営業の提案書・企画書をAIで作るには?——ヒアリングメモから構成と下書きを作り、価格や約束は人が確かめる手順
結論
営業の提案書・企画書は、商談のヒアリングメモや録音の文字起こし、過去の提案書、サービス資料をAIに渡すことで、構成案と本文の下書きまでをAIに作らせることができます。ただし、価格・納期・保証・導入効果の約束はお客様との契約に関わるため、AIに決めさせず、必ず人が決めて確かめます。「AIが7割の下書きを作り、人が中身の正しさと約束の部分を仕上げる」という分担にすると、提案書づくりの時間を減らしながら品質を保てます。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、営業の提案書・企画書をAIで作る方法と、AIに渡す材料、作成の手順、AIに任せる部分と人が決める部分、過去の提案書を型として使い回す方法、注意点について解説します。「商談のあと、提案書を作るのに丸一日かかってしまう」「提案書を書けるのが結局、社長と一部のベテランだけ」。中小企業の経営者の方から、こうした悩みをよく伺います。提案書は受注を左右する大事な資料なのに、作るたびにゼロから考え、過去の資料を探し回り、気づけば次の商談の準備が後回しになっている。そんな状態の会社は少なくありません。この記事では、営業の提案書・企画書をAIで作るときに、何を材料として渡せばよいのか、どんな手順で進めるのか、どこまでAIに任せてどこから人が決めるべきかを、当社の立場から具体的に説明します。見積書の下書きや、企業ごとの営業メールをAIで作る方法は別の記事にまとめていますので、ここでは「商談の内容をもとに提案書・企画書を組み立てる」ことに絞ってお伝えします。
提案書づくりに時間がかかるのは「毎回ゼロから・過去資料が探せない・社長しか書けない」から
提案書・企画書の作成に時間がかかる理由は、文章を書く速さの問題だけではありません。多くの会社で、次の3つが重なっています。
1. 毎回ゼロから考えている
お客様ごとに課題が違うため、「前と同じでよい」とはいかず、白紙のスライドや文書から構成を考え始めてしまいます。実際には、提案書の骨組み(お客様の現状、課題、解決策、進め方、費用、体制)はほとんどの案件で共通しているのに、それが型として残っていないため、毎回同じ考え事を繰り返しています。
2. 過去の提案書が探せない
過去に似た業種・似た課題のお客様に出した提案書があっても、担当者のパソコンやメールの添付ファイルに散らばっていて、すぐに見つかりません。探す時間がかかるうえ、見つけても「どれが最新の版か」がわからないこともあります。
3. 社長やベテランしか書けない
お客様の課題をどう言葉にし、自社のサービスのどこを強調するかという判断は、経験のある人の頭の中にあります。そのため提案書の作成が一部の人に集中し、その人が忙しいと提案が遅れ、若手はいつまでも書けるようになりません。
ポイント
AIが特に力を発揮するのは、「骨組みを毎回考える」「過去の資料から使える部分を探す」「ヒアリングの内容を文章に起こす」という部分です。逆に、何をいくらで約束するかという判断は、今までどおり人が担います。
AIに渡す材料は5つ——ヒアリングメモ・文字起こし・過去の提案書・サービス資料・価格表
AIが作る提案書の質は、渡した材料の質でほぼ決まります。何も渡さずに「〇〇業向けの提案書を作って」と頼むと、どの会社にも当てはまる一般論の文章になってしまいます。お客様に響く提案書にするには、次の5つの材料をそろえます。
| 材料 | 中身の例 | 提案書のどこに効くか |
|---|---|---|
| ヒアリングメモ | お客様の現状、困っていること、予算感、決める人、希望の時期 | 現状と課題、進め方のスケジュール |
| 商談録音の文字起こし | お客様が実際に使った言葉、気にしていた点、質問 | お客様の言葉を使った課題の書き方、よくある不安への回答 |
| 過去の提案書 | 似た業種・似た課題の案件で出した提案書 | 構成の型、説得力のある説明の言い回し |
| サービス資料 | 自社サービスの内容、できること・できないこと、導入の流れ | 解決策と導入の流れ(事実の根拠になる) |
| 価格表・料金の考え方 | 標準の料金、オプション、値引きの社内ルール | 費用の章の下書き(最終金額は人が決める) |
なかでも大切なのは、お客様の言葉そのものが残っているヒアリングメモや文字起こしです。「受注の入力が毎日夕方までかかる」「担当者が辞めたら回らない」といったお客様自身の言葉を課題の章に使うと、「うちのことをわかってくれている」と感じてもらいやすくなります。
