生成AIで作った画像・文章に「AIで作成」の注意書きは必要か——表示が求められやすい場面、書き方の例、社内ルール
結論
生成AIで作った画像や文章を社外に出すとき、すべてに「AIで作成」と書く必要があるとは限りませんが、見た人が「本物の写真だ」「実際の人の声だ」と誤解するおそれがある場面や、掲載先の規約で表示が求められている場面では、表示が必要または望ましい場合があります。判断の軸は「AIで作ったと知らないと、見た人が誤解したり損をしたりするか」です。会社として場面ごとの表示の要否と文例を決めておけば、担当者が毎回迷わずに済みます。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、生成AIで作った画像・文章を社外に出すときの「AIで作成」などの注意書き(表示)の要否と、書き方・社内ルールへの入れ方について解説します。AIで作ったイラストをチラシに使った、ホームページの説明文をAIで下書きした、SNSにAIで作った画像を投稿した。こうした使い方が広がる中で、「これは『AIで作成』と書かないといけないのか」というご質問を経営者の方からよくいただきます。書かずに出して後から問題にならないか心配な一方、何にでも注意書きを付けると見た目が悪く、かえってお客様を不安にさせるのではという迷いもあると思います。この記事では、表示が求められやすい場面と、表示がなくても困りにくい場面の分け方、場面ごとの注意書きの書き方の例、そして社内ルールへの入れ方を説明します。なお、AIで作ったものが他人の作品に似てしまう著作権の問題は別の記事にまとめていますので、ここでは「表示するかどうか」に絞ってお伝えします。
注意書きが必要かどうかは「見た人が誤解するか」で決まる
生成AI(文章や画像を新しく作り出すAI)で作ったものを社外に出すとき、注意書き(表示)が必要かどうかは、作った道具がAIかどうかよりも、見た人がAIで作ったと知らないことで誤解したり、不利益を受けたりするかで考えると整理しやすくなります。
たとえば、社内向けの説明資料に添えた挿絵や、担当者が内容を確認して自社の名前で送るメールの文面は、AIが下書きしたかどうかで受け取る人の判断が変わることはほとんどありません。一方、商品の広告に使った「写真のような画像」が実物と違えば、お客様は実物を見て選んだと思い込んでしまいます。同じ「AIで作ったもの」でも、表示の必要性はまったく違います。
表示をめぐる決まりは、主に次の3つの方向から来ます。
- 法令やガイドライン:広告で実際より良く見せる表示を禁じる決まりや、国が示すAI利用のガイドラインなど。AIで作ったこと自体ではなく、「誤解を招くかどうか」が問われる場合が多いと考えられます
- 掲載先の規約:SNSや動画共有サービス、広告配信サービス、ネット上の商店街(モール)などが、AIで作った写実的な内容に表示を求めている場合があります
- 取引先や業界の決まり:発注元から「AIを使った場合は申告すること」と求められる契約や、業界団体の自主ルールがある場合があります
国内外で生成AIに関する決まりづくりは続いており、内容は変わっていきます。ここでの説明は一般的な考え方です。具体的な判断が必要な場合は、最新の情報を各省庁や掲載先の公式サイトで確認し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談してください。
ポイント
「AIで作ったから表示する」ではなく、「表示しないと誤解を招くから表示する」と考えると、付けるべき場面と付けなくてよい場面を落ち着いて分けられます。
表示が求められやすい場面と、表示がなくても困りにくい場面
中小企業で生成AIを使う代表的な場面を、表示の必要性の高い順に並べると次のようになります。あくまで目安ですので、迷う場合は表示する側に倒すのが安全です。
| 場面 | 表示の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 商品・サービスの広告に使う、実物のように見える画像 | 表示する、または実物の写真に差し替える | 実物と違えば、お客様が誤った判断をするおそれがある |
| 施工事例・完成イメージ・ビフォーアフター | 表示する(「イメージです」だけでなくAIで作ったことも) | 実際の実績と受け取られやすい |
| 実在しそうな人物の顔写真・お客様の声・社員紹介 | 原則として使わない。使うなら明確に表示 | 実在の人や実際の声だと誤解される |
| SNS・動画共有サービスへの写実的な投稿 | 掲載先の規約に従って表示 | 規約で表示を求められている場合がある |
| 取引先への納品物(文章・デザイン) | 契約・発注元の求めに従う。事前に確認 | AIの利用を申告する取り決めがある場合がある |
