賃貸管理会社でAIは何に使えるか——入居者の問い合わせ・修繕の受付と業者手配、更新・退去の案内、オーナー報告
結論
賃貸管理会社でAIが役立つのは、入居者からの問い合わせ・修繕依頼の受付と業者への手配連絡、更新・退去の案内、オーナーへの月次報告書、空室の募集文の4つの下書きと整理です。管理戸数が増えるほど同じ種類の連絡が積み重なる仕事なので、AIが受付・下書き・期限の管理を担い、費用負担や契約の判断、オーナーや入居者への大事な連絡は担当者が確認して行う形にすると、少ない人数でも回しやすくなります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、賃貸管理会社(不動産管理)の入居者対応・修繕手配・更新退去・オーナー報告・空室募集にAIを使う方法について解説します。賃貸管理の仕事は、物件を貸したあとに始まります。入居者からの「水が出ない」「エアコンが動かない」という連絡、修繕業者への手配、毎月の更新や退去の案内、オーナーへの報告、空室が出たときの募集と、管理戸数が増えるほど連絡と書類が増えていきます。人を増やしたくても採用は簡単ではなく、担当者が電話とメールに追われているという会社も多いのではないでしょうか。この記事では、仲介ではなく管理の仕事に絞って、AIに任せやすい業務、修繕の受付から業者手配までの流れ、更新・退去の案内とオーナー報告の作り方、空室の募集文の下書き、そして人が判断すべきことの線引きと始める順番を説明します。仲介の問い合わせ返信や追客については「不動産会社でのAI活用」の記事で説明しています。
賃貸管理の仕事は「同じ種類の連絡」が管理戸数に比例して増える
賃貸管理会社の仕事は、一件ごとは難しくなくても、管理戸数が増えるとそのまま件数が増えていくものが多いのが特徴です。経営者から見ると、売上を伸ばすために管理戸数を増やすほど、担当者の連絡と書類の仕事も増えていくという悩みにつながります。
| 業務 | 増え方 | 手間がかかるところ |
|---|---|---|
| 入居者からの問い合わせ・修繕依頼 | 入居者の数に比例 | 聞き取り、緊急度の判断、業者への連絡、入居者への折り返し |
| 更新・退去の案内 | 契約の数に比例し、毎月発生 | 期限の管理、案内文の作成、書類の回収、退去立会いの日程調整 |
| オーナーへの月次報告 | オーナーの数に比例 | 入出金・空室・修繕・クレームの集計と、報告書の文章 |
| 空室の募集 | 退去の数に比例 | 物件ごとの募集文、仲介会社向けの資料、条件の見直しの相談 |
どれも「情報を集める→決まった形にまとめる→相手に連絡する」という流れの繰り返しです。AIは、この「集める・まとめる・連絡文を作る」部分を得意としています。一方で、修繕費をどちらが負担するか、契約をどう扱うか、オーナーにどう提案するかといった判断は、経験のある担当者が行う必要があります。
ポイント
管理業務のAI活用は、担当者の仕事をなくすことではなく、管理戸数が増えても担当者の数を同じように増やさずに済む体制をつくることが目的です。
入居者の問い合わせ・修繕依頼は、AIが受付と業者への手配連絡を下書きする
入居者からの修繕依頼は、管理会社の仕事の中でも件数が多く、対応の遅れがクレームにつながりやすい仕事です。AIを使うと、受付から業者への手配連絡までの流れを次のように整えられます。
- 受付の聞き取りをそろえる:メールやフォーム、LINEなどで届いた連絡から、物件名・部屋番号・症状・いつから・写真の有無・入居者の都合のよい時間を取り出して、受付票の形にまとめる
- 足りない情報を聞き返す:「どの部屋のどの設備か」「水漏れは今も続いているか」など、手配に必要な情報が足りなければ、入居者への確認の文面を用意する
- 緊急度の目安をつける:水漏れ・ガス・漏電・鍵の紛失など、すぐに対応が必要な内容を見分けて、担当者に知らせる
- 業者への手配連絡を下書きする:物件と設備の情報、症状、写真、入居者の在宅時間をまとめた依頼文を作る。物件や設備ごとに決まっている業者があれば、その候補を出す
- 入居者への折り返しを下書きする:受け付けたこと、業者から連絡が入る予定、立ち会いのお願いなどを伝える文面を用意する
- 進み具合を一覧にする:受付・手配済み・訪問予定・完了・費用確認待ちなどの状態を一覧にし、止まっている案件を知らせる
