入金確認・売掛金の消込をAIで効率化するには?——名義のゆれや合算入金を候補づけし、人は確定だけにする方法
結論
入金確認・売掛金の消込は、AIに「銀行の入金明細と請求データを突き合わせ、どの請求に対する入金かの候補を付ける」ところまでを任せ、人は候補を確かめて消込を確定する形にすると効率化できます。名義のゆれ・合算入金・振込手数料の差し引きといった、ぴったり合わない入金はAIが理由を添えて人に回すため、担当者は「全部を照らし合わせる」作業から「ずれた分だけを判断する」作業に変わります。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、入金確認・売掛金の消込をAIで効率化する方法について解説します。請求書を送ったあと、期日に入金されたかを1件ずつ確かめる作業は、件数が増えるほど重くなります。振込人の名前が会社名と違う、複数の請求がまとめて振り込まれる、振込手数料が引かれて金額が合わない——こうしたずれのたびに、担当者が請求の一覧と通帳の明細を見比べて考えることになります。確認が遅れると、未入金に気づくのも遅れ、資金繰りの見通しも立てにくくなります。この記事では、入金確認と売掛金の消込(請求した金額が入金されたことを記録し、未回収の一覧から消す作業)のどこまでをAIに任せられるのか、ずれた入金をどう扱うのか、督促の連絡や人が確認すべき範囲をどう決めるのかを、AI社員を提供している当社の立場から説明します。
入金確認・消込に時間がかかるのは「ぴったり合わない入金」があるから
入金確認の作業そのものは、「請求した金額」と「入金された金額」を見比べるだけに見えます。実際に時間を取られているのは、両者がそのままでは一致しない入金です。よくあるのは次のような場面です。
- 振込人の名義が会社名と違う:「株式会社」が「カ)」と略され、社名がカナ表記になっている、親会社や経理代行会社の名前で振り込まれる、個人名で振り込まれる、など
- 複数の請求がまとめて振り込まれる:3か月分や、複数の案件の請求を1回で支払う取引先がある
- 振込手数料が引かれている:請求額から振込手数料を差し引いた金額で入金される
- 一部だけ入金される:分割での支払いや、値引き・相殺の話し合いがあった分を差し引いて振り込まれる
- どの請求か書かれていない:請求書の番号や件名がなく、同じ金額の請求が複数ある
こうした入金は、担当者が「この名前はあの会社だったはず」「この金額は2件分を足したものだろう」と、記憶と経験で判断しています。そのため、件数が多い月末や月初に作業が集中し、担当者が休むと止まりやすい業務になっています。
AIの仕組みが役に立つのは、この「記憶と経験で突き合わせている部分」を、ルールと記録に置き換えるところです。
AIに任せるのは「取り込み・突き合わせ・候補づけ・ずれの仕分け」の4つ
入金確認・消込をAIで効率化するときは、仕事を次の4つに分けて任せます。
- 入金明細の取り込み:銀行のWebサービスから出力した入金明細のファイルを読み込み、日付・振込人名・金額をそろえた一覧にする
- 請求データとの突き合わせ:未入金の請求の一覧と照らし合わせ、取引先・金額・支払期日が合うものを探す
- 候補づけ:「この入金は、この請求に対するものと思われる」という候補を付け、どの点が一致したのか(名義・金額・期日)を添える
- ずれの仕分け:一致しない入金を「名義が違う」「金額が少し足りない」「複数の請求の合計と一致」「該当する請求が見つからない」などの理由ごとに分けて、人に回す
ここで大切なのは、AIに消込を確定させないことです。消込は売掛金の残高、つまり会計の数字に直接かかわります。AIは「候補」と「理由」を出すところまでにとどめ、人が確かめてから確定する流れにします。
ポイント
ぴったり一致した入金は、人が一覧でまとめて確認するだけで済みます。担当者が時間をかけて考えるのは、AIが「ずれ」として仕分けた入金だけになります。
また、一度人が判断した結果は記録として残します。「この振込人名はこの取引先」「この取引先はいつも手数料を引いて振り込む」と覚えさせていくことで、次の月からは候補づけの精度が上がり、人に回る件数が少しずつ減っていきます。
名義のゆれ・合算入金・手数料差し引きはこう扱う
ぴったり合わない入金のパターンごとに、AIがすることと人がすることを分けておくと、運用が安定します。
| ずれの種類 | AIがすること | 人がすること |
|---|---|---|
| 名義のゆれ(略称・カナ表記・別会社名) | 過去に判断した名義の対応表と照らし、近い取引先を候補として示す | 初めて見る名義は取引先を特定し、対応表に登録する |
| 合算入金(複数の請求をまとめて支払い) | 未入金の請求の組み合わせで合計が一致するものを探し、候補として示す | 組み合わせが複数考えられるときは、取引先の支払通知などで確かめる |
| 振込手数料の差し引き | 差額が手数料と思われる範囲に収まるかを見て、「手数料差し引きの可能性あり」と印を付ける | 契約や取引条件に照らして、差額を手数料として処理してよいかを判断する |
| 一部入金・値引きや相殺 | 請求額との差額を計算し、残額がある請求として残す | 差額の理由を担当の営業や取引先に確認し、残りの請求の扱いを決める |
| 該当する請求が見つからない | 「該当なし」として一覧に上げ、似た金額や名義の候補があれば添える | 前受けの入金、別の取引、振込の誤りなどを調べる |
振込手数料の扱いは、取引条件の確認が先
振込手数料をどちらが負担するかは、契約書や取引条件によって決まります。取引先が手数料を差し引くことが取り決めと違う場合や、取引の関係によっては法律上の問題になる場合もあります。AIには「差額が手数料と思われる」という印を付けさせるだけにして、処理のしかたは社内のルールと契約にもとづいて人が決めてください。判断に迷う場合は、最新の情報を公式サイトで確認し、顧問の税理士や専門家に相談してください。