また、サービス資料はAIが内容を勝手に膨らませないための「事実の土台」になります。自社ができないことまで書いてしまう失敗を防ぐため、「できないこと」もはっきり書いた資料を渡しておくと安心です。
AIで提案書を作る手順——構成案から下書き、人の確認までの7ステップ
提案書をAIで作るときは、いきなり完成品を頼むのではなく、段階を分けて進めるとうまくいきます。次の7つの手順がおすすめです。
- 商談の材料を集める:ヒアリングメモと録音の文字起こしを1つにまとめます。メモが箇条書きでも構いません
- お客様の課題を整理させる:AIに「この商談でお客様が困っていることを、重要な順に3〜5個、お客様の言葉を引用しながら整理してください」と頼みます。人が読み、ずれていれば直します
- 似た過去の提案書を選ぶ:業種や課題が近い過去の提案書を選び、型として渡します。仕組みを作れば、AIに候補を探させることもできます
- 構成案を作らせる:課題と型をもとに、章立てと各章で言うことの要点を出させます。この段階で営業担当者や上司が「この順番で話すか」を決めます
- 本文の下書きを作らせる:決めた構成に沿って、サービス資料の範囲で本文を書かせます。「資料にないことは書かず、【要確認】と印をつけてください」と指示しておきます
- 価格・納期・保証・効果の部分を人が埋める:AIの下書きでは空欄か仮の印にしておき、社内ルールに沿って人が決めて書き入れます
- 読み合わせをして仕上げる:【要確認】の印をすべて消し込み、お客様の名前・数字・固有名詞を原本と照らして確かめてから提出します
この流れのよいところは、人の判断が必要な場所が手順の中ではっきり決まっていることです。課題の整理(手順2)、構成の決定(手順4)、約束の部分(手順6)、最終確認(手順7)で人が関わり、それ以外の「書く作業」をAIが受け持ちます。
慣れてくると、手順2〜5は一度の指示でまとめて行えるようになります。ただし最初のうちは、段階ごとに確かめたほうが、AIの癖や間違いの傾向をつかみやすくなります。
AIに任せる部分と人が決める部分——価格・納期・保証・効果の約束は人が持つ
提案書は、お客様にとって「この会社はこれを約束してくれる」という判断材料になります。書いた内容は、契約や信用に直結します。そのため、AIに任せてよい部分と、人が決めなければならない部分をはっきり分けておくことが大切です。
| 提案書の部分 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 章立て・構成案 | AIが案を出し、人が決める | 型があればAIは速く正確に組み立てられる |
| お客様の現状と課題の文章 | AIが下書き、人が確認 | ヒアリング内容の要約はAIが得意。ただし解釈のずれは人が直す |
| 解決策・サービスの説明 | AIが下書き、人が確認 | サービス資料の範囲で書かせれば品質が安定する |
| 導入の流れ・体制 | AIが下書き、人が確認 | 標準の流れは型から作れる。担当者名や日程は人が入れる |
| 価格・値引き | 人が決める | 利益や社内ルールに関わり、一度出すと取り消しにくい |
| 納期・スケジュールの約束 | 人が決める | 社内の人員や他の案件の状況を踏まえて判断が必要 |
| 保証・責任の範囲 | 人が決める | 契約の条件に直結する |
| 導入効果の数字 | 人が根拠を確かめて決める | 根拠のない数字は信用を失う原因になる |
| 表現の言い換え・誤字の確認 | AIに任せてよい | 読みやすさの改善はAIの得意分野 |
特に気をつけたいのが導入効果の数字です。AIは「作業時間を50%削減」「売上が2倍に」といった、もっともらしい数字を根拠なく書いてしまうことがあります。これは、AIがもっともらしい誤りを作ってしまう「ハルシネーション」と呼ばれる性質の一つです。効果を書くときは、自社の実績や、お客様の業務量から計算した見込みなど、説明できる根拠があるものだけにします。根拠がない場合は「〜を目指します」「〜の時間を減らせる見込みです」のように、約束にならない書き方にとどめます。
過去の提案書を「型」にして使い回す方法と、気をつけたい3つのこと
過去の提案書を型にする手順
AIで提案書を作る効果が大きく出るのは、過去の提案書を「型」として整えたときです。次のように進めます。
- 受注につながった提案書を集める:まずは数件で構いません。業種や課題の種類ごとに分けておきます
- お客様固有の情報を外して型にする:社名、担当者名、金額、固有の数字を【お客様名】【金額】のような印に置き換え、構成と言い回しだけを残します
