費用・比較・選び方公開日

RPAとAIはどう使い分ける?——向いている業務の比較表と、RPAで止まる作業をAIで補う組み合わせ方・選ぶ手順

結論

RPAとAIは、手順が完全に決まっていて変わらない作業はRPA、書式がばらばら・判断が要る・例外が多い作業はAIに任せる、という基準で使い分けます。実際の業務はこの2つが混ざっていることが多いため、「読み取る・判断する」部分をAIが、「決まった画面に入力する・くり返す」部分をRPAが担う組み合わせにすると、RPAが止まって人が手直ししていた作業まで任せられるようになります。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、RPAとAI(AIエージェント)の使い分けと組み合わせ方、費用の考え方と選ぶ手順について解説します。「RPAを入れたが、取引先の書式が変わるたびに止まって結局手で直している」「検討はしたが、うちの業務は例外が多くて合わないと見送った」という声を、経営者の方からよく聞きます。最近はAIエージェントという言葉も広まり、RPAとAIのどちらに投資すべきか迷う方も多いと思います。この記事では、定義の説明は最小限にして、どんな業務にどちらが向いているかの比較表、RPAで止まりやすい場面をAIで補う具体例、費用の考え方、選ぶときの手順を、AI社員を提供している当社の立場から説明します。

使い分けの基準は「手順が変わらないか」と「判断が要るか」の2つ

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:パソコン上の決まった操作を記録して、そのとおりにくり返させる仕組み)とAIは、どちらも「人の作業を代わりにやる」点では同じですが、得意なことがはっきり違います。

  • RPA:人が決めた手順を、同じ順番・同じ画面で正確にくり返すのが得意です。手順が変わらない限り、ミスなく速く動きます
  • AI:文章や書類の中身を読み取り、意味を理解して、どう扱うかを判断するのが得意です。書式や言い回しが毎回違っても対応できます

そのため、使い分けは次の2つの問いで考えると迷いにくくなります。

  1. 手順や画面は、毎回同じか:同じならRPAで足りる可能性が高い
  2. 途中で「読んで判断する」場面があるか:あるならAIが必要

実際の業務では、「メールで届いた注文書を読み取り(判断が要る)、販売管理の画面に入力する(手順は同じ)」のように、2つが1つの業務の中に混ざっていることがほとんどです。ですから「RPAかAIか」の二択で考えるよりも、業務を工程に分けて、工程ごとにどちらが向いているかを決めるほうが、失敗しにくくなります。

ポイント

AIエージェント(目的を与えると、情報を集め、判断し、ツールを操作しながら作業を進めるAIの仕組み)は、AIの判断力とRPAのような操作を1つにまとめたものと考えると理解しやすくなります。すでにRPAがある会社では、RPAを残したまま判断の部分だけAIに任せる形もとれます。

向いている業務の比較表:RPA・AI・組み合わせのどれを選ぶか

中小企業でよくある事務作業を例に、RPAとAIのどちらが向いているかを整理しました。

業務の例作業の特徴向いている方法
毎朝、決まったシステムから売上データを出力して共有フォルダに保存する手順も画面も毎回同じRPA
表計算ソフトのデータを、別のシステムの同じ欄に転記する元データの形が決まっているRPA
取引先ごとに書式の違う受注書(FAX・PDF)を読み取り、販売管理に入力する書式がばらばら。入力の手順は同じ組み合わせ(読み取りはAI、入力はRPAまたはAI)
問い合わせメールの内容を読み、種類ごとに担当者へ振り分ける文面が毎回違い、判断が要るAI
問い合わせへの返信の下書きを作り、担当者が確認して送る文章を作る必要があるAI
請求書と入金の明細を突き合わせ、名義のゆれや合算入金を見つける例外が多く、照合に判断が要る組み合わせ(照合の候補づけはAI、確定は人)
日報を集めて要約し、気になる点を管理職に知らせる書き方が人ごとに違うAI

表からわかるように、RPAだけで完結するのは「入力元のデータの形が決まっている」作業です。反対に、入力元が紙やPDF、メールの文章のように形が決まっていない作業では、読み取りと判断の部分にAIが必要になります。