| ホームページの説明文・ブログ記事 | 人が内容を確認していれば、必須でないことが多い | 読み手の判断は、作り方より内容の正しさで決まる |
| イラスト風・図解風の挿絵 | 任意。気になるなら小さく表示 | 本物の写真と誤解されにくい |
| 社内資料・社内向けのお知らせ | 社内ルールに従う(多くは不要) | 社外の人に誤解を与えない |
表の上のほうに共通するのは、見た人が「これは事実だ」と受け取る内容だという点です。商品の見た目、実際の施工、実在の人物や実際のお客様の感想は、どれも事実として受け取られます。ここにAIで作ったものを混ぜるなら、表示は欠かせません。特に広告では、表示を付けたとしても、実物と大きく違う画像を使うこと自体が問題になる場合があります。注意書きは誤解を防ぐ手段の一つであって、何でも許される免罪符ではないと考えてください。
反対に、表の下のほうは、人が内容を確かめ、会社として責任を持って出す文章や、明らかにイラストとわかる絵です。こうしたものに毎回「AIで作成」と付ける会社もありますが、付けないからといって直ちに問題になるとは限りません。どちらにするかは会社の方針として決めておけば足ります。
文章は「誰が責任を持つか」がはっきりしていればよい
文章の場合、AIが下書きをしても、最後に人が読んで直し、会社の名前で出すのであれば、それは会社の文章です。大切なのは、AIと書くかどうかよりも、内容が正しいかを人が確かめることです。生成AIはもっともらしい誤り(ハルシネーション)を書くことがあるため、数字や固有名詞、制度の説明は必ず確認してから出すようにします。
表示するか迷ったときに確かめる5つの質問
表に当てはまらない場面では、次の5つの質問で判断すると迷いが減ります。1つでも「はい」があれば、表示するか、AIで作ったものを使わない方向で考えます。
表示を検討する5つの質問
- 見た人が「本物の写真・映像・録音だ」と受け取る可能性はあるか
- 実在の人物、実際のお客様、実際の実績のように見えるか
- 見た人がそれを根拠に、買う・申し込む・契約するなどの判断をするか
- 掲載先(SNS・広告配信サービス・モールなど)の規約に、AIで作った内容の表示についての決まりはあるか
- 取引先との契約や発注の条件に、AIの利用を申告する決まりはあるか
前の3つは「誤解を招くか」、後の2つは「決まりがあるか」を確かめる質問です。決まりのほうは、担当者の感覚では判断できません。よく使う掲載先の規約は、ルールを作る担当者が一度まとめて確認し、変更がないか定期的に見直すようにします。規約は予告なく変わることがあるため、年に1〜2回は公式の案内を確認する予定を入れておくと安心です。
ポイント
迷ったときは「表示しておいて困ることは少ない」と考えるのが基本です。表示しなかったことで後から信頼を損なうほうが、取り戻すのに時間がかかります。
場面別の注意書きの書き方の例
注意書きは、短く、見る人が気づく場所に、何がAIで作られたのかがわかるように書くのが基本です。ページの一番下に小さく一言だけ書いても、肝心の画像の近くになければ気づかれません。場面ごとの文例を挙げます。
| 場面 | 文例 | 置く場所 |
|---|---|---|
| 広告・チラシのイメージ画像 | 「画像は生成AIで作成したイメージです。実際の商品とは異なります。」 | 画像のすぐ下・横 |
| 完成イメージ・施工イメージ | 「完成イメージは生成AIで作成したもので、実際の施工例ではありません。」 | 画像のすぐ下 |
| SNS投稿 | 「#AI生成画像」「この画像はAIで作成しました」など、掲載先の決まりに合わせた表示 | 投稿文の中、または掲載先が用意する表示機能 |
| 挿絵・図解 | 「イラスト:生成AIで作成」 | イラストの下 |
| 文章(記事・資料) | 「本記事は生成AIで下書きし、当社担当者が内容を確認しています。」 | 記事の冒頭または末尾 |
| チャットでの自動応答 | 「こちらはAIによる自動応答です。担当者への切り替えもできます。」 | 会話の最初 |
文例を作るときのコツは次の3つです。
- 何がAIで作られたかを具体的に書く:「一部にAIを使用しています」だけでは、どれがAIなのかわかりません。「画像は」「イラストは」と対象を示します
- 実物・実績との違いを一緒に書く:広告や施工イメージでは、「実際の商品とは異なります」「実際の施工例ではありません」と添えると、誤解をより防げます
- 人が確認していることを伝える:文章の場合は、「担当者が確認しています」と添えると、読み手が内容の正しさに安心できます
チャットの自動応答は特に表示しておく
ホームページの問い合わせ窓口にAIの自動応答を置く場合、お客様は相手が人なのかAIなのかで、伝える内容や受け取り方を変えることがあります。会話の最初に「AIによる自動応答です」と示し、人の担当者に切り替える方法も添えておくと、お客様にとっても会社にとっても行き違いが減ります。
