費用・比較・選び方公開日

AI導入の費用を抑えるには?——対象業務の絞り込み、既製ツールとの使い分け、データの準備、利用料を抑える設計の7つの方法

結論

AI導入の費用を抑えるいちばんの方法は、最初にAIに任せる業務を1つに絞り、効果が出てから広げることです。そのうえで、既製のツールで足りる業務と、業務に合わせて作るべき業務を分け、資料やデータの準備を自社で進め、AIの利用料がふくらまない設計にすると、ムダな費用を減らせます。ただし、初期費用の安さだけで依頼先を選ぶと、導入後の修正や保守で結果的に高くつくことがあるため、導入後まで含めた総額で比べることが大切です。

株式会社MEDISITE 執行役員・AI事業責任者の吉村聡一郎が、AI導入の費用を抑える方法と、安さだけで選ばないための注意点について解説します。AIを入れたいと考えたとき、多くの経営者の方が最初に気になるのが費用です。「見積もりを取ったら思ったより高かった」「どこにお金がかかっているのか分からない」というご相談もよくいただきます。AI導入の費用は、何をどこまで任せるか、どのように作るかで大きく変わります。言いかえれば、進め方を工夫すれば、効果を落とさずに費用を抑えられる余地があるということです。この記事では、AI導入の費用を抑えるための具体的な7つの方法と、費用を削りすぎて失敗しないための注意点を説明します。費用がどのような項目で構成されているかは「AI導入にかかる費用の内訳とは?」の記事で説明しているので、あわせてご覧ください。

AI導入の費用は「範囲」「作り方」「準備」「使い方」で決まる

AI導入の費用を抑えるには、まず費用が何によって増えたり減ったりするのかを知っておくことが近道です。AI導入の費用は、大きく分けて次の4つの要素で決まります。

要素費用が増える場合費用を抑えられる場合
範囲(何を任せるか)最初から多くの業務をまとめて自動化しようとする1つの業務に絞って始め、効果を見て広げる
作り方(どう作るか)既製のツールで足りる部分まで一から作る既製のツールと、業務に合わせて作る部分を使い分ける
準備(材料をどう集めるか)資料やデータの整理まで依頼先に任せる過去の書類やルールの整理を自社で進めておく
使い方(毎月どれだけ動かすか)AIに必要以上の量を読ませ、毎回高性能なAIを使う読ませる量を絞り、業務に合ったAIを選ぶ

費用の内訳としては、構築にかかる初期費用、保守や相談のための月額費用、AIを動かした分だけかかる利用料の3つが中心になります。上の4つの要素は、それぞれの費用に影響します。たとえば、範囲を絞れば初期費用が下がり、使い方を工夫すれば毎月の利用料が下がります。

以下では、この4つの要素にそって、費用を抑える具体的な方法を順に説明します。

つまり、費用を抑えるとは「安い依頼先を探すこと」ではなく、「ムダにお金がかかる要素を減らすこと」だと考えると、効果を落とさずに進められます。

方法1・2:最初に任せる業務を1つに絞り、効果を測ってから広げる

費用を抑えるうえで最も効果が大きいのが、最初に任せる業務を1つに絞ることです。「せっかくだから、受注入力も問い合わせ対応も請求書の発行もまとめて」と考えると、作るものが増え、確認や調整の手間も増えるため、初期費用が大きくなります。

方法1:時間がかかっていて、形が決まっている業務を1つ選ぶ

最初の1業務は、次の条件に当てはまるものがおすすめです。

  • 毎日や毎週、同じ形で繰り返している
  • 担当者の時間を多く使っている
  • AIが間違えても、人の確認で防げる
  • 使う書類やデータがそろっている

当社の導入事例では、製造業(従業員30名規模)の事務担当の方の受注書入力が、1日2時間から15分になりました。このように、1つの業務で効果がはっきり出ると、次の業務に広げるときの判断もしやすくなります。

方法2:試運転で効果を測り、広げる業務を選ぶ

最初の業務で、どれだけ時間が減ったかを測っておくと、次にどの業務に広げれば費用に見合うかが分かります。効果が見込めない業務にお金をかけずに済むため、結果として全体の費用を抑えられます。最初の業務で作った仕組みや、まとめた社内の資料は、次の業務でも使い回せることが多く、2つ目以降は費用が小さく済む場合もあります。

