業務自動化ツールにはどんな種類がある?——RPA・ノーコード連携・マクロ・AI業務効率化ツールの比較表と、業務の性質から選ぶ手順
結論
業務自動化ツールは、表計算のマクロ、RPA、ノーコードの自動化(連携)ツール、既製のAIツール、業務に合わせたAIの5種類に分けられ、「決まった手順だけで終わる作業か、読み取りや判断を含む作業か」で選ぶべき種類が変わります。手順が決まっていて例外が少ない作業はマクロ・RPA・連携ツールで、文章や書類を読む・分ける・下書きする作業はAIのツールで自動化するのが基本です。製品名から選ぶのではなく、先に業務の性質を4つの質問で整理してから種類を決めると、導入後に「思っていた作業ができない」という失敗を避けられます。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、業務自動化ツール(表計算のマクロ・RPA・ノーコードの自動化ツール・既製のAIツール・業務に合わせたAI)の種類の違いと、業務の性質から選ぶ手順について解説します。「業務自動化ツールを入れたい」と社内で話が出て調べ始めると、RPA、ノーコード、マクロ、生成AI、AI業務効率化ツールなど、似たような言葉がたくさん出てきます。どれも「作業を自動にする」とうたっているため、何が違うのか、自社にはどれが合うのかがわかりにくい、という管理職の方は多いのではないでしょうか。製品の比較記事を読んでも、そもそも種類が違うものが並んでいて、判断の決め手が見つからないこともあります。この記事では、業務自動化ツールを5つの種類に分けた全体の地図を示し、それぞれの得意・不得意を比較表で整理したうえで、業務の性質(決まった手順か、読み取りや判断を含むか、量、例外の多さ)から種類を選ぶ手順を説明します。RPAとAIの使い分けだけをくわしく知りたい方や、生成AIのサービス選びに絞って知りたい方向けの記事は別にありますので、ここでは「どんな種類があり、どれから検討すればよいか」をつかむことに絞ってお伝えします。
業務自動化ツールは大きく5種類——「手順をくり返す道具」と「読んで判断する道具」に分かれる
業務自動化ツールとは、人がパソコンで行っている作業の一部または全部を、ソフトに代わりにやらせるための道具の総称です。名前はさまざまですが、中小企業でよく検討されるものは、次の5種類に整理できます。
| 種類 | ひとことで言うと | よく知られた例 |
|---|---|---|
| ① 表計算のマクロ | ExcelやGoogleスプレッドシートの中の作業を、決めた手順どおりに自動でくり返す仕組み | ExcelのVBA(ブイビーエー、Excelに付いているプログラムの書き方)、Googleスプレッドシートのスクリプト |
| ② RPA | RPA(アールピーエー、Robotic Process Automation)は、人がパソコンで行うクリックや入力の操作を記録し、そのとおりにくり返すソフト | パソコン操作を記録して再生するタイプの製品 |
| ③ ノーコードの自動化(連携)ツール | ノーコード(プログラムを書かずに、画面で部品を組み合わせて作ること)で、クラウドのサービス同士をつなぎ、「Aが起きたらBをする」を自動にする道具 | ZapierやMicrosoftのPower Automateなど |
| ④ 既製のAIツール | すでに出来上がっていて、契約すればすぐ使えるAIのサービス。文章作成・文字起こし・書類の読み取りなど、用途ごとに作られている | チャット型の生成AI、AI-OCR(書類の文字を読み取るAI)、議事録作成サービスなど |
| ⑤ 業務に合わせたAI | 自社の業務の流れ・書類・ルールに合わせて、AIの読み取りや判断と、ほかのシステムへの入力をつないで作る仕組み | 開発会社や当社のようなサービス会社が、会社ごとに組み立てるもの |
この5種類は、大きく2つのグループに分かれます。①〜③は「決められた手順をくり返す道具」で、人が手順を細かく決めれば、そのとおりに速く正確に動きます。④と⑤は「文章や書類を読んで、分けたり下書きしたりする道具」で、形がそろっていない情報を扱えるのが強みです。
