客様が「来月なら導入できるが、予算は上の承認しだい」と話していても、要約では「来月導入の方向」とだけ残ることがあります。後から「承認の話は出ていたか」を確かめたくなったとき、要約しか残っていなければ答えは見つかりません。
録音への質問は、こうした要約からこぼれた発言を後から拾い直すための使い方です。両方を組み合わせて、ふだんは要約で全体をつかみ、気になったときに質問で細かい発言まで確かめる、という使い分けがおすすめです。
根拠の発言と時刻を添えさせる回答の型と、確かめ方
AIの答えを確かめやすくするには、答え方の「型」を決めて、AIの仕組みに指示として組み込んでおきます。管理職が振り返りに使うなら、次の4つを必ず出させる形が使いやすいです。
- 答え:質問への答えを、2〜3文で短く言い切る
- 根拠の発言:答えのもとになった発言を、言い換えずにそのまま引用する
- 出どころ:会議や商談の名前、日付、何分何秒ごろ、話した人
- 確からしさの注記:発言がはっきりしない、聞き取りが怪しい、別の発言と食い違うなどの注意点
たとえば「A社との商談で、納期についてお客様は何と言っていたか」と質問すると、答えの下に「10月の第2回商談・32分ごろ・A社の担当者の発言」として、その発言がそのまま引用される形です。引用が言い換えられていると、元の発言と照らし合わせにくくなるため、根拠の発言は必ずそのまま出させるようにします。
確かめるときの手順
答えを受け取ったら、次の順番で確かめます。
- 引用された発言が、質問にきちんと答えているかを読む
- 前後の発言も表示させ、話の流れの中で意味が変わっていないかを見る
- 数字・日付・金額・約束にかかわる答えなら、示された時刻の録音を聞き直す
文字起こしには聞き違いがつきものです。「13日」と「30日」、「千」と「選」のような取り違えは珍しくありません。大事な判断に使う答えほど、最後は録音そのものを聞いて確かめる、という線を引いておくと安心です。時刻が示されていれば、長い録音を頭から聞き直す必要はなく、その前後の数十秒を聞けば済みます。
言っていないことを答えさせないための設定
録音への質問で一番困るのは、AIが会議で誰も言っていないことを、もっともらしく答えてしまうことです。AIが事実と違うことを自然な文章で答えてしまう現象はハルシネーションと呼ばれ、「ハルシネーションとは?」の記事でも説明しています。録音の振り返りでこれが起きると、「お客様はこう約束した」といった誤った前提で仕事が進んでしまうため、仕組みの段階で防ぎます。
言っていないことを答えさせないための設定チェックリスト
- 答えは、文字起こしにある発言だけを根拠にするよう指示している
- 根拠の発言が見つからないときは「記録にはありません」と答えるよう指示している
- 根拠の発言と時刻を示せない答えは、出さないようにしている
- 発言の引用と、AIによるまとめ・推測を分けて表示させている
- 「〜と思われます」のような推測は、推測だとわかる書き方にさせている
- 聞き取りが怪しい部分は、そのことを注記させている
- 一般的な知識や、ほかの資料の内容を混ぜないよう指示している
中でも効果が大きいのは、「記録にはありません」と答えてよいと明確に伝えることです。AIは質問されると何かしら答えようとする性質があるため、答えがない場合の答え方を決めておかないと、近い発言を無理につなぎ合わせて答えを作ってしまうことがあります。
また、質問のしかたにも気をつけます。「お客様は値引きに同意していましたよね?」のように答えを決めつけた聞き方をすると、AIがそれに合わせた答えを返しやすくなります。「値引きについて、お客様は何と言っていましたか」のように、答えを決めつけない聞き方を社内でそろえておくと、答えの偏りを減らせます。
ポイント
設定を入れても、間違いを完全にゼロにはできません。答えに根拠の時刻が添えられ、人がそこをたどって確かめられることが、最後の安全装置になります。
複数回の会議や商談を横断して質問するコツ
録音への質問がいちばん役に立つのは、1回の会議よりも、何回分もの会議や商談をまたいで確かめたいときです。たとえば、次のような質問ができるようになります。
- 「この3か月の定例会議で、採用の話はどう変わってきたか」
- 「A社との商談で、お客様が気にしていた点を回ごとに並べて」
- 「新しい料金表について、営業の各メンバーはお客様にどう説明しているか」