効果は「時間」と「件数」で測っておく

効果を測るときは、難しい計算は必要ありません。導入前に「その業務に1日何分かかっているか」「月に何件あるか」をメモしておき、導入後に同じ数字を比べるだけで十分です。減った時間に担当者の時給をかければ、月にどれだけの人件費分の時間が浮いたかの目安になります。当社自身も、自社の業務にAIを使うことで月に約480時間を減らし、社員3名分にあたる月約100万円の人件費を浮かせてきました。こうした数字があると、次にどの業務へ広げるか、費用に見合うかを冷静に判断できます。

方法3・4:既製ツールで足りる業務と、作るべき業務を分ける

AIの仕組みは、すべてを一から作る必要はありません。すでに提供されているAIのツールで足りる業務もあれば、自社の業務の流れに合わせて作ったほうがよい業務もあります。この見極めが、費用を抑えるうえで大切です。

方法3:一般的な作業は既製のツールを使う

文章の下書き、翻訳、会議の録音の文字起こしなど、どの会社でもやり方が大きく変わらない作業は、既製のAIツールで十分なことが多いです。こうした作業のために一から仕組みを作ると、かえって費用が高くなります。

方法4:自社のやり方が強く関わる業務だけ、合わせて作る

一方で、自社の書類の形式、取引先ごとのルール、社内のシステムへの入力など、自社独自のやり方が関わる業務は、既製のツールでは合わないことがあります。無理に既製のツールを使うと、結局は人が手で直す作業が残り、効果が出ません。こうした業務は、業務に合わせて作ったほうが、長い目で見て費用対効果がよくなります。

業務の例向いている選び方理由
メールや文章の下書き、翻訳既製のツールどの会社でもやり方が似ていて、すぐ使える
会議の文字起こしと要約既製のツール一般的な機能で足りることが多い
取引先ごとに形式の違う受注書の入力業務に合わせて作る読み取り方や入力先が会社ごとに違う
社内のルールにもとづく問い合わせへの回答業務に合わせて作る自社の資料を読ませ、答えてよい範囲を決める必要がある

どちらが向いているか判断がつかない場合は、依頼先に「既製のツールで足りない理由」を聞いてみてください。理由をきちんと説明できる依頼先であれば、ムダなものを作らずに済みます。

既製のツールを「とりあえず全員分」契約しない

既製のツールを使う場合にも、費用を抑える工夫があります。人数ごとの月額で契約するツールは、使わない人の分まで契約すると、毎月の費用がそのまま積み上がります。まずは実際に使う部署や担当者の分だけ契約し、使われ方を見てから広げると、ムダな固定費を避けられます。同じような機能のツールを部署ごとに別々に契約していないか、ときどき見直すことも大切です。

方法5・6:資料の準備を自社で進め、AI利用料がふくらまない設計にする

構築の費用や期間の中には、AIに読ませる資料やデータを集めて整理する作業も含まれます。また、毎月かかるAIの利用料は、仕組みの作り方によって大きく変わります。

方法5:AIに読ませる材料を、自社でそろえておく

依頼先に相談する前に、次のような材料を自社でそろえておくと、ヒアリングや整理の手間が減り、費用や期間を抑えやすくなります。

依頼前にそろえておくとよい材料

  • 対象の業務で使っている書類の実物(受注書、見積書、報告書など)を数十件
  • 業務の手順を書いたメモやマニュアル(箇条書きで十分)
  • よくある質問と、その答え
  • 「こういう場合は担当者に回す」といった判断のルール
  • 業務にかかっている時間と件数のおおよその数

完璧に整理されている必要はありません。「何を見て、どう判断しているか」が分かる材料があるだけで、仕組みづくりは進めやすくなります。

方法6:AIに読ませる量と、使うAIの種類を業務に合わせる

AIの利用料は、AIに読ませた量と書かせた量に応じてかかる従量課金が一般的です。そのため、毎回必要のない資料まで読ませたり、簡単な仕分けにまで性能の高いAIを使ったりすると、利用料がふくらみます。

  • 質問に関係する資料だけを探して読ませる
  • 仕分けのような簡単な作業には、軽くて安いAIを使う
  • 同じ処理を何度も繰り返さないようにする
  • 毎月の利用料を確認できるようにしておく