「業務自動化ツール」で調べると①〜③の製品が、「AI 業務効率化ツール」で調べると④の製品が多く出てきます。どちらも自動化の道具ですが、得意な作業がまったく違うため、同じ表の中で価格や機能を比べても判断がつきません。まず種類の違いをつかむことが、選び方の第一歩です。
5種類の比較表:得意な作業・苦手な作業・作る人・止まりやすい場面
5種類の違いを、管理職の方が判断に使いやすい観点で比べると、次のようになります。
| 種類 | 得意な作業 | 苦手な作業 | 作る・直す人 | 止まりやすい場面 |
|---|---|---|---|---|
| ① 表計算のマクロ | 表の集計、並べ替え、決まった形の帳票づくり | 表計算の外のシステムの操作、形がそろわないデータ | 社内で表計算にくわしい人 | 作った人が異動・退職し、中身がわからなくなったとき |
| ② RPA | 画面の決まった場所への入力、システム間の転記、定時のダウンロード | 画面の変更、毎回形が違う書類の読み取り、判断 | 社内の担当者か導入支援の会社 | システムの画面や項目の並びが変わったとき |
| ③ ノーコードの自動化(連携)ツール | クラウドのサービス同士の連携(フォームの回答を表に追加し、チャットに通知する、など) | 連携の窓口がない社内システム、読み取りや判断 | 社内の担当者(画面で組める) | 連携先のサービスの仕様が変わったとき、使える回数の上限に達したとき |
| ④ 既製のAIツール | 文章の下書き、要約、文字起こし、決まった種類の書類の読み取り | 自社独自の流れに合わせること、ほかのシステムへの自動入力 | 提供会社(利用者は設定と使い方を覚える) | 自社の業務の流れとツールの機能が合わず、手作業が残ったとき |
| ⑤ 業務に合わせたAI | 形の違う書類やメールを読んで分け、項目を取り出して、決まった先へ入力・通知するところまでの一続きの作業 | 人の判断が毎回大きく変わる仕事、正解の手本がない仕事 | 開発会社やサービス会社(社内は確認と相談) | 業務の流れが変わったのに、仕組みの見直しを頼む先がないとき |
この表からわかるのは、どの種類にも「止まりやすい場面」があるということです。手順をくり返す道具は、手順の前提(画面や表の形)が変わると止まります。AIの道具は、自社の業務の流れとの「つなぎ目」に手作業が残りがちです。費用や機能だけでなく、止まったときに誰が直すかまで考えて選ぶことが大切です。
「AIエージェント」はどこに入るのか
最近よく聞くAIエージェント(目的を渡すと、手順を自分で考えながら作業を進めるAI)は、④の既製のツールとして提供されるものもあれば、⑤のように業務に合わせて組み込まれるものもあります。新しい名前が出てきても、「手順をくり返す道具か、読んで判断する道具か」「既製か、業務に合わせて作るか」の2つの軸で置き場所を考えると、整理しやすくなります。
選ぶ前に、業務の性質を4つの質問で整理する
ツールの種類を決める前に、自動化したい業務を次の4つの質問で整理します。答えを書き出すだけで、候補になる種類が自然にしぼれます。
- 決まった手順か:誰がやっても同じ順番・同じ操作で終わる作業か。それとも、担当者によってやり方が違う作業か
- 読み取りや判断を含むか:メールの文章、PDFやFAXの書類、手書きのメモなど、形がそろっていない情報を読んで、中身に応じて分けたり書き換えたりする作業が入っているか
- 量はどのくらいか:1日・1か月に何件あり、1件あたり何分かかっているか。担当者の時間がどれだけ取られているか
- 例外はどのくらいあるか:いつもの形に当てはまらない件(記入漏れ、特別な取引先、イレギュラーな依頼など)が、全体のどのくらいを占めるか
業務の性質を整理するチェックリスト
- 作業の手順を、新人に渡せるくらい書き出せる
- 扱う情報が、決まった表やシステムの画面だけで完結している
- メールや書類の文章を読んで、中身で振り分ける作業がある
- 1件ごとに文章を考えて書く作業(返信・報告・説明)がある
- 件数が多く、毎日または毎週くり返している
- 例外の件が多く、そのたびに担当者が判断している
- 使っているシステムが、ほかのサービスとつなげる窓口(API、ソフト同士がデータをやり取りする窓口)を持っているか知っている