また、「組み合わせ」と書いた業務では、AIが読み取った結果をRPAが既存のシステムに入力する、という役割分担が考えられます。すでにRPAで入力の仕組みを作っている会社なら、その資産を活かせるのが利点です。一方、これから仕組みを作る場合は、入力の操作までAIエージェントにまとめて任せたほうが、管理するものが1つで済む場合もあります。

RPAで止まりやすい3つの場面と、AIで補う例

RPAを入れた会社で「思ったほど楽にならなかった」となる原因は、多くの場合、次の3つの場面に集約されます。どれも、RPAが悪いというより、RPAに向かない工程まで任せようとしたことが原因です。

1. 書式がばらばら:取引先ごとに受注書の形が違う

RPAは「この位置にある数字を、この欄に入れる」という決まりで動くため、取引先ごとに受注書の書式が違うと、取引先の数だけ設定が必要になります。新しい取引先が増えたり、取引先が書式を変えたりするたびに止まり、担当者が手で直すことになります。

AIで補う例:AIが書類の中身を読み、書式にかかわらず「取引先名・品番・数量・納期」を取り出して、決まった形の表にそろえます。そろえた後の入力はRPAに任せてもかまいません。書式ごとの設定を作り直す手間が減り、読み取りに自信がない項目だけを担当者に確認してもらう形にできます。

2. 判断が要る:内容を読んで振り分ける必要がある

「見積の依頼なら営業へ、クレームなら責任者へ、日程変更なら事務へ」のように、文章を読んで判断する作業は、RPAだけでは扱えません。件名に決まった言葉が入っている場合だけ振り分ける、といった設定では、書き方の違うメールがこぼれてしまいます。

AIで補う例:AIがメールの本文を読んで種類を判断し、担当者への通知と、返信の下書きまでを用意します。判断に迷うものは「要確認」として人に回すように決めておけば、こぼれを防げます。

3. 例外が多い:いつもと違うケースで止まる

数量の書き間違い、品番の旧表記、備考欄に書かれた特別な指示など、例外が多い業務では、RPAは想定外の入力で止まるか、間違ったまま入力してしまうおそれがあります。

AIで補う例:AIが過去のデータや品番の一覧と照らし合わせて、「いつもと違う」ものに印を付けて人に知らせます。例外をゼロにするのではなく、例外だけを人が見ればよい状態にするのが、組み合わせの考え方です。

RPAを入れた会社・見送った会社がAIを組み合わせるとできること

RPAをすでに入れている会社の場合

RPAが順調に動いている作業は、そのまま使い続けるのが合理的です。AIを組み合わせる価値があるのは、次のような作業です。

  • RPAが止まるたびに、担当者が手で直している作業
  • RPAに渡す前に、人が書類を読んで表に打ち直している作業
  • RPAの設定が複雑になりすぎて、作った人しか直せなくなっている作業

たとえば、人が受注書を読んで表に打ち直し、その表をRPAが販売管理に入力している場合、打ち直しの部分をAIに任せれば、RPAはそのまま活かしながら人の作業を減らせます。当社が支援した製造業(従業員30名規模)の事務担当の例では、受注書の入力に1日2時間かかっていた作業が、AI社員の導入後は15分になりました。

RPAを検討して見送った会社の場合

「うちは取引先ごとに書類の形が違う」「例外が多くて手順を決めきれない」という理由で見送った会社は、まさにAIが得意な領域で業務が止まっていた可能性があります。RPAで決めきれなかった部分は、AIなら「読んで判断する」ことで対応できる場合があります。

ただし、AIにも向かない作業はあります。担当者ごとにやり方がばらばらで、正解が決まっていない業務は、AIを入れる前に、まず社内で「どう処理するのが正しいか」を決める必要があります。AIは判断を手伝えますが、会社としての判断基準そのものは人が決めるものだからです。

ポイント

AIは間違えることがあるため、送信・確定・支払いのように影響の大きい操作の前には、人が確認する工程を残します。RPAのように「設定どおり100%同じ動きをする」ものではないと理解した上で、確認の工程を組み込むのが安全です。

費用の考え方:導入費だけでなく「止まったときの手直し」と「保守」で比べる

RPAとAIの費用を比べるとき、導入時の金額だけで判断すると、使い始めてから差が出ます。比べるときは、次の3つの費用をそろえて考えます。

  1. 導入時の費用:仕組みを作る費用、ツールの初期設定、社内の担当者が手順を説明する時間
  2. 動かし続ける費用:ツールの月額料金、AIの利用料(使った分だけかかる従量課金が一般的です)
  3. 止まったとき・変わったときの費用:書式の変更や社内システムの更新で止まったときに、誰が、どのくらいの手間と費用で直すか

