AIツールの利用申請書テンプレート——社員が新しいAIを使いたいときの12項目と承認の流れ
結論
社員が新しいAIツールを仕事で使いたいときは、目的・入れる情報・データの扱い・料金・責任者など12項目の利用申請書を出してもらい、管理職が「すぐ許可・条件つき許可・見送り」の3段階で判断する流れにするのがおすすめです。
- 申請書はA4で1枚に収め、記入は10分で終わる量にします。
- 判断の目安は、入れる情報に個人情報や社外秘が含まれるかどうかです。
- 許可したツールは一覧にして社内に公開し、半年に1回見直します。
株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、社員が新しいAIツールを仕事で使いたいときに出してもらう利用申請書の項目と、承認の流れについて解説します。「便利そうなAIを見つけたので、仕事で使ってもいいですか」。社員からこう聞かれたとき、すぐに答えられる管理職の方は多くありません。全部禁止にすると、社員は隠れて個人のアカウントで使い始め、会社が把握できない「シャドーAI」が増えてしまいます。かといって全部許可にすると、お客様の情報がどこに入力されたのかわからなくなります。当社はAIを業務に組み込む「AI社員」を提供しており、ご相談の中でも「社員が使っているAIを把握できていない」というお悩みをよく伺います。この記事では、社員が新しいAIツールを使いたいときに出してもらう利用申請書のテンプレートと記入例、管理職が判断するときのチェックリスト、承認の流れを紹介します。
AIツールの利用申請書が必要な理由——禁止でも放置でもなく「申請して使う」
AIツールの利用申請書とは、社員が新しいAIツールを仕事で使い始める前に、「何に使い、どんな情報を入れ、誰が責任を持つか」を会社に伝えるための書類です。社内の稟議書のような重い書類にする必要はありません。
申請の仕組みがない会社では、次のどちらかになりがちです。
| やり方 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 全部禁止にする | 社員が個人のスマートフォンやアカウントで隠れて使う。会社は何に使われているか把握できない |
| 何も決めずに放置する | 部署ごとに別々のAIを使い、お客様の情報がどこに入ったかわからなくなる。退職者のアカウントが残る |
| 申請して使う | 使っているAIの一覧が会社に残る。危ない使い方は事前に止められ、便利な使い方は社内に広げられる |
申請の仕組みは「止めるため」ではなく、社員が見つけた便利な使い方を、安全な形で会社全体に広げるためのものだと伝えると、社員も出しやすくなります。社員が無断でAIを使うリスクについてはシャドーAIのリスクと対策でくわしく説明しています。
AIツールの利用申請書テンプレート——そのまま使える12項目
次の12項目をWordやスプレッドシートに写して、社内の申請書として使ってください。社員が10分程度で書ける量にしてあります。
| No. | 項目 | 書いてもらう内容 |
|---|---|---|
| 1 | 申請日・申請者・部署 | 誰がいつ申請したか |
| 2 | ツールの名前と提供会社 | 正式な名前、提供している会社、公式サイトのURL |
| 3 | 使いたい業務 | どの業務の、どの作業に使うか(例:見積書の送付メールの下書き) |
| 4 | 今のやり方と困っていること | 今は何分かかっているか、何が面倒か |
| 5 | 入力する情報 | AIに入れる情報の種類(社内の文書/お客様の名前/取引金額など) |
| 6 | 個人情報・社外秘の有無 | 入れる/入れない/わからない、のどれか |
| 7 | データの扱い | 入力内容が学習に使われるか、学習に使わない設定があるか(わからなければ「不明」でよい) |
| 8 | アカウントの種類 | 個人のアカウントか、会社のアカウントか。無料版か有料版か |
| 9 | 料金 | 無料/月額いくら/使った分だけ、など |
| 10 | 使う人数と期間 | 申請者だけか、部署全体か。まず1か月試すのか、ずっと使うのか |
| 11 | AIの答えを確かめる方法 | 誰が、どこまで確かめてから使うか(例:社外に送る前に上長が読む) |
| 12 | やめるときの扱い | 使うのをやめたとき、アカウントや保存したデータをどうするか |
ポイント
7番の「データの扱い」は、社員がわからなくても申請を止めないでください。「不明」と書いてもらい、確認は管理職か情報システムの担当が引き受けるほうが、申請が出やすくなります。
利用申請書の記入例——見積メールの下書きにAIを使いたい場合
営業事務の社員が、見積書を送るメールの下書きにAIを使いたいと申請した場合の記入例です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 使いたい業務 | 見積書をお客様に送るときのメール本文の下書き |
| 今のやり方と困っていること | 1通10分ほどかかる。1日に8〜10通あり、文面が担当者ごとにばらばら |
| 入力する情報 | 見積の品名と納期、お客様の会社名 |
| 個人情報・社外秘の有無 | お客様の会社名と担当者名を入れる可能性がある |
| データの扱い | 不明(無料版を試した) |
| アカウントの種類 | 個人の無料アカウント |
| 料金 | 無料 |
| 使う人数と期間 | まず申請者1人で1か月試し、よければ営業事務の3人に広げたい |
| AIの答えを確かめる方法 | 送る前に申請者が読み、金額と納期は見積書と見比べる |
| やめるときの扱い | アカウントを削除し、会話の履歴も消す |