上の2つに当てはまり、下の4つに当てはまらない業務は、①〜③の「手順をくり返す道具」が向いています。3つ目・4つ目に当てはまる業務は、④か⑤のAIの道具を検討します。件数が多く例外も多い業務は、手順をくり返す道具だけでは例外のたびに止まってしまうため、AIと組み合わせる設計が必要になります。
ポイント
同じ「請求書の処理」でも、自社の表から決まった形の請求書を作る作業は手順をくり返す作業ですが、取引先から形の違う請求書が届き、中身を読んで入力する作業は読み取りを含む作業です。業務の名前ではなく、作業を1つずつ分けて性質を見ることが大切です。
業務の性質からツールの種類を選ぶ手順と早見表
4つの質問の答えをもとに、次の手順で種類を選びます。
- 業務を作業に分ける:「受注処理」のような大きなくくりではなく、「メールを開く」「注文書を読む」「販売管理に入力する」「確認の返信を送る」のように、作業を1つずつ書き出す
- 作業ごとに4つの質問に答える:決まった手順か、読み取り・判断を含むか、量、例外の多さを、作業ごとに記入する
- 下の早見表で種類を当てはめる:作業ごとに向く種類を決める。1つの業務の中で、種類が混ざってもかまわない
- すでにある道具で足りるか確かめる:社内のExcel、契約中のクラウドサービスに付いている自動化の機能、契約中の既製のAIツールで済む作業は、まずそれを使う
- 残った作業をどうするか決める:つなぎ目に手作業が残る、例外が多くて止まる、といった作業は、業務に合わせたAIで一続きにするか、人の作業として残すかを決める
業務の性質から見る早見表
| 業務の性質 | 向く種類 | 例 |
|---|---|---|
| 手順が決まっていて、表計算の中で完結する | ① 表計算のマクロ | 月次の売上の集計表づくり、決まった形の帳票の作成 |
| 手順が決まっていて、複数のシステムの画面をまたぐ | ② RPA | 基幹システムからデータを書き出し、別のシステムに入力する |
| 手順が決まっていて、クラウドのサービス同士をつなぐ | ③ ノーコードの自動化ツール | 問い合わせフォームの回答を表に追加し、チャットに通知する |
| 読み取りや文章作成が中心で、件数が少なめ・人が毎回使う | ④ 既製のAIツール | 会議の文字起こしと要約、提案書の下書き |
| 読み取りや判断を含み、件数が多く、ほかのシステムへの入力までつなげたい | ⑤ 業務に合わせたAI | 形の違う注文書を読んで販売管理に入力し、読めない件だけ担当者に回す |
| 例外が多く、毎回の判断が重い | 人が判断し、AIは下書き・整理を担う | クレームの対応方針、価格の個別交渉 |
早見表は目安です。実際には、注文書を読む部分はAI、販売管理への入力はRPA、通知は連携ツール、のように種類を組み合わせることが少なくありません。RPAとAIをどう組み合わせるかは「RPAとAIはどう使い分ける?」の記事でくわしく説明しています。
AI業務効率化ツールを選ぶときは「既製で足りるか」「業務に合わせるか」を分けて考える
読み取りや文章作成を含む業務では、④既製のAIツールと⑤業務に合わせたAIのどちらにするかで迷うことが多くなります。違いは、AIの賢さよりも「自社の業務の流れのどこまでを任せられるか」にあります。
| 比べる点 | ④ 既製のAIツール | ⑤ 業務に合わせたAI |
|---|---|---|
| 使い始めるまで | 契約すればすぐ使える | 業務を聞き取り、組み立てる期間が必要 |
| 任せられる範囲 | ツールが用意した機能の範囲(読む・書く・まとめる) | 受け取り→読み取り→判断の候補→入力→通知まで一続きにできる |
| 人の作業 | ツールを開いて指示を出し、結果を別のシステムに写す作業が残りやすい | 例外の確認と最終の承認が中心になる |
| 自社のルールへの合わせ方 | 設定や指示文の工夫で合わせる | 社内の書類・ルール・言い回しを前提に作る |
| 向いている会社 | 使う人が自分で工夫でき、件数がまだ少ない | 件数が多い、担当者が忙しくツールを開く時間もない、例外の扱いを決めたい |
既製のAIツールは、社員一人ひとりの作業を速くする道具として優れています。一方で、「ツールに貼り付けて、結果をコピーして、別のシステムに入力する」という作業が残ると、担当者の手は思ったほど空きません。担当者がツールを開かなくても、仕事が流れてくる形にしたい場合は、業務に合わせたAIを検討する段階です。
