Web制作会社・広告代理店でAIは何に使えるか——ヒアリング整理と提案書、原稿・広告文、月次レポート、修正管理、見積
結論
Web制作会社・広告代理店でAIが役立つのは、ヒアリング内容の整理と提案書の下書き、原稿・広告文の案出し、月次レポートの作成、修正依頼の管理、見積の下書きという、クライアントワークの周りにある文章と整理の仕事です。著作権や表現のルール、事実の正しさ、クライアント情報の扱いは人が確認する前提にすると、制作や運用の質を落とさずに、ディレクターや担当者の事務の時間を減らせます。最初は、毎月決まった時期に必ず発生する月次レポートか、案件ごとに繰り返す修正依頼の整理から始めるのがおすすめです。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、Web制作会社・広告代理店でのAIの活用方法(ヒアリング整理・提案書・原稿と広告文・月次レポート・修正管理・見積)と人が確認すべき点について解説します。ディレクターがヒアリングの議事録と提案書づくりで夜まで残っている。広告の運用担当は、月初になると複数のクライアントの月次レポートに追われる。修正依頼がメール、チャット、電話にばらばらに届き、対応漏れが起きる。Web制作会社・広告代理店の経営者の方から、こうしたお悩みを伺うことがあります。この業界はAIを使った文章づくりに関心が高い一方で、「クライアントの情報をAIに入れてよいのか」「AIが書いた原稿の著作権は大丈夫か」という不安もよく聞かれます。この記事では、Web制作会社・広告代理店でAIを使える5つの仕事と、それぞれの使い方、人が必ず確認すべき点、始める順番を、AI社員を提供している当社の立場から説明します。
Web制作会社・広告代理店でAIに任せやすいのは、制作の「周り」にある整理と下書き
Web制作や広告の仕事の中心は、クライアントの課題をつかみ、デザインや言葉、運用の工夫で成果につなげることです。この企画と判断の部分は、担当者の経験とクライアントとの信頼関係が土台であり、AIが代わるものではありません。一方で、その周りには、ヒアリング内容の整理、提案書や見積の作成、数字の集計とレポート、修正依頼のとりまとめなど、時間はかかるものの型が決まっている仕事がたくさんあります。AI(文章を読んだり書いたりできるコンピューターの仕組み)が力を発揮するのはこの部分です。
| 仕事 | AIに任せること | 人が判断・確認すること |
|---|---|---|
| ヒアリング・提案書 | 議事録やメモの整理、課題と要望の一覧、提案書の構成と文章の下書き | 提案の方向性、クライアントへの説明 |
| 原稿・広告文 | 見出しや広告文の案出し、原稿の下書き、文字数の調整 | 事実の確認、表現のルール、著作権、最終的な採用 |
| 月次レポート | 数値の表をもとにした変化の要約、コメントの下書き | 数値の正しさ、改善策の判断 |
| 修正依頼の管理 | メールやチャットから依頼を拾って一覧にする、対応状況の整理 | 対応するかどうか、範囲外の依頼への対応 |
| 見積の下書き | 要件から作業項目を洗い出し、自社の料金表にもとづいて下書きを作る | 金額と条件の確定 |
どの仕事でも、AIは「整理」と「下書き」まで、クライアントに出す前の確認と判断は人、という分担にするのが基本です。
ヒアリング内容の整理と提案書の下書きは、AIが「聞いたこと」を構造にする
新しい案件のヒアリングでは、クライアントの事業の説明、今のサイトや広告の課題、競合の状況、予算や納期など、多くの情報が一度に出てきます。打ち合わせのあとにこれを整理し、提案書に落とし込むまでが、ディレクターや営業担当の大きな負担になっています。
AIを使う場合の流れは、次のとおりです。
- ヒアリングの記録を残す:クライアントの了解を得て録音する、または担当者が要点をメモする
- AIが内容を整理する:事業の概要、目的、課題、要望、予算、納期、決める人、まだ聞けていないことを項目ごとにまとめる
- 聞き漏れを確認する:自社のヒアリングシートの項目と照らして、AIに足りない情報を挙げさせ、追加の質問メールの下書きを作る
- 提案書の構成と文章を下書きする:過去の提案書を手本に、課題、解決の方針、進め方、スケジュールの章立てと文章をAIに書かせる
- 担当者が提案の中身を仕上げる:何を一番の提案にするか、どこに独自の工夫を入れるかを考え、表現を整える
ポイント