見落とされやすいのは3つ目です。RPAは、書式や画面が変わらない作業では動かし続ける費用が小さく済みます。一方で、変化の多い作業に使うと、止まるたびに設定の直しが発生し、その手間や外部への依頼費用が積み重なります。AIは利用料がかかりますが、書式の変化に合わせて設定を作り直す手間は小さくなります。どちらが安いかは、その業務がどのくらいの頻度で変わるかによって決まります。

費用を比べる前に確認したいこと

  • その作業は、月に何件・何時間かかっているか
  • 取引先の書式や社内のシステムは、年に何回くらい変わるか
  • 今のRPAが止まったとき、誰が直しているか(社内か外部か)
  • 止まった間に、担当者が手で処理している時間はどのくらいか
  • AIの利用料は、件数に応じてどのくらい増えるか
  • 導入後の修正や相談は、月額に含まれるか、作業ごとに費用がかかるか

当社のAI社員の場合、料金は初期費用+月5万円で、月額には保守・相談・メンテナンスが無制限で含まれます(契約12か月・税別、AIの利用料は実費)。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。書式の変更や業務の変化に合わせた調整を月額の範囲で行えるため、「止まったときの費用」の見通しを立てやすいのが特徴です。

RPAとAIを選ぶ手順:業務を工程に分けて決める5ステップ

RPAとAIのどちらを、どう組み合わせるかは、次の手順で決めると失敗しにくくなります。

  1. 対象の業務を1つ選ぶ:毎日・毎週くり返していて、時間がかかっている業務を1つに絞ります。最初から複数の業務を対象にすると、どこが効いたのかがわからなくなります
  2. 業務を工程に分けて書き出す:「受け取る→読む→判断する→入力する→確認する→送る」のように、作業を順番に書き出します
  3. 工程ごとに向いている方法を決める:手順が変わらない工程はRPA(または既存の仕組み)、読む・判断する工程はAI、最終確認は人、と割り振ります
  4. 止まりやすい場面と、人が見る範囲を決める:書式の違い、判断が要るケース、例外を洗い出し、AIが自信のないものを人に回すルールを決めます
  5. 小さく試して、数字で比べる:導入前の作業時間や手直しの件数を記録しておき、試した後と比べてから、広げるかどうかを判断します

この手順で整理すると、「RPAで十分な業務」「AIが必要な業務」「両方を組み合わせる業務」が自然に分かれます。すでにRPAがある会社は、工程の割り振りの段階で「RPAを残す工程」を決めれば、これまでの投資を無駄にせずに済みます。

当社には約90社からご相談をいただいており、「RPAが書式の変更で止まる」「例外が多くてRPAを見送った」といったご相談も少なくありません。RPAとAIのどちらが合うか、今の仕組みを活かしてどこまで任せられるかを一緒に整理したい場合は、お気軽に当社のAI社員までご相談ください。業務の流れを伺ったうえで、工程ごとの向き・不向きからご提案します。

よくある質問

AIエージェントとRPAの違いは何ですか?

RPAは人が決めた手順をそのとおりにくり返す仕組みで、AIエージェントは書類や文章を読んで判断しながら作業を進める仕組みです。手順が変わらない作業はRPA、書式がばらばらだったり判断が要ったりする作業はAIエージェントが向いています。

RPAを入れているのですが、AIに置き換えるべきですか?

順調に動いているRPAは、無理に置き換える必要はありません。RPAが止まるたびに人が手で直している作業や、RPAに渡す前に人が書類を読んで打ち直している作業だけをAIで補うのがおすすめです。

RPAとAIは組み合わせて使えますか?

組み合わせて使えます。書類の読み取りや内容の判断をAIが担い、決まった画面への入力やくり返しの操作をRPAが担う形が代表的です。

RPAとAIでは、どちらが費用を抑えられますか?

業務がどのくらいの頻度で変わるかによります。手順や書式が変わらない作業はRPAのほうが抑えやすく、変化や例外が多い作業は、止まったときの手直しの手間まで含めるとAIのほうが抑えられる場合があります。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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