- 「なぜ受注できたか」をひと言添える:「現場の手間を具体的に数えたのが響いた」など、ベテランの判断のポイントを型に書き添えると、AIにも若手にも伝わります
- 使うたびに型を直す:提出後にお客様の反応や受注の結果を記録し、よかった言い回しを型に戻していきます
こうして型がたまると、社長やベテランの頭の中にあった「提案の組み立て方」が会社の資産になり、若手でもAIの助けを借りて一定の水準の提案書を作れるようになります。
注意点1:お客様情報の扱い
ヒアリングメモや文字起こしには、お客様の社名や担当者名、社内の事情など、外に出してはいけない情報が含まれます。AIのサービスに入力する前に、入力したデータがAIの学習に使われない設定になっているか、どこに保存されるかを確認し、社内ルールで扱いを決めておきましょう。個人情報の扱いは法令にも関わるため、最新の情報は公式サイトで確認してください。
注意点2:根拠のない効果の数字
前の章で触れたとおり、AIは効果の数字をそれらしく作ってしまうことがあります。指示文に「効果の数字は書かず、【効果:要確認】と印をつけてください」と入れておくと防ぎやすくなります。
注意点3:他社の資料の流用
ネットで見つけた他社の提案書や資料をAIに渡して「これを参考に書いて」と頼むと、文章や図の表現がそのまま入り込むことがあります。他社の資料の文章をそのまま使うことは、著作権の問題につながる場合があります。AIに渡す型は、自社で作った資料に限るのが安全です。
AIで作った提案書を出す前のチェックリスト
- お客様の社名・担当者名・部署名は正しいか(別のお客様の名前が残っていないか)
- 価格・値引き・支払い条件は、社内ルールに沿って人が決めたものか
- 納期やスケジュールは、社内の体制で守れる内容か
- 保証や責任の範囲が、契約書のひな形と食い違っていないか
- 導入効果の数字に、説明できる根拠があるか
- サービス資料にない機能や対応を書いていないか
- 【要確認】の印がすべて消し込まれているか
- 他社の資料の文章をそのまま使っていないか
提案書づくりを仕組みにしたいなら、材料と型の整理から相談を
汎用の対話型AIに材料を貼り付けて提案書の下書きを作ることは、今日からでも始められます。ただ、毎回材料を集めて貼り付け、過去の提案書を探し、同じ指示を打ち込むのは手間がかかり、担当者によって出来もばらつきます。提案書づくりを会社の仕組みにするには、ヒアリングメモや文字起こしの置き場所、過去の提案書の型、サービス資料、指示文をひとまとめにして、誰が使っても同じ手順で下書きが出てくる状態を作ることが近道です。
当社の「AI社員」は、会社ごとの業務に合わせてAIの仕組みを作り、運用まで支える月額のサービスです。商談の録音や記録から課題を整理し、過去の提案書の型に沿って構成と下書きを作り、価格や効果など人が確かめる部分に印をつけて返す、といった流れを、御社の営業のやり方に合わせて組み立てることができます。料金は初期費用+月5万円で、保守・相談・メンテナンスは回数の制限なくご利用いただけます。初期費用は業務の内容をお聞きしたうえでお見積もりします。構築期間は内容によって2週間程度から1か月程度で、最短2週間で稼働できます。
当社にはこれまで、建設・設備、製造、人材、不動産、士業・会計など、約90社からご相談をいただいてきました。「提案書を書けるのが社長だけ」「商談のたびに資料づくりで手が止まる」とお感じでしたら、過去の提案書を何点かお持ちいただければ、どこまでをAIに任せられそうか、一緒に確かめることができます。お気軽にご相談ください。
よくある質問
AIだけで提案書を完成させることはできますか?
構成と本文の下書きまではAIで作れますが、完成させるには人の確認が必要です。特に価格・納期・保証・導入効果の約束は、人が決めて確かめてから提出してください。
提案書をAIで作るとき、最低限そろえる材料は何ですか?
最低限そろえたいのは、商談のヒアリングメモ(できれば録音の文字起こし)と自社のサービス資料の2つです。過去の提案書を型として渡すと、自社らしい構成と言い回しになりやすくなります。
AIが提案書に書いた効果の数字は使ってもよいですか?
根拠が確かめられない数字は使わないでください。AIはもっともらしい数字を作ることがあるため、自社の実績やお客様の業務量からの計算など、説明できる根拠があるものだけを人が確かめて書きます。
お客様のヒアリング内容をAIに入力しても大丈夫ですか?
入力したデータが学習に使われない設定になっているか、どこに保存されるかを確認し、社内ルールで扱いを決めたうえで使ってください。社名や個人名を伏せて入力する方法もあります。