ここで大切なのは、緊急の判断と、費用が誰の負担になるかの判断は人が行うことです。ガスのにおいや大きな水漏れのように命や建物にかかわる連絡は、AIの仕分けを待たずに担当者や緊急の窓口へ直接つながる仕組みを残しておきます。夜間や休日の連絡では、AIは「受け付けたこと」と「緊急時の連絡先」を返すまでにとどめると安全です。
修繕費の負担は、契約の内容や、壊れた原因、国のガイドラインの考え方などによって変わる場合があります。AIの下書きには負担の判断を書かせず、担当者が確認してから入居者やオーナーに伝えるようにしましょう。
更新・退去の案内は、AIが期限を見張って案内文と書類の一覧を用意する
更新と退去は、毎月決まった数が発生し、期限を過ぎると困る仕事です。担当者が契約一覧を見ながら一件ずつ案内しているなら、AIに任せられる部分が多くあります。
更新の案内
- 契約の一覧から、数か月後に満了を迎える契約を毎月取り出して一覧にする
- 入居者ごとの更新の案内文と、必要な書類・手続きの一覧を下書きする
- 返事がない入居者を一覧にし、再度の案内文を用意する
- オーナーに更新の意向や条件の変更がないかを確かめる連絡文を下書きする
退去の案内
- 解約の連絡を受けたら、退去日・立会いの候補日・鍵の返し方・精算の流れをまとめた案内文を作る
- 立会いの日程候補を、担当者の予定と入居者の希望から出す
- 立会いのメモと写真から、退去時の確認記録の下書きを作る
- 次の募集に向けて、オーナーへの報告と相談の文面を用意する
退去時の原状回復の費用負担は、入居者との間でもめごとになりやすいところです。AIは立会いの記録を整えたり、説明の文章をわかりやすくしたりする補助にとどめ、どの費用を誰が負担するかは、契約の内容や国のガイドラインなどを踏まえて担当者が判断します。更新料や解約の扱いなども契約や地域の慣習によって違う場合があるため、案内文の決まった言い回しは社内で確認したものを使いましょう。
ポイント
更新・退去でAIが一番役に立つのは「忘れないこと」です。期限が近い契約を毎月自動で取り出し、案内の送り漏れや返事のない入居者を知らせるだけでも、担当者の負担と見落としの不安が大きく減ります。
オーナーへの月次報告書は、数字の集計と報告文の下書きをAIに任せる
オーナーへの月次報告は、管理会社への信頼を左右する大事な仕事です。ところが、オーナーごとに入出金の明細、空室の状況、修繕の内容、入居者からのクレーム、募集の反響などを集めて文章にまとめるのは手間がかかり、月初に担当者の時間が取られがちです。
- 情報を集める:家賃の入金と滞納、管理費や修繕費の支払い、空室と募集の状況、その月の修繕やクレームの記録を、オーナーごとに集める
- 決まった形にまとめる:オーナーごとの報告書の書式に数字と出来事を並べ、前の月と比べて変わった点を出す
- 報告文を下書きする:「今月の主な出来事」「修繕の内容と今後の予定」「空室の募集状況」などを、オーナーが読みやすい文章にする
- 担当者が確認して一言を加える:数字が帳簿と合っているかを確かめ、オーナーへの提案や相談ごとを担当者が書き足して送る
報告書のうち、数字の集計と定型の文章はAIに任せやすい部分です。一方で、家賃の見直しや大きな修繕の提案、滞納への対応方針など、オーナーの判断を求める内容は、担当者が自分の言葉で書くほうが信頼につながります。AIに任せるのは「毎月同じように作る部分」と決めておきましょう。
報告書づくりが速くなると、月初に担当者が集計に追われる時間が減り、その分をオーナーとの面談や電話に回せます。たとえば、空室が長引いている部屋について募集の反響を並べて条件の見直しを相談する、築年数が進んだ物件について今後の修繕の予定を早めに伝える、といった提案の時間です。管理会社にとって、オーナーから「よく見てくれている」と感じてもらえることは、管理の継続や新しい物件の紹介にもつながります。AIで書類の時間を減らし、オーナーと話す時間を増やすことが、経営の面でも大きな意味を持ちます。
報告書をAIで作るときの注意点
- 金額の数字は、会計や家賃管理の仕組みから取り込み、AIに計算させた数字をそのまま使わない
- 入居者の名前や事情など、オーナーに伝える必要のない情報が入っていないかを確かめる
- 修繕の写真は、どの物件・どの部屋のものかが取り違えられていないかを確かめる
空室の募集文は、物件情報から下書きし、表示のルールは人が確認する