どの種類でも確かめたい3つのこと
- 止まったときに誰が直すか:作った人しかわからない状態にしない。社内の担当者か、相談できる外部の窓口を決めておく
- 社内の情報をどう扱うか:AIのツールに顧客情報や社外秘の情報を入れる場合は、入力内容が学習に使われない設定や契約になっているかを確かめる
- 例外をどこで人に戻すか:自動で処理できなかった件が、黙って抜け落ちず、担当者に届く流れになっているかを確かめる
特定の製品の機能や料金は変わることが多いため、検討の時点で各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。生成AIのサービス自体の選び方は「仕事に使うAIのおすすめは?」、開発会社・既製ツール・業務に合わせたAIの費用や期間の比べ方は「システム開発会社・既製のAIツール・業務に合わせたAIの違いと選び方」の記事でも紹介しています。
まずは1つの業務で試し、種類を組み合わせて広げていく
業務自動化ツールは、一度にすべての業務へ入れるより、1つの業務で効果を確かめてから広げるほうがうまくいきます。管理職の方が進めるときの流れは、次のとおりです。
- 候補の業務を3つほど挙げる:担当者の時間を多く取っている、件数が多い、ミスが起きやすい業務を選ぶ
- 4つの質問で性質を整理する:3章のチェックリストを使い、作業ごとに向く種類を当てはめる
- すでにある道具で試す:マクロ・連携ツール・既製のAIツールで済む作業は、まず小さく試す
- つなぎ目と例外の多い作業を見極める:試してみて手作業が残る部分、例外で止まる部分を洗い出す
- 残った部分の作り方を決める:社内で作り続けられるか、外部に任せるかを、保守まで含めて判断する
当社自身も、社内の業務にAIを組み込み、月 約480時間の作業を減らしてきました。その経験からお伝えできるのは、効果が大きいのは「読む・分ける・写す・知らせる」がつながっている業務だということです。たとえば、製造業(従業員30名規模)の事務担当の方の受注書入力は、AIが注文書を読み取って入力する仕組みにしたことで、1日2時間から15分になりました。
当社の「月5万円のAI社員」は、⑤の業務に合わせたAIを、お客様の業務の流れ・書類・お使いのシステムに合わせて組み立て、その後の保守まで行うサービスです。手順をくり返す作業は既存のマクロや連携ツールを生かし、読み取りや判断を含む部分をAIで補う、という組み合わせの設計もご提案します。料金は初期費用+月5万円(保守・相談・メンテナンス無制限、契約12か月、税別、AI利用料は実費)で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。最短2週間で稼働できます。「業務自動化ツールを調べたけれど、どの種類が自社に合うかわからない」という段階でも、業務を作業に分けて性質を整理するところから一緒に進めますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
業務自動化ツールにはどんな種類がありますか?
主に、表計算のマクロ、RPA、ノーコードの自動化(連携)ツール、既製のAIツール、業務に合わせたAIの5種類があります。前の3つは決まった手順をくり返す道具、後の2つは文章や書類を読んで分けたり下書きしたりする道具です。
業務自動化ツールはどう選べばよいですか?
製品名から選ぶのではなく、自動化したい業務を作業に分け、決まった手順か、読み取りや判断を含むか、量、例外の多さの4つを整理してから種類を決めます。手順が決まっていて例外が少なければマクロ・RPA・連携ツール、読み取りや文章作成を含むならAIのツールが向いています。
AI業務効率化ツールとRPAの違いは何ですか?
RPAは決められたパソコン操作をそのとおりにくり返す道具で、画面や手順が変わると止まります。AI業務効率化ツールは、メールや書類など形のそろわない情報を読んで、分けたり下書きしたりできるのが違いです。
既製のAIツールではなく、業務に合わせたAIを選ぶのはどんなときですか?
件数が多く、AIの結果を別のシステムに写す手作業が残っている場合や、例外の扱いを自社のルールで決めたい場合です。担当者がツールを開かなくても、読み取りから入力・通知までが流れる形にしたいときに向いています。