AIに任せると、提案書の「形」はすぐにできますが、どの会社にも当てはまるような一般的な内容になりがちです。クライアントの言葉や、ヒアリングで出た具体的な事情を入れ、自社ならではの提案にする部分は担当者の仕事です。AIで浮いた時間を、この考える時間に回すのがねらいです。
整理したヒアリング内容は、そのまま制作チームへの引き継ぎ資料にも使えます。営業とディレクター、デザイナーの間で認識がずれにくくなり、後から「聞いていない」という行き違いを減らせます。
原稿・広告文の案出しはAIの得意分野。ただし事実・著作権・表現のルールは人が確認する
Webサイトの原稿、広告の見出しや説明文、SNSの投稿文などの案出しは、AIが特に得意な仕事です。商品やサービスの資料、ターゲットの情報、伝えたいことを渡せば、短時間で多くの案を出せます。広告では文字数の決まりがある場合が多く、指定の文字数に合わせて言い換えるといった調整にも向いています。
- 見出しや広告文を、訴求の切り口(価格、手軽さ、安心感など)ごとに複数出す
- クライアントの資料から、サービス紹介ページの原稿を下書きする
- 既存の原稿を、媒体ごとの文字数や言い回しに合わせて書き直す
- 検索広告やSNS広告のテスト用に、少しずつ表現を変えた案を作る
一方で、原稿や広告文はクライアントの名前で世の中に出るものです。次の点は、必ず人が確認してください。
原稿・広告文を出す前に人が確認すること
- 商品の性能、価格、実績など、書かれている事実がクライアントの資料と合っているか(AIはそれらしい数字や実績を補ってしまうことがあります)
- 「必ず」「一番」「業界初」など、根拠を示せない表現や、実際より良く見せる表現になっていないか
- 業種ごとの広告のルール(健康食品・化粧品・医療など)や、掲載する媒体の広告ポリシーに合っているか
- 他社の文章やキャッチコピーとよく似た表現になっていないか
- クライアントの担当者に最終確認をいただいたか
広告の表現には景品表示法や、業種によっては薬機法などのルールがあり、AIが書いた文章でも、出した側の責任になる場合があります。また、AIが作った文章や画像の著作権の考え方は、文化庁などで整理が進められている段階です。具体的な判断に迷う場合は専門家に相談し、最新の情報は公式サイトで確認してください。
月次レポートは、数字の集計はツール、変化の要約とコメントの下書きはAIに任せる
広告運用やサイト運用を請け負っていると、毎月、クライアントごとにレポートを作る必要があります。広告の管理画面やアクセス解析から数字を集め、表とグラフにし、先月との違いや改善策のコメントを書く作業は、担当するクライアントが多いほど月初に集中して負担になります。
| 作業 | これまで | AIを使った後 |
|---|---|---|
| 数字の集計 | 管理画面から一つずつ書き出して表に貼る | 書き出しと集計は表計算や既存のツールで自動化し、AIには集計済みの表を渡す |
| 変化の要約 | 表を見比べて、増えた・減った項目を探す | AIが先月・前年との違いが大きい項目を拾い、短い文章にまとめる |
| コメントの下書き | 担当者が毎月一から書く | AIが過去のレポートの書き方に合わせて、所見と次月の案の下書きを作る |
| 仕上げ | 担当者が全体を見直す | 担当者が数字と所見を確認し、改善策を判断して書き足す |
ここで大切なのは、数字そのものをAIに計算させたり、書き写させたりしないことです。AIは数字を読み違えたり、計算を誤ったりすることがあります。数字は管理画面やツールのデータをそのまま使い、AIには「この表の中で変化が大きい項目と、その理由として考えられること」をまとめさせる、という役割分担にすると安全です。
改善策の判断も、担当者の仕事です。AIのコメントは、クライアントの事業の事情や、打ち合わせで出た話を知らないまま書かれています。担当者が実情に合うかを確かめ、自分の言葉で補うことで、レポートの価値が保たれます。
修正依頼の管理と見積の下書きで、ディレクターの「抜け漏れ」と「手戻り」を減らす
修正依頼をAIが拾って一覧にする
制作の終盤になると、クライアントからの修正依頼が、メール、チャット、電話のメモ、資料への書き込みなど、いろいろな形で届きます。一つのメールに複数の依頼が混ざっていたり、前の依頼を取り消す内容が後から来たりすると、ディレクターが整理するだけで時間がかかり、対応漏れも起きやすくなります。
AIを使うと、届いた連絡から修正依頼を一件ずつ拾い出し、ページ、修正の内容、依頼日、対応の担当、状況を表にまとめられます。前の依頼と食い違う内容があれば、確認が必要なものとして知らせることもできます。