社内ルールに表示の決まりを入れる手順
表示の判断を担当者ごとに任せると、同じ会社の中でも付けたり付けなかったりがばらばらになります。生成AIの利用ルール(AIの使い方の社内ルール)に、表示の項目を加えておきましょう。次の順で進めると、短い時間でまとまります。
- 社外に出しているものを洗い出す:広告、チラシ、ホームページ、SNS、提案書、納品物、メールなど、AIを使っている・使いそうな社外向けのものを一覧にする
- 場面ごとに「必須・推奨・任意・使わない」を決める:この記事の表を参考に、自社の場面に当てはめる。実在の人物に見える画像やお客様の声など、そもそもAIで作らないものも決める
- 文例と置く場所を決める:担当者が書き写せばよい形で、場面ごとの文例を用意する
- 掲載先と取引先の決まりを確認する:よく使うSNSや広告配信サービスの規約、主な取引先との契約に、AIの表示や申告の決まりがないかを確認して書き添える
- 出す前の確認者を決める:広告や施工イメージなど「必須」の場面は、出す前に責任者が表示の有無を確認する流れにする
- 見直しの時期を決める:法令やガイドライン、規約の変更に合わせて、年に1〜2回はルールを見直す
社内ルールに入れる文の例は、次のようなものです。
社内ルールに入れる表示の項目(例)
- 生成AIで作った画像を広告・チラシ・ホームページに使う場合は、画像の近くに所定の注意書きを入れる
- 実在の人物に見える画像、お客様の声、施工実績を生成AIで作ってはならない
- SNSに投稿する場合は、掲載先の規約に従ってAIで作成したことを表示する
- 取引先への納品物にAIを使う場合は、契約の条件を確認し、必要に応じて事前に伝える
- 生成AIで下書きした文章は、出す前に担当者が事実と数字を確認する
- 判断に迷う場合は、表示する側に倒すか、責任者に相談する
ルールは長く細かく書くより、担当者が1枚で見渡せる量にまとめるほうが守られます。迷いやすい例を後から追記していく運用にすると、実際の仕事に合ったルールに育っていきます。
表示の確認を「仕組み」に組み込むと、担当者が迷わない
表示のルールを決めても、忙しい日には確認が漏れることがあります。そこで、ルールを担当者の記憶に頼らず、業務の流れの中に組み込んでおくことが大切です。たとえば、AIで画像や文章を作る仕組みの側で、出力のたびに「この画像は広告に使いますか」と用途を聞き、広告に使う場合は注意書きの文例を自動で添える、といった形です。出す前の確認の一覧に「表示の有無」の項目を入れておくだけでも、漏れは減ります。
当社の「AI社員」は、会社ごとの業務に合わせてAIの仕組みを作り、運用まで支える月額のサービスです。文章や画像の下書きを作るときに、社内ルールに沿った注意書きの文例を添える、出す前の確認項目を表示する、といった使い方にも対応できます。料金は初期費用+月5万円で、保守・相談・メンテナンスは回数の制限なくご利用いただけます。初期費用は業務の内容をお聞きしたうえでお見積もりします。
当社にはこれまで、建設・設備、医療・介護、製造、不動産、出版・印刷など、約90社からご相談をいただいてきました。「AIで作ったものをどこまで社外に出してよいか」「社内ルールをどう決めればよいか」といったご相談もお受けしています。最新の法令や規約の確認は欠かせませんが、自社の場面に合わせた考え方の整理から一緒に進めることができますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
生成AIで作った画像には必ず注意書きが必要ですか?
すべての画像に一律で必要とは限りません。ただし、実物や実績と誤解されるおそれのある広告・施工イメージや、掲載先の規約で表示が求められている場面では、表示が必要または望ましい場合があります。最新の情報は公式サイトで確認してください。
生成AI画像の注意書きはどう書けばよいですか?
「画像は生成AIで作成したイメージです。実際の商品とは異なります。」のように、何がAIで作られたかと、実物との違いを短く書き、画像のすぐ近くに置くのが基本です。
AIで下書きした文章にも「AIで作成」と書くべきですか?
人が内容を確認し、会社の責任で出す文章であれば、必須でない場合が多いと考えられます。書くかどうかは会社の方針として決め、どちらの場合も事実や数字の確認は必ず行ってください。
注意書きを付ければ、AIで作った画像を広告に自由に使ってよいですか?
そうとは限りません。注意書きを付けても、実物と大きく違う画像で実際より良く見せる使い方は問題になる場合があります。商品の見た目を伝える広告には、できるだけ実物の写真を使うのが安全です。