なお、名義の対応表は、会社にとって大切な情報資産になります。担当者の頭の中にあった「この名前はあの会社」という知識が一覧として残るため、担当者が替わっても入金確認を続けられるようになります。
未入金の取引先への連絡は、AIが下書きし人が送る
突き合わせが終わると、支払期日を過ぎても入金が確認できない請求が一覧になります。この一覧をもとに、取引先への確認の連絡文もAIに下書きさせることができます。
未入金の連絡は、相手との関係に気を配る必要がある連絡です。多くの場合は、相手の担当者が支払いの手続きを忘れていた、請求書が社内で止まっていた、といった単純な理由です。いきなり強い言い方をすると関係を損なうおそれがあるため、段階を分けて文面を用意しておくのがおすすめです。
| 段階 | 連絡の目的 | 文面の方向 |
|---|---|---|
| 期日を少し過ぎたとき | 行き違いの確認 | 「入金の確認がとれていないため、念のためご連絡しました」と確認をお願いする。すでに手続き済みの場合のお詫びも添える |
| 再度の連絡 | 支払予定日の確認 | 請求書の番号・金額・期日を示し、支払いの予定日を教えてもらう |
| それでも入金がないとき | 担当者どうしの話し合い | 文面だけで済ませず、担当の営業や責任者から電話などで直接話す |
AIが作るのはあくまで下書きです。送る前に、本当に未入金なのか(合算入金や名義違いで見落としていないか)、相手とのやり取りの中で支払いを待つ約束をしていないかを、人が確かめます。特に3つ目の段階は、取引全体にかかわる判断になるため、AIに任せず人が対応します。
営業担当との情報共有もしやすくなる
未入金の一覧と、いつ誰がどんな連絡をしたかの記録が残っていれば、営業担当者が取引先を訪ねる前に支払いの状況を確認できます。経理と営業の間で「聞いていなかった」という行き違いを減らす効果もあります。
人が必ず確認する範囲を決めておく
入金確認・消込をAIで効率化するときに、最初に決めておきたいのが「どこから先は人が見るか」という線引きです。目安として、次のように考えます。
- 人がまとめて確認するもの:取引先・金額・期日がすべて一致した入金。一覧で確かめ、問題がなければまとめて確定する
- 人が1件ずつ判断するもの:名義のゆれ、合算入金、手数料と思われる差額、一部入金、該当なしの入金
- 人だけが行うもの:消込の確定、差額を手数料や値引きとして処理する判断、取引先との支払条件の話し合い、3回目以降の督促
線引きを決めるときのチェックリスト
- 消込を確定する担当者と、その代わりの担当者が決まっている
- 手数料として処理してよい差額の考え方を、社内で決めている
- 金額が大きい入金や、初めての取引先からの入金は必ず人が見る決まりにしている
- AIの候補づけを人が修正した記録が残り、後から見直せる
- 入金明細のファイルを扱える人と、保管する場所を決めている
銀行の明細や取引先の情報は、会社にとって外に出してはいけない情報です。AIの仕組みを使うときは、入力したデータが学習に使われない法人向けのサービスや設定を選び、明細を扱える人の範囲を決めておきましょう。
入金確認の効率化を進める手順と、当社のAI社員でできること
入金確認・消込の効率化は、次の順番で進めるとスムーズです。
- 今のやり方を書き出す:入金明細をどこから取り出し、何と見比べ、どこに記録しているかを書き出す
- ずれのパターンを集める:過去数か月の入金のうち、すぐに一致しなかったものを拾い、名義のゆれ・合算・手数料などに分けてみる
- 名義の対応表を作る:担当者が覚えている「振込人名と取引先の対応」を一覧にする
- 候補づけだけを並行して試す:今までどおり人が消込をしながら、AIの候補と人の判断が合っているかを1〜2か月比べる
- 一致した入金から任せる範囲を広げる:候補の精度が確かめられたら、一致した入金はまとめて確認する形に切り替え、督促文の下書きも加える
入金確認は、請求書の発行とつなげるとさらに効果が出やすくなります。請求の一覧が整っているほど突き合わせの精度が上がるためです。請求書の発行の自動化については、別の記事で詳しく説明しています。
当社のAI社員は、会社ごとの入金明細の形式や名義の対応表、社内の処理ルールに合わせて仕組みをつくり、初期費用+月5万円で運用後の調整や相談にも対応しています。取引先が増えたり、支払いのルールが変わったりしても、その都度直しながら使い続けられます。構築期間は内容によって異なりますが、最短2週間で動かし始めることができます。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。
よくある質問
入金の消込をAIに全部自動でやらせることはできますか?
仕組みとしては可能ですが、当社はおすすめしていません。消込は売掛金の残高に直接かかわるため、AIは候補づけまでにとどめ、確定は人が行う形を基本にしています。
振込人の名前が会社名と違っても、AIは取引先を見分けられますか?
過去に人が判断した名義の対応表を使うことで、見分けられる場合が増えていきます。初めて見る名義は人に回し、判断した結果を対応表に加えていく運用にします。
複数の請求をまとめて振り込まれた場合はどうなりますか?
AIが未入金の請求の組み合わせで合計が一致するものを探し、候補として示します。組み合わせが複数考えられるときは、取引先の支払通知などで人が確かめてから確定します。
今使っている会計ソフトやネットバンキングはそのまま使えますか?
多くの場合、そのまま使えます。入金明細や請求の一覧をファイルで出力できれば、それを読み込んで突き合わせる形で仕組みをつくります。連携の方法は使っているサービスによって変わるため、ヒアリングで確認します。