- 「前回の会議で後回しにした議題は、その後どこかで話し合われたか」
こうした横断の質問をうまく行うには、保存のしかたをそろえておくことが欠かせません。
会議の情報を必ずつけて保存する
日付、会議や商談の名前、参加者、お客様名、案件名などを、文字起こしと一緒に決まった形で保存します。これがそろっていれば、「A社の商談だけ」「先月以降の定例会議だけ」のように範囲を絞って質問でき、関係のない会議の発言が混ざるのを防げます。
発言は日付の順に並べさせる
話は会議を重ねるうちに変わっていきます。最初の商談では「来月導入」と言っていたお客様が、3回目には「来期に延期」と言っているかもしれません。横断の質問では、根拠の発言を日付の順に並べさせ、古い発言と新しい発言が食い違っている場合はそのことを注記させるようにします。こうすると、最新の状況を取り違えずにすみ、話がどう変わったかの経緯も一度に確かめられます。
見てよい人の範囲を決める
何回分もの録音をまとめて質問できるということは、それだけ多くの情報に一度に触れられるということでもあります。役員会議や人事の面談など、見てよい人が限られる録音は、質問できる人の範囲を分けて保存しておきましょう。
始める手順と、録音の同意・保存で気をつけること
録音にAIで質問する仕組みは、次の順番で始めるとスムーズです。
- 対象を決める:毎週の定例会議や、同じお客様と何度も行う商談など、後から振り返る機会が多いものから始める
- 録音と保存のルールを決める:録音の方法、文字起こしにつける情報(日付・会議名・参加者)、保存場所、保存期間を決める
- 回答の型を決める:答え・根拠の発言・出どころ・注記の4つを必ず出す形にし、「記録にはありません」と答えるルールを入れる
- 試して確かめる:実際の質問を何問か試し、示された時刻の録音を聞き直して、答えが正しいかを確かめる
- 使う人と範囲を広げる:うまく使えることを確かめてから、ほかの会議や部署に広げる
録音の同意をとる
会議や商談を録音するときは、参加者に録音することと、その目的を伝えて了承をもらいましょう。特にお客様や取引先との商談では、「振り返りと社内共有のために録音します」と最初に伝えることが大切です。録音やAIでの処理について、取引先との契約や社内の規程で決まりがある場合もありますので、あらかじめ確認してください。
保存と消去のルールを決める
録音や文字起こしには、お客様の名前や連絡先、社員の評価にかかわる話など、個人情報や機密が含まれることがあります。どのAIの仕組みにデータを渡すのか、どこに保存し、誰が見られ、いつ消すのかを社内ルールとして決めておきましょう。個人情報の扱いは法令にかかわるため、扱い方に迷う場合は専門家や公式の情報で最新の内容を確認してください。人事の面談など、録音に向かない会議は対象から外す判断も必要です。
当社のAI社員は、今お使いの会議ツールや保存場所に合わせて、録音の文字起こしから、根拠の発言と時刻つきで答える質問の仕組み、見てよい人の範囲の設定までを一続きでつくることができます。料金は初期費用+月5万円で、運用後の調整や相談にも回数の制限なく対応していますので、「まずは定例会議1つで試したい」という段階からお気軽にご相談ください。
よくある質問
録音内容についてAIに質問して、根拠となる発言を確認できますか?
できます。録音を時刻と話者つきで文字起こしして保存し、AIに「根拠の発言をそのまま引用し、日付と時刻を添えて答える」よう設定しておけば、答えの出どころをたどって録音を聞き直し、確かめられます。
AIが会議で言っていないことを答えてしまうことはありませんか?
起きる場合があります。文字起こしにある発言だけを根拠にする、根拠が見つからなければ「記録にはありません」と答えさせる、根拠の時刻を示せない答えは出さない、といった設定で減らし、大事な答えは人が録音を聞いて確かめるのが安全です。
過去の複数の会議や商談をまとめて質問できますか?
できます。日付・会議名・参加者・お客様名などの情報をつけて保存しておけば、範囲を絞って横断で質問でき、根拠の発言を日付順に並べて話の変化も確かめられます。
商談を録音してAIで扱うとき、お客様の同意は必要ですか?
録音することと目的を伝えて、了承をもらってから録音することをおすすめします。取引先との契約や社内規程に決まりがある場合もあるため、事前に確認し、保存場所や消去の時期も社内ルールとして決めておきましょう。