この例では、お客様の会社名や担当者名を個人の無料アカウントに入れる可能性がある点が気になります。管理職は「会社名と担当者名は『A社』『〇〇様』に置き換えて入力する」という条件をつけて許可するか、会社のアカウントを用意してから使ってもらう、といった判断ができます。
このように、申請書があると「使ってよいか・だめか」だけでなく、どういう条件なら安全に使えるかを話し合えるようになります。
管理職の判断は3段階——すぐ許可・条件つき許可・見送りの目安
申請を受けた管理職は、次の3段階で判断します。判断に迷ったときの目安は、入れる情報の重さです。
| 判断 | 目安 | 例 |
|---|---|---|
| すぐ許可 | 個人情報・社外秘を入れない。会社のアカウントか、学習に使わない設定が確認できている | 社内のお知らせ文の下書き、一般的な調べもの、公開済みの資料の要約 |
| 条件つき許可 | 情報を置き換えれば使える。または期間・人数を限れば試せる | お客様名を伏せたメールの下書き、1か月だけ1人で試す |
| 見送り | 個人情報・社外秘をそのまま入れる必要がある。提供会社やデータの扱いが確認できない | お客様の名簿をそのまま読み込ませる、契約書の全文を入れる |
承認する前に管理職が確認すること
- 提供している会社と、問い合わせ先がはっきりしているか
- 入力した内容が学習に使われない設定、または法人向けプランがあるか
- 入れる情報が、社内のAI利用規定で禁止しているものに当たらないか
- AIの答えを確かめる人と方法が決まっているか
- 料金がかかる場合、誰の予算で払うか
- やめるときにアカウントと保存データを消せるか
見送りにする場合も、理由と「どうすれば使えるか」を伝えてください。「この情報を伏せれば使える」「会社でまとめて契約するまで待ってほしい」と返すと、社員が隠れて使う理由がなくなります。お客様の情報の扱いはAIに顧客情報・個人情報を入力するときの注意点も参考にしてください。
申請から利用開始までの流れと、許可したツールの一覧の作り方
申請から利用開始までは、次の5つの手順で回すと、少人数の会社でも負担になりません。
- 社員が申請書を出す:社内チャットやメールで、12項目を書いた申請書を上長に送る
- 上長が3段階で判断する:迷う場合は、情報システムの担当か総務に相談する。目安は申請から3営業日以内に返事をする
- 条件を伝えて利用を始める:条件つき許可なら、守ってほしい条件を文章で返す
- 許可したツールの一覧に追加する:ツール名・使ってよい業務・入れてよい情報・条件・許可した日を1行で残す
- 半年に1回見直す:使われていないツールは解約し、アカウントを消す。便利だった使い方は社内に紹介する
許可したツールの一覧は、次のような形で社内に公開しておくと、同じツールの申請が何度も出ることを防げます。
| ツール | 使ってよい業務 | 入れてよい情報 | 条件 | 許可日 |
|---|---|---|---|---|
| (例)会社で契約した対話型AI | 文書の下書き・要約全般 | 社内の文書、伏せ字にしたお客様情報 | 社外に出す文書は上長が確認 | (記入) |
| (例)文字起こしのツール | 社内会議の記録 | 社内会議の音声のみ | お客様との商談は録音の同意を取った場合のみ | (記入) |
申請書と一覧は、社内のAI利用規定とセットで運用すると効果が上がります。規定のひな形は生成AI利用規程のひな形で、規定を作ったあと形だけにしない工夫は生成AIの社内ルールを形骸化させないにはで紹介しています。
申請が増えてきたら——「個人で使うAI」から「業務に組み込むAI」へ
申請の仕組みを回し始めると、「同じ部署から似た申請が何度も出る」「毎日同じ作業をAIでしている」といったことが見えてきます。これは、AIに任せるとよい業務が見つかった合図です。
たとえば、営業事務の3人が毎日、見積メールの下書きをそれぞれ対話型AIで作っているなら、見積書のデータからメールの下書きを自動で作る仕組みにしたほうが、早くて文面もそろいます。社員がAIを開いて指示文を打つ手間もなくなります。
当社の「AI社員」は、こうした決まった作業をAIに任せる仕組みを、業務に合わせて作り、月5万円で保守・相談まで引き受けるサービスです。導入事例では、不動産会社(従業員15名規模)の問い合わせ担当の方の初回返信が半日から10分になりました。申請書から見えてきた業務の中に、仕組みにしたいものがあれば、月5万円のAI社員のページからお気軽にご相談ください。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。
よくある質問
AIツールの利用申請書には何を書けばいいですか?
ツールの名前と提供会社、使いたい業務、入力する情報、個人情報や社外秘の有無、データの扱い、料金、使う人数と期間、AIの答えを確かめる方法など12項目が目安です。社員が10分程度で書ける量に収めると、申請が出やすくなります。
社員が個人のアカウントでAIを使うのは禁止すべきですか?
一律に禁止すると、隠れて使う人が増えて会社が把握できなくなりがちです。申請してもらい、個人情報や社外秘を入れないなどの条件をつけて許可するほうが、安全に管理できます。
AIツールの利用を許可するかどうかは、何で判断すればいいですか?
いちばんの目安は、入力する情報に個人情報や社外秘が含まれるかどうかです。含まれない場合や、伏せ字にすれば使える場合は許可しやすく、そのまま入れる必要がある場合は会社の契約や設定を確認するまで見送ります。
許可したAIツールは、どう管理すればいいですか?
ツール名・使ってよい業務・入れてよい情報・条件・許可した日を一覧にして社内に公開し、半年に1回見直します。使われていないツールは解約してアカウントを消すと、情報の置き場所が増えすぎるのを防げます。