利用料の決まり方や月額の見積もり方は「AIの利用料(API料金)はどう決まり、月いくらかかる?」の記事で詳しく説明しています。

方法7:補助金・助成制度は「対象になる場合がある」と考えて確認する

AIやITの導入には、国や自治体の補助金・助成制度が使える場合があります。対象になれば、費用の一部が補われるため、導入の負担を軽くできます。

ただし、補助金・助成制度には次のような点に注意が必要です。

  1. 対象になるかは制度ごとに違う:対象となる会社の規模、業種、導入するものの種類などに条件があります
  2. 募集の時期が決まっていることが多い:申請できる期間が限られ、締め切りに間に合わないこともあります
  3. 原則として後払いのものが多い:いったん費用を支払い、あとから補助される仕組みの場合、一時的な資金の準備が必要です
  4. 内容は毎年のように変わる:前年に使えた制度が、今年も同じ条件とは限りません

補助金・助成制度を使えるかどうかは、制度の条件や時期によって変わるため、断定はできません。最新の情報は、国や自治体の公式サイト、商工会議所などの窓口で確認してください。補助金を前提に計画を立てるのではなく、「使えれば負担が減る」くらいに考えておくと、採択されなかったときにも計画が崩れません。

補助金のために範囲を広げすぎない

補助金を使う場合に気をつけたいのが、補助の対象になるからといって、必要以上に大きな仕組みを作ってしまうことです。補助で費用の一部が補われても、自社の負担分は残りますし、使われない機能の保守にも手間がかかります。補助金の有無にかかわらず、「最初の1業務に絞る」という考え方は変えないほうが、結果として費用を抑えられます。申請の書類づくりや手続きにも社内の時間がかかるため、その手間も含めて判断してください。

安さだけで選ぶと高くつく——導入後まで含めた総額で比べる

費用を抑えようとして、初期費用がいちばん安い依頼先を選ぶのは注意が必要です。AIの仕組みは、作って終わりではありません。使い始めてから、次のようなことが起こります。

  • 取引先の書類の形式が変わり、読み取りがうまくいかなくなる
  • 現場から「この場合にも対応してほしい」という要望が出る
  • AIの種類や提供元の仕様が変わり、調整が必要になる
  • 担当者が替わり、使い方を説明し直す必要がある

初期費用が安くても、こうした修正のたびに別料金がかかる契約だと、1年を通した総額は高くなることがあります。修正が後回しにされて使われなくなれば、かけた費用そのものがムダになってしまいます。

ポイント

依頼先を比べるときは、初期費用だけでなく「月々の費用に何が含まれるか」「修正や相談は別料金か」「AIの利用料はどう請求されるか」を確認し、1年分の総額で比べることをおすすめします。

当社の「月5万円のAI社員」は、初期費用+月5万円の料金で、月額の中に保守・相談・メンテナンスを回数の制限なく含めています(契約12か月、税別、AIの利用料は実費)。初期費用はヒアリング後にお見積もりします。最初の1業務の絞り込みからご一緒しますので、「どこまでやれば費用に見合うか」を知りたいときは、お気軽にご相談ください。

よくある質問

AI導入の費用はいくらかかりますか?

任せる業務の数や内容、作り方によって大きく変わるため、一律の金額は言えません。当社の場合は初期費用+月5万円で、初期費用はヒアリング後にお見積もりします。

AI導入費用の相場はどれくらいですか?

既製のツールを使うだけか、業務に合わせて仕組みを作るか、どれだけの業務を対象にするかで相場は大きく変わります。相場を気にするより、最初の1業務に絞って見積もりを取り、効果と比べるほうが判断しやすくなります。

AI導入の費用を安くするには何から始めればよいですか?

最初にAIに任せる業務を1つに絞ることから始めてください。あわせて、その業務で使う書類や手順のメモを自社でそろえておくと、構築の手間が減り、費用や期間を抑えやすくなります。

AI導入に補助金は使えますか?

国や自治体の補助金・助成制度の対象になる場合がありますが、条件や募集時期は制度ごとに違い、毎年変わることもあります。最新の情報は公式サイトや商工会議所などの窓口で確認してください。

執筆・監修

吉村 聡一郎の写真

株式会社MEDISITE 執行役員/AI事業責任者

吉村 聡一郎

株式会社アシロ(東証グロース市場)で営業統括責任者・新規事業開発責任者を経験。2022年、株式会社MEDISITEの創業メンバーとして参画し、AI事業・営業支援事業を統括。

  • AI導入・AI研修
  • 営業・新規事業

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