- 依頼を一件ずつに分けて一覧にし、デザイナーやコーダーへの指示の下書きを作る
- 前の依頼と食い違う内容や、意味があいまいな依頼に印をつけ、クライアントへの確認メールの下書きを作る
- 契約の範囲外になりそうな依頼(新しいページの追加など)を、ディレクターが判断できるよう分けておく
範囲外の依頼を受けるかどうか、追加の費用をどうするかは、ディレクターや営業担当がクライアントと相談して決めます。
見積の下書きをAIが作る
見積も、案件ごとに繰り返し発生する仕事です。ヒアリングで整理した要件と、自社の料金表、過去の見積をAIに渡すと、必要な作業項目(設計、デザイン、コーディング、原稿作成、撮影など)を洗い出し、料金表に沿った見積の下書きを作れます。項目の抜けを減らせるのが大きな利点です。
ポイント
見積の下書きは「渡した料金表と過去の見積に書かれていることだけを使う」とAIに指示してください。金額、作業の範囲、修正の回数、納期などの条件は、担当者が確認して確定します。
クライアント情報の扱いと、Web制作会社・広告代理店でAIを始める順番
Web制作会社・広告代理店は、クライアントの公開前の新商品情報、広告の成果データ、顧客リストなど、外に出してはいけない情報を預かる仕事です。AIを使う前に、情報の扱いのルールを決めておくことが欠かせません。
クライアント情報を扱うときに決めておくこと
- 入力した内容がAIの学習に使われない設定や契約のサービスを使う
- 社員が個人で契約したAIサービスに、クライアントの情報を入れない
- クライアントとの秘密保持の取り決めに、外部サービスの利用についての決まりがないか確認する
- お客様の名前や連絡先などの個人情報は、AIに入れる前に必要かどうかを考え、不要なら外す
- どのクライアントの情報を、誰が、どのAIで扱ったかを残しておく
個人情報の扱いについては個人情報保護法などのルールがあります。最新の情報は公式サイトで確認してください。
そのうえで、次の順番で始めることをおすすめします。
- 繰り返しが多い仕事を1つ選ぶ:月次レポートのコメントや修正依頼の整理など、毎月・毎案件必ず発生する仕事から始める
- 手本をそろえる:過去のレポート、提案書、ヒアリングシート、料金表、見積の例を集める
- 人が確認する点を決める:事実、数字、表現のルール、著作権、金額は人が確認すると決めておく
- 少人数で試して直す:ディレクターや運用担当の数名で使い、直した点をAIへの指示に反映する
- ほかの仕事に広げる:慣れてきたら、提案書や見積の下書きへと広げる
当社が提供する「AI社員」では、今お使いのメールやチャット、表計算、料金表に合わせて、ヒアリングの整理、レポートのコメント、修正依頼の一覧、見積の下書きを作る仕組みを組み立てます。クライアントに出る前に必ず人が確認する流れを前提に設計し、導入後の調整や相談も月額の中でお受けしています。料金は初期費用+月5万円(保守・相談・メンテナンス無制限)で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。AIを自分たちで試してはいるものの、仕事の流れに組み込めていないと感じていましたら、どこから任せられるかを一緒に整理しますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Web制作会社でAIを使うと、提案書づくりはどれくらい楽になりますか?
ヒアリング内容の整理や提案書の構成・文章の下書きをAIに任せると、形を整える作業の時間を減らせます。減り方は案件や使い方によって変わり、提案の中身を考えて仕上げる部分は担当者の仕事として残ります。
AIで作った広告文や原稿をクライアントに納品しても大丈夫ですか?
AIの案をもとに人が事実、表現のルール、他の文章との類似を確認し、クライアントの確認を得てから出すことをおすすめします。著作権の考え方は整理が進められている段階のため、最新の情報は公式サイトで確認してください。
広告の月次レポートはAIで自動化できますか?
数字の集計はツールで自動化し、変化の要約とコメントの下書きをAIに任せる形が向いています。数字の正しさと改善策の判断は担当者が確認してください。
クライアントの情報をAIに入力しても問題ありませんか?
入力した内容が学習に使われない設定や契約のサービスを選び、クライアントとの秘密保持の取り決めを確認したうえで扱う範囲を決めることが前提です。個人で契約したAIサービスにクライアント情報を入れることは避けてください。