退去が決まった部屋は、できるだけ早く次の入居者を見つけたいものです。管理会社が募集を受け持つ場合、物件ごとの募集文や、仲介会社に配る資料づくりにAIを使えます。
- 間取り・設備・周辺環境・リフォームの内容などの物件情報から、募集文の下書きを作る
- 単身向け、ファミリー向け、ペット可など、物件の特徴に合わせて伝える順番を変えた案を出す
- 仲介会社向けに、条件・案内の方法・鍵の場所などをまとめた資料の下書きを作る
- なかなか決まらない部屋について、問い合わせの数や内見の数を並べ、オーナーに条件の見直しを相談する材料をまとめる
募集の広告には、表示についての決まりや業界のルールがあり、事実と違う表現や大げさな言い回しは使えない場合があります。AIは文章を魅力的にしようとして、確かめていない表現を加えてしまうことがあるため、駅からの距離や設備、築年数などは物件の資料と照らし合わせ、表示のルールに合っているかを担当者が確認してから使いましょう。最新の決まりは、業界団体などの公式の情報で確かめてください。
なお、仲介としての問い合わせ返信や物件資料づくりについては、当社の不動産会社(従業員15名規模)での事例として、問い合わせへの初回返信が半日から10分になった例があります。管理会社でも、入居者や仲介会社からの問い合わせに同じ考え方が使えます。
賃貸管理会社がAIを始める順番と、人が判断すべきこと
賃貸管理の仕事にAIを入れるときは、いきなりすべてを変えるのではなく、件数が多く、判断が少ない仕事から始めるのが安全です。
- 更新の期限管理と案内文から始める:契約一覧から満了の近い契約を取り出し、案内文を下書きする。入居者に直接答える仕事ではないため、始めやすい
- オーナーへの月次報告に広げる:集計と定型の文章をAIに任せ、担当者は確認と提案に集中する
- 修繕依頼の受付と業者手配の連絡に広げる:受付票づくりと業者への依頼文から始め、慣れてきたら入居者への折り返しの下書きまで任せる
- 空室の募集文に使う:退去が決まった部屋から、募集文と仲介会社向け資料の下書きに使う
人が判断し、AIに任せないことのチェックリスト
- 修繕費や原状回復費を、入居者とオーナーのどちらが負担するか
- ガス・水漏れ・漏電など、緊急の対応が必要かどうか
- 家賃の滞納への対応や、契約の解除にかかわる連絡
- 入居者どうしのトラブルや近隣からの苦情への対応方針
- 家賃や条件の見直しなど、オーナーへの提案の中身
- 入居者の個人情報を、誰にどこまで伝えるか
入居者の名前や連絡先、家賃の支払い状況などは個人情報にあたります。どのAIの仕組みにどの情報を渡すか、誰が見られるかを社内のルールとして決めておきましょう。賃貸管理の業務には法令や業界の決まりがかかわるため、扱いに迷う場合は専門家や公式の情報で最新の内容を確認してください。
当社のAI社員は、今お使いの管理システムや契約一覧、メールやLINEの受付窓口に合わせて、修繕の受付から業者手配の連絡、更新・退去の案内、オーナー報告の下書きまでを一続きでつくることができます。料金は初期費用+月5万円で、運用後の調整や相談にも回数の制限なく対応していますので、「まずは更新の案内だけで試したい」という段階からお気軽にご相談ください。
よくある質問
賃貸管理会社でAIを使うなら、どの業務から始めるのがよいですか?
更新の期限管理と案内文の下書きから始めるのがおすすめです。件数が多く毎月発生するうえ、入居者に直接答える仕事ではないため、AIの下書きを人が確認する流れを試しやすいからです。
入居者からの修繕依頼の受付をAIに任せても大丈夫ですか?
聞き取りの整理、業者への依頼文や入居者への折り返しの下書きは任せられます。緊急かどうかの判断と、修繕費をどちらが負担するかの判断は担当者が行い、緊急の連絡は直接担当者につながる仕組みを残しましょう。
オーナーへの月次報告書はAIで作れますか?
入出金や空室、修繕の記録を集めて書式にまとめ、報告文を下書きするところまではAIで作れます。金額は会計の仕組みから取り込んで担当者が確かめ、オーナーへの提案は担当者が書き加えるのが安全です。
空室の募集文をAIで書くときの注意点は何ですか?
AIは確かめていない表現を加えることがあるため、駅からの距離や設備、築年数などを物件の資料と照らし合わせ、広告の表示ルールに合っているかを担当者が確